命一家 4話 |
命一家 4話
【命】
「さぁ、そろそろ寝ましょうか」
一日の終わりに私の部屋でみきと一緒にベッドに潜って眠そうに
しているみきにそう言うとみきは目をこすりながらも私に聞いてきた。
「ねぇ、ママは萌黄ママとどうやって一緒になったの?」
「え?」
いきなりすぎて一瞬言葉にできなくて口ごもってしまったが
普通にかいつまんでみきに伝えればいいのだと思い口にする。
昔の暗い過去や問題がある部分は省いて萌黄との出会いのことを
話し始めた。
その語り方は昔話をするような感じで話していき…。
みきも興味津々に耳を傾けていた。
***
家族も何もかもなくなってしまって親に残された手紙一つ。
不安にいっぱいになりながらも私に気づいた萌黄は久しぶりに
思えるほどの暖かい笑顔で迎えてくれた。
***
「まるで天使のようだったわ」
「へ〜、萌黄ママ優しいね」
「うん、とても。今の私があるのも萌黄ママのおかげなのよ」
「私がいるのも?」
「そうね」
「うふ…」
「どうしたの?」
「何かそう考えると不思議でくすぐったい気持ちになるなぁって
思ったの!」
「運命とかそんな感じかしら」
「うんめいって?」
「そうなるように決められた道って感じかしらね・・・」
「私がここにいるのも運命?」
「ふふ、そうかもしれないわね」
「うん、運命!私にも運命っていうのあるのかな?」
「そうね、誰にもそういうのはあるかもね。ただ、良いほうの運命が
来てほしかったらがんばって良い子でいないとね」
「うん、がんばる〜」
かわいらしい笑顔を浮かべながら少し恥ずかしそうに顔に布団を
被せるみき。その照れてる仕草が余計に可愛くて抱きしめたくなる。
そんな気持ちを堪えて話の続きをした。
***
この町に来たばかりの何も知らない私に萌黄は生活のことや
世間のことを細かく優しく教えてくれた。
そうしているうちにいつしか過剰な不安や遠慮の気持ちが
抑えられていって少しずつ私にも明るさが戻っていった。
**
「ママの小さいときってどんな子供だったの?
私みたいな感じ?」
「全然、もっと人が苦手で…みきとは違ったかな」
「えー、想像できないよ〜」
「いいのよ、しなくて。その…あの頃の私は…怖がりだから」
「わかった。色々聞いてごめんね」
ちょっとしゅんとした表情に私は慌てて言い直した。
そして話題を逸らすために話の続きを再開した。
ただ話しをしている内に少しずつ眠くなっていって
自分が今何を語ってるのかわからなくなっていたころ。
「スー…」
「あ、寝ていたのね…」
いつの間にかみきの寝息が聞こえてきて私は少しホッとしながら
みきの頭を優しくなでてから私も目を瞑るとすぐに眠りにおちた。
その日、私は不思議な夢を見た。
一人、誰とも触れ合うことなく怖い顔をして自然の中で過ごしている
自分がそこにいた。
***
【みき】
その日、みきは不思議な夢を見た。
ママの話を聞いていたせいなのかどうかはわからないけど、
みきは見たことのない原っぱに立ってぼーっとしていた。
見たことはないけど何だか懐かしいきもちになる。
「ここはどこだろ?」
誰もいなく本当にみき一人しかいないんじゃないかって
思えるくらいきれいだけどさみしい場所だった。
気持ちいい風を受けながら少し周りを歩いて確かめてみた。
すると離れたところに人がいるのが見えてみきは走り出した。
「こんにちわー」
近くまで行って声をかけてもその人はみきの方を見なかった。
遠くじゃわからなかったけど、近くで見るとすごくきれいな女の子がいた。
金色の髪は腰よりも下くらいあるんじゃないかってくらい長くて。
白いワンピースがよく似合っていた。
ちょっとあちこち傷んだり汚れていたりしてるけど気にならないくらい
見とれてしまいそうだった。
だけどそんな妖精さんみたいなきれいな子が寂しそうに空を見ていて。
それを見ていたみきは同じような気持ちになって思わず目の前にいる子を
そっと後ろから抱きしめると。
「だれ!?」
びくっとして振り返ってみきを見た。
宝石のように澄んだ青色の瞳がとてもきれい。どこかで見たことあるようなその姿。
もしかしてママの小さい時なのかな。
写真も見たことないのになぜかそこは合っているような気がした。
だけど同じくらいの年の子にママなんて言えないから…。
「命ちゃん?」
「どうして私の名前を…?」
いきなり名前を聞くから髪が少し上がって警戒心を出していた。持ち上がった髪が
耳のように見えてかわいかった。とかそんなこといってる場合じゃない!
「ねぇ、一人? みきとあそぼ?」
「一人だけど・・・あそびたくない・・・」
「どうして?」
「私普通じゃないから…」
「それでもみきは遊びたいな」
「…」
「もふー」
ぎゅっ。
静かな時間にがまんできず、みきは小さいママにまた抱きついた。
だってすごくきもちいいんだもん。
「だから!何でいきなり抱きつくの!?」
「だって気持ちいいから〜」
「もう、変な子ね!」
そう言いながら何とか抜けようとするけど、本気で嫌がってるようには
感じなかった。ほんとに嫌ならもっと力を出せると思うから。
「あといい匂いする」
ママの匂いがする。
「・・・!?」
向き合って抱きついてたからママの顔が見れた、顔を真っ赤にして
恥ずかしそうにしている。
「わかった、あそぶから。離して…」
「うん!」
そういうから私は手を離して小さいママを自由にした。
小さいママとあそぶなんてこと今の一度きりしかないと思ったから!
***
木や背の高い草がいっぱいあったからかくれんぼしたり、ひらべったい地面では
石とか草とか木の実とか使っておままごとをしてみたり。他にも色々遊んだ。
「ふふっ・・・」
するとちっちゃい命ママが小さくクスクスと笑う。その笑顔を見てみきはドキッとして
胸が熱くなるのを感じた。何だか…嬉しくて嬉しくてしかたなかった。
それからも喜んでもらえるようにみきは動物の物まねしたりして盛り上がった。
でもその後は何をしたか覚えていない。
なぜかというと…。
***
ピピピピピ…。
めざましどけいの音が聞こえてみきは目を覚ました。隣には命ママが眠っていて
顔をのぞきこんでみると…。
「すー…」
眠っていたけれどその顔はいつもはあまりみないくらいのかわいく笑いながら寝ていた。
それからすぐ命ママも起きて、いつものように朝ごはんの準備をはじめていた。
あの出来事はみきだけなのかなぁと命ママの背中を見ていたら少し余裕のできた
ママがみきの方へ振り返り話しかけてきた。
「そういえば私、夢を見てね。みきと一緒に遊んだような気がしたんだけど」
「みきも!夢で小さいママとあそんだよ!」
「ほんとに!?私もまったく同じだったわ…不思議なこともあるもんね」
「うん」
「あの頃の私はすごく寂しい思いをしていたから、みきが来てくれて嬉しかった。
ありがとう、みき」
「えへへ」
ママに頭を撫でてもらって気持ちよくなってきた、その後にすぐ萌黄ママや
ヒトミお姉ちゃんとマナカお姉ちゃんも降りてきた。
そしてごはんを食べるときに今日の夢のことを話しながらみんなで楽しく
ごはんを食べて、いつもの日常に戻っていった。
だけどみきはあの時のちっちゃいママの笑顔はしばらくの間忘れることはなかった。
もう一度だけ見たかったなぁ、とみきは友達と遊んでいる途中で空を見たときに
思い出してそう思ったのだった。
続。
説明 | ||
夢の中の話。小さい頃の孤独な命とみき 接触する不思議な一期一会にみきは何を思うのか。という感じ。 |
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