とある不死鳥一家の四男坊 聖地巡礼シリーズ?【ゼロの使い魔】 |
「……」
俺は旅行の最中、久しぶりにグッズの大人買いをしようと秋葉原に来ていた。
ここに来る前は北海道で雪景色を堪能しながら雪見酒と洒落込んでいたのだが、ふと思い立って飛行機を使ったり電車を使ったり瞬動術使ったりと、いろいろな手段を使ってここにやってきたわけだ。
もちろん北海道にも、グッズを買える場所はあっただろうけど、やはりかゆいところに手が届くように俺好みのグッズがそろってそうな場所は、日本ではこの秋葉原を置いて他にないだろう。
そして、いろんな専門店を巡っていい感じにグッズを買うことができてウハウハな気持ちだった俺の前に、何やら次元の裂け目みたいなものが現れていた。
「……これって、あれだっけ?」
それは淡い緑色に輝いていて、あからさまに目立つところにあるにもかかわらず、通行人の誰もが目を向けていない。
おそらく、それは俺にしか見ることができない代物なのだろう。
その裂け目の気配を探ってみると、何やら転移術式のような物が組み込まれているようだ。
そしてその奇妙な光景を、俺は覚えがあった。
秋葉原の街中で、転移術式が組み込まれている、次元の裂け目のようなもの。
それは俺が前世で読んでいた小説に出てきたもので。
「……ゼロ魔かよ」
“ゼロの使い魔”
それは異世界のハルケギニアという場所で、主人公のサイトとヒロインの女の子たちが繰り広げるドタバタラブコメディな物語。
一時期はまってはいたが、途中からなぜか買うのをやめてしまった作品だ。
……確か、別に気になる作品があって金銭的に余裕がなかったからだろうか?
いい加減前世の記憶もあいまいになってきたため、どういう理由で最後まで購入できなかったのか思い出すことができないが、まぁ、今は別にいいだろう。
アニメ版も放送されていたが、個人的には2期の最後がかなり好きだったという覚えがある。
サイトが敵の大群へ向けて特攻をかましていき、最後にヒロインの名前を叫んだ姿は胸熱展開だった。
……と、まぁ、そんな物語が展開される世界への片道便が目の前にあるわけだが。
「……とりあえず」
俺はポーチの中に手を入れる。
つかんだ感触からして何かの棒だろうか?
まぁ、それは別になんでもいい。
俺はつかんだそれを……
「人違いだ、やり直してこい!!!」
おもいっきり裂け目に向かって放り投げた。
「ゼロの使い魔がリアルに存在するなら、サイトもどっかにいるんだろう。多分この秋葉原のどっかにいるだろうから、もう一遍出直してきやがれ! 他人を巻き込むな!」
個人的に、あの世界観は嫌いではないのだが、現状この世界を堪能してるところなのにゼロ魔の世界に行くという気持ちにはなれない。
というか、世界観的にはネット環境は間違いなくないだろうし、俺の特殊なパソコンでもちゃんと異世界でも機能するか怪しい。
半ばネット中毒入ってる俺が、今更ネット環境の無いところに行けると思うか? いや無理だ(反語
それに、ぶっちゃけアニメや小説とか見ていたら、サイトとルイズの関係はいい感じでマッチングしている気がするのだ。
喧嘩もするし騒動も起こすけど、それでもいい関係を築いていけていた。
おまけに、サイトのようにエロくてどこか熱血な性格だからこそ原作でもいい展開に持って行けたところもあると思うのだ。
下手に原作知識があるやつが行くと、起きる問題をどうにかしようと必死になりすぎてうまく人間関係を築けない可能性もあるし、サイトほどの信頼を得られないこともある。
最悪、全てが悪い方向へ働いて気に入っているキャラと敵対したり、もしくは死んでしまうということもあり得るだろう。
なんだかんだで、不満もあるといえばあるところもあるが、それでも原作の落ち着き方が一番ハッピーエンドなのではないかと思う。
……まぁ、本音を言えば俺があの貴族至上主義な環境に耐えられずに暴れたりちょっかい出したりして、原作崩壊待ったなしになる可能性が高いのが一番の理由だが。
「さて、今度はちゃんとサイトを召喚できるのかねぇ? ま、頑張んなさいな、ゼロの魔法使いさん」
俺が投げたものが吸い込まれていくと同時に裂け目もなくなってしまったが、これは召喚が成功したということなのだろうか?
できれば、これは失敗扱いでこの後ちゃんと改めて召喚の儀式を行ってほしいものだ。
「……そういえば、俺が投げたもの、あれなんだっけ? 確か昔Mショップで買った物だったと思うんだけど」
まぁ、いらない物の枠としてまとめておいたものだから、別になくなっても困らないだろうが。
そして、幸か不幸かそれから先、俺の前に再びあの裂け目が現れることはなかった。
どのような結果に落ち着いたのかはわからないが、順調にしかるべき人物が召喚されたのだろう。
……そう、信じておくことにした。
◇◇◇◇◇
広場に大きな爆発音がこだまする。
これで何度目の失敗だろうか。
使い魔召喚の儀を始めて、すでに十数回は失敗している気がする。
この私、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブランド・ラ・ヴァリエールは公爵家の娘である。
偉大なメイジである父や母を家族に持っていることは私にとても誇りである。
それなのに、小さい時に魔法の練習を始めてから今までにかけて、ほとんど魔法を成功させたことがない。
……一体何が悪いのか。
幾度の失敗に悲しくて、よくちぃ姉様に泣きついてしまうこともあったが、泣きじゃくる私をいつも優しく包んでくれて、いつか努力が報われるから諦めないでと励ましてくれる。
その励ましに応えるために、いっぱい勉強して魔法の知識を身に着けた。
トリステイン魔法学院に入学してからの座学でも、学院一の秀才と言われていたほどだ。
それでも、一向に魔法の成功率は上がらない。
それにより、学院一の秀才が今では魔法が使えない「ゼロのルイズ」と呼ばれる始末。
……悔しかった。
自分が馬鹿にされるのもそうだが、トリステインを代表する公爵家の令嬢としても、偉大なメイジである父や母を持つ身としても。私を通して私の大切な家族をも馬鹿にされているのではないかと思えてしまうのだ。
そう思えてしまうことが悲しくて、私の不甲斐なさに腹立たしくて、いつも悲しさに負けて枕を濡らす日々。
そして、今日はトリステイン魔法学院の恒例の使い魔召喚の儀。
これに成功して、すごい使い魔を召喚すれば皆を見返すことができて、もう馬鹿にされることもなくなる。
そう考えて、何が何でも成功させようと挑んだ召喚の儀。
……それなのに。
今私の前に広がるのは、私が魔法を失敗させてしまう時に現れる爆発によって作られた更地。
一向に成功の兆しが見えなかった。
一体何が悪いのか。魔法の詠唱だって間違っていない。すらすらと暗唱できている。
精神力の込め方が足りないのか? それなら、もうすでに試している。
普通より大きな爆発が起こるという結果に終わったが。
「……くっ!」
(なんで! なんで来てくれないの!?)
悔しさに負けて膝をついてしまいそうになる。
しかし、ここで諦めたら本当にすべてが終わってしまう、そんな気がする。
だから、私はまた杖を構えて詠唱をする。
今度こそ、絶対召喚するのだという意思を込めて。
(お願い、どこかにいる私の使い魔! 私の呼び声に応えて!)
魔法を発動させる。
そこに広がるのは今までと変わらない爆発。
やはりだめか、そう思ったその時。
「……なに、これ?」
私の目の前には一本の木の棒が、地面に突き刺さっていた。
よく見ると、それは東方の武器である刀と言われる形に作られた木剣であった。
「おぉ! 見ろよ! ルイズが召喚に成功したぞ!」
「木剣だ! ゼロのルイズが木剣を召喚した!」
「なんでメイジなのに、剣なんて召喚してるんだよ! そこはせめて杖にしておけよ!」
笑い声が広場を埋め尽くす。
その声を聞き悔しいとは思うが、今の私は精神力を大幅に使ったことによる疲労感でふらふらになっている。
それでも、私が召喚してしまった、今嘲笑されている原因となっている木剣がすごく恨めしくて、憎たらしくて。
心の中に広がる負の感情をどこかにぶつけたくて、その元凶である木剣に近づいていく。
ミスター・コルベールは私を不憫そうに見ており、私の様子からこれではもう召喚は無理だろうと考えたのか、今度改めて召喚を行うようにしようと言ってくれている。
ありがたいことではあるが、それでも今はこの感情をぶつけたくて仕方ない。
私はようやっとたどり着いて木剣を投げ飛ばそうとおもむろに引き抜いた。
「!?」
すると、どうしたことか。
私の中に何かが駆け巡るのを感じる。
いや、私の中に元々ある精神力が、この木剣を手にした瞬間に自然と流れを持ったのだろうか。
その奇妙な感覚に、しかし今まで以上に安定しているような感覚に、「これならば」という思いが私の中に生まれた。
「……この宇宙のどこかにいる、私の僕よ」
その感情に任せて私は改めて召喚の魔法を唱え始める。
ミスター・コルベールは私を止めようとしているようで、声を荒げていたが私はそれどころではなかった。
この今迄に感じたことのなかった安定感ならば、きっと成功する。
そんな予感を今すぐにでも現実のものにしたい。そんな考えしか私の中にはなかった。
「……神聖で美しく、そして強力な使い魔よ」
魔法を使う時には、その杖と契約することが必須である。
現に私が使っていた杖は、私が小さい頃に父から送ってもらったもので、1ヶ月もかけて契約をすることができたものだ。
それなのに、契約など行ってすらいないこの木剣で召喚、いやそれ以前に魔法の行使すら上手くいくかわからない。
そんなもの、魔法を使えるすべてのメイジならば当然知っている常識だ。
そんなこともわからなくなってしまったのかと、周囲から声が聞こえるがそんなものはすぐに思考の端に押しやってしまった。
「私は、心より求め訴えるわ!」
今私が唱えているのは、もともとある召喚の魔法の詠唱とは違う、私のオリジナルだ。
本来ならば既定の呪文でないと発動しないのだが、それでも私は自分の直感を信じて、想いを込めて唱えていく。
……その想いが通じたのか、呪文を唱えていくごとに私の体の中からスゥッと精神力が抜け出て、少しずつ魔法を構築していくのが手に取るようにわかる。
その感覚すら、今まででは掴むことのできなかった感覚。
この木剣を手に取ってから、全てが新しい感覚ばかりだ。
(……これなら、きっと!)
「我が導きに……応えなさい!!!」
最後の一節を唱える。
すると、今度は爆発は起きなかった。
その代わりに、目の前には綺麗な光が溢れてくる。
その光は眩しくて目を覆ってしまいたくなるほど。
それでも、私は決して目を背けなかった。ようやく成功した魔法。ようやく来てくれてた私の使い魔。
その姿をしっかりと目にするまでは。
暫くして光が完全に収まると、そこには一人の男が倒れていた。
「この人が、私の使い魔」
周りからは「平民だ、平民を召喚したぞ!」そういう声が上がるが、私の耳には届いていなかった。
本来の私ならば、「平民を召喚するなどもってのほか、使い魔とするなどただの恥!」そう思っていたかもしれない。
それでも、失敗による偶然の召喚ではない。
しっかりと召喚魔法が発動されて、召喚された私だけの使い魔なのだと、そう実感できる。
「……う、こ、ここは、どこだ?」
倒れていた男が起き上がる。
(……さて、いったいこの人は誰なのかしら)
木剣を手にしてから初めてばかりの感覚のせいか、自分が召喚した人間の、しかも平民かもしれない男のことを知ることが少し楽しみになっていた。
この木剣はなんなんだろうか、私は魔法を使えるようになったのか、この人は誰なのだろうか。
知らなければならないことはいろいろある。
……それでも、全ては後の話だ。
「……ぅ」
今までに限界以上の精神力を消費したためか、ついに意識が朦朧としてきた。
私はその場に、目の前の男に向かって倒れ込んでしまう。
「おわ! き、君!? どうしたんだ!?」
間近だからか、その男の声がよく聞こえるが、私に応えるだけの力は残されていなかった。
その男の温かさか、どこか心地よさを感じながら、私は意識を手放した。
これが、後に虚無(ゼロ)の担い手と言われる木剣使いのメイジと、その使い魔の邂逅の瞬間であった。
〜ちょっとした考察〜
ルイズの魔法について。ルイズはコモン魔法だったら確か成功させたことがあったといっていた気がします。それでも時々爆発は起こしていたようだけど。でも成功させることができたということは、あとは制御の問題ではないのかと考えました。
で、ここで今回登場した木刀は作中でも出ていたようにMショップで購入した魔法道具の一つ。
その名は“魔力制御用木刀”。
まぁ、その名の通り魔力制御に重点を置いた、冥界でもそこそこ固い樹木を使って作られた木刀です。
使用すると、体内で魔力制御を行ってくれる代物で、ちゃんと自分の身で体感できて覚えやすくすることができます。
ルイズが感じた体の中に廻った流れがそれです。
これにより、魔法に必要な術式を本人が望むように構成させやすくし、魔法を発現させることができます。
まぁ、あくまでも魔力制御の術式が組み込まれた、そこそこ固い樹木で作られた木刀でしかないわけで、悪魔の間では練習用でしか使用しないものでしょう。
これ以上に有能な魔法の発動媒体などいくらでもあるでしょうし、また強力な武器だっていくらでもあるでしょうから。
でも、それはあくまで悪魔の間での話です。仮にも悪魔が使うことを想定した木刀。
普通の木刀などよりは圧倒的に硬く、真剣と斬り合っても中々壊れたりしない一品です。
……まぁ、蛇足ですけど。
それで、ルイズの魔法は、虚無の適性からか半ば強制的に魔法の術式の構成が虚無の方面に向かってしまっている感じがしたので、こういう道具を使用してちょっとした制御の矯正をしてみました。
私としては、ゼロ魔の杖の役目は精霊との親和性を高め、精霊の協力を得易くして、精神力という対価を提供して属性魔法を発動させるもののように思えました。
なので、木刀で使うことができる魔法は、あくまでもコモン魔法かルイズの適性でどの精霊の属性にも含まれない虚無魔法くらいなものです。
……以上、私のたぶんいろいろ穴の多いだろう考察でした。
説明 | ||
こんな感じで、時々思い立ったように短編上げていくかもです。 |
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