1話「前兆」
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ハデス・ゲート

 

世界一の軍事大国ドゥル。広大な都市の北にそびえ立つ居城はいつ誰が見ても荘厳なものだった。

 

街は夜でも賑わい中心街は活気に溢れている。

都市内のとある民家にて2階の自室の窓から外を眺める少女の姿あり。

10歳にも満たないだろうその少女はこの国を愛し、そしてこの窓から見える夜景が大好きだった。

今日も窓から夜の居城を眺めていた。城の窓からの明かりがまるで満天星空のように見えるのだ。

「もう夜も遅いわ。早く寝なさい?」

この歳ならばもう寝る時間だろう少女に彼女の若い母親が声をかける。

「ママ!今日もお城がきれいだよ!」

少女は目を輝かせながら母親に振り返った。

「そうね。ドゥルがこんなに美しいのは皇帝陛下とその片腕として働いていらっしゃる皇子様のおかげなのよ」

しばらく一緒に窓から見えるドゥルの居城を眺める親子。次の瞬間、上空に人型をして背中に蝙蝠のような羽が生えたような影が飛び去って行ったのが見えた。

「ママ…今のあれ…何?」

「わからない…何なのかしらね……」

暗い夜空故はっきりとはわからなかったが少女にもその母親の視界にも「それ」は確かに映った。

 

 

数日後、ドゥルより遥か東の大陸にある僧侶国家リーラ。その更に東に魔術師の名門ルーヴル家のある町がある。周辺は緑に囲まれた田舎町だ。その中心に立つ屋敷がこの町の名前の由来となった「ルーヴル家」である。

「ドゥルが戦争を……?」

屋敷の2階、当主である茶髪で顎鬚を生やした初老の男性、コンラッド・ルーヴルはその日の朝刊を眉間に皺を寄せながら読んでいた。

「ええ。それと関係があるかどうかは定かではありませんが…世界各地で魔物が普段より凶暴化しているそうですわ」

コンラッドの傍らで上品な口調で話すのは彼の1人娘、レイナ・ルーヴルである。マルーンレッドの髪と美しい顔立ちが特徴の女性だ。

「ルーヴル周辺の魔物もか?町民に被害は?」

「いえ、町の外に出ない限りは問題はないようです」

「そうか……」

少しだけ胸を撫で下ろすコンラッド。とはいえ完全に安心はできないようだ。しかしそれに追い討ちをかけるように次に問題はやって来る。

「旦那様!大変です!!」

「どうした?」

血相を変えながら部屋に入って来るのはこの家の年老いた執事だった。

「リーラ山洞で落盤が起こってしまいリーラとの行き来ができない状態に……」

「え!?」

驚きながら顔を見合わせるコンラッドとレイナ。

「何という事だ…近々レイナの見合いがあるというのに……」

コンラッドは目頭を押さえながらため息をついた。レイナには互いの親同士が決めた婚約者がいるのだ。相手はリーラ王国の王子なのだが近日予定されている見合いが初対面となる。

「お父様……」

「仕方ない。ガイに頼むとしよう。レイナ、呼んで来てくれ」

「はい」

レイナはそっと一礼すると静かに部屋を出た。

 

屋敷の外。

切り株に丸太を乗せてそれを斧で真っ二つにかち割っている…薪割りをしている青年の姿あり。青く長い髪をおさげに結び、タレ目と人相の悪さが特徴の彼の隣には自身が割った薪が乱雑に積み

重なっていた。ズボラな性格がにじみ出ている積み重ね方だ。

「ガイ〜!」

屋敷の窓から顔を覗かせるのは先ほど父の部屋から出て来たレイナだった。彼女の呼ぶ「ガイ」とはこの青年の事である。

「お嬢様…どうしたんすかそんな所から?」

砕けた敬語で返事をするガイ。やはりズボラな性格のようだ。

「何から突っ込めばいいのかしら…とにかく、2人きりの時は『お嬢様』なんて他人行儀な呼び方はやめてって言ったわよね?」

目を閉じながら眉間に皺を寄せ不機嫌に不満を述べるレイナ。二人は令嬢とその家のお抱え剣士という主従の関係ではあるが歳が近く、また10年以上は共にこの屋敷で暮らしているためかそれ以上

の関係にまで進展があるようだ。決して恋人同士というわけではないが。

ガイは何かを警戒するように周囲を見回し誰もいない事を確認した。

「いや、一応外だしよ…誰かが見てたらコトだぜ?お前は見合いを控えてんだからここで変な誤解でもされようもんなら…」

「わかってるわ。でもそういうふうに居られるのも、もう長くないじゃない…」

「ん?」

レイナの声が小さかったためか、はっきりとガイの耳には入らず再度聞き返す。

「何でもないわ。それよりお父様が呼んでるの」

「旦那様が?」

「リーラ山洞で落盤が起こったそうよ」

「こりゃまた…」

若干うんざり気味に驚くガイ。

「最近周辺の魔物も更に凶暴になってきてるしドゥルも戦争を始めたって言うし何かと物騒よね」

「でもよ、確かドゥルの皇帝って温厚な人物って聞いた事あるぞ?」

「聞いただけでしょう?それに戦争を始めたのは皇子の方みたいよ」

「へぇ…」

ガイが他人事のように頷く。そもそもドゥルはここからは遥か遠くの大国、ルーヴルに住む彼らにはあまり実感のない話なのだ。

「とりあえず旦那様の所に行って来るわ」

ガイは首に巻いている手ぬぐいで顔の汗を拭うと屋敷のドアへと足を運んだ。

 

「旦那様〜入りますよ〜」

屋敷内2階、コンラッドの部屋の前。ここでもガイはかしこまる事はなく割と気軽にノックをする。

「ああ、入ってくれ」

コンラッドもまたそれを気にする様子ではなくガイを気軽に促す。家の当主とお抱え剣士というよりは親子にも近い間柄のようだ。

「話はお嬢様から聞いてますよ。リーラ山洞の落盤を何とかして通れるようにして来ればいいんですよね?」

「ああ、そういう事だ。あの山洞の魔物なら慣れているとは思うが最近は凶暴化している種も多い、油断だけはするんじゃないぞ」

「わかりましたよ」

ガイはコンラッドに軽く一礼をし部屋を出た。乱雑に散らかっている自室に戻り装備を整える。

一通りの準備が済み、部屋を出るとそこにはレイナの姿があった。

「私も行くと言ったらお父様に猛反対されたの」

残念そうにため息をつくレイナ。

「そりゃそうでしょうよ。リーラの王子との見合いを控えてんですから」

「わかってるわよ。いつもの買い出しとは違う事くらい…」

そう、ガイはよくコンラッドにここより南にある『自然国マルク』に買い出しを頼まれるのだがそれにいつもレイナが無理矢理ついて行ってはコンラッドに心配されているのだ。それでも多少は

目をつぶってもらってはいたが今回ばかりはガイも一緒に連れて行く事はできないと判断した。

「まぁ油断さえしなきゃ大丈夫ですよ」

「…そうね。気をつけてね」

ガイは心配するレイナにVサインして外へと出て行った。

 

町の入口は何か騒がしかった。人だかりができていて遠目からは何があったのか確認する事ができない。ガイは人だかりまで走り寄る。

「何があったんだ?」

そして1番外側にいる若い女性に声をかけた。

「ガイくん…大変なの!」

「?」

首を傾げながら人だかりの中へ入って行くと、その中心に血まみれになっている中年男性の姿が見えた。胸部を3箇所、鋭利な刃物で切りつけられたような傷である。

「おい、オッサン…!!」

男性に意識はない。

「今すぐ神父様を!」

「コンラッド町長に報告を!」

取り乱す町民達。

 

男性は教会へ運ばれ、治癒魔法が使える初老の神父によって一命を取り留めたが周囲の人々の不安が消える事はなかった。

やがて教会にコンラッドとレイナが姿を現す。

「旦那様!お嬢様!!」

2人に気づいたガイは彼らの前まで歩み寄った。

「話は聞いた。これは一体どういう事なんだ?」

コンラッドが問うと、ガイは少々困った表情を見せる。

「実は誰もわからないんですよ…ただ、あの傷からしてこの辺にいる魔物の仕業とも考えにくいんですよねぇ…」

そしてコンラッドとレイナに男性の傷の具合を説明した。

「南の森の方に入ったんじゃないかしら。あそこに生息するサソリなら…」

「いや、どうもそうじゃないみたいですよ。奥さんによると西側の森に近い草原で狩りをしてたらしいっすからね」

「何ですって…!?」

驚きながら眉間に皺を寄せるレイナ。

「確かあの周辺に出る魔物はスライムや蝙蝠くらいでしょう?そんな大きな傷がつけられるような魔物はいない筈よ」

「だが現にそういう被害が出ている。どうしたものか…」

手を顎にあてながら考え込むコンラッドだが。

「ついでにそいつが出たら退治しときますよ」

そう言うガイの表情には多少の緊張の色が宿っていた。

「そうだな…だが、決して無茶をするんじゃないぞ」

「了解です」

レイナは町の外へと出て行くガイの後ろ姿を心配しながら眺めていた。

 

町の外にはいつもと何ら変わらない草原が広がっていた。目的地は西にあるリーラ山洞。謎の傷を負った男性はこの通り道で被害に遭ったのだと人々には予測されている。

「あれだけの傷だ。大型の魔物…いや、人間かもしれねぇな」

ガイはあらゆる可能性を考えながら西へと進み、洞窟の入口までたどり着いた。ここまでに小型の

スライムや蝙蝠などは出現したが被害に遭った男性を襲ったと思われるものに出くわす事はなかった。

山洞の中は薄暗いが所々に光を取り入れられる隙間があるため日中は松明などの照明がなくても問題はない。

そして…

「おわっ!!!」

突如、前方から飛んでくる火の球。ガイはそれをすんでのところで横に避け、火の球は壁にぶち当たり爆発を起こした。

「スプライトか!!!」

火の球が飛んできた方向に少女の姿あり。しかしそれはただの少女ではなかった。30cm程度の身長と、背中には蝶のような羽が生えている。炎の魔法を使う妖精型の魔物「スプライト」だ。

この種はリーラ山洞とルーヴルの町周辺に生息していて、獲物をその魔法で焼いてはその肉を食らっている、知性のある魔物なのだ。

「へ、ガキの頃はビビって逃げ回る事しかできなかったけどなぁ!」

ガイは背中にかけていた剣を抜きスプライトめがけて走り出す。その途中で飛んでくる火の球をよけながらスプライトの眼前に迫り

「うおおおおっ!!!」

スプライトの身体を切りつける。スプライトは甲高い声を上げて切られた傷口から発光し消滅した。

「ここまではいつも通りだな…」

ガイは更に山洞の奥へと進んで行く。そしていつも通る開けた場所があるのだが、今は無数の岩が邪魔をしていて通る事ができない。

「なるほど…これが旦那様やレイナの言ってた…」

この場所が落盤した場所で間違いないとガイは判断した。

小さな岩は持ってどかせ、大きな岩は剣で小さく砕いてから横へよけて道を作って行く。

とりあえず人が1人通れる道さえできれば問題は解決する。

「ふぅ、ふぅ…こりゃあとんでもねぇ力仕事だ…でもま、これで大丈夫だろ…」

岩を避けてぎりぎり通れる道を作り上げた事ですっかり疲れきったガイはその場に座り込む。

「ははは…俺は大丈夫じゃねぇ…のかな」

そしてがっくりと項垂れため息をつく。この作業はレイナが見合い相手の所に行くための道を確保するためのもの。

「そりゃ…身分違いだって事はわかってたけどよ…」

 

もう今から12年前の話になる。ガイはルーヴル家のお抱え剣士として仕えていたがそれ以前の記憶はない。自分はどうしてここにいるのか、家族の事も何一つ憶えてはいなかった。唯一憶えていた

のは自分が『ガイ』という名前である事だけ。

当主であるコンラッドによると自分は1人の女性にここに連れて来られたらしい。その理由を彼女に聞こうとしたがその女性は答える事なく町を出て行ったというのだ。ルーヴルの家や町の人々は

自分に優しかったが心のどこかで自分の記憶がない不安があった。その時に当時6歳だったレイナが自分にかけてくれた言葉がある。

「だいじょうぶよ。記憶がもどってもガイはガイだもん。わたしはいつでもガイの味方よ」

不安をかき消してくれた言葉。例え自分が何者かわかったとしてもレイナさえ自分の味方でいてくれるなら…。

そしてガイ自身も誓いを立てる。どんな事があってもレイナだけは守る、例え自分が死ぬ事になったとしても、と。

彼女がこの当時から守られるばかりのお姫様で居る事を嫌っているのが難点だが。

 

そんな想いを胸に秘めたまま12年の歳月が流れる。これが恋というものだと気付くのに時間はかからなかった。しかし単なるお抱え剣士の上に孤児である自分と魔術師名門家の令嬢であるレイナ

とでは身分に差がありすぎるためそんな感情を抱く事さえ許されない。

「リーラのジェリーダ王子か…あんまいい噂は聞かねぇしなぁ…」

ガイの心配はもう一つあった。それはレイナの結婚相手の事である。僧侶国家の王子でありながらその自覚はまるでなく、わがままで自己中心的な悪戯小僧と町の人々が噂をしていたのを聞いた事があるのだ。レイナもまた理不尽な事を嫌う性格で正義感が強いのでとても気が合うようには思えない。

ガイが更に深いため息をついていると、できた細い道の奥からバサバサと何かが羽ばたく音が聞こえてきた。それは次第に大きくなり、こちらに向かって来ている事がわかる。

「蝙蝠か…?それにしちゃあ音がデカ……」

ガイは立ち上がり、そう言いかけて目を大きく見開いた。その視線の先にいるのは見た事もない種の魔物…いや、魔物なのかもわからない生物だった。目は赤く光り全身は黒く蝙蝠のような羽が生えている人型の生物。

「な…何だこりゃあ…」

唖然とそれを見つめるガイ。しかしすぐに男性を襲ったのがこの魔物(としておこう)だと判断できた。魔物の手の爪は刃物のように長く鋭く、しかも血らしき赤い液体が付着しているのだ。

おそらくそれは被害に遭った男性の血と見て間違いないだろう、ガイはそう予測した。

キキキキキ!!!!

次の瞬間、魔物は目にも止まらぬ速さでガイに突進して来る。

「くそっ!!」

ガイは魔物が長く鋭い爪を振り上げた瞬間、それを間一髪で横に避けて直撃を免れるが…

「…!!」

右頬に鋭い痛みとその痛む箇所から血が流れる。

「ってぇなこらっ!!!」

素早く剣を抜き魔物に向かって斬りつけようとするも、その背中に生えている羽で上へと飛ばれてしまった。

「くそ…開けた場所じゃ上に逃げられるか…こんな時はレイナから授かった最も基本的な作戦を使うしかねぇ!!!」

突如魔物から背を向けて逃げ出すガイとバサバサと飛びながら追いかけて来る魔物。両者の距離は次第に縮まっていく。

「へへ、そろそろ頃合かな」

人1人が通れる程度に狭い道へとたどり着いた瞬間、ガイは地面を蹴って振り返り魔物の左胸めがけて剣を突き刺した。逃げ場を失った魔物は金切り声のような断末魔と共に地に倒れ、蒸発するように黒い煙を出して消滅した。

「ふぅ…勝ったがコイツは一体何者なんだ…?」

魔物が消えてしまった今、それを確かめる術はない。そんな今何を考えても仕方ないと判断したガイはとりあえず町へ帰る事にした。

 

ルーヴルの町に戻る頃、空はオレンジ色に染まっていた。買い物帰りの主婦や農作業を終えた農夫達の姿が多い。

「おお、ガイくんお帰り」

農夫の1人がこちらに気づき爽やかな笑顔と共に歩み寄る。

「ああ…」

「怪我してるじゃないか!大丈夫かい!?」

農夫がガイの頬の傷を見て心配そうな顔をする。

「このくらい何ともねぇよ。それよか…」

ぐきゅるるる〜。

その先を言おうとするガイだったが、代わりに彼の腹が答えてくれたようだ。

「まぁ、そういう事だ!」

「まぁそのくらい元気なら大丈夫そうだね。よかったらこれ、どうだい?」

農夫は背負っている籠を地面に置いた。中にはたくさんの種類の野菜が詰め込まれている。その

中から大きく真っ赤なトマトを取り出しガイに差し出した。

「お、いいねぇ。じゃあもらおうかな」

ガイは嬉々としながらそのトマトを受け取った。

「それじゃあ、気をつけて帰るんだよ」

「ガキ扱いしないでくれよ…」

苦笑しながら農夫の男性を見送り、ガイは貰ったトマトをかじりながら帰路のついた。

「お、中々美味い」

 

ルーヴル家の屋敷でガイはコンラッドとレイナに無事落盤をよけた事と黒い魔物の事を報告した。

「まぁ、それが魔物なのかも不明ですけどね」

「黒い人型の魔物か…私も聞いた事がないな…」

眉間に皺を寄せて難しい顔をするコンラッドだが結局それが何者なのか、そしてその魔物の出現が一体何を意味するのか、答えが出る事はなかった。

「それは後日調べておく事にしよう。明日はレイナの見合いの日だ、今日はもう休みなさい」

「はい」

夕食を済ませ、風呂で疲れを取ったガイがバスローブ姿で自室のベッドにその身体を預ける。

翌日はレイナの護衛のため一緒にリーラ城へ行く事になっていたのだ。届かぬ想い、王子の評判の悪さ、そんな事を考えながら次第にうとうとと睡魔が襲って来るが…

「ピアノ…?」

部屋の外からピアノの音が聞こえて来る。静かで安らぐ雰囲気の曲だった。ガイは部屋を出て二つ隣のピアノ室のドアを開いた。

そこにピアノを弾いているレイナの姿がある。表情はどこか寂しそうにさえ見えた。

「お前…何やってんだ?」

ガイに声をかけられ、手を止めて振り返るレイナ。

「あら、ごめんなさい。起こしちゃったかしら?」

「いや…起きてたけど」

「そう。ならよかった…」

その後暫しの沈黙。レイナの表情はやはり寂しそうだった。それを見逃さなかったガイが口を開く。

「なぁ…お前はそれでいいのか?」

「何の話かしら?」

レイナはガイから目を逸らし、自らの目を伏せた。

「決まってんだろ…明日の見合いの話だよ。そりゃお前が旦那様を心から尊敬してるのはわかってるよ…。だからって親同士が決めた相手との結婚なんて…」

ガイはバツの悪そうな表情で俯く。

「…守るためよ」

「守るため…?」

「ええ。僧侶のリーラ王家は戦う力を持たない。そこで魔術師の私達ルーヴル家の力が必要になるとリーラのモーリス王がお考えなのよ。王とお父様とは旧友でもあるから話は早かった。この結婚で国を…この町の人たちや貴方を守れるのなら私は本望よ」

レイナは振り返り、決意の表情を見せた。強く美しいワインレッドの瞳にガイの姿が映る。

「レイナ…」

「さ、もう寝ましょう。明日はリーラへの護衛、頼りにしてるわよ」

「あ、ああ…」

結局、ガイは言葉を失い自室へと戻って行った。あれだけの覚悟の眼差しを前に返す言葉がなくなってしまったのだ。そして心配していた事がレイナへの心配ではなく自分の都合しか考えていな

かった事に気づき自己嫌悪に陥る。

「何やってんだか俺は…」

はぁ〜…と深いため息をつき、ベッドに潜り込んだ。

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オリジナルファンタジー小説です。
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