艦隊 真・恋姫無双 88話目
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【 援軍 の件 】

 

?  司隷 洛陽 郊外の原野 にて  ?

 

白波賊は、初めこそ………五十名ほどの少人数。

 

だが、北郷達との開戦後、闇の中より現れる賊達が、頭目達の側に集合し急速に人数を増大、 大軍勢と化して攻め寄せる。

 

対して───諸侯率いる兵数は………千を越える。

 

だが、策に従事する者を抜かして考えれば、直接争う者だけで約六百名と……以外に少ない。

 

理由としては、王允の目を眩ますため、少人数の夜間演習、もしくは洛外の警備と称して洛陽から出て来た結果。 後は、この戦術の投入人数の限界。 あまり……多数を突撃させても、動きが鈍くなるし費用も馬鹿にならない。

 

そんな制約に縛られなながらも、諸侯の連合軍は動いたのだ。

 

結果───兵数では白波賊の優勢……しかし、戦術的に連合軍側が優勢。

 

 

白波賊、現在の兵数──凡そ千名

 

華琳、雪連率いる兵数──六百名

 

これが、現在……激突している兵数の内訳である。

 

★☆☆

 

春蘭「でえぇりゃあああ──っ!!」

 

韓暹「力なら負けんっ! ───いざっ!!」

 

ーー

 

李楽「 コジキ曰く『調子に乗ってる者ほど、 足下を引っ掛け易い』……お前のような者を……指す言葉だ………ゴホッ!」

 

左慈「お前の言い方は、俺の知っている奴と同じでウザいんだよ。 取り合えず……壊れてしまえっ!!」

 

ーー

 

胡才「………殺すには、少し惜しい姉ちゃんだ……。 どうだ? 今なら……俺の履物を舐めるだけで、命は助けてやる! 命だけは……なぁ?」

 

雪蓮「へぇ〜? たった今、この江東の虎の尾を踏んだって事、まだ分からない?  だったらねぇ……私を怒らせた事、死んでから後悔なさいっ!!」

 

★★☆

 

華琳「我が軍が、日頃厳しい訓練を課しているは、何のためだ!? 大事な者を、愛する者を護りきる為!  これきしの敵に押し切られる事は許されない! 皆、必ず勝利し──護る者達に、その誇り高き顔を見せよ!!」

 

曹兵「「「  おぉおおお────っ! 」」」

 

――

 

秋蘭「──華琳様! 敵右後方より、更に数百の援軍が加わりました!」

 

華琳「これ以上攻められると……流石に備えが崩れるわね。 秋蘭、我が方の援軍は……まだ来ないの?  桂花の志に従う者達が、後詰めで訪れると聞いているのだけど───」

 

秋蘭「少し離れた先に見える物は、漆黒の闇以外ございません! 華琳様、桂花の言っていた援軍……本当に来るんでしょうか? もしかしたら、我らを亡き者にする策なのでは…………」

 

華琳「ふふ……確かにね。  孫伯符、馬孟起と……名のある諸侯が、私と何も伝が無いのに関わらず、協力関係を行うなどあり得ない。 それは、桂花と何らかの利害関係で結ばれている……と考えが浮かぶわ!」

 

秋蘭「───ではっ!?」

 

華琳「だけど……それだけよ? 桂花を最初に御限り、誅殺しようとしたのは私、この曹孟徳。 桂花の進言にも耳を貸さず、自分の矮小な矜持の為に『今子房』を危うく失うところだった……愚昧な君主よ!」

 

秋蘭「そんな訳は───」

 

華琳「現実を見なさい、秋蘭!  桂花は、一度疑った私を許し、再度忠誠を誓ってくれた。 ならば、私は──桂花を信じるのみ! それが、天命!!」

 

秋蘭「────!」

 

華琳「秋蘭、貴女が心配してくれるのは……嬉しいわ。 だけどね……私にも夢があり、希望があり、野望がある! 覇王を目指すのであれば──臣下を信じて天命を迎え、それでも前に進む! それこそ、桂花の忠義に返せる礼なのよ!」

 

秋蘭「華琳様…………」

 

華琳「…………それにね、春蘭が……桂花との騒動を知って、私の部屋に、血相を変え飛び込んで言うのよ?  『華琳様、桂花ほどの忠臣を殺害しようなど、何を考えていらっしゃいますかぁっっ!!』って。  あの……春蘭がねぇ?」

 

秋蘭「あ、姉者ぁ…………」

 

華琳「長話してしまったわ………大丈夫、必ず来るわ! それまで、必ず耐えて見せる!  でなきゃ……桂花に顔向け出来ないわよ。 それに、今やりあってる春蘭や左慈!  私を信じてくれる季衣、流琉、兵士達にも!!」

 

秋蘭「───分かりました。 此方も、全力を尽くしますが………」

 

華琳「それだけで充分よ! 頼むわね、秋蘭!」

 

秋蘭「─────はっ!」

 

★★★

 

冥琳「曹操軍の方が、些か押され気味だな。 ───穏よ、董卓軍を案内しに行った思春は、まだ向かって来ないのか!? 」

 

穏「そうですね〜? もう、そろそろ来てくれる筈なんですが〜?」

 

冥琳「早く来てくれなければ、曹操軍の備えが崩れてしまう! そう言えば、雪連は何をやって───何ぃ? 敵大将と思われる者と対峙中だと!? この忙しい時に手間を掛けさせる───」

 

穏「冥琳さまぁ〜!! 思春ちゃんが来ましたぁ!!」

 

冥琳「───来たかっ! 待っていたぞ、思春! 董卓軍の動きは───」

 

思春「はっ、直ぐに合流されます! で、ですが…………」

 

冥琳「どうした? 何か───問題事でも、あったのか?」

 

穏「め、冥琳様〜! 董卓軍が到着しましたよ〜!!」

 

冥琳「─────!?」

 

 

◆◇◆

 

【 もう一人の一刀 の件 】

 

?  洛陽 郊外の原野 にて ?

 

突如──闇より現れしは、飛龍偃月刀を振りかざし、大声で叫ぶ将!

 

ーー

 

霞「うひゃあぁあああ───っ! 敵さん、ぎょーさんおるやんかぁ! 賈駆っち──コイツらの相手、ウチ……ほんと相手していいんかっ!?」

 

詠「相手しても良いけど──アンタの役目は、そこに居る『北郷一刀』の護衛も含んでいるだからねぇ! そこんとこ──分かってるのぉっ!?」

 

霞「よお──分かっとる、分かっとるぅ! だから、この『ネェーちゃん』の傍に、恋を残しとんよ! さぁあああ──っ! 行くでぇえええ! お前ら、何時もとちゃう歩兵やけど、ウチの神速の動き──付いてきいっ!!」

 

董兵「「「────はいっ!」」」

 

――

 

港湾棲姫「ワ、ワタシハ……北郷……一刀! 天ノ御遣イ………」

 

恋「……………コクッ!」

 

ねね「こぉらぁあああっ! 子供は、こんな危ないとこに居ちゃ駄目と、何度も言わせるなぁですかぁ!!」

 

北方棲姫「───帰レェエエエッッ!!」

 

――

 

港湾棲姫「ダ、ダメ………危ナイ………!」

 

北方棲姫「ホッポ……悪ク無イ!  悪イノ………コイツ!」

 

恋「ねね…………めっ!」

 

ねね「れ、恋殿ぉおおおっ!!」

 

――

 

闇夜の中より、『神速の用兵』の二つ名で通る『張文遠』(真名 霞)が、董卓軍兵士三百名を率いて、空いてる白波賊の横っ腹に突っ込んで行く!

 

その背後には、困った顔で名乗りを挙げつつ、二人の様子にオロオロしている『北郷一刀(港湾棲姫)』、その名乗りを聞き、顔が少し笑顔になる恋。

 

恋達の下で争うは、恋専属軍師の陳公台(真名 音音音)と北方棲姫である。

 

『水影三伏の計』の最後の伏兵は、この者達であった。

 

ーー

 

白蓮「一応、私も居るんだよ……地味に辺りの警戒という任務なんだかな……」

 

月「白蓮さん、ありがとうございます!」

 

白蓮「うぅぅぅ………月だけだよ。 私の苦労を労ってくれるのは………」

 

詠「白蓮………アンタだけなの? あのキモい奴は、どっか行ったわけ?」

 

白蓮「あ、ああ……貂蝉も、さっきまで居てくれたんだが……急に姿が見えなくなって……な。 近くに居た兵士に『やる事ができたから、よろしくねぇん!』って言い残して…………」

 

華雄「──失礼する。 月様……この方は?」

 

月「あ、この方は………」

 

白蓮「──幽州太守、公孫伯珪。 姓は公孫、名は賛、字は伯珪だ。 よろしく頼むよ、華雄」

 

華雄「…………何故、私の名をご存知なのか?」

 

白蓮「董卓軍でも、名が知られている名将だから当然。 大陸の北端である幽州まで知られているんだぞ? 私なんか……『白馬長史』と異民族には有名な二つ名があるのに………なんで此処だと『普通』が二つ名になるんだよぉ!!」

 

華雄「ふっ……………月様が信用なされる将だけはある。 私の名は知っての通り華雄だ。 此方こそ、よろしく頼む!」

 

白蓮「ちょっと待てぇ──今の会話だけで、私の何が分かるんだっ!?」

 

ーー

 

そして、更に後方には………董卓軍君主『董仲穎(真名 月)』、軍師『賈文和(真名 詠)』、そして護衛で華雄が従う。

 

同時に、その近辺を警戒する………公孫伯珪(真名 白蓮)率いる三千あまりの軍勢で辺りを警戒している。

 

これで、闇夜に紛れて援軍を送り補強する、白波賊の増援策は途絶えた。

 

――

 

月「詠ちゃん………陛下から頼まれたけど、これでいいのかな?」

 

詠「ボク達に、断る理由も術も無いから仕方ないわよ。 それに、どうせ手伝ってくれるなら……此方に有利になるように動いて貰った方がいいわ!」

 

月「だけど……伏兵の隊長をお願いするなんて。 もし、怪我でもしたら……あの方が大変だし、御主人様が哀しむよ………?」

 

詠「………しょうがないわよ。 どうしても、アイツの役に立ちたいって、涙目で迫られたら断りきれないじゃない! それにね……あの子の所には、恋が護ってくれてるわ。 兵の指揮は霞に任せてあるし、近寄らなければ大丈夫よ!」

 

華雄「…………しかし、適所適材ではないのか?  霞は出番が無くてウズウズしていたし、恋は肝心な場所で役に立てばいいから傍に居て貰う。 そして、月様と詠の護衛に、残りの私を配置。 ははは……完璧過ぎて、涙が出てくるな………」

 

月「か、華雄さんは、余り者なんかじゃありません! 私の……信頼できる臣下の一人です!」

 

華雄「─────勿体なき御言葉。 ですが………私如き………」

 

詠「───華雄って、自分の評価を軽く見てるわね? 霞は専攻、恋は中間、華雄……アンタは専守にあってるのよ!」

 

華雄「だ、だが………昔、私は孫堅の挑発に乗り、守備する砦を出て敗北、奪取された将たぞ?  そんな将が、何故……重要視されるのだ!?」

 

詠「アンタが挑発に乗ったのは、董家を馬鹿にされた事でしょ?  守備を最後まで行える将は、武力や智略に秀でるだけじゃ駄目なの。 最後の最後になっても、忠義を貫く忠誠心──これが無ければ、堅固の砦だって直ぐに落ちるわよ!」

 

月「華雄さん───そんな悲しい事を言わないで下さい! どうか、これまで通り……私や詠ちゃんを護って下さい!」

 

華雄「月様…………………心得ました。 この華雄、身命尽きるまで……お守りさせて頂きます!  そこに居る『ツンツン軍師』も合わせて!」

 

詠「だからぁ──その変な二つ名、いい加減に止めなさいよぉ!!」

 

―――――

―――――

 

冥琳が加味させた『水影三伏の計』……北郷一刀の代理になる者が、伏兵となり三方向を攻める策。 曹操軍からは左慈、孫策側からは于吉、そして……もう一方を担う筈だったのが───『貂蝉』だった。

 

ところが……慌ただしい出陣前の月に駆け寄る人物が一人、劉辯皇帝の妹『劉協』が皇帝からの勅使となり申し出る。

 

ーーー

 

《 司隷 洛陽 都城内 》

 

劉協『───と、董仲穎………待ちなさいぃぃっ!』

 

月『えっ…………劉協皇女様………!?』 

 

劉協『ハァ、ハァ、ハァァァ……やっと見つけた! もうぅぅ……何処に居るのか一緒懸命捜したんだからぁ! 姉上……じゃない、陛下からの勅命が発せられたわ! 董仲穎に用があるの───直ぐに来なさい!』

 

月『は、はいっ!!』

 

ーー

ーー

 

《 都城内 とある部屋 にて 》

 

劉協『この部屋に入って……』

 

月『あ、あの………へ、陛下は………どこに?』

 

劉協『陛下は、私に……この用件を一任して、今は政務を行っているわ。 だから、私の話が陛下の勅命よ。 ここなら、邪魔者も誰も居ないし、大丈夫だわね。 いいこと、陛下はね───』

 

月『も、申し訳ありません! だ、だけど………私達は……な、何も……恥じる事など───』

 

劉協『何をそんなに怯えているの? 心配しなくても……貴女達が何をやろうとしているかは──知ってるつもりよ! 天の御遣い……北郷一刀様を助けるつもりなんでしょう?』

 

月『──────!』

 

劉協『……陛下は、御遣い様を助ける事、賛同されていらっしゃるわ。 ただ、表だっての味方が出来ないの。 王允の目が光っているから………』

 

月『………………そ、そうですか』 

 

劉協『───だから、陛下は貴女に頼みたいの。 この部屋の隅に居る……かの者を、董仲穎達と共に、従軍させて貰いたいと仰せなのよ!』

 

月『えっ………だ、誰を───へうぅぅぅぅっ!?』

 

ーー

 

月が驚き、劉協に言葉を掛けようとすると──その後ろで、しゃがみながら巨大な鉤爪で顔を覆い、北方棲姫に慰められている──『港湾棲姫』が居た。

 

ーー

 

港湾棲姫『一刀………置イテ……行ッタ。 待ッテタ……待ッテタノニ………!』

 

北方棲姫『アイツ……心配………シテタ。 今度………危険…………ダッテ』

 

港湾棲姫『何モ………何モ……解カッテイナイ……! 大事ニ思ウコト………人モ……艦娘モ……深海棲艦モ………同ジ……!!』

 

ーー

 

月『……………… 』

 

劉協『実は……先程、残された者より報告があって、御遣い様が討伐に出掛けたと報告があったの。 そうしたら……それを知ったホッポの姉上が…………』

 

ーー

 

泣き出して、この部屋に籠ってしまったという話を、劉協が説明した。

 

後に北方棲姫が部屋に入り込み、慰めながら問い質すと『一刀のところに連れって欲しい』と哀願する。 

 

北方棲姫は、それを聞き──劉辯姉妹に話をした。

 

劉辯も劉協も、一刀達の話を聞き及んでいたし、友人である北方棲姫の姉なら、力になりたいと考えるのだが──皇帝ゆえに束縛が多く、王允の監視もあり動く事がかなわない。 

 

しかし、そのままにする事もいかず、どうしたものかと思案した時に、劉辯が………とある人物の言葉を思い出す。

 

『一刀は……私が救いだすから……安心して見てなさい。 私が必ず………』 

 

その人物が計画した事が、確か……実行されるは───今夜!

 

劉辯は、劉協に勅命を書き上げて託し、最後に出発予定である董卓軍の長、月を捜して、城内を駆け巡っていたのだ。

 

ーー

 

港湾棲姫『カ………一刀………カズト……カズトォォォ………』

 

北方棲姫『ヨシ………ヨシ………』

 

ーー

 

そんな経緯を聞けば………黙って見過ごす月では無い。

 

些か、気持ちにモヤモヤはあるが………泣かれている港湾棲姫を見ていると、捨てられた子犬を見ているようで、抱き締めたくなる。

 

だから───応じた。

 

ーー

 

月『……………わ、わかりました! 董仲穎──確かに引き受けさせて頂きます!』

 

港湾棲姫『────!』ガバッ!

 

北方棲姫『────ッ!?』ヨタヨタ

 

劉協『そう、それなら──陛下も喜ばれる! 勿論、私も! ありがとう、董仲穎!』

 

月『しかし、劉協皇女! かの場所は……あまりに危険ですよ! 万が一………お護り出来ない可能性も───』

 

港湾棲姫『ア、アリガト………アリガト!!』ガバッ

 

月『うっぷ! く、苦し────』ムギュ!

 

ーー

 

この月の懸念に、劉協は………苦笑いを浮かべる。

 

『ホッポの姉上を甘く見ない方がいいわよ。 この方も、天の御遣いの一人なのだから。 だって──何度、その抱擁で、窒息しそうになった事か………』と宣わった。

 

―――――

―――――

 

《 洛陽 郊外の原野  にて 》

 

月「ふぅ………………詠ちゃん、どう思う?」

 

詠「えっ? 陛下が私達の行動を知ってる事? う〜ん……考えられるのは、誰かが直接陛下に教えた……としか言えないわ。 陛下の周りに王允の配下が動き回っているから、露顕すれば……すぐに私達は捕らえられているわよ!」

 

月「そうじゃなくてぇ…………今の御主人様の好み、胸の大きい女の人に比重を移しているみたい。 だって……あの方のお胸………私の顔が埋まる程あるんだよ。 これって………どういう事なんだろうね………」 

 

詠「ゆ、月───?」

 

月「………………詠ちゃんは良いよねぇ………私よりも大きいから………」

 

詠「ちょ、ちょと、月ぇぇぇ────!?!?」

 

 

◆◇◆

 

【 桂花の祈り の件 】

 

桂花が、猫耳頭巾を頭から外し……戦場を眺める。

 

闇夜の中で聞こえてくる怒声、悲鳴、剣戟の衝突音。

 

先程まで、白波賊を攻めていた二つの軍勢に、急に現れた軍勢が加勢して、三巴になり攻め立てる。 つい先程まで、劣勢の状況を見せていた曹操、孫策軍が息を吹き返し、白波賊を更に攻撃を開始する。

 

桂花や季衣、流琉の軍勢が照らす光も……今まで残っていた材木が少なくなり、先程よりも明りの濃さが薄れている様子。

 

あれから一刻(約二時間)程も過ぎたのだ。

 

これ以上は、照射を行うのは困難になる。  そうなれば、また辺りは暗闇となり、今よりも更に不利な状態で、白波賊に対峙する事になるだろう。

 

桂花「……一刀…………」

 

口から呟くのは……時の大河に阻まれつも、やっと逢えた愛しき男の名。

 

桂花「貴方は………別の一刀だって……前に言っていたわね。 北郷一刀と別の一刀だと。 だけど、私には判るの……貴方が、私達の愛した北郷一刀だっていう事が。 だって……全部が全部……あの頃の一刀と同じ、心さえも!」

 

炎に因る上昇気流が起こり、桂花の顔を強く風が撫でる。 髪が横に流れ、桂花は髪を押えつつ、前方を眺めた。

 

桂花「貴方は……どんな不利な戦でも、皆を救うために動いたわね。 天の知識を惜しげなく授け、自らの命を省みず………妥協をせずに目指した。 でもね……今度も、生きて帰って。 私を……また失望の闇の中に戻さないで!」

 

そして……桂花は、目を閉じ指を組んで、あたかも祈るような姿勢を取り前方を向いた。 

 

周りの焔は、桂花の想いを知ってか知らずか──奇妙な動きを見せながら、銅鏡に映る桂花の美しき横顔を、明々と照らし出していた。

 

 

◆◇◆

 

【 新たな敵影 の件 】

 

───これで、包囲網が完成できた。

 

三方を封じ込められ、援軍を絶たれた白波賊の士気は下がる。

 

曹操軍からの整然としながら、連携から繰り出される攻撃!

 

孫策軍の勇猛果敢、されど的確に弱き場所を攻める臨機応変な戦い!

 

董卓軍より迅速果敢、強烈な突貫で相手を蹂躙する激しい戦闘!

 

ただ闇雲に人を襲い、奪い、殺してきた賊達には出来ない動きに、白波賊は徐々に数を減らす。

 

それに、この戦いを指揮する筈の頭目達も……各軍の猛将達の相手に押し込まれている!

 

ーー

 

雪蓮「──どうしたの? 口では大きな事を叩けたようだけど………全然、私に掠りもしないじゃない。 口先だけの腕だけのようね?」

 

胡才「───この女っ! 貴様は絶対に殺すっ! 泣き叫ぶ死に様にしてやるっっっ!!」

 

ーー

 

春蘭「ふふん………もう終わりか?」

 

韓暹「まだだ………まだぁやれるぞぉー!」

 

春蘭「…………その心意気は良し。 ならば、この夏侯元譲が全力での一撃、貴様に受けさせて、その生を終わらせてやる!」

 

ーー

 

李楽「…………ゴホッ、ゴホッ!!」

 

左慈「病人か………だが、戦場に来たからには、全て覚悟の故だろう! ───他の奴ならいさ知らず、俺は容赦などせん!!」

 

ーー

 

この様子を見ていた、冥琳は───この戦の勝利を九割ほど確信していた。

 

一番恐れていた深海棲艦の侵攻も、思春からの報告によれば、つい先程……明命より報告が入り、御遣い側に攻めて来た深海棲艦を撃破できたそうだ。

 

冥琳『これなら───勝てる!』

 

冥琳ほどの軍師が、そう思うのも無理は無い。

 

深海棲艦の事は、全て于吉からの情報。

 

この国の殆どの者が、彼女らの恐怖を……冷酷さを……真の姿を知らない。 

 

だから、遥か後方で、嘲笑う鬼灯が見せている姿が……それを示していた。

 

★☆☆

 

銅鏡の照射が届かない位置に、鬼灯は闇に隠れて、自分の仲間である白波賊の苦戦を………愉快そうに見ていた。 

 

ーー

 

鬼灯「いい具合に『餌』に集まって来たわ。 この世界で……艦娘達に力を貸す……愚かしい人間共め。 ここが、貴女達の死に場所になるのよ………」

 

ーー

 

??「…………アソコヨ? アノ場所カラ………裏切リ者ノ気配ガ………スルノ!」

 

??「ソウ………ワカッタワ。 ………任セテ………オキナサイ。 餌ゴト纏メテ………吹キ飛バシテアゲマショウ。 肉片ノ欠片……骨ノ一片サエモ……!」

 

ーー

 

鬼灯の傍から………二人の女性の声が聞こえる。

 

一人は年端の行かない少女の声、もう一人は、静かな雰囲気を醸し出す大人の女性。 

 

共通しているのは、このような戦場から聞こえるに、場違いな感じがする声であるのに関わらず、その語る内容が……戦場に相応しい話になっている。

 

どちらも……黒い服を着ているため、闇に溶け込んでいるように見えるが……生来の肌の白さ、目から輝く赤い燐光のような光が邪魔をして、そこだけ、ハッキリと分かるのだ。

 

皮肉な事に自分達の正体を『深海棲艦』であると教えているようなもの。 

 

だが、この付近には………味方も敵も居ない。

 

幼子の姿をしている者が『離島棲鬼』であり、大人の雰囲気を持つ者が『戦艦棲姫』という事など知る筈も無い。

 

そして、戦艦棲姫の後ろに控えていた巨大な艤装が、両手を踏ん張り、口だけの顔を……現在、白波賊と諸侯が争う激戦地に向ける。

 

艤装『ガ……ァァァァ………ァァァ………』

 

巨大な口が開くと………その奥には、艤装のエネルギーにより、真っ赤に赤くなった砲弾?が準備を整えられている。 戦艦棲姫の指示があれば、何時でも発射して撃ち放つ事ができるように!

 

戦艦棲姫「…………イイ子ネェ……。 ジャア………ソノママノ姿勢デ………」

 

戦艦棲姫は、下に垂らしていた女性らしい細い右腕を肩まで上げ、正確な弾着点を指し示す。 丁度……白波賊頭目達、華琳や雪蓮達が居る場所。

 

戦艦棲姫「彼処ニ………撃チ込ミナサイ………!!」

 

戦艦棲姫は、前方を見て…………冷たく微笑んだ。

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

ーーーーーーー

 

あとがき

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございます。

 

この後の展開は………既に分かると思いますが、それでもなるべく、予想外の要素も入れて行きたいと思います。

 

 

説明
決着は次回にて? 19日、誤字修正しました。
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コメント
スネーク提督 コメントありがとうございます! この後の展開はどうなるか……。 今は思案中ですけどね。(いた)
あかん、戦艦棲姫の砲撃はあかん((▼д゚)))ガタガタ(スネーク)
雪風提督 コメントありがとうございます! 雨となるのは………あの艦達……になる予定です! ん……貂蝉もか?(いた)
天よ、人の子らに天の慈雨を天の聖光を、そして、仇名す天の敵に冷雨の罰を・・・by某文官(雪風)
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