超次元ゲイムネプテューヌmk2 希望と絶望のウロボロス |
空気が凍ったように冷たく、まるで冬の外に放置された鉄の様に。それほどまでに冷めきった中で俯いたまま拳を震わすユニをまるで鏡を映った自分を見つめる様な、寂しさと後悔が混ざったような複雑な物を見つめる様にネプギアは見つめていた。
「(少し……少し前なら、私もユニちゃんのようになっていた……ね)」
思い出せたのは最愛の((女神|姉))の背中。あの頃はどれだけ辛い事があっても、挫けてしまいそうなことが合っても、((女神|姉))の傍ならきっと大丈夫――――そう、当たり前のように思っていた幸福な時間。
だが、それは世界の救世の前では、薄っぺらい今にも破けそうな紙も当然だった。世界を破壊しようとする悪意に立ち向かい、その理不尽すら覚える不滅性を持つ存在から世界を守ろうとして―――――人は救われ、女神は一人になった。共に競った女神も共に戦った女神も唯一の家族すら、誰よりも好きだった自身の手で最悪の魔剣を起動させる為の供物として奉げた。
残ったのは、世界を救ったと言う高揚感と使命を果たせた達成感でもなかった。ただただ手の間から落ちて行く砂を見つめる様な虚無感。それでも現実から逃げられなかったのは、犯罪神の散り際の一言を否定する根気だけで立ち上がった。
「(同時に……色々と零れ落ちちゃった……いや、捨てちゃったかな)」
無くなったのは人間性、今でこそ((混ざった|・・・・))お蔭で随分戻ってはいるが思い出してみれば見る程、自身は女神としての機能を果たすための機械と成り果てていた。そうしなければ耐えれなかった、そうしなければ前に進めなかった。以前とは違う、皆で手と手を重ねられるほど、この手は綺麗ではなかった。
大切な者を殺して血に染まったこの手が、女神としての使命を全うできるかすら疑う毎日。人の理想を従うままに、きっと素晴らしい明日が来るはず、だから阻む物を倒して殺して、消し続けた毎日に果たしてどれほどの価値があったのだろうか。
そうやって何度も何度も繰り返していくごとに、いつの間にか人間の身であった仲間達はいなくなっていき、本当の一人ぼっちになって、歩んだ先に待ち望んでいたのは女神が望む未来ではなく、あの犯罪神が言った通りの――――――自ら破滅を望むように争い、衰退していく愚かな人間達の末路。
そして、誰よりも人の為に働き、人を信じられなかった、人の不信を買い追放された。後悔は今でもしている。それでも、最後の最後で救われた。穢れ捨てられ壊れた玩具をまるで我が子のように抱き締めてくれたあの温かみは例え地獄に落ちても、忘れることはないだろう。
「……それは、うそです」
「…………コンパさん」
誰もが言葉が出ない状況下で一番先に口を開いたのはコンパだった。いつもの天然気味ながら周囲を和ませる母性ににも似た雰囲気はなく、ただ暗い声でネプギアの言葉を否定する。
「だって、めがみさまが、ねぷねぷたちがまちがったことするわけないです。ぎあちゃん、それはそらさんがうそをついているんです。だって、だって………それじゃ」
カタカタを歯を鳴らす音が聞こえる。それと連動するように体が小刻みに震える。まるで、寒さに怯える子供の様に。それは、形容し難い現実を受け止められないように。
「――――――私達のやってきたことは全部間違っていた、ってことになるです!!」
感情が噴火したようにコンパが叫んだ。
「あれもこれも!一体何の為に!モンスターさんからみんなを救ったんですよ!女神様達は空さんが作り出した運命から自由を勝ち取ったんですよ!なのにそれがこぅさんを追い詰めた!?じゃ、最初っから命を駒のように使った空さんがなにもかも正しかったんですか!!」
「コンパ、落ち着いて……ッ」
「その通りですの。ここで叫んでも何も解決しないですの!!」
絶叫はいつしか慟哭へと変わり、崩れ落ちる様に顔に手を当てるコンパにアイエフとがすとは寄り添い、何か言いたげそうな顔で氷の様な表情を見せるネプギアに口を閉じて、コンパを引き連れながら部屋から出た。残ったのはただ黙って話を聞いているケイ、まだ理解が落ち着いていない様子の日本一、そしてひたすら口を閉じていたユニは漸く面を上げて、ネプギアを見つめ口を開いた。
「……ネプギア、聞いていい?」
「なに?」
「貴方の中で、空さんは正しいと思っている?」
「正しいとか間違っているとか、そういう次元の話じゃない。だって|私《女神》達はあくまで人の視線で人を守る存在だけど、空さんが見ているのは星に生きる全体の種。価値観、論理とか根本的な所から別物だよ」
ネプギアはこの誰よりも夜天 空と言う人物像を理解できていた。アイエフが言っていた様に決して相容れぬ存在だということをゲイムギョウ界を守るためならば、人類や女神すら滅ぼすことも躊躇しない女神とは異なる破壊なる神だということ。それを理解してしまっているネプギアをまるで遠い聳え立つ山を見つめる様に目を細め、ユニは呟いた。
「……そう、いつの間に私はネプギアと全然違う場所にいるのね」
「そう、だね。今の私は強いよ強いだけ、見知らぬ誰かを救えても大切な人は誰一人救えなかった。未来を守れても希望を守れなかった――――失敗した女神なんだよ」
昔を思い出すように虚空を見つめるネプギアにユニは、あまりの距離の違いに力が抜けそうになった。一緒に研磨した日々を思い出した勝算はあちらが上で、それが悔しくてライバルとして認定して肩を並べるほどには強くなったと自負しているつもりだった。それは今や、まるでお互いに間に壁があるほどの別離感があった。
◇
「―――――――そう、なんだ」
ぼそっ、と扉の横に立って話を聞いていた空亡は汚れた自身を映した鏡を見た様に呟いた。
『……同情するのか我が主、貴方も((同じように他人の記憶と経験に支配される|・・・・・・・・・・・・・・・・・・・))立場であるが、奴はそれを望んで受け入れた。つまり自業自得だ』
「……そうかな?私は、そうは思えない」
『主よ。アレは贄なのです。人が害虫を駆除するように、奴は女神に駆逐されるための運命体だと思いませんか?』
従者の言葉に口を閉じる空亡、少ししてアイエフ達が彼女の前を通るが互いに視線を合わせても会話することなく、涙を流すコンパを連れていく姿を横目で見えなくなるまで見つめる。その眼は見下す様な、憐れんでいる様なそんな複雑な感情が現れていた。
『ふんっ、過ちを幾度となく繰り返す。その責任を他に追求する時点で終っているのだ。人という不完全な存在から生まれた女神が統治するこの世界に矛盾があるのは道理であろうよ』
「そうだね。そう……だからこそ、生命は輝ける」
『………主よ。貴方の行く道に私は喜んで贄となる覚悟があります。どうか、後悔なきように』
「うん、ありがとう、私の大切な従者」
掌に浮き出た声を放つ宝玉に口づけをして、親愛なる従者に心から感謝をしながら体を伸ばしたタイミングでネプギア達が部屋から出る。光が無い一度修羅に墜ちた者の闇の様な深い意志を宿す目で、隙なく堂々と足を進めるネプギアと複雑な表情で付いて行く日本一、困惑した表情で歩くことすら辛そうなユニと空亡はふと目が合い足が止まり、それに気づいたネプギアも足を止め互いに初対面だったかなと思い出しつつ紹介しようと口を開く。
「あ、空亡ちゃん紹介していなかったね。この人はこの国の………」
「お久しぶりですユニ様」
「……貴方、プラネテューヌの時の」
「あれ?もしかして知り合いなんですか?」
プラネテューヌの時に出会ったことを簡単に説明するとネプギアも納得した様に頷いた。アイエフ達が歩いて行った方向に空亡を先頭して歩きながら、お互いに話をする。空亡が記憶を失う前の紅夜とは親子関係であることに驚いたり、暗い表情をしていた日本一に空亡が今までの旅でどんなことをしてきたのかを聞いてみたり、空亡を中心に話題は盛り上がった。
「それにしても、一人でマジェコンヌに立ち向かうなんて凄いですね。女神でもないのに怖くなかったんですか?」
「そうでもないよ。口が悪いけど、がすとはいつも私に説教しながら支えてくれたし、辛かったこともあったけど……うん、正義のヒーローを名乗る者として、困っていることは見捨てておけないと走り回っていたら怖いよりもっと頑張らないと!と思える様になっていたな」
「……………」
握り拳を作って思い出すように語る日本一に三人は心の底から尊敬の念を抱いた。支えがあったとしても、犯罪組織マジェコンヌが生まれてからの三年をマジェコンの誘惑に見向きもせずに戦ってきたのだ。女神として表彰したいぐらいの意志と強さと正義感だ。
「でも、あいつにあんなことを言われてからちょっと分かんなくなちゃって」
「……あいつ、ってレイス・グレイブハードのこと?」
うん、と重々しく頷く日本一、その内容は語られネプギアとユニも複雑な顔を見せた。そもそも正義と言う抽象的な物を万人が納得できる答えは無いに等しいだろう。少なくても己が正当性を示す為の物でしかない。しかし、空亡は少し考える仕草から口を開いた。
「……悩む必要なんてないですよ」
「で、でも、あいつが言っていることも事実だし」
言いよどむ日本一に空亡は指を向けた。
「悪く聞けたらごめんなさい。でも、そうやって悩む事態が、正解なんです」
「……どういうこと?」
「逆にそれに答えを見つけるという事は、盲目的に悪を裁断する機械になると同威儀です。貴女は人です――――――どれだけ強者であろうと勝利者であろうと人であるなら、いつも悩んで悔やんで、進むしかないんです。誰かの為になりたいという考えは決して否定しませんが、助けた人が遠くない未来に犯罪を犯した場合のこと、考えたことあります?」
「「「………………」」」
その問いに女神でさえも言葉を失った。もし、そんな事態が起これば自身の善行は誰かの悪意を咲かせる事に只らない。それは最早、善意でなく、悪意より性質が純粋な邪悪でしかない。
「人を助けれる立場は、そういう責任があるんです。貴女はそれを分かっている。だから、自身の行いが正義に悩む……いいんですよ。いつか自分に納得が出来る答えが出るまで、レイス・グレイブハードの問いはそもそも人間に問い掛ける事態、間違えっている。彼らが求めているのは最早生き物全ての意志を自分の意志で捻じ曲げる邪神の類ですから」
小さい体、まだ十歳にも満たない体とその容姿から語られる内容とは思えない言葉は確かに三人は心酔したように頷いた。
「例え自身の理想が、どれだけ愚かでも、どれだけ醜くても――――――泥濘の果てに花が咲くと信じて、進んでこその正義のヒーローだと私はそう思っています」
説明 | ||
ジャックきたぁぁぁ! あとはカルナとメルトリリスだけだな |
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