英雄伝説〜運命が改変された少年の行く道〜 戦争回避成功ルート |
〜トールズ士官学院・1年Z組〜
「つ、”次の戦争”って……!」
「まさかクロスベルは更にどこかの国家に戦争を仕掛けるつもりなのか!?」
メサイアから語られた驚愕の事実を聞いたエリオットは信じられない表情をし、リィンは血相を変えて尋ねた。
「はい。」
「なっ!?それじゃあ一体何の為にクロスベルは『西ゼムリア同盟』に調印したんだ!?」
「『西ゼムリア同盟』に強制力は無いとはいえ、”空の女神”であるエイドスさんもその場で出席したのですから、もし早々に条約を無視するような事を行えばゼムリア大陸全土が崇める”空の女神”の意志も無視した事になり、クロスベルが求める他国からの信頼が無くなってしまいますが……」
「そ、それに……一体どこに戦争を仕掛けるつもりなのですか……?」
「まさか内戦とメンフィルとの戦争で衰退したエレボニアなのか?」
メサイアの答えを聞いたマキアスは驚きの表情で尋ね、エマとセレーネはそれぞれ不安そうな表情で呟き、ガイウスは真剣な表情で尋ねた。
「――”西ゼムリア大陸の国家”には戦争を仕掛けるつもりは一切ありませんから、当然エレボニアにも侵略するつもりはなく、むしろ友好を結ぶつもりですからそこの所は安心してもらって構いません。」
「”西ゼムリア大陸の国家には戦争を仕掛けるつもり”はない、ですか。それじゃあ一体どこの国家に……―――あ。」
「まさか……クロスベルは”東ゼムリア大陸の国家”に戦争を仕掛けるつもりなのか……!?」
メサイアの話を聞いて不思議そうな表情をしていたツーヤだったがある事に気付くと呆けた声を出し、ラウラは厳しい表情で尋ねた。
「はい。東ゼムリア大陸の国家は『西ゼムリア同盟』には調印していませんから、例え戦争を仕掛けても条約を無視した事にはなりません。同時に『西ゼムリア同盟』が盾となり、西ゼムリア大陸の国家は『西ゼムリア同盟』に調印した国家に戦争を仕掛ける可能性はほぼゼロですから、東ゼムリア大陸の国家との戦争に集中できるとの事です。」
「あの平和条約をそんな風に利用するなんて……!」
「でも確かに東ゼムリア大陸の国家はどこも『西ゼムリア同盟』に調印していないから、戦争を仕掛けても『西ゼムリア同盟』を無視した事にはならないね。」
「なるほどね〜。上手い事『西ゼムリア同盟』の抜け道を見つけて、利用したね〜。」
「フン……二大国の領地を奪い取って大国に成り上がってなお、更に国を繁栄させる為に戦争を望むとは”鉄血宰相”以上の野心家だな、クロスベルの”二大皇帝”は。」
メサイアの話を聞いたアリサは信じられない表情をし、フィーとミリアムは真剣な表情で呟き、鼻を鳴らしたユーシスは目を細めた。
「ま、まさかヴァイスさん達がそんな大それたことを考えていたなんて……いえ、かつて戦争でメルキア帝国を発展させたヴァイスさん達らしいと言えばらしいわね……」
「くふっ♪もしその戦争が起こったら、リウイお兄ちゃん達も手伝うかもしれないから、エヴリーヌ達もいっぱい遊べるね♪」
「冗談になっていないですよ、エヴリーヌさん……」
信じられない表情をしていたプリネは複雑そうな表情になり、凶悪な笑みを浮かべたエヴリーヌの言葉を聞いたツーヤは疲れた表情で指摘し
「メサイア。ギュランドロスさんもクロスベルのもう一人の皇帝だが、ギュランドロスさんも東ゼムリア大陸の国家との戦争を望んでいるのか……?」
「ええ。というかあくまで私の主観になりますがお父様よりギュランドロス皇帝陛下の方が野心家だと思っていますわ。あの方は元々自分が治めていた国―――ユン・ガソル連合国を繁栄させる為に長年の宿敵であったメルキア帝国に何度も攻め入ったのですから。」
ガイウスの疑問にメサイアは静かな表情で答えた。
「…………」
「ガイウス……」
メサイアの答えを聞いて複雑そうな表情で黙り込んでいるガイウスをリィンは心配そうな表情で見つめ
「クロスベルの”二大皇帝”……ヴァイスハイト皇帝とギュランドロス陛下皇帝だが、以前我らがメサイアと初めて出会った時にメサイアが話してくれた予言が実現と化した事になるな……」
「あ…………」
ラウラの言葉を聞いたアリサはかつてメサイアと初めて出会った時の話を思い出した。
しかし……話を聞く限り、クロスベルという地域にはお父様どころかかのユン・ガソルの国王ギュランドロス・ヴァスガンと”三銃士”達が共に手を取り合っているのですから、近い将来クロスベルは”覇道”を歩む事になるかもしれませんね。
「あの時はさすがにそんな事はありえないと思っていたが……」
「まさにメサイアさんの言う通りになってしまいましたわよね……」
メサイアの話を思い出したマキアスとセレーネは不安そうな表情になり
「そしてクロスベルと盟友関係であるメンフィルも”盟友”としてクロスベルと共に東ゼムリア大陸の国家との戦争に参戦するかもしれんな。」
「それは……そこの所はどうなんだ、プリネさん。」
重々しい様子を纏って呟いたユーシスの言葉を聞いたリィンは複雑そうな表情でプリネに尋ねた。
「その可能性は十分にあるでしょうね。お父様とヴァイスさん達との個人的な仲が良好である事に加えてクロスベルが持つ技術―――魔導技術や魔術技術はメンフィルにあらゆる発展と利益をもたらせました。クロスベルが大国となった事で更にこれからも新しい技術開発も可能となりますから、シルヴァンお兄様やシルヴァンお兄様の跡継ぎであられるリフィアお姉様もクロスベルとの盟友関係を続けられるでしょうね。」
「当然その技術開発には間違いなく”ラインフォルトグループ”も深く関わる事になるのでしょうね……既に”ラインフォルトグループ”とクロスベル帝国の技術者達との共同開発が始まっている話も聞いているし。それにクロスベルと東ゼムリア大陸の国家の戦争が始まれば、”ラインフォルトグループ”にも莫大な数の兵器や武器の注文が殺到するでしょうから、”ラインフォルトグループ”はとてつもない利益を叩き出す事になるから母様は当然その注文を受けるのでしょうね……」
「アリサさん……」
プリネと共に複雑そうな表情で同意したアリサをエマは心配そうな表情で見つめ
「その……逆に考えればヴァイスさん達は東ゼムリア大陸の国家との戦争をする為に『西ゼムリア同盟』を守る必要がある事を理解していますから、『西ゼムリア同盟』に調印したエレボニアには関係のない話ですから安心していいと思いますよ。」
「ん。薄情な話だけど東ゼムリア大陸の国家なんてわたし達には関係ないから、別に気にしなくていいと思う。」
「それはそうだけど、何だかボク達エレボニアの事なんてもう眼中にないみたいにも感じて腹立つ話だよね〜。」
「エレボニアに侵略するつもりがないとわかっていてもちょっと複雑だよね……」
「それに他の二つの理由も考えれば、クロスベルは領地の一部とザクセン鉄鉱山の鉱山権の一部を失った事もクロスベルにとっては”損”ではなく、いくつもの将来の”益”になるからこそ反論する事なくリベールの嘆願に応じて”フォートガード地方”とザクセン鉄鉱山の鉱山権の一部をエレボニアに返還してくれたんだろうな。」
ツーヤとフィーの話を聞いたミリアムは不満そうな表情で呟き、エリオットとリィンはそれぞれ複雑そうな表情をし
「東ゼムリア大陸の国家か……どのような国なんだろうな?」
「東ゼムリア大陸の国家と直接関係していたのは旧カルバード共和国だったからな。詳しい事は旧カルバード共和国の者達しか知らないだろうな。そのカルバードが滅びて新興の国家であるクロスベルがカルバードの領地を手に入れたのだから、新興の国家の為まだ国内の情勢が安定していない隙を突いた東ゼムリア大陸の国家が逆にクロスベルに戦争を仕掛け、クロスベルがそれを理由に東ゼムリア大陸の国家に侵略する事もありえるかもしれないな。」
ガイウスの疑問を聞いたラウラは静かな表情で答えた後真剣な表情で考え込んだ。
「けどヴァイス達って、結構黒いよね♪ゼムリア大陸を平和に導く為の条約を戦争の為に使うなんて、平和条約を結べた事に安心しているクローゼ達も想像していないだろうね♪」
「エ、エヴリーヌさん。」
「―――綺麗事だけでは国は成り立ちません。エヴリーヌお姉様が先程仰ったような腹黒い事も国を治める皇族には求められています。ですから決してヴァイスさん達の考えも間違ってはいないんですよね……」
「その一番良い例が”殲滅天使”だよね。」
口元に笑みを浮かべているエヴリーヌの言葉を聞いたセレーネは冷や汗をかき、プリネは複雑そうな表情で答え、フィーの正論とも言える答えを聞いたリィン達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。
「それにしてもあの時”特務支援課”の人達と一緒にいた人がクロスベルの皇帝に成り上がって、そんな大それたことを考えるとは想像もしていませんでしたね……」
「二大国から領土を奪い取り、クロスベルを大国へと成り上がらせたクロスベルの”二大皇帝”は間違いなく後の世で称えられる存在になるのであろうな。」
不安そうな表情をしているエマの言葉に続くようにラウラは重々しい様子を纏って答え
「ちなみにこの話は余談になるのですが……お父様は『西ゼムリア同盟』を提唱したアリシア女王陛下こそがまさにゼムリア大陸随一の”賢王”と仰い、アリシア女王陛下の事を相当褒め称えていましたわ。」
「へ……クロスベルの皇帝がアリシア女王陛下を?しかも何で『西ゼムリア同盟』が関係しているんだ?」
メサイアの話を聞いて呆けたマキアスは不思議そうな表情で尋ねた。
「『『西ゼムリア同盟』を提唱して混迷に満ちたゼムリア大陸が平和になる切っ掛けを作った事でリベールの国際的な立場を著しく上昇させた事もそうだが、『戦争回避条約』によってメンフィルとクロスベルに贈与されたエレボニアの領地の一部とザクセン鉄鉱山の鉱山権の一部をエレボニアに返還させた事で、エレボニアはリベールに対して大きな”恩”ができた為、その”恩”を返すまでは再びリベールに侵略するような事は考えない上国際会議の場ではリベールの考えに同意する可能性、そしてリベールが窮地に陥った際エレボニアが救いの手を差し伸べる可能性を確実にした』と、お父様は仰っていました。」
「それは……」
「ただでさえ”百日戦役”の件でエレボニアはリベールに対して”負い目”があるのに、メンフィルとクロスベルに奪い取られた領地とザクセン鉄鉱山の鉱山権の一部をリベールのお蔭で返してもらった”恩”があるからね〜。少なくてもその”恩”を返せるような機会が訪れるまではエレボニアはずっとリベールの味方をしなければならないだろうね〜。」
「もしかしてアリシア女王陛下はその為に『西ゼムリア同盟』を提唱したのかな……?」
メサイアの説明を聞いたガイウスは真剣な表情になり、ミリアムは疲れた表情で答え、エリオットは複雑そうな表情で呟き
「いえ、アリシア女王陛下の慈悲深い性格を考えれば恐らくそこまでは考えていないと思います。勿論メサイアさんが仰った事も考えていたかもしれませんが……少なくてもエレボニアに領地とザクセン鉄鉱山の鉱山権の一部を返還させた事は純粋にエレボニアと友好を結んでいるリベールの”王”として嘆願したのだと思います。」
「それに”不戦条約”を提唱した事も考えれば打算の為だけにゼムリア大陸の平和を望む人ではありませんよ。」
「そ、そうよね。」
エリオットの疑問をプリネとツーヤはそれぞれ否定し、二人の意見を聞いたアリサは安堵の表情をした。
「……アリシア女王陛下やリベールにどんな思惑があったかわからないけど、そのお蔭でエレボニアは領地とザクセン鉄鉱山の鉱山権の一部を返還してもらえた。それだけは”事実”なんだから、アリシア女王陛下には感謝すべきだ。」
「……確かにそうだな。」
「それに受けた”恩”を返すのは人として当たり前の事なんだし、エレボニアの為にあそこまでしてくれたアリシア女王陛下はエレボニアでも称えられるべき人だな。」
静かな表情で語ったリィンの言葉にユーシスとマキアスはそれぞれ同意した。
「フフ……皆さんの知りたい事は全て答えましたから、私は一端失礼しますわね。」
そしてリィン達の様子を微笑ましく見守っていたメサイアはリィンの身体の中に戻った。
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第142話 | ||
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