真 恋姫無双 もう一人の大剣 10話 |
「どれくらい・・・・経った?」
「まだ十日だ」
「あと・・・・二十日か」
「何の話してるのよ!?」
華琳は戦時にある政策を取り入れようとしている。
その政策は、いままで華琳からは到底想像ができないものだった。
秋蘭は納得はしてはいないが、全面的に政策を進める。
周りよりも理解の遅い春蘭は、後にその政策の存在を知る。
政策の内容を秋蘭から聞き、華琳に反論。
だが、春蘭の主張は却下。
華琳はその反論に激怒。
最近発見した炎の牢獄に春蘭を閉じ込めた。
「三十日間、牢獄に入って反省しなさい」
三十日間という期限を設け、牢獄に入る。
「夏候惇は曹操様の幼少からの忠臣じゃない!?それを期限を設けているからってこんな拷問部屋に・・・」
「それが華琳様の意思だ」
秋蘭は鍵を使い、春蘭の入っている牢屋に入る。
「ちょっと、秋蘭・・・何やってるのよ」
秋蘭は牢屋の中にある箱を春蘭に近づけ、金属の線を箱につなげる。
「・・・手慣れたものだ。震えていたあの頃が懐かしいな」
「もう十一回目だ」
箱につなげている線を春蘭に繋げる。
「行くぞ姉者」
「来い」
箱についてる摘みを回す。
春蘭の叫びが地下道を響かせる。
春蘭は仰け反り、苦しみの叫びをあげる。
桂花は驚きながらも春蘭から目を離さない。
秋蘭は春蘭を見ず、無表情で摘みだけを見続ける。
秋蘭は摘みを戻す。
春蘭の仰け反っていた体は、重力に任せダランと崩れる。
「はあ・・・はあ・・・・・なんだ、もう終わりか?秋蘭」
「・・・・まだだ。姉者」
摘みを回す。
春蘭の体が仰け反る。
今度は摘みのを小刻みに時計回り、逆時計回りと交互に回す。
春蘭の仰け反ったからだが波打つ。
摘みの動きに合わせて春蘭の体が動く。
叫び方も同様に変化する。
「秋蘭!何してるのよ!?」
苦しむ春蘭を見ていることに耐えられない桂花は秋蘭の手の上に自分の手を重ね、摘みを戻す。
「があ!・・・・はあ・・はあ」
「邪魔をするな。桂花」
「何言ってるのよ!実の姉をこんなにして、あんたなんでそんな平気な顔してるのよ!あんたおかしいわよ!」
「おい・・・そこの・・・・知らない奴・・・」
「夏候惇。大丈夫?」
「私は・・・大丈夫だ。どうかそのまま・・・手を出さないでくれ。さあ秋蘭やれ」
その発言に驚き、後ろへ下がる。
「なんで・・・・あんた達おかしいわよ」
「もういいか桂花。どいてくれ」
桂花の手を払い、再び摘みを回す。
今度は摘みをめいいっぱい回し、すぐに戻す。
春蘭の体は今まで以上に仰け反り、すぐに体が落ちる。
この回し方を秋蘭は何度も繰り返す。
叫びの大きさも今までで一番大きく、地下道の揺れも大きい。
春蘭の悲痛な叫びを近くで聞く桂花は涙を流す。
「(早く終わってよ。こんなのもう見たくない)」
秋蘭がこの摘みで他にも様々な方法で、拷問を続けた。
三時間、三人にとってはとても長い時間。
秋蘭は摘みから手を離し、牢屋を出る。
「秋・・・蘭・・・」
拷問が終わり、疲弊しているはずの春蘭がまだ言葉を発する。
「こんなことを続けても・・・・炎は戻ってこんぞ」
「姉者、拷問に耐えられなくなったなら「違う!」」
秋蘭の言葉を遮る。
秋蘭は春蘭に対し背を向ける。
「華琳様が変わられるなら・・・・炎が戻ってくるならどんな拷問にだって耐えるさ。だがこんなことで華琳様がお変わりになられるわけがない。秋蘭、お前のやっていることだってそうだ。ただ華琳様の命令に従い、華琳様の為だけに行動する。そんなことで華琳様はお変わりにならない」
「姉者と私は違う」
「ああそうだろうとも。私は炎が出て行ったあの日誓ったんだ。華琳様を変える。立派な王にしてみせると」
「私は・・・・華琳様を支える。華琳様の為に、炎が戻るまで支え続けると誓った」
「秋蘭・・・・・いつまで支えるのだ?炎が戻ってくるまでか?いつまでたっても炎は戻ってこないぞ」
「ならば、どうしろと言うのだ・・・・姉者のそれとて炎が戻ってくる保障などどこにもないだろう。だからと言って華琳様に反抗するか?私は姉者のようなことはできぬよ」
「私は秋蘭、お前が心配だ。ずっとこんなことを続けていつか心が死んでしまわないか」
「心配は無用だ。姉者がいなくても私は生きていける」
松明を持ち、階段へ向け速足で歩きだす。
桂花はあわてて秋蘭を追いかける。
地下道から階段へ。
階段から入口へ。
入口から自分の部屋へ。
桂花も急いで秋蘭についていく。
「私の部屋までついてくる気か?」
廊下の途中で立ち止まる秋蘭。
「・・・・正直言って私はあんな曹操様見ていられないわ。だからといって反抗して夏候惇みたいな拷問もごめんよ」
「他の主君を探すか?炎のように」
「生憎、私は曹操様にしか仕えないと決めているの。だから、秋蘭、あんたのやっていることは間違いよ」
「なんだ偉そうに説教か」
「ええ、そうよ。あんた曹螢が出て行ったことに怒りを感じてるって言ったわよね。それって曹螢じゃなくって自分に怒ってるんでしょう?曹螢を止められなかった自分への腹立たしさ。それを感じてるくせにこの現状は何?曹操様の言いなりになってるだけ?」
「私は華琳様の臣下だ。命令を聞くのは当然だ」
「でもあんたは私の命を助けてくれたじゃない」
「あれは華琳様のためを思ってこそだ」
「そう。じゃあそうしましょう。でももし曹螢が風評通りの人物なら、今のあんたを軽蔑するでしょうね」
「・・・・・・・」
「はっきり言って私は夏候惇の言い分に賛成よ。本来、臣下は王の命を聞くべきでしょうけど、王の判断が誤っていると思ったらそれは正すべきよ。あんたは傍観を気取っているだけ。その命を忠実にこなすことによって、姉を苦しめることになるんだから。哀れよね」
「・・・・・・そうさ」
「?」
「私はバカな妹さ」
秋蘭の目からは涙。
「炎がここを去ったとき、本当に自分に腹が立った。引き留めることはできたのではないかと。炎には戻ってきてほしい。だが私は炎と誓ったんだ。華琳様を支えると。だから私は炎が戻るまで華琳様が王座に座り続けていられるように配慮してきた。命令は全て聞き入れ、忠実にこなす。全ては炎が戻ってきた時の為に。」
秋蘭は今まで行ってきた命令を頭にめぐらしながら話す。
「その命令が、姉者の拷問と聞いた時は手も震えて、まともにこなせなかったがもう慣れた。姉者の苦しんでる姿を目の前にしても次第に何も感じなくなっていった。救いようがないバカだ」
「結局あんたがやってるのは現状維持じゃない。曹螢が出て行った原因が曹操様にあるんなら、曹操様を変えないと話にならないじゃない」
「最もだ。だが私は・・・・」
「あんた一人じゃないわ。夏候惇がいる。そして今度は私がこの陣営に入った。まだやれることはあるはずよ。一緒に頑張りましょ」
秋蘭は両手で顔を覆い、床に膝をつけた。
華琳に聞かせないためだろうか、その泣き声はとても小さい。
いままで溜まっていたものが一気に溢れ出したようだった。
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チェンジです。 ごめんなさい。 今回くそ短いです。 |
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