英雄伝説〜焔の軌跡〜 リメイク 改訂版 |
〜遊撃士協会・グランセル支部〜
「はい、こちら遊撃士協会、グランセル支部です。………………………………。なんと、そうですか。……了解しました。こちらも注意しておきます。ええ、それでは」
「エルナンさん、どうしたの?」
「あの雌ギツネの取り調べでも終わったか?」
「いえ、それとは別件です。どうやら昨夜、ボース地方に空賊団の残党が現れたそうです。」
「ええっ!?」
エルナンの情報を聞いたエステル達は声を上げて驚いた。
「以前彼らがアジトにしていた『霧降り峡谷』の砦だそうです。現在、軍の飛行訓練場として使用されているそうですが……。彼らはそこに保管されていた空賊艇を奪って逃走したそうです。」
「なんですって……!」
「ほほう、ミュラーが受け取りに行ったあれか……」
エルナンの話を聞いたエステルは驚き、オリビエは目を丸くした。
「ちょ、ちょっと待ってよ。何だかあまりにもタイミングが良すぎない?もしかしてそれも『結社』が絡んでいるとか?」
「可能性は否定できませんね。その意味では、この次に皆さんに向かっていただくのはボース地方がいいのかもしれません。」
「確かに……」
「いいんじゃないかしら。現時点で実験が行われていないのはボース地方だけだし。」
「うん……。って、シェラ姉達も一緒に来てくれるわけ?」
シェラザードが呟いた言葉を聞いたエステルはシェラザード達も同行すると思い、明るい表情で尋ねた。
「情報部の残党のケリがついてあたしたちの仕事も一段落したわ。敵は相当強いみたいだしあたしも助太刀しようと思ってね。今朝エルベ離宮に向かったルークとレンも助太刀する事を言ってたわ。」
「やった!」
「えへへ、今度はレンちゃんとも一緒になるんだ……!」
「フフ、気付けば大所帯になったわね。」
「後はバダックがいれば完璧なんだがなあ。」
シェラザード達の加入にエステルやティータは喜び、アーシアは微笑み、フレンは口元に笑みを浮かべた。
「ええ、こちらこそよろしくね」
「あ、もしかして……アネラスさんも一緒とか?」
「えへへ……私は残念ながら。そろそろクルツさんたちが強化訓練から帰ってくるんだ。そちらのチームに入れてもらうつもりなの。」
「そうなんだ……」
アネラスは来ない事を知ったエステルは残念そうな表情をした。
「チームってことはやはり『結社』対策かい?」
「はい、『結社』の拠点を捜索することになると思います。」
「拠点の捜索?」
ジンの問いに答えたアネラスの言葉にエステルは首を傾げた。
「これまでの動きから見て『結社』は国内の何らかの拠点を築いている可能性は高そうです。そこを叩かない限り、根本的な解決にはなりません。今後は王国軍と全面協力して捜索活動を行う必要があるでしょう。」
「確かにそうですね……」
「へっ、結社対策チームがもう1つ必要になるのも当然か。」
「うーん、そうなるとクルツさんのチームにも戦力が必要になりそうだし……。アネラスさんを取られちゃうのも仕方ないかぁ。」
「えへへ、ごめんね。『結社』の拠点を見つけたらエステルちゃんの力も借りることになると思うから。その時に一緒に戦おう?」
「うん……そうね!」
そしてアネラスは先にギルドを出て行くと入れ替わりに紫色のツインテールの少女がギルドに入ってきた。
「あ。」
「遊撃士協会へようこそ。今日は何のご用件でしょうか?」
少女を見たエステルは目を丸くし、エルナンは尋ね
(何モンだ、あのガキは……)
(ジンさんやレンみたいに両手に篭手らしき武装をしている所を見ると少なくてもただの子供ではないでしょうね……)
(ああ。彼女からは凄まじい”気”を感じる。間違いなく相当の使い手だ。)
少女が只者でない事を悟っていたアガットやシェラザード、ジンは少女の正体を怪しがっていた。
「……エステル・ブライトは貴女?」
その時エステル達を見回していた少女はエステルを見つめて訊ねた。
「う、うん。もしかしてあたしに何か依頼したい事があるのかしら?」
「ううん。私の名前はソフィ・ラント。ある人からの”依頼”で貴女達――――エステル達を手伝う事になったの。”身喰らう蛇”の人達が現れた時も、私も一緒に戦うから私も貴女達の戦力の一人に数えていいよ。」
「へっ!?あ、あたし達に!?」
「というかそれ以前に一体どこで”身喰らう蛇”の存在を知って、私達が彼らの行方を追っている事を知っているのかしら?」
「それに”依頼”って事は”誰か”が依頼したって事だろう?一体”誰”がそんな依頼を出したんだ?」
少女―――ソフィの話を聞いたエステルは驚き、アーシアとフレンは真剣な表情でソフィを見つめて尋ねたが
「………………………」
ソフィは何も語らず黙り込んでいた。
「おい、ガキ。黙っていないで何か言ったらどうだ?」
「ア、アガットさん。そんなに睨んだら答えられないですよ〜。」
「まあ、依頼人の正体や名前を口にしないのは遊撃士のあたし達としても理解できるけど……せめて何の為にその依頼人とやらがそんな訳のわからない依頼を出したのか教えてくれないかしら?」
何も語らないソフィを睨んで答えを促そうとするアガットをティータは諫めようとし、シェラザードは真剣な表情でソフィを見つめた。
「あ、あの、待ってください。確かそちらの方―――ソフィさんの名前に聞き覚えがあるような気がするんですが……」
「そ、そう言えばわたしも聞き覚えがあります……」
その時ソフィの名前に聞き覚えのあるクローゼとティータが申し出
「――――あっ!あのバルバトスって言う奴がヴァルターと戦っていた時に言ってたわ!」
「嘘だろ、オイ……こんなガキがあの滅茶苦茶な野郎を退けた奴の一人だってのか……!?」
二人の言葉からヴァルターとの戦いの際に叫んだバルバトスの言葉を思い出したエステルは声を上げ、アガットは信じられない表情でソフィを見つめた。
「話には聞いていましたが、まさかそちらから接触をしてくるとは………一体何の為に我々の前に現れたのですか?」
「……エステル達を手伝ってエステル達を守って欲しいって、私に依頼した人に頼まれた。それだけだよ。」
真剣な表情のエルナンに尋ねられたソフィは静かな表情で淡々と答えた。
「ねえ!貴女、黒髪の双剣使いの小僧――――ヨシュアと一緒にあのバルバトスって奴と戦ったんでしょ!?ヨシュアはどこにいるの!?もしかしてその”依頼人”ってヨシュアなの!?」
「……貴女はどうしてそのヨシュアという人を追っているの?」
血相を変えて自分を見つめるエステルにソフィは静かな表情で尋ねた。
「勿論連れ戻す為よ!またみんなで一緒に暮らす為に!」
「……例えその人に深い事情があって、貴女達の元に戻る事を望んでいなくても連れ戻すつもりなの?」
「当然よ!あたしは絶対にヨシュアを連れ戻すって決めたんだから!」
ソフィの問いかけにエステルが決意の表情で叫んだその時ソフィは突如拳をエステルの顔ギリギリに止めた!
「!!!」
顔ギリギリに拳が迫った事にエステルは目を見開き
「お、おねえちゃん!」
「エステル!」
「エステルさん!」
「このガキ……!一体いつの間に攻撃態勢に入りやがった……!?」
「拳を構える瞬間すら見えなかったぞ……!」
(あの娘……守護騎士(ドミニオン)―――いえ、下手をしたらアインクラス……!?)
(お、おいおい……一体どんな滅茶苦茶な強さを持つ奴なんだ……?)
ティータやシェラザード、クローゼは心配そうな表情で声を上げ、アガットとジンはそれぞれ武器を構えてクラトスを睨み、ソフィを厳しい表情で睨みながら呟いたアーシアの小声の言葉を聞いたフレンは信じられない表情でソフィを見つめていた。
「――――”身喰らう蛇”の”執行者”という人達にも敵わない貴女達では難しいから、止めた方がいいよ。それが貴女達の為。」
「テメェ……!」
「言ってくれるわね……!」
「いやはや……この面子を相手にたった一人で堂々と喧嘩を売るなんて、レン君以上のとんでもないリトルレディだね。」
ソフィの忠告を聞き、図星を突かれたアガットとシェラザードはソフィを睨み、オリビエは疲れた表情で溜息を吐いた。
「例え今のあたし達の実力では無理かもしれないけど……それでも必ずヨシュアを連れ戻し、”結社”の企みを止める!ヨシュアの家族として!遊撃士として!」
「エステルさん……」
「ハハ、さすがは旦那の娘だな。」
決意の表情でソフィを睨んで叫んだエステルの言葉を聞いたクローゼは明るい表情をし、ジンは感心し
「―――でも、エステルの言葉に一理あるわね。」
「ああ。今は無理でも俺達だって成長しているんだ。俺達が協力すればどんな”壁”も超えられる……!」
静かな笑みを浮かべるアーシアの言葉にフレンは口元に笑みを浮かべて頷き
「………………………貴女のその目、アスベルに少し似ている。」
「え?」
ソフィは静かな表情で呟いた後拳をエステルから退いた後周囲の人物を見回し
「―――だったら、貴女達の実力を見せて。模擬戦の結果によって私が知っている限りの情報や私の目的を貴女達に教えてもいいよ。」
静かな口調で宣言した。
「上等じゃない!あたし達の力、見せてあげるわ!」
「へっ、一人で俺達に喧嘩を売った事……この重剣で後悔させてやるよ!」
「”銀閃”の力、見せてあげるわ!」
「さすがにここまで言われちゃ、俺も遊撃士の一人として黙っていられん。勿論、俺も参戦させてもらう。」
「―――例えどのような強敵でもやりようによっては私達でも勝てるはずよ。」
「俺は遊撃士じゃねえが、ずっとアーシア達を手伝って来たサポーターとして加勢するぜ!」
ソフィの宣言に対し、エステルを含めた遊撃士達とフレンは交戦の意志を叫び
「はわわわわわっ!?」
「…………………」
「フフ、遊撃士協会の精鋭部隊と”執行者”をも圧倒した男を撃退した謎のリトルレディとの模擬戦か。興味深いカードだね。」
エステル達の様子にティータは慌て、クローゼは不安そうな表情をし、オリビエは興味深そうな表情で見つめ
「―――王都の入り口で待っているよ。準備を整えたら私に話しかけて。そこから模擬戦の場所へ移動するから。」
ソフィは静かな口調で呟いた後その場から去って行った。
「えっと、エルナンさん。そう言う訳だから……」
「ええ、武運を祈っています。―――相手は”執行者”をも圧倒した者を撃退した強者です。くれぐれも準備を怠らず、彼女の見た目に油断しないで挑んで下さい。」
「うん、わかっているわ。」
ソフィに続くようにエルナンに伝えたエステル達もギルドから去って行った。
「―――ソフィ・ラントですか。一体何者なのでしょう……?”執行者”をも軽く越える腕前なら、噂になってもおかしくないのですが………」
エステル達が去るとエルナンは真剣な表情で呟いた後資料を出して調べ始めた。そしてエルナンが資料で調べているとギルドの出入り口が開く音がし、音を聞いたエルナンが資料を調べるのを中断して出入り口に視線を向けるとそこには見覚えのある男性が金髪の青年と共にいた。
「久しぶりだな、エルナン。」
「バダックさん。ようやく到着されたのですね。」
「ああ。前の仕事が少々長引いたせいで、合流が遅くなった。それで状況は一体どうなっている?」
「はい、実は………」
そしてエルナンは男性―――バダックに事情を説明し始めた。
〜グランセル〜
一方装備等を整えたエステル達が王都の入口で待つソフィに話しかけるとソフィは歩き始め、エステル達はついて行き始め、そこに偶然遊撃士協会の支部に入ろうとした金髪の青年がエステル達に気づいた。
「あの女学生は……クローディア?という事は彼女達が……一体彼女達はどこに向かうんだ?」
エステル達の中にいるクローゼに気づいた青年は目を丸くした後エステル達の後を追った。その後模擬戦にちょうどいい場所に到着するとエステル達はソフィと対峙した。
〜キルシェ通り〜
「私か貴女達全員が戦闘不能になれば模擬戦は終わり。勿論アイテムやアーツ、技や術で味方の傷や戦闘不能を回復することもあり。それでいい?」
「ええ。」
ソフィの確認の言葉に棒を構えたエステルは頷き
「気を付けて、エステル!”執行者”相手に圧勝したバルバトスという男を撃退できたという事は少なくてもあのロランス少尉すらも比べものにならないぐらいの桁違いの強さよ!見た目に誤魔化されないように、注意しなさい!」
「へっ、あの赤ヘルム野郎にリベンジする前の準備運動としてちょうどいい相手だ……!」
「俺の”泰斗”の拳……どこまで通じるか確かめさせてもらうぞ!」
「どんな強敵だろうと、絶対に勝って見せるぜ……!」
(あの娘……本当に何者!?感じる”気配”が少しおかしいわ……!)
シェラザード達が武器を構えてソフィを睨んでいる中、アーシアは戸惑いの表情でソフィを見つめていた。
「が、がんばって、みんな〜!」
「エイドスよ……どうかエステルさんに勝利のご加護を……!」
離れた場所で観戦するティータは応援し、クローゼは強く祈り
「……どうして彼女達は貴女達と一緒に戦わないの?彼女達も貴女達の仲間なんでしょう?」
応援しているティータ達の様子を見たソフィは不思議そうな表情でエステルを見つめて訊ねた。
「確かにそうだけど、この模擬戦は私闘のようなものよ。あたし達遊撃士の為に自分達の普段の生活を中断してあたし達に協力してくれているクローゼ達まであたし達の私闘に巻き込めないわ。」
「そう。貴女達がそれでいいのならいいよ。」
エステルの答えを聞いたソフィは静かな表情で答えた後攻撃態勢に入った。
「フッ、それでは模擬戦始めだっ!!」
その時戦闘の合図を担うオリビエが銃を空へと向けて空砲を撃ち、その瞬間エステル達はソフィとの模擬戦を開始した!
今ここに!異世界の”英雄”に挑む戦いが始まった!
と言う訳で改訂前のクラトス戦のように次回はソフィ戦です!戦闘BGMはグレイセスの”決戦!奮い立たせて”かゼスティリアの”旋律と拳閃が交わる終極”だと思ってください♪
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第45話 | ||
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