本編補足
[全12ページ]
-1ページ-

得たもの

-2ページ-

C1 終戦

C2 お誘い

C3 ジム

C4 愛情

C5 用心棒

C6 激震

C7 再会

C8 大虐殺

C9 風評

C10 約束の地

-3ページ-

C1 終戦

 

昼。暗黒大陸連邦。ヴァルジ州コートロイヤル丘陵地に作られた塹壕。周りには人型機構の部品から作られたバリケード。塹壕の所々から出て来る暗黒大陸連邦北軍の兵士達。砂塵が彼らを包む。塹壕から出て、胸ポケットから煙草の箱を取り出し、煙草を一本取ると口に咥える暗黒大陸北軍の兵士で豚獣人のピッチ。塹壕から顔を出す暗黒大陸連邦北軍の兵士クーガー獣人のローバー。塹壕から出てピッチの横に立つ暗黒連邦北軍の兵士でボクサーで黒人のゴメス。

 

ゴメス『終わったか。』

 

ゴメスの方を向くピッチ。

 

ピッチ『ああ、終わった。』

 

ピッチはゴメスの方を向き、煙草の箱を彼の方に向ける。

 

ピッチ『あんたも吸うか?』

 

ゴメスはピッチの方に掌を向け、首を横に振る。

 

ゴメス『いや、いい。』

 

ピッチの傍らに寄るローバー。

 

ローバー『俺はもらうぜ。』

 

ピッチはローバーに煙草の箱を一振りして向ける。煙草を一本取りだして、地面に座り、ゴメスの方を向くローバー。

 

ローバー『あんた本当に吸わなくていいのかい?』

 

空をジャブするゴメス。

 

ゴメス『俺はやりたいことがあるんだ。煙草はやらねえ。』

ピッチ『ああ、あんたボクサーだったな。確か州のチャンピオンまでいったとか。いいねえ。やりたいことがあって。』

 

ライターの火をつけ、煙草の先端に火をつけるピッチ。

 

ゴメス『あんたらはどうするんだ?』

 

ゴメスの方を向くピッチとローバー。

 

ローバー『俺はとりあえず故郷に帰る。』

ゴメス『そうか。』

 

ピッチの方を向くゴメス。

 

ゴメス『あんたは?』

ピッチ『俺か。俺はそうさね。一回、実家に戻るよ。』

ゴメス『そうか。』

ピッチ『メリオット州のタイソっていう小さな田舎町だけどよ。そこでまあ、親父の手伝いでもしながらゆっくりと暮そうかね。』

 

頷くゴメス。彼らは塹壕の人型機構の部品で作られたバリケードと歩いていく暗黒大陸連邦北軍の兵士達を見つめる。

 

ローバー『

 

ユランシアからの支援品 玉当たりの転がりや 味方殺しのデクノボウ

 

ピッチ『まあ、そういうな。一応助けられたじゃないか。分解されてからな。』

 

笑い出す三人。

 

ローバー『はん。支援するならもっとましなのよこせよ。大陸の貴族様は騎士道精神という精神病患者が蔓延してるんじゃねえか?』

ピッチ『まったくだ。』

ゴメス『ふざけてんな。まあいいさ。俺達は生き延びた。』

 

頷くゴメス、ピッチにローバー。

 

ピッチ『しかし、バッテリや発電機は欲しかったな。そう言えば将校用?貴族用?一回りでっかい奴があったが、あれは家にするのにもってこいだった。』

ローバー『諦めろ。いい部品は全部上の奴が持って行っちまう。…だろ。』

 

頷くピッチ。

 

ピッチ『そうだな。はは。』

 

暗黒大陸連邦北軍の兵士達は談笑しながら、本部のテントの方へ向かって行く。

 

C1 終戦 END

-4ページ-

C2 お誘い

 

夜。シルヴィア州フィラス。フィラス駅に止まる列車。右手に鞄を持ち、駅に降り立つゴメス。彼は微笑んで周りを見回した後、左手を広げ、掌を見つめた後、握りしめ、改札口の方へ歩いていく。

 

シルヴィア州フィラス。アーサマーバー。カウンター席に座るゴメス。

 

ゴメス『ビールを。』

 

頷くアーサマーバーのバーテンダーA。TVを見るニュース。画面に映る南北戦争で子供を失った親達。

 

南北戦争で子供を失った親A『名将と言われるバニシング将軍の軍にいながら私達の息子は見捨てられたのです。』

 

鼻で笑うゴメス。

 

ゴメス『遺族のいねえ奴は講義すらできねえのによ…。』

 

ゴメスの前にビールの入った瓶を置くバーテンダーA。

ゴメスの方を見て、ゆっくりと近づいてくる女性のリーアン。

 

リーアン『あら…あなたどこかで見たことあるわ。』

 

リーアンの方を向いて立ち上がるゴメス。

 

ゴメス『そうかい。』

 

ゴメスはファイティングポーズを取る。眼を見開いて頷くリーアン。

 

リーアン『ああ、4年前の州チャンピオンの!えっと…。』

 

額に手を当てるリーアン。

 

リーアン『ゴメス!』

 

ゴメスを見つめるリーアン。頷き、椅子に座るゴメス。

 

ゴメス『ああ。そうだ。』

リーアン『でも、最近の州チャンピオンは違うわ。コーデリック。そう…確か。』

 

2、3回頷くゴメス。

 

ゴメス『最近の大会には出てねえ。』

リーアン『あら、どうして?負けたって聞いてはいないけど?…ジムともめたとか?』

 

首を横に振るゴメス。

 

ゴメス『違うさ。戦争に行っていたんだよ。』

 

眼を見開くリーアン。

 

リーアン『まあ。』

ゴメス『南北のな。おかげでこの有様だ。だが、俺はそのコーデリックって奴をぶちのめしてやれるぜ。』

リーアン『まあ、素敵ね。』

 

リーアンとゴメスは互いを見つめあう。

 

 

朝。シルヴィア州フィラス。コウテイジモーテルのベットの上にシーツにくるまったリーアン。立ち上がり、着替えをするゴメス。

 

リーアン『何処に行くの?』

 

頷くゴメス。

 

ゴメス『フィラスボクシングジムに行くぜ。』

リーアン『私もついていっていい?』

 

ウィンクするゴメス。

 

ゴメス『もちろんだ。』

 

C2 お誘い END

-5ページ-

C3 ジム

 

昼。シルヴィア州フィラス。フィラスボクシングジムの前に立つゴメスとリーアン。

 

ゴメスはリーアンの方を向く。

 

ゴメス『ちょっと待ってろ。すぐ終わるからよ。』

 

頷くリーアン。フィラスボクシングジムに入って行くゴメス。ゴメスの背を見つめるリーアン。

 

ボクシングジム内部。サンドバックを叩くボクサー達。リングの上ではコーチAが、ボクサーAとスパーリングを行っている。リングに近づくゴメス。ボクサーAの拳を受け止めた後、ゴメスの方を向いて目を見開くコーチA。

 

コーチA『おお、ゴメスじゃねえか。』

 

ゴメスはコーチAの方を向く。スパーリングを止めるコーチA。

 

コーチA『久しぶりだな。』

 

コーチAはリングから降りる。

 

ゴメス『ああ。』

 

コーチAはゴメスの肩を叩く。

 

コーチA『そうかそうか。お前が徴兵されてから、もう4年か。』

ゴメス『くたばっちゃいねえ。』

コーチA『まあ、積もる話もあるからな。場所を変えよう。』

 

頷くゴメス。

 

コーチAはコーチBの方を向く。

 

コーチA『少し外すぜ。』

 

頷くコーチBとボクサー達。出ていくコーチAとゴメス。

 

 

昼。シルヴィア州フィラス。フィラスボクシングジムの控室。

 

コーチA『しかし、変わったな。』

 

頷くゴメス。

 

ゴメス『まあな。軍にいりゃ嫌という程、鍛えられるさ。ところで州チャンピオンのコーデリックって奴だが、どんな奴なんだ?俺が一発でブチのめしてやらあ。』

 

眉を顰めてジャブをするゴメスを見つめるコーチA。

 

コーチA『…コーデリックと戦う。お前は4年も前のチャンプだ。』

 

コーチAを見つめるゴメス。

 

ゴメス『何言ってんだ?俺は世界チャンプになれる器って…あんた言ったよな。』

 

俯くコーチA。

 

コーチA『4年も前の話だ。それに、お前、自分の年齢を考えたことがあるのか!?』

 

眼を見開くゴメス。顔を上げゴメスを見つめるコーチA。

 

コーチA『残念ながら、お前の年齢じゃあ正式な試合は禁止されているんだ。』

 

俯くゴメス。

 

コーチA『…すまんな。』

 

控室から去って行くコーチA。暫くして顔を上げ、控室の扉から駆け出ていくゴメス。彼はスパークリングするコーチAの居るリングに駆け寄る。

 

ゴメス『…お、おい。俺だってボクシングをやっていたんだ!コーチぐらいはできる!』

 

ボクサーAの拳を受けるコーチA。

 

コーチA『…無理だな。』

 

眼を見開くゴメス。ボクサーAは動きを止め、コーチAはゴメスを見下ろす。

 

コーチA『残念なことにもうコーチは足りているんだ。』

 

肩を落とすゴメス。彼を見つめる一同。ゴメスはフィラスジムから出ていく。

 

 

夕方。シルヴィア州フィラス。フィラスボクシングジムの前に置かれたベンチに座るリーアンはフィラスボクシングジムから出て来るゴメスを見て、立ち上がって駆けていく。

 

リーアン『どうだった。』

 

首を横に振るゴメス。

 

ゴメス『駄目だった…。』

 

ゴメスはリーアンの肩に手をかける。

 

ゴメス『…でも、大丈夫だ。俺は州大会のチャンピオンだぜ。他のジムが放っておかねえ。解説者にも呼ばれるかもしれねえんだぜ!』

 

笑みを浮かべるゴメス。

 

ゴメス『安心しろって。』

リーアン『そう。そうだよね。』

 

ゴメスの腕に抱き付くリーアン。フィラスボクシングジムを後にするゴメスとリーアン。

 

アンティラ州バラマス。アンティラタワーの屋上にあるライオンの石像に数羽の鳥が止まっている。バラマスボクシングジムから出て来て地団太を踏むゴメス。飛び立つ鳥。

 

ゴメス『なんだ!こんな田舎のヘタレジム、こっちからお断りだぜ!』

 

バラマスボクシングジムを見つめ、睨み付けるゴメス。

 

ゴメス『今に見てろクソったれ、俺が解説者になったら覚えてやがれ!』

 

鼻息を荒げ、去って行くゴメス。

 

C3 ジム END

-6ページ-

C4 愛情

 

シルヴィア州フィラス。北部放送情報局の一室。テーブルを挟んでパイプ椅子に座る北部情報局員Aとゴメス。

 

ゴメス『ああ。俺はあのゴメスだぜ。4年前世界チャンプ確実と言われたな。』

 

首を横に振るゴメス。

 

ゴメス『まあ、戦争に参加してそれも無くなっちまったが、だがよ。俺はボクシングには詳しい。任せておいて損はないぜ。』

 

ゴメスを見つめ、眉を顰めて俯く北部情報局員A。

 

ゴメス『…どうした?』

 

顔を上げる北部情報局員A。

 

北部情報局員A『…いえ、残念ながら。』

 

眼を見開き、北部情報局員Aを睨み付けるゴメス。彼は机を叩く。

 

ゴメス『残念ながら!残念ながら!残念ながら!その言葉を何回聞いたと思っているんだ!それで、お前らはその後に決まってこういう。その仕事は世界チャンピオンになった奴がやっているからと!!!』

 

北部情報局員Aとゴメスのいる一室を見つめる、北部放送情報局の社員達。暫し沈黙。三人のガードマンが駆けて、ゴメスと北部情報局員Aのいる一室に飛び込む。ガードマンの方を向く北部情報局員A。

 

北部情報局員A『つまみだせ!』

 

頷くガードマン達。北部情報局員Aはゴメスを睨み付ける。

 

 

シルヴィア州フィラス。コウテイジモーテルの一室の扉を開けるゴメス。

 

ゴメス『帰ったぜ。』

リーアン『おかえり。ダーリン。』

 

肩を落とすゴメスを見つめるリーアン。

 

ゴメス『…また、落ちた。』

 

眼を大きく見開き、口を大きく広げるリーアン。

 

リーアン『また!!』

 

ゴメスを平手打ちするリーアン。

 

リーアン『アンタ、最低ね!州大会のチャンピオンだからどんなに金持ちで名声があるかと思ったのに!とんだ見込み違いだわ!』

 

呆然とするゴメス。ゴメスに背を向けるリーアン。瞬きしてリーアンを見つめるゴメス。

 

ゴメス『待、待ってく…。』

 

ゴメスを睨み付けるリーアン。

 

リーアン『この役立たずが!!』

 

勢いよく閉まる扉。音が鳴り響く。眼を見開いて、蹲るゴメス。

 

C4 愛情 END

-7ページ-

C5 用心棒

 

シルヴィア州フィラス。街道を歩くゴメス。彼は歩みを遅めて、ポケットから財布を取り出し、小銭を見つめる。ため息をつくゴメス。

 

ゴメス『ふぅ…これだけか。』

 

周りを見回すゴメス。夕闇が彼を覆う。彼は振り返り、灯がともる街の方を向いた後、俯く。エンジン音。車のライトがゴメスを照らす。クラクションの音。街道に止まるギャングカーを見つめるゴメス。ギャングカーのサイドウィンドが開き、顔を出すギャング団アールカープラーのギャングスタA。

 

アールカープラーのギャングスタA『あれれ。これはこれはフィラス州チャンピオンのゴメス様じゃございませんか。』

 

ゴメスはギャングカーに近づく。

 

ゴメス『俺を知ってんのか。』

アールカープラーのギャングスタA『もちろん。4年前の州大会の一発KO勝ちも見ていましたよ。旦那。』

 

アールカープラーのギャングスタAはゴメスに手を差し伸べる。握手するゴメスとアールカープラーのギャングスタA。

 

アールカープラーのギャングスタA『旦那に俺達の直属の上司が会いたいっていってるんですよ。』

 

ゴメスを見つめるアールカープラーのギャングスタA。ゴメスはギャングカーを見た後、彼を見つめる。

 

ゴメス『…ギャングのアールカープラーか。』

 

肩を上げるアールカープラーのギャングスタA。

 

アールカープラーのギャングスタA『気に入りません?』

 

首を横に振るゴメス。

 

ゴメス『いや…。』

 

ゴメスはガングカーの前を通り、助手の扉を開けて乗り込む。2、3回頷くゴメス。

 

ゴメス『イカした趣味してると思っただけだ。』

アールカープラーのギャングスタA『ああ、そう。』

 

動き出すギャングカー。

 

 

シルヴィア州フィラス。郊外にある売春宿の前に止まるギャングカー。ドアを開けて降り立つゴメスと

アールカープラーのギャングスタA。

 

アールカープラーのギャングスタA『ちっと汚いが…。』

 

ゴメスは売春宿に居る売春婦たちを見回す。

 

ゴメス『悪かないぜ。』

アールカープラーのギャングスタA『そうか。こっちだ。』

 

アールカープラーのギャングスタAの後をついていくゴメス。アールカープラーのギャングスタAは売春宿の扉を開け、ゴメスとともにそこへ入って行く。

 

 

シルヴィア州フィラス。郊外にある売春宿。プライベートルームの前に立つアールカープラーのギャングスタAとゴメス。

アールカープラーのギャングスタAは扉をノックする。

 

アールカープラーのギャングスタA『ボス!お連れしました!』

シュプッツドゥードゥーの声『ああ、入れ入れ。』

 

扉を開け、プライベートルームの中に入るアールカープラーのギャングスタAとゴメス。プライベートルームの中で、鼻からコカインを吸引するアールカープラーのシルヴィア州フィラス支部幹部でベーグル犬獣人のシュプッツドゥードゥーと売春婦Aと売春婦B。顔を上げるシュプッツドゥードゥー。

 

シュプッツドゥードゥー『おお、あんたがゴメス先生か。』

 

頷くゴメス。

 

シュプッツドゥードゥー『あんたの戦績は聞いてるぜ。相当強かったんだってな。』

 

空に右ストレートを打つゴメス。眼を見開く一同。暫し、沈黙。

 

ゴメス『今でも十分やれる。』

 

手を叩く売春婦Aと売春婦B。

 

売春婦A『キャーすごい!』

売春婦B『ステキ!』

 

笑みを浮かべるゴメス。シュプッツドゥードゥーは上体を起こす。

 

シュプッツドゥードゥー『すげえな…。これならサイモン・ファミリーに襲われても安心だ。』

 

眉を顰めるゴメス。

 

ゴメス『サイモン?』

シュプッツドゥードゥー『俺達の縄張りを荒らしまわる新参…者さ。まあ、殺されたダイモンの部下だがな。どうも南部の連中が兵器を横流ししてるらしくてよ。』

ゴメス『ほう…。』

シュプッツドゥードゥー『あんたがいると心強い。どうか用心棒になってくれねえか。もちろん金は払うさ。』

ゴメス『…金。』

 

シュプッツドゥードゥーを見つめるゴメス。

 

ゴメス『分かった。』

 

膝を叩くシュプッツドゥードゥー。

 

シュプッツドゥードゥー『話が早くて助かるよ。俺はシュプッツドゥードゥーってんだ。シュプッツドゥードゥーってんだ。よろしくな。旦那。いや、先生。』

 

立ち上がり手を差し伸べるシュプッツドゥードゥー。彼の手を握りしめるゴメス。

 

ゴメス『こちらこそ。』

 

C5 用心棒 END

-8ページ-

C6 激震

 

シルヴィア州フィラス郊外の売春宿。プライベートルーム。鼻からコカインを吸引するシュプッツドゥードゥー。扉の前に立つゴメス。

 

シュプッツドゥードゥー『くぅ〜。キクぜ。』

 

顔を上げ、ゴメスを見つめるシュプッツドゥードゥー。

 

シュプッツドゥードゥー『あんたもやるかい?』

 

シュプッツドゥードゥーを見つめるゴメス。

 

ゴメス『俺はやらねえ。』

 

眼を見開くシュプッツドゥードゥー。一歩前に出るゴメス。

 

ゴメス『俺がラリったら誰が用心棒をするんだ?』

 

笑い出すシュプッツドゥードゥー。

 

シュプッツドゥードゥー『ははは。悪ぃ悪ぃ。それもそうだな。しかし、あんた最近、土地を買おうとしてるってんじゃないか?不動産屋のダニエルズから聞いたぜ。』

 

シュプッツドゥードゥーを見て、頷くゴメス。

 

ゴメス『ああ、特に最近は何も起こらないからよ。』

シュプッツドゥードゥー『そうだな。ノーコサリアーで親父がサイモンの奴らにヤキを入れてやったから、奴ら小便ちびちまったんじゃねえか。それで…。』

ゴメス『ヤキか…。』

シュプッツドゥードゥー『やりすぎだって顔してんな。おいおい、悪ガキどもはそうやってしつけなきゃ、増長するぜ。で、あんたどうして土地なんか…。』

 

軽くジャブするゴメス。

 

ゴメス『・・・あそこにボクシングジムを建てる。やっぱり、俺はどうしてもボクシングに関わりたくてしかたないらしい。はっ、笑える話だがよ。』

 

拍手するシュプッツドゥードゥー。

 

シュプッツドゥードゥー『そうかい。そうかい。そいつは立派な志だな。まあ、イザコザが終わったら俺にも協力させてくれ。催し物の収益はでかいからよ。』

 

頷くゴメス。

 

ゴメス『ああ。その時は頼む。』

 

 

シルヴィア州フィラス。エッグヤードの更地に止まるギャングカーと普通車。ゴメスとアールカープラーのギャングスタAにシルヴィア州フィラスの不動産屋のダニエルズが立つ。

 

ゴメス『前金は払った。この土地はだいたい俺のもんだろ。』

 

腕組みをしてダニエルズを見つめるゴメス。

 

ダニエルズ『まあ、前金を貰っただけだ。』

 

首を横に振り、笑みを浮かべるゴメス。

 

ゴメス『…あと少しか。後少し…このままいきゃ。』

 

ダニエルズはゴメスを見た後、普通車に乗る。

 

ダニエルズ『後の金を払えば、この土地はお前のもんだ。好きにしろ。』

 

笑みを浮かべるゴメス。

 

ゴメス『ああ、分かってるぜ。』

 

砂煙を上げながら去って行くダニエルズの乗った乗用車。ゴメスは更地を見ながら腕組みし、何回も頷く。ゴメスを見つめるアールカープラーのギャングスタA。

 

アールカープラーのギャングスタA『旦那、そろそろ…。』

 

エンジン音が鳴り、現れるアールカープラーのギャングスタBの運転するギャングカー。

 

アールカープラーのギャングスタA『なんだ?』

ゴメス『…どうした?』

 

更地に止まるアールカープラーのギャングスタBの運転するギャングカー。車の窓から上半身を出すアールカープラーのギャングスタB。

 

アールカープラーのギャングスタB『た、大変だ!親父がパクられた!』

 

眼を見開くアールカープラーのギャングスタA『な、何だと!親父が!それは本当なのか!!』

 

ドアを叩くアールカープラーのギャングスタB『本当だ!政府の奴ら裏切りやがった!今、ガサ入れで、ボスもパクられそうだ!』

 

地面を踏みつけるアールカープラーのギャングスタA。

 

アールカープラーのギャングスタA『ボスはハナがきかねえんだ。すぐにパクられる!クソッ!北部の日和見野郎どもが!』

 

ギャングカーに乗るアールカープラーのギャングスタA。ゴメスは彼らの車に駆け寄る。

 

ゴメス『お、おい!待てよ!俺はどうするんだ!俺…。』

アールカープラーのギャングスタA『知るか!自分で何とかしやがれ!』

 

エンジン音を鳴り響かせ、走り去るアールカープラーのギャングスタAの運転するギャングカーとアールカープラーのギャングスタBの運転するギャングカーを見つめ、呆然とするゴメス。

 

C6 激震 END

-9ページ-

C7 再会

 

シルヴィア州フィラス。ポーロマル地区の街を肩を落として歩くゴメス。

 

ゴメス『…ちくしょう!後ちょっとだってのに!アールカープラーのクソ野郎!!!』

 

壁を殴るゴメス。紙の潰れる音。

 

ゴメス『んっ?』

 

ゴメスは壁の方を向く。拳の先にはしわくちゃになったトロメイア派兵の暗黒大陸連邦志願兵募集のポスター。ゴメスはそれを剥がして見つめる。

 

ゴメス『…これは。なんだ?兵士募集してんのか…。』

 

2、3頷いてポスターの字を見つめるゴメス。

 

ゴメス『これだ!これだこれだこれだ!!!』

 

眼を見開き、飛び上がるゴメス。

 

 

シルヴィア州フィラス。ポーロマル地区、ダニエルズの不動産屋に入るゴメス。ダニエルズはゴメスを見る。

 

ダニエルズ『おや、あんたは。』

 

鼻で笑うダニエルズ。

 

ダニエルズ『御愁傷さんだな。ア-ルカープラーの野郎は逮捕されたし、ここを取り仕切ってた奴らもブタ箱行だ。お前さんに金の支払い能力もねえし…。』

 

首を横に振るゴメス。

 

ゴメスは暗黒大陸連邦志願兵募集のポスターを見せつける。

 

ゴメス『俺はこいつに参加するぜ。』

 

ダニエルズは暗黒大陸連邦志願兵募集のポスターを見つめる。

 

ダニエルズ『ほう。』

ゴメス『だから、あの土地を他の奴らに売るのは待ってほしい。だいたい俺はもう前金払ってんだ。』

 

頷くダニエルズ。

 

ダニエルズ『分かった。』

ゴメス『そうか。ありがとよ。じゃあ契約書にサインしとくぜ。』

 

頷くダニエルズ。

 

 

ニュークタウン州ニューク練兵所の門をくぐるゴメス。彼は周りを見回す。兵士達が至る所に居る。ゴメスの方を向くピッチとローバー。彼らはゴメスに駆け寄って行く。

 

ローバー『おう。久しぶりだなボクサー。』

ピッチ『よう。』

 

彼らを見て微笑むゴメス。

 

ゴメス『おお、お前らも来てたのか。』

ローバー『まあな。』

ピッチ『そうさね。』

ゴメス『実家の作業はどうだ?』

ピッチ『親が農場を売っちまってな。どうにもこうにもさ。』

ゴメス『そうかい。』

ローバー『あんたはどうだい。ボクサー。話題はでないがな。』

 

ピッチとローバーを暫し見つめるゴメス。

 

ゴメス『駄目さ。年齢制限に引っかかってよ。でも、俺は諦めちゃいない。この仕事が終わったら、ボクシングジムをはじめるんだ。』

ローバー『そうか。そりゃよかった。』

ピッチ『俺はこの戦争が終わったら、実家にガソリンスタンドを建てるよ。今は儲かるらしいからな。』

 

笑う三人。

 

C7 再会 END

-10ページ-

C8 大虐殺

 

トロメイア大国シンジメルの前線基地。簡易に整備された巨大滑走路の横に置かれる十数機の暗黒大陸連邦の超巨軍用機サンダーバード。超巨軍用機サンダーバードNo3345の機内には数名の暗黒大陸連邦兵士達とゴメス。

 

ゴメス『飛行機内で野宿か。』

暗黒大陸連邦兵士A『安心しろボクサー。スラムで眠っちまうよりましさ。』

ゴメス『ああ。少なくとも屋根と天井があるからな。少し外へ行ってくる。』

 

立ち上がるゴメス。

 

暗黒大陸連邦兵士B『観光か?』

ゴメス『小旅行だよ。風に当たってくるだけだ。』

暗黒大陸連邦兵士C『風邪をひくなよボクサー。折角のチャンスにストレートが鈍るぜ。』

 

ゴメスは暗黒大陸連邦兵士達の方を向く。

 

ゴメス『分かってる。すぐ戻る。』

 

頷く暗黒大陸連邦の兵士達。

 

 

トロメイア大国シンジメルの前線基地。堡塁を上がるゴメス。堡塁と共にまばらに配置されるオルソ級小型起動城塞。周りを見つめるゴメス。彼に近寄るオルセンソ王国の兵士バンナバゾー。

 

バンナバゾー『よお。暗連。』

 

オルセンソ王国兵士Aを見つめるゴメス。

 

ゴメス『あんたは?』

バンナバゾー『俺はオルセンソ王国の兵士バンナバゾーだぜ。さっきから周りを見てるがなんかあるのか?』

 

ゴメスはバンナバゾーの方を見る。

 

ゴメス『ああ、ユランシアの軍ってのは大丈夫なのか?あのでかいのを整列させてもいねえがよ。』

バンナバゾー『あのでかいの?整列…。ああ、あんたらは機動“城塞”の使い方も知らんのか?』

 

眼を見開くゴメス。

 

ゴメス『城塞…。ああ、堡塁。贅沢な壁だぜ。』

バンナバゾー『まあな。ところであんた煙草ある?』

 

頷くゴメス。

 

バンナバゾー『ああ。助かった。ここにいる奴らはオンディシアン教国の奴らが多くてな。信仰心が篤いのか、酒も煙草もやりゃしねえ。第一期からきて13年ここにいる奴は好き放題やってるのによ。補充兵も獣人、亜人ばかり。獣臭くてかなわんぜ。』

 

ため息をつくバンナバゾー。ゴメスは煙草の箱を彼に差し出す。

 

バンナバゾー『おお、ありがたい。』

ゴメス『箱さらいいぜ。』

 

眼を見開くバンナバゾー。

 

バンナバゾー『いいのか!?』

 

頷くゴメス。

 

ゴメス『俺は吸わねえ。』

 

笑うバンナバゾー。

 

バンナバゾー『おいおい。暗黒大陸連邦も聖騎士…が多いってわけじゃねえんだろ。』

ゴメス『まさか。』

 

煙草の箱を見つめるバンナバゾー。

 

バンナバゾー『マイエルズイレヴンイレブン?聞いたことのねえ銘柄だな。』

ゴメス『ああ、暗黒大陸連邦の銘柄だ。お口にあうか分からんよ。俺は吸わんからな。同僚はこのクソったれを吸っちゃあいるがな。』

 

煙草を吸うバンナバゾー。

 

バンナバゾー『悪かねえ。覚えておこう。暗黒大陸に観光旅行に行ったら記念に買うよ。』

ゴメス『観光?そんなにたいしたもんじゃねえ。俺達のところじゃスーパーマーケットで箱で買えるぜ。』

バンナバゾー『なら、箱さら買うぜ。ありがとよ。』

 

ゴメスに手を振り去って行くバンナバゾー。ゴメスは振り向いて超巨軍用機サンダーバードの方へ歩いていく。

 

 

トロメイア大国首都ナハジュ上空を覆いつくす大量の超巨軍用機サンダーバード。ゴメスは超巨軍用機サンダーバードNo3345の窓からそれを見つめる。

 

ゴメス『すげえ大量だな。』

暗黒大陸連邦兵士A『各前線基地に分散しておいてあったんだぜ。こんな巨体目立つからな。』

ゴメス『そうか。』

 

ゴメスは超巨軍用機サンダーバード群を見つめる。

 

ゴメス『壮観だな。この分なら下は真っ暗だ。』

暗黒大陸連邦兵士B『見とれて弾を落とすのを忘れんなよボクサー。』

ゴメス『分かってるよ。』

暗黒大陸連邦兵士C『おお、通電!ナハジュ上空突入!頼んだぞボクサー。』

 

頷くゴメス。

 

ゴメス『こいつを引きゃいいんだろ。南軍と機銃を撃ちあうよりマシだ。随分と楽な仕事だぜ。』

暗黒大陸連邦兵士C『投下!』

ゴメス『投下!』

 

超巨軍用機サンダーバード群の爆弾倉が開き、爆弾がナハジュに向かって落とされる。下方では色とりどりの爆発が続く。

 

暗黒大陸連邦兵士A『…終わったな。』

暗黒大陸連邦兵士B『終わった。』

ゴメス『…これで晴れて俺達は鮮血戦争を終わらせた英雄さ。』

 

先頭の超巨軍用機サンダーバードに続いて旋回する超巨軍用機サンダーバード群。

超巨軍用機サンダーバードから脱出艇を切り刻む貴族連合の壮麗な人型機構を見つめる一同。

 

暗黒大陸連邦兵士C『はは。見ろよ!あいつら、あんな人形で遊んでやがる。』

暗黒大陸連邦兵士B『ままごとかよ。』

ゴメス『いや、人形から飛び出してるぜ。曲芸のサーカス見てるみたいだな。』

 

笑い出す一同。

 

C8 大虐殺 END

-11ページ-

C9 風評

 

ワンディントン州カルポルーラ暗黒大陸連邦軍基地。事務所の受付で小切手を貰うゴメス。彼は笑いながら事務所から出ていく。ゴメスの後ろに並んでいた暗黒大陸連邦兵士Dが事務所の受付に歩み寄る。事務所の前に立つピッチとローバー。ゴメスは彼らに手を振る。

 

ピッチ『どうだボクサー。』

 

口角を上げるゴメス。

 

ゴメス『…後金払っても余るぜ。へっへ。まあ、土地さえ買えば、後はジムを建てるために何でもやるさ。』

 

肩を叩くピッチ。

 

ピッチ『良かったな。』

ローバー『暇なときによってやるよ。』

 

顔を上げるゴメス。

 

ゴメス『ああ、いつでも来てくれ。色々と教えてやるぜ。』

 

顔をしかめるローバー。

 

ローバー『おいおい。俺は見るのは得意なんだよ。』

 

笑う三人。

 

 

シルヴィア州フィラス。フィラス暗黒大陸連邦軍基地の外に出て伸びをする暗黒大陸連邦軍の軍服を着たゴメス。

 

ゴメス『ふぅ。久々の街の空気だ。』

 

ゴメスは腰に手を当て周りを見回す。道行く人々がゴメスを見た後、眼をそらす。バックを持ち上げ、歩くゴメス。ゴメスを避けるフィラス州の人々。ゴメスは周りを見回した後、首を傾げる。人々が家に入り、扉を閉める。眉を顰めて顔を上げるゴメス。

 

ゴメス『…歓迎されてねえみたいだな。』

 

首を横に振るゴメス。

 

ゴメス『まあいい。』

 

ゴメスはバックを見つめた後、去って行く。

 

 

シルヴィア州フィラス。マックスマクー不動産屋に入るゴメス。ゴメスを見、急いで書類を整理するしぐさをする事務員達。ゴメスは受付に立つ。

 

ゴメス『ダニエルズさんはいるか?』

 

電話が鳴り響く。ゴメスは事務員達の動きを見る。

 

ゴメス『電話なってるぜ!』

 

首を傾げるゴメス。鳴りやむ電話。

 

ゴメス『どうなってんだ?』

 

周りを見回すゴメス。

 

ゴメス『ダニエルズはいるか!』

 

せわしく動き回る事務員達。ゴメスは受付の机を叩く。大きな音が鳴り響く。マックスマクー不動産屋に入ってくるアパートマンション会社コトワルド取締役のラプタにダニエルズ。

 

ダニエルズ『おいおい。なんでこんな奴を入れてるんだ。』

 

眉を顰めるゴメス。事務員たちの方を向くダニエルズ。

 

ダニエルズ『ガードマンも呼べんのか。腰抜けが。おい、ガードマン!』

 

ダニエルズの方を向くゴメス。

 

ゴメス『ガードマン?強盗でも入ったのか?』

 

セキュリティー室から飛び出し、ダニエルズとアイコンタクトをした後、ゴメスを取り囲むガードマン達。

 

ゴメス『おいおい。なんの冗談だ?一張羅着てこなかった俺への皮肉か?俺は土地を買いに来ただけだ。』

 

バックから小切手を取り出し振るゴメス。

 

ゴメス『後金だってほらちゃんとこんなにある…。』

ダニエルズ『は?戦争終結までと言ったはずだろう。終わってからもう2週間もたってるんだぞ!契約違反だ!』

 

眼を見開くゴメス。

 

ゴメス『何!』

ダニエルズ『それに、お前に売る土地はねえ。国家の恥さらしのお前にな!』

ゴメス『国家の恥!それはどういうことだ!!』

 

ラプタに頭を下げるダニエルズ。

 

ダニエルズ『すいません。このクズのろくでなしをすぐにつまみ出しますので。』

 

ゴメスを見下ろすラプタ。

 

ラプタ『…自覚がないのか?恐ろしいな。あれだけ空爆で罪のない人々…それも女性や子供、老人を殺しておいて。』

 

首を横に振るラプタ。

 

ラプタ『恐ろしい国になったものだ。』

 

眼を見開くゴメス。カードマンがゴメスを取り押さえる。

 

 

バラクマ州バラクラ。車をスーザン酒場。棚に置かれたテレビ。カウンター席に座るゴメス。バーテンダーBはゴメスの顔を見つめる。

 

バーテンダーB『おや、見ない顔だね。』

 

頷くゴメス。

 

ゴメス『シルヴィア州から来た。』

バーテンダーB『シルヴィア州。そりゃまた随分と遠いな。』

 

バーテンダーBを見るゴメス。

 

ゴメス『なけなしの金で服と車を買ったんだ。ドライブにでも出かけたくなるさ。一杯のビールも飲みたくなるさ。』

バーテンダーB『ドライブねえ。この辺はピクニックに適してないぜ。』

ゴメス『そうか。』

バーテンダーB『ここだけの話…。』

 

バーテンダーBはゴメスに耳打ちをする。眼を見開くゴメス。

 

ゴメス『ローバー。』

 

バーテンダーBはゴメスに向かい人差し指を向ける。首を横に振るゴメス。

 

ゴメス『ローバーズっていう知り合いがいたもんでね。そうか。』

 

ビールをゴメスの前に置く女性従業員。ゴメスはビールを一口飲み、泡を見つめる。

 

ゴメス『そうか…。』

 

バーテンダーBの方を向く客A。

 

客A『おい。テレビ見て見ろよ!トロメイア帰りがまた、悪さしてるぜ!』

 

テレビを見つめる一同。上空から見たバラクマ州大都市エデッサの町中。路地を疾走しながら、爆弾を各ビルに投げつけるコンクリートで分厚い装甲がなされた改造車。大きな爆炎がおこり次々と倒れるビル群。分厚い装甲がなされた改造車の窓を開けるボロロンマン・サクラミア。

 

ボロロンマン・サクラミア『もっといいシーンをとらなきゃなんねんだ!もっと迫力のある映像を作らなきゃいけねえんだ!CGなんかのちゃちなもんじゃねえモノホンの!もっと爆発だ!もっと爆発が必要だ!!!』

 

切り替わる画面。カメラがニュースキャスターを映す。

 

ニュースキャスター『今、エデッサにはトロメイアからの帰還兵ボロロンマン・サクラミアの凶行により避難勧告が出されています。現在エデッサの歴史ある建物が次々に壊されていきます。情報によりますと。ボロロンマン・サクラミアはCG部門が新設された映像会社から解雇され、トロメイア大陸への戦争参加に志願したということです。』

客A『映像会社、名前でてねえぞ。』

客B『この局じゃねえのか?』

客C『しかし、あの車はイカすぜ〜!』

客A『同感だ。』

客B『確かに。』

 

ニュースキャスターに駆け寄るAD。彼を見つめ、頷くニュースキャスター。

 

ニュースキャスター『今、ボロロンマン・サクラミアに向けたメッセージをジャックしました。発信主は…君、これ本当!すぐに、すぐに切り替えて!』

 

テレビを見つめる一同。

 

シモン・セイブフィールド『んふっ、初めまして。僕はシモン・セイブフィールド。爆弾魔法魔って言えば分かるかな。君の映像見せてもらってるよ。とても素晴らしい芸術ショーだね。爆発こそ芸術の粋。CGなんて飾り物だよ。君の仕事は本当に素晴らしいよ。僕の右手が離せない程に激しく、刺激的で官能的な…。はああんっ!はぁ…いくっ!ふぅ…こんな興奮、久々…もっと、続けて、君の素晴らしい芸術ショーをさ。もっと…。』

 

顔を見合わせ、眉を顰めて肩を上げる客達。

 

客A『相変わらず変態だな。爆弾魔法魔はよ。』

 

 

メリオット州タイソ。エンジン音を鳴らし、ゆっくりと移動するゴメスをのせた車。窓から外を見るゴメス。

 

ゴメス『ええと街道沿いの一本の木があるところ…だったか?』

 

ゴメスは一本の木の後ろに見える寂れたガソリンスタンドを見つめる。

 

ゴメス『へっへ。あれか。アイツ元気にしてるかな。』

 

車をガソリンスタンドの横に止め、降りるゴメス。彼は数歩歩いて周りを見回す。

 

ゴメス『小売店を併設してんのか。シャレてんな。』

 

ガソリンスタンドの方へ向かうゴメス。彼はガソリンスタンドの敷地の中に入る。眉を顰め周りを見回すゴメス。彼を見るタイソの村人A。

 

村人A『あんた!』

 

ゴメスは村人Aの方を向く。ゴメスに近づく村人A。

 

村人A『そのガソリンスタンドはやってねえぜ。』

 

眼を見開くゴメス。

 

ゴメス『やってねえ?』

 

頷く村人A。

 

村人A『村の恥っさらしが首をくくったのさ。』

ゴメス『村の恥さらし?』

 

頷く村人A。

 

村人A『派兵先で女や子ども老人を殺したクソったれさ。誰もそんな奴のガソリンなんて買やしねえ。すぐに経営難になって、首つって死んじまった。自業自得だ。』

 

村人Aを睨むゴメス。後ずさりする村人A。

 

村人A『お、おい。どうした?そんな怖い顔して…もしかしてあんたも?』

 

首を横に振るゴメス。

 

ゴメス『いや、ガソリンを何処で入れようかと深刻に悩んでたところさ。』

村人A『そうか。まあ、どこにトロメイアからの帰還兵が紛れ込んでるかわからねえからな。バラクマの爆弾騒ぎもあったしよ。』

 

村人Aは西の方を向く。

 

村人A『こっから西に向かったところにクラレって村がある。そこにガソリンスタンドがあるぜ。』

 

頷くゴメス。

 

ゴメス『分かった。ありがとう。』

 

車へ向かうゴメス。

 

村人A『あんたも気をつけろよ!』

 

ゴメスは村人Aの方を向く。

 

ゴメス『心配なく。』

 

車に乗り込むゴメス。去って行く車。ゴメスは暫く車を運転し、路肩に止める。ハンドルに頭を付け大泣きするゴメス。

 

ゴメス『ピッチもローバーも…ちくしょう!』

 

ダッシュボードを叩くゴメス。

 

ゴメス『馬鹿野郎!俺達が何をしたって言うんだよ!ただ上からの命令に従って、爆弾を投下しただけじゃねえか!俺達はトロメイアの奴らを解放した英雄じゃねえのかよ!!』

 

C9 風評 END

-12ページ-

C10 約束の地

 

シルヴィア州フィラス。道路を走るゴメスの運転する車。夕日がゴメスを照らす。路肩に車を止め、エッグヤードの土地を見つめるゴメス。近くには途中まで敷かれた線路。建築中の建物。エッグヤードの土地にはアパートマンション株式会社コトワルドの壮麗なマンションがの絵が描かれている看板が立っている。周りを見回すゴメス。

 

ゴメス『駅にマンションだと…。』

 

眼を見開いて、エッグヤードの土地を睨み付けるゴメス。

 

ゴメス『あんの野郎!ハメやがったな!』

 

車を飛ばすゴメス。

 

 

シルヴィア州フィラス。スーパーマーケットに併設されたガンショップ。銃を持ち、弾を大量に持つゴメス。ガンショップのおやじはゴメスを見つめる。

 

ガンショップのおやじ『しかし、お前さんそんなに弾を買って、戦争にでもいくつもりかい?』

 

ガンショップのおやじを見つめるゴメス。

 

ゴメス『いや、心配性でな。弾きらすと怖えからよ。』

 

頷くガンショップのおやじ。

 

ガンショップのおやじ『そうだな。トロメイア帰還兵による事件も多発してるし、まあ、自分の身は自分で守るしかないってことだ。』

ゴメス『そうだな。』

 

ガンショップから出ていくゴメス。

 

 

シルヴィア州フィラス。マックスマクー不動産屋に入るゴメス。ゴメスの方を向く従業員や客達。ゴメスは銃を取り出し、事務員達を受付に歩み寄りながら撃つ。書類が飛び交い、何人かの事務員が倒れる。ゴメスは受付に入り、銃を乱射する。倒れる全ての事務員。身を寄せ合う客達。ゴメスは彼らの方を向く。

 

ゴメス『さっさと行け!お前らに用はない!』

 

震えながら扉から出ていく客達。セキュリティールームから出て来るガードマン達。ゴメスは銃を撃つ。倒れるガードマンの一人。ゴメスは受付の机を背にしゃがみ、リロードする。飛び上がり、銃を連射するゴメス。倒れるガードマン達。ゴメスは二階への階段の方へ向かう。

 

 

シルヴィア州フィラス。マックスマクー不動産屋二階通路。駆けるダニエルズとラプタ。彼らの前に現れるゴメス。

手を上げるダニエルズとラプタ。ゴメスはダニエルズの脳を撃つ。ダニエルズの脳が飛び散り、その場に倒れる。眼を見開くラプタ。ゴメスは銃口を上げる。

 

ゴメス『あんたは関係ない。とっとと行け。』

 

駆け去って行くラプタ。ゴメスは頷いて階下へと降り、外へでて車に乗り、去る。

 

 

シルヴィア州フィラス。エッグヤードの土地に車を止めるゴメス。車から出た彼はしゃがんで土地の砂を握りしめる。

 

サイレンの音が鳴り響く。

 

ゴメスは立ち上がり、地面に?ここは俺の土地だ”という文字を書く。数十台のパトカーが止まり、暗黒大陸連邦の警官隊が駆け出てゴメスを取り囲む。笑みを浮かべるゴメス。

 

ゴメス『…ここは俺の土地だ。』

 

銃口を口に咥え、引き金を引くゴメス。ゴメスを見つめる暗黒大陸連邦の警官隊。脳漿と血が飛びちり、その場に倒れるゴメス。ゴメスの車からラジオの音声が流れる。

 

ラジオの音声『バニシング・バット大統領がトロメイアでの大虐殺の非を認め、辞任しました。』

バニシング・バットの声『暗黒大陸連邦の国民の皆さん。トロメイア大国の戦争に参加した将兵に罪は無い。今回の派兵を決定したことも全て私の大統領としての独断である。戦略上のミスでやむなくトロメイアの罪なき人々を殺させてしまった。まことに申し訳なく思う。全ては私の責任である。どうか、彼らを赦し、隣人として暖かく迎えて頂きたい…。』

 

C10 約束の地 END

 

END

 

説明
・必要事項のみ記載。
・グロテスクな描写がございますので18歳未満の方、もしくはそういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
・心理的嫌悪感を現す描写が多々含まれておりますのでそれういったものが苦手な方は絶対に読まないで下さい。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
351 351 1
タグ
悪魔騎兵伝(仮) R-18グロテスク 

根曲さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com