ゼロの使い魔 AOS 風の女神と忘れられた少年 第01話 蒼い風 |
最初は何が起こっているのか分らなかった。
少年の瞳には轟々と燃え盛る炎が映っている。
どうやら辺り一面、火に包まれているらしい。
熱い……周りにある炎が自分の身体を焼いているのが分かる。
このままでは焼死してしまう。急いでここから離れなければ危険だ。
身の危険を感じてこの場を離れようとする。
だが……身体が動かない。
……なぜ?
炎が酸素を燃やすというのは知っていたがここまで息苦しい物とは思ってもいなかった……くそ!
動けよ!早く逃げないと死んじまうだろうが……さっきからウンともスンともしない。
分からない……解からない……判らない……何で身体が動かないのかワカラナイ。
―― パチッ!バチ!
火の粉が身体の上に飛んでくる。(熱い……そして、痛いよ)
―― メキィ!ゴゴゴゴ……グシャ!
辺りを囲んでいる木が焼かれて、音を立てて少年の身体の上に崩れ落ちてくる。(ぐあっ!?……重い…痛てえよ)
そう……少年は囲まれていた。
全ての生物にとっての光であり、全ての生物に死をもたらす炎と言う名の死神に殺されようとしている。
恐怖……絶望……もう自分は死ぬのだと少年は理解した。
そして、少年は全てを忘れた……人間らしい感情も思い出も全て……全て……。
焼ける臭いがする、今まで嗅いだことの無いような臭いだ。
思い出せない。
焼ける臭いがする、どこかで嗅いだことのあるような臭いだ。
思い出せない。
焼ける臭いがする、今度はよく嗅いだことのある臭いだ。
やっぱり・・・思い出せない。
そして、身体全体を炎が包みこみ全てを燃やし尽くす瞬間がやってきた。
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……まだ、だろうか?
もはや助かる術は無いと諦めていたのだが、炎が『まだ』身体を包み込まない。
……遅い(何故だ?)
視界には漆黒の空と明るい炎のコントラストが映っている。
……遅いな(おかしい……まだ殺さないのかおまえ?)
死神の鎌はまだ振り下ろされない。
………これは?……いったい何なんだ?
少年は気がついた。目の前の炎が……死神がこの場から消えていくのを。
「……なんで。 あんたは……一体?」
そして……。
蒼い風が自分の真上に吹いている事に。
「……」
誰かがいる。
目が炎にやられてよく見えない。
蒼い風の中に舞う、人影がこちらを見ている……そんな気がした。
「はは……なんだ……女神様か。 ありがとう……女神様」
少年は小さくつぶやいて意識を失った。
次回 ゼロの使い魔 AOS 風の女神と忘れられた少年 第02話 「名前」
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これは少年と少女の物語 命が尽きようとしていた少年の運命を変えた日 そして、忘れられた少年が全てを取り戻すまでの風の詩 |
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