乱暴狼藉 |
蠣乃神社の巫女(?)蠣崎香澄は叔父がいる。父・丸恵の弟に当たる人物で、様々な理由で父(すなわち香澄の祖父・征美)と対立して家を飛び出し、その後紆余曲折を経て現在はフランスでファッションデザイナーをしており、現在では自前のブランドを立ち上げるまでになっている。
その叔父・真琴と香澄はその日で会う約束をしていた。真琴はフランスに生活の基盤を置いているとはいえ、デザインのインスピレーションや服の材料を求めて日本にもそこそこ来ており、その際には仲の良い「姪」である香澄ともよく会っているのである。
「叔父様!」
「あら香澄ちゃん、お久しぶりね。」
ちなみに生育環境のせいか真琴のしゃべり方はいわゆる「おネエ言葉」である。
「はい、これ今回のお土産。香澄ちゃんに似合うように清楚な雰囲気を狙ってみたわ。」
「わあ、ありがとうございます!」
真琴は香澄と会う時は自分のデザインした新作の服(もちろん少女向けの)を手土産とするのが通例である。
「叔父様の服は綺麗で素敵で…わたし大好きです!それにわたし身体が大きいから(身長171cm)既製品だとサイズが無いんですよ。」
「少女」のように顔を赤らめながら喜ぶ香澄である。
「ふふっ…そう言ってもらえると嬉しいわ。…ねえ、立ち話も何だし少しお茶でも飲みましょうか。」
ということで二人は近くの喫茶店へ。
二人は当初は取り留めのない世間話をしていたが、途中で真琴は眉をひそめながらこのように話を振る。
「ねえ、駄目親父は元気?」
「駄目親父」とは真琴の父である征美のことである。喧嘩別れしたとはいえやはりそこは彼にとってもたった一人の父親、やはり気になる様子である。
「お祖父様ですか…相変わらずですね。よく寝ている時に勝手に部屋に入ってきてはわたしを裸にしてエッチなランジェリー着せてきますし…。この前はねこランジェリー着せられました。」
「ねこランジェリー?」
真琴の眉がピクリと動く。
「ああ…日本のツイッターで話題になっていたやつね。」
「はい…。お祖父様には写真も撮られました。」
そう言いながら香澄が真琴に見せたスマホにはねこランジェリーを身に纏い怒りの表情でポーズを取る香澄の姿が…。
「…確かに相変わらずねあの馬鹿親父。」
「…。」
真琴の眼鏡の奥の目が憎悪でギラリと輝き、その場を沈黙が支配する。
…が、さすがにそれは大人気ないと気づいたか真琴はすぐに自ら沈黙を破る。
「あ、そうそう!イヨ様はお元気にされているかしら?…ちゃんとイヨ様用の服もお土産に持ってきたのよ。」
話題を変えて祭神のイヨについてである。
「イヨ様も相変わらずですね。勝手にパソコンをアップデートされたり、わたしのスマホでゲームに課金されたり…。」
「…。」
再び走る気まずい沈黙。
「…ねえ香澄ちゃん、家出したいなら、い・つ・で・も!相談に乗るわ!飛行機のチケットは私が用意してあげるからパスポートは作っておきなさい。」
「は、はは…。」
叔父の物騒な提案に乾いた笑いを立てるしかない香澄であった。
おわり
説明 | ||
pixivにてお世話になっておりますAoi☆はるえさんに「魔法つかいプリキュア!」のフランソワをモデルにした香澄(http://www.tinami.com/view/632994)の叔父(http://www.tinami.com/view/849741)の原案を考えていただいたので、それを動かしたくて書いた一品。 | ||
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