護岸記
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第一日

 

はじめに土と水と空があった。

土はうず高くあり、水はその淵を満たし、空はふたつを包んでいた。

土も水も空も動くことは無く、ただそこにあるだけであった。

 

一日と呼ぶにはあまりにも長かったかもしれない。

もしくはほんの一瞬だったかもしれないが、世界の始まりはこのようにあった。

後に第一日と呼ばれる時の事である。

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第二日

 

土は種を産み出した。

種は芽を出し、ぐんぐんと育った。

伸びる芽を見て土と水、空は時を知った。

 

一日と呼ぶにはあまりにも長かったかもしれない。

もしくはほんの一瞬だったかもしれないが、時の始まりはこのようにあった。

後に第二日と呼ばれることとなる時の事である。

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第三日

 

身を横たえるだけであった土と水は時を前にしても疲れを感じることは無かった。 しかし空は違った。

空は土と水を包むことに疲れを感じていた。

疲れきった空は自らの対となる空を産み出し、交代で土と水を包むこととした。

産まれ出た空は夜となり、元の空は昼となった。

昼と夜は一組で一日となった。

この時初めて第一日、第二日はそう呼ばれる事となった。

 

一日と呼ぶにはあまりにも長かったかもしれない。

もしくはほんの一瞬だったかもしれないが、昼夜の始まりはこのようにあった。

第三日の事である。

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第四日

 

土の産み出した種は今や立派な木となっていた。

木は果実を土に水に落とした。

土に落ちた果実は動物となった。

人もその中にあった。

水に落ちた果実は魚となった。

落ちきらず、木に引っかかった果実は鳥となった。

動物は土に、魚は水に、鳥は空に瞬く間に満ちた。

 

一日と呼ぶにはあまりにも長かったかもしれない。

もしくはほんの一瞬だったかもしれないが、生き物の始まりはこのようにあった。

第四日の事である。

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第五日

 

土と水と空は生き物の誕生を喜んだ。

それぞれに満ちる生き物の喜びを分かち合うために土も水も空も震えた。

土の震えは地震となった。

水の震えは波となった。

空の震えは風となった。

それぞれの震えは生けるものの喜びを他に伝えた。

 

一日と呼ぶにはあまりにも長かったかもしれない。

もしくはほんの一瞬だったかもしれないが、波の始まりはこのようにあった。

第五日の事である。

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第六日

 

土の震え、水の震えはそれぞれに満ちる者に時には迷惑となる事もあった。

しかももはや震えはそれぞれ自身には止めようの無いものとなっていた。

しかし自らの主の喜びであるから動物も鳥もそれほど気にはしなかった。

 

しかし水の震えだけは違った。

水の震えは当の魚には迷惑をかけなかったが、その代わりに土を削った。

満ちる土の減った動物は声を荒げ、土も水を責めた。

土や空と同じように水の震えも、もはや水自身にはどうしようもなかった。

水は自らに沈んだ土と水とを練り、土に満ちる動物を讃え模した四脚の像を作った。

それを土と水との境に並べ、ひとまずの備えとした。

水は人に像の作り方を教えた。

 

一日と呼ぶにはあまりにも長かったかもしれない。

もしくはほんの一瞬だったかもしれないが、護岸の始まりはこのようにあった。

第六日の事である。

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第七日

 

土と水、空はもはや何も語らなくなった。

土と水とを隔てていた像も壊れ、人は像の製法をすっかり忘れてしまった。

世界に同じだけあったはずの土と水も、やがて水が多くを占める事となる。

人が危機感を覚え、像の製法を思い出すまでは果てしない年月が必要となった。

 

一日と呼ぶにはあまりにも長かったかもしれない。

もしくはほんの一瞬だったかもしれないが、旧世紀の始まりはこのようにあった。

第七日の事である。

説明
消波教正典です。

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