世界が終わりなんて間違っている 第4話
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ズルッズルッ

 

 

 屋上の連中が縄を引き揚げる音が妙に耳に響く。

 確かにやつらと目が合ったはず……

 やつらの数・やつらからの距離・屋上までの距離を考えれば絶望しかなかった。

 しかしやつらは俺を見たにもかかわらず生徒会室から出ていこうとしている。

 

 

八 幡「???」

 

 

 やつらの意味不明な行動に思考だけが先走っている。

 これまでのやつらの傾向からすれば獲物を見つければ襲ってくるはずだ。

 なのに俺はなかったもののようにスルーされた。

 元々生徒会室にいたのは女の子だけ(一人除く)やつらの生態系が不明な以上不確かだが、やつらは中にいたのが女の子だったから襲うおうとしたのか?

 いや校庭の様子を最初に見たとき無差別に襲っていたのだが……

 

 

葉 山「比企谷! 手を出せ! 引っ張り上げるから!」

 

 

 そうこうしているうちに葉山たちのおかげで屋上に辿り着くことができた。

 いつもの爽やかなイケメンが額から滝のように……いやそこまで多くないのだが見たらわかるほどの汗が流れているのが見える。

 そのことだけでも葉山たちが必死に引き揚げてくれていたことが分かり、それだけ状況は最悪だったことを今更ながら膝が震え座り込んでしまった。

 

 

小 町「おにいちゃああん。無事でよかったよぉ。お兄ちゃんがいなくなったら小町は……小町は……」

 

八 幡「小町……ぐはぁ」

 

 

 座り込んでいた俺に最愛の妹が泣きながら飛び込んでくる。

 しかし目測を誤ってかよりにもよって下半身に突っ込んできやがった。

 男の下半身といえば男性のみなさんならわかると思いますが……超絶痛いところです。

 その衝撃に座っていることもままならない事態に陥り、屋上の床を転げまわることになった。(もちろん残っていた意地で小町を巻き込まないよう座らせた後に)

 

 

小 町「え……おにいちゃん。お兄ちゃん! 死んじゃいやだよぉ!」

 

八 幡「−−−−−−−!」

 

 

 

ゴロゴロゴロゴロ

 

 

 俺は声も出せない状態で辺りを転げまわる。

 それを見ていた周りの連中が一人また一人と笑顔になっていくのが見える。

 自己犠牲の塊と呼ばれたことはある俺だが周りを笑顔にするためにこんな役割するとは……これは俺の役割じゃねぇーー! 特にそこで笑い転げている戸部ぇー!

 

 

平 塚「そろそろ今の状況やこれからどうするかを決めないか?」

 

 

 だいぶ痛みも引き皆から声をかけられた後、平塚先生が提案してきた。

 既に日も落ちはじめ周りも暗くなっている。

 平塚先生の提案に乗ろうとすると何処からか間が抜けた音が聞こえてきた。

 

グギュルルル〜

 

 

戸 部「やっべーっ。俺のお腹の音だわ。腹減ったわ〜」

 

葉 山「そうだな……部活の後だったから余計に」

 

平 塚「ふむ……先に何か口にした方が頭の回転が良くなるだろうな。一色のバックにお菓子が入っていると言っていたが他に何か持っている者はいるか?」

 

雪ノ下「それでしたら今日小町さんの受験お疲れさま会のあまりのお菓子がありますよ」

 

 

 雪ノ下の発言でみんな持っていた食べ物が集まってくる。

 雪ノ下と由比ヶ浜の顔を見てこちらの言いたいことが分かったみたいで頷き合った。

 

 

八 幡「俺たちはお疲れさま会で食べているから俺らの分はいいぞ。他のみんなで食え」

 

葉 山「……いいのかい?」

 

八 幡「あぁ特にお前たちは部活の後だから体力消耗してるだろ。いざって時に動けなかったら困るからな……俺らは飲み物だけで大丈夫だ」

 

葉 山「すまない……助かる」

 

 

 とはいえみんなで持ち寄った食べ物も多くはなく、食べていた連中もこれからどうなるかわからない以上最低限の食事で済ませたらしくすぐに情報の共有・状況確認と対策・これからのことを話し合い始めた。

 

 

 

 俺と葉山以外の行動は

 

・奉仕部にいた三人は俺からの連絡のあとすぐに荷物をまとめ行動を起こした。

・そして同じく葉山に連絡を貰っていた三浦・海老名さんの二人と階段で雪ノ下たちと合流。

・そのあと屋上に到着し、しばらくすると武器を持った戸塚と戸部が屋上にきた。

・戸塚と戸部に状況を説明してもらっているときに扉から数体のやつらが来た。

・戸塚と戸部は女性陣を守りながら応戦しているところに俺と葉山が来てやつらを倒した。

 

・生徒会室組は卒業式の準備が終わり、ほかの生徒会メンバーが帰った後これからの生徒会のことを話し合っていたらしい。

・その途中いきなり悲鳴が聞こえて外を覗くと変な人たちが人を喰っている場面を見てしまう。

・本能的に危険と判断した三人は生徒会室に立て籠もってバリケード作って隠れていた。

・しかし生徒会室に人がいることに気付いたのか生徒会室の前にやつらが集まってきて逃げれなくなった。

・諦めかけた時にふとスマホを見ると比企谷からの着信履歴に気付いて電話したとのこと。(マナーモードにしていたために今まで気づいていなかったらしい)

 

 

 そしてやつらから逃げているときに葉山に話した仮説をみんなに伝えた。

 やつらがゾンビの可能性があることを伝えると少なからず動揺が走ったが……やつらの行動に信じたくもないが信じるしかない状況だった。

 

 

海老名「でもヒキタニ君……もしあいつらがゾンビなら漫画や映画とかであるみたいに噛まれたり引っかかれたら、あいつらみたいにゾンビになっちゃうの?」

 

 

 そっち方面の知識がある海老名さんは俺の言いたいことを補足してくれた。

 

 

八 幡「あぁ……現に校庭で不審者に噛まれた体育の厚木先生が一度倒れた。そしてその後再び動き出した時には周りの生徒を襲うようになってしまったし……引っかかれたらは分からないが噛まれたらアウトだろうな……」

 

葉 山「だからその話を聞いた時からやつらと対峙する場合は接近戦を避け中距離から当たることにしていた」

 

海老名「もしゾンビだとしたら夜のほうが活発になるんじゃないの?」

 

 

 海老名さんの言葉に一同は息をのんだ。

 シーンと静まり空気が重くなっていく。

 

 

平 塚「とりあえずそっち方面に詳しそうな比企谷と海老名! あいつらがもしゾンビだとしたら、対抗策とかゾンビの弱点とかあるか?」

 

 

 平塚先生の言葉に俺や海老名さんに視線が集まる。

 

 

八 幡「とりあえずさっき葉山が言ったように接近戦は避けるべきですね。噛まれたらお終いですし……あとゾンビの場合、心臓よりも脳を破壊しないと動くとかありますね。なんで俺や葉山はあいつらと会った時は頭を狙うようにしてました」

 

海老名「うーん……後、ゾンビは視覚より音や光に反応するんじゃなかった?」

 

八 幡「実際に試してみないとわからないが水や火を嫌うって作品もあったな……」

 

 

 俺や海老名さんがゾンビに関する仮説を出していると視界の隅で雪ノ下がノートに議事録を付けているのが見えた。

 その内容を確認しながら

 

 

雪ノ下「まだ試してみないとわからないけどこのあたりでしょうか? でこれからどうします? 夜活発になる可能性があるのなら今晩は屋上に立て籠もった方がいいでしょうけど……」

 

八 幡「あぁ夜はこっちも行動起こすのは危険すぎるからな」

 

葉 山「じゃあ今晩は屋上で立て籠もり、朝になってから様子を見よう。それで全員が寝てしまうと危ないと思うんだが夜の間見張りを作った方がよくないか?」

 

八 幡「あぁそうだな。あと少しで夜八時くらいだから日が昇る6時くらいまで交代で見張りを作っとく方が安全だろう。男二人づつ五時間交代ってのはどうだ?」

 

めぐり「まって。それじゃあ男子に負担がかかっちゃうよぉ」

 

八 幡「でも……」

 

めぐり「じゃあせめて女性陣を二人四組作って二時間半で順番に後退していったらどう? そしたら常時四人いるから対応しやすいと思うけど……」

 

八 幡「確かに人数が多い方が助かりますけど……」

 

めぐり「じゃあ決まりね!」

 

八 幡「はぁ……分かりましたよ。じゃあ班決めですがやつらと対応したことのある俺と葉山は別々の班として相性を考えて俺と戸塚の班と葉山と戸部の班に分けましょう」

 

葉 山「あとできれば先生と頭の回転が速い雪ノ下さん・城廻先輩とあいつらに対応できそうな知識がある姫菜は別々の班に分かれてもらえるとバランスがよくなると思うんだが……」

 

平 塚「わかった。じゃあ私は比企谷妹と組んだ方がよさそうだな」

 

小 町「はい? わたしですか?」

 

八 幡「まあバランス考えるとそれがよさそうだな」

 

小 町「お兄ちゃんがそういうなら平塚先生よろしくお願いします」ペコッ

 

 

 小町を皮切りに次々に班が決まっていく。

 まあ相性のいい組み合わせだが……

 話し合いの結果見張りの順番は

 

 1. 20:00〜22:30 八幡・戸塚・雪ノ下・由比ヶ浜

 2. 22:30〜01:00 八幡・戸塚・平塚先生・小町

 3. 01:00〜03:30 葉山・戸部・海老名・三浦

 4. 03:30〜06:00 葉山・戸部・城廻・一色

 

 となった。

 なぜか一色に避けられているような気がしたが班ごとの役割を決めそれぞれの行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     〜     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無事自分の見張り時間が終わり寝ようとすると

 

 

彩 加「はっちまーん。ここで寝よう」

 

 

 戸塚が自分の隣を指して頬を染めている。

 その表情に呆けていると

 

 

小 町「じゃあ小町はその反対側だねっ」

 

 

 小町が反対側から抱き着いてきた。つられて戸塚も近寄ってきたものだから

 両手に天使とかここは天国ですかーーっと思わず叫びたくなった。

 まあ寝ている人が周りにいるからできなかったが……

 今日は興奮して眠れるかと心配したが体が疲れていたらしく眠ることができた。

 ただ両側から聞こえる寝息に寝付くまで時間がかかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

     〜     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュンチュン

 

 

 どこかから鳥の鳴き声が聞こえボケっとしながらも目が覚めると屋上入り口にいるうるさい戸部の声が聞こえてきた。

 

 

戸 部「しっかしよぉ。いろはすぅ〜」

 

いろは「なんですか? 戸部先輩」

 

戸 部「いろはすさぁヒキタニ君と一緒に見張りしたかったんじゃないんかと思って〜」

 

いろは「……」

 

葉 山「だよなぁ。あれ聞いちゃあ」

 

いろは「だってぇホントにもう会えないと思っていたんですよ。だから告白したのに……いませんぱいと顔あわせづらくて……」

 

 

 避けられていたように見えたのはこのせいか……

 しかしこのことを聞いていることを一色に知られたらこれ以上気まずくなるんだろうなぁと思い寝たふりを続ける。

 

 

葉 山「でも好きなんだろ?」

 

いろは「……はい……」

 

葉 山「じゃあ俺らは応援するぜ。頑張れよ。まぁ意外とライバル多そうだけどな……」

 

戸 部「やっべーっ! そういう展開燃えてくるっしょ! いろはす俺も応援するぜ!」

 

いろは「ありがとうございますぅ」

 

彩 加「う〜ん。あさぁ〜?」

 

 

 さっきまでそばにあった温もりが消えたと思ったら、どうやらうるさい戸部の声に戸塚が起こされたようだった。

 戸塚を皮切りに次々とみんなが起きだすが俺はさっきの話が耳に残り起きるにも起きれない状況で寝たふりを続けるのであった。

 

 

 

 

 

 こんな話聞いて今まともに顔合わせられるかーーっ!!

 

 

 

 

 

 

 

説明
第四話 年齢制限は取り敢えずです
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台本形式 ゾンビ やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 

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