世界が終わりなんて間違っている 第10話 |
八 幡「えっ……もしかして……けーちゃん?」
京 華「うん!」
そう言ってギュッと抱き着いてくる。
小さな体を目いっぱい使って表現する姿に思わず癒され、バレンタインイベントであった時のようにほっぺをつつこうとした時
沙 希「ち、ちょっと……けーちゃん離れて! あんた……一応確認しとくけど外でウロウロしている連中みたいになってないよな!」
けーちゃんと俺の間に割り込み少し距離を取ると川、川、川なんとかさんが警戒しながらこちらを見てくる。これはもしかして相模の時みたいにゾンビに間違えられているのだろうか?
たしかにけーちゃんのほっぺをつつこうとしている不審者にも見えるかもしれないが……。
落ち込みかけて少し間があいてしまい、不審に思ったのだろうか攻撃を仕掛けようと構えを取り始めている。
八 幡「待て! 川、川、川村!」
沙 希「いい加減に覚えなって! 私は川崎だ!」
そういうと鉄拳制裁が飛んできた。
戸 部「ヒキタニ君今の声……って川崎さんじゃん。何? この状況……」
声と音に反応してきてくれた戸部が何事かと不審に思っている。
戸 部「あ……もしかして、『また』ゾンビに間違えられた? マジうける!」
なんか最後の方他の人物の顔が浮かんだが……
その声が聞こえたんだろう他の皆も近づいてくる。
結 衣「あーっ! 沙希だ。けーちゃんもいる」
小 町「ほんとだ。沙希さんだ」
いろは「川崎先輩! ……って要注意人物の一人じゃないですかぁ」
近づいてくる他の面子に誤解も解けたのだろう。川崎は構えと警戒を解いた。
沙 希「どうやら本当にやつらじゃないみたいだね」
そう言って周りを見わたして安心したのか強張っていた表情がゆるむ。
しかしその言葉に反応して
戸 部「やっぱり『また』ゾンビと間違えられてんじゃん」
それを聞き集まってきた皆は笑ってしまった。
いろは「せんぱい。ゾ、ゾンビに間違われたんですか? しかも今、戸部先輩『また』って言いましたよね」
顔を笑いで引きつらせながら一色が聞いてくる。
八 幡「……相模とあった時も間違われたんだよ……」
戸 部「そーそー。しかもトイレに逃げられて鍵まで……」
俺の返答に戸部が余計な補足を入れるが途中で笑いが止まらず最後まで言えなかったみたいだが……
それを聞き皆はさらに笑い出す。俺は少し苛立ちながら
八 幡「それよりお前ら服選んで来い。川崎とけーちゃんはちょっとこっちに」
集まってきたメンバーを追い払いつつ、川崎姉妹を手招きするとバスに誘導した。
バスに二人を連れて戻ると、その姿を見つけた先生が
平 塚「川崎じゃないか! 無事だったんだな」
自分の生徒が無事だったことに喜んでいた。
沙 希「あ、はい。保育園に妹を迎えに行って帰る途中だったんですけど……暴れている人が出てこの店に逃げ込んだんです。その後、この店の店長が様子を見に外に出た後戻ってこなくて……携帯で暴動が起きていることが分かって外に出られなくなったんです。それでこの店の休憩室に隠れていたら比企谷たちが……」
平 塚「そうか…だがその間の食事とかはどうしたんだ?」
沙 希「隠れていた休憩室にはお菓子とかあったんでそれを少しづつ……」
八 幡「じゃあ腹減ってるんじゃないか? 今物資確保に回っていて食べ物ならあるからなんか食うか?」
沙 希「助かるけど……いいの?」
八 幡「あぁかまわん」
沙 希「じゃあけーちゃんに食べさせてあげて……私はあんたたちに悪いから……」
八 幡「は……? お前何言ってんだ? 川崎も食っとけよ」
沙 希「でも……」
八 幡「もしいざっていう時動けなかったらけーちゃん守れなくなるぞ。けーちゃんのこと大切ならいいから食っとけって」
そういいながらコンビニのかごからパンや飲み物を渡す。
沙 希「ありがと」
京 華「はーちゃんありがとー」
川崎は少し照れながら小さな声で、けーちゃんは体いっぱい使ってお礼してくる。
やはり二人はお腹がすいていたんだろう……パンを渡すと食べ始めた。
八 幡「で川崎……食べながらでいいから聞いてくれ。俺たちは今、学校に立て籠もって避難している。お前たちはどうする?」
沙 希「家族と連絡が取れないから一度家に帰ろうかと思っているけど……」
八 幡「伝言サービスとかメールも繋がらないのか?」
沙 希「掛けたり、送ったりしたけど返事は来てない……どうしたらいいのかな……」
八 幡「まずいかもしれないな。残酷なことかもしれないが連絡付かないならもう……それで川崎の家はどのあたりだ? 保育園から歩いて帰っていたということはそう遠くないんだろ?」
沙 希「家は○○の××だけど……」
住所を聞き大体の場所を思い浮かべつつ
八 幡「あの辺りか……先生。それならうちに行く途中だから」
平 塚「わかってる。川崎、行く道の間にあるから乗っていきなさい。それで確認したら私たちと一緒に来ないか?」
沙 希「いいんですか?」
平 塚「どのみち通るんだろ? 比企谷」
八 幡「はい。ただ……今のうちに覚悟をしておいた方がいいかもしれない。まだ電気は止まってないから出かけてない限り携帯を充電することはできたはずだから今連絡取れないというのは……」
沙 希「分かってる……でも生きてるって信じたいんだ」
八 幡「わかった。とりあえず川崎の家で確認して、もし不在なら帰ってきた時のために伝言を残して学校に避難したほうがいいんじゃないか? 普通の住宅なら長期立て籠もると危険な気がするし、けーちゃんのためにも」
沙 希「……うん」
八 幡「それじゃあ、お前も服見てくるか? 交代の戸部と由比ヶ浜のお母さんたちが来てるから先生と見てくるといい。けーちゃんはっと……戻ってきたやつらに見てもらってるから」
視界の隅に戸部を発見し、提案してみる。
けーちゃんはお腹がいっぱいになったのか、安心したのかいつの間にか眠ってしまっていた。
それから交代を挟み服の回収が済んだところで次の行き先を皆に伝えた。
〜
バスが川崎宅に向かう途中川崎はずっと何かに祈っている様子だった。
こちらが知っている情報などを川崎に伝えていると、しばらくして川崎の家に着いたようだ。
他の皆に周囲の警戒を頼み俺と川崎は家の中に入っていく。
八 幡「もしゾンビがいるなら音に反応して来る。静かに行動しよう。それと服なんかいる物があったら纏めて持っていくぞ」
沙 希「わかった」
そして家のドアを回してみるが、鍵がかかっているようだ。
もしゾンビが中にいるなら鍵が開いてる可能性が高いからもともと不在か誰かが立て籠もっているのか?
一つ一つドアをゆっくり開け中の確認をするが家の中には誰もいなかった。
家族が家の中にいなかったことが家族思いの川崎にはショックだったんだろう。
普段見せないであろう涙を流して座り込んでしまった。
沙 希「お父さん……お母さん……大志……○○……」
あまりの狼狽え具合に驚き、おもわず俺らしからぬ行動を取ってしまう。
八 幡「まだ死んだとわかったわけじゃないんだろ。それにおまえにはけーちゃんがいる」
後ろから包み込むように抱きしめてそう言うと、
次第にすすり泣くような声が止まっていく。
しばらくして
沙 希「……ありがと。でもあんた今どこ触ってんの?」
それを聞き腕の先を見ると、両腕で川崎の胸を後ろから挟み、手は川崎が座っていたためか脚と脚の間に突っ込んでいる。
慌てて腕と手を引っ込めると、顔を赤くした川崎が立ち上がりこちらを睨んできた。
八 幡「すまん」
沙 希「べつに……いいけど」
俺が謝ると、川崎は背を向けてしまった。小さな声であまり聞こえなかったが許してくれたようだ。
八 幡「それじゃあ川崎、書置きと荷物を準備してみんなと合流するぞ!」
沙 希「分かったけど、その……えっと」
返事を返してきたにもかかわらず何か言いづらいのか戸惑っているのか言葉を繋げようとしない。
八 幡「どうした? 早くみんなと合流して次に向かわないと、バスの中で話したようにやつらは生前の行動をする場合が多いから夕方になれば帰宅するゾンビと遭遇する可能性が高まる。だから川崎急げ!」
沙 希「わかってるけどさぁ……その川崎って呼び方やめない?」
八 幡「……そんなに呼び捨てがそんなに嫌だったのか?」
沙 希「いや……違うんだけど。これから学校に避難するんでしょ。そしたらけーちゃんも一緒だから紛らわしくなるんじゃない? だから……沙希って呼んでいいから」
精いっぱい声を振り絞って伝えてくる。
いつもと違う弱弱しさに少しグッと来てしまった俺は
八 幡「女の子を呼び捨てとか無理だし。呼べても小町ぐらいで……」
沙 希「いいから呼ぶ! 呼ばないと……」
誤魔化そうとして答えた返事を途中でぶった切られ、更には呼ばないと鉄拳制裁が待っている雰囲気である。
八 幡「分かったから……早く準備するぞ……」
照れを隠しながら返事するのがやっとだった。
準備と書置きが終わりバスに戻った。
俺たちが不在時に問題はなかったみたいでバスに乗り込もうとしてついうっかり、
八 幡「かわさ……」
今まで通り名字で呼ぼうとすると睨まれたので
八 幡「はぁ。沙希、先にバスに乗れよ」
そういうとバスの中にいた由比ヶ浜と一色が問いただしてきた。
結 衣「ちょ……なにヒッキー沙希のこと呼び捨てにしてるの!」
いろは「そうですよ。せんぱい、家の中で何があったんですか!! セクハラですか? セクハラなんですね! 川崎先輩にするなら私にしてください。お願いします。」
なんか爆弾発言している子がいるが
いつの間にか他の皆も注目していた。
八 幡「いいから出発するぞ! 先生出発しましょう」
荷物を中に入れてしまい誤魔化すように先生に発車をお願いする。まだ納得のいっていない二人は後部座席に戻らず前の方の席に移動してきた。これから説明しなければならないと考えると頭が痛かった。
バスで移動中けーちゃんと区別をつけるためと話すと
結衣母「じゃあ私たちも名前呼びになるのかしらぁ。ねぇ結衣。それにヒッキー君と小町ちゃんも同じ苗字なんだからみんな名前で呼んだ方がいいのかしら」
といらぬ爆弾を誘爆させてしまったようだ。
呼び方については学校に戻ってから保留ということでしぶしぶ納得してもらったが、バスで移動中突き刺さるような視線が終わることなく続くのだった。
勘弁してくれ。
針の筵状態だったバスの中もいつの間にか起きていたけーちゃんによって少し癒されながら我が家に着いたのであった。
うちは共働きだったのであの時間帯家に不在のはずと思いつつ周囲をみんなに警戒してもらい小町と二人で家に向かうが、予想していた通りカギは閉まっており、中の安全を確かめながら家の中に入っていく。
中に入ると、最初に確認したのはゾンビがいるかどうか……小町を守れるよう後ろにし、前を進んでいく。
今のところやつらのうなり声は聞こえない。その時、カタン!カリカリっという音が聞こえてきた。
リビングまで着くと中の様子をうかがう。中から聞こえているみたいだがゾンビの姿は見えない。
まさかと思って小町と顔を合わせると
小 町「……カー君?」
にゃ〜
恐る恐るだが小町が発した言葉に反応し二日ぶりのふてぶてしいわが飼い猫が姿を見せてきた。
小町の姿を確認するといつものノソノソとした動きとは違いホントに同じ猫かと疑うくらい素早く小町に飛んついてきた。小町はカマクラが無事だったことに泣きながら喜んでいる。
俺はその姿を確認しつつ周囲の状況を確認する。
俺たちがいなかったため、カマクラが餌であるキャットフードの袋を破いていたり、換気してなかったため少し獣臭くなっているが中の様子は大丈夫だった。
一階の安全を確認したのち二階に上り各自の部屋の様子を確認して回る。安全は確認できたものの、やはりというか両親の姿は見当たらなかった。
周りを警戒しながらも荷物をまとめることができ、小町と共に階段を下っていく。
一階の脱衣所に向かい置いてあったタオルをありったけ詰め込み、もし両親が戻ってきた場合分かるように書置きを残しバスに戻るのであった。当然戻る途中倉庫にあった梯子も回収してある。
〜
我が家から出発する頃には、ホームセンターにいた時から降っていた雨もやんでいた。
それからコンビニに向かうのだが住宅地あったため、多少のゾンビと遭遇したり、道が乗り捨てられた車でふさがって通れなくなっており、少し遠回りで相模のいたコンビニに着くのが遅れてしまった。
コンビニの駐車場に着きまずは駐車場内の確認し入口近くにベタ付けするように駐車してもらった。
中にまず男三人が入り安全を確認するがやはりと言っていいか雨のせいで雨宿りに入ってきたのかわからないが三体ゾンビが入り込んでいるようだ。
まず三体の位置を確認すると、レジ近くに居たゾンビを倒し、その音に釣られてこちらにやってきている残りの三体を、材木座と戸部が回り込み後ろから倒したようだ。倒した後も確認したが取り敢えず中は安全みたいだ。
安全を確認した後バスの中から見張る四人を残し残りの全員で品物を回収していく。
行きがけでは入手しなかった冷凍食品や水などの飲料・お菓子やカッターなどの文具・風邪薬・サプリなどの医薬品などバスに詰め込めるだけ詰め込んで学校に戻ることにした。
このときやけに女性陣がある場所の前で周囲を伺う行動をしていたのは内緒だ。
〜
出かけた時のように大きな道を進み学校に着くと雨が降っていた影響か門の近くはゾンビ達がいることはなかった。
車用出入口に廻り門を開けバスが通ったところで再度門を閉める。
車を保健室の窓があるところに駐車し、周囲の確認をした……雨が降り体育館か校舎に入り込んだ可能性があるからだ。
できれば体育館の音楽に誘われて、全部体育館に言ってくれればいいのだが……。
バスの入口を音が立たないようゆっくり開け外に出てみてから、バスの中にいる由比ヶ浜に学校居残り組との連絡を任せ、俺は体育館の入口に向かい中を体育館の確認することにした。
体育館の中はまだラジオ体操が流れており音に釣られているのかスピーカーのある方に集まっている。
中の様子を確認した後、ゆっくり扉を閉めホームセンターから持ってきた鎖と鍵で中から出れないよう封鎖した。
作業が終わると次は体育教官室に行き、体育館内部だけ聞こえるくらいに音量を調節してバスの方に戻った。
(音が消えて、生前の行動を取った場合体育館から出ようとして扉を壊してしまう可能性があるので)
バスに戻ると俺と戸部が先行し保健室までの安全を確認する。
保健室までと保健室内の安全確保できると外の窓を開け、上に残っている連中に暗証番号を解いてもらうよう指示を出した。
その後、こちらの暗証番号を解くと上からエレベーターが降りてくる。
エレベーター前を戸部に任せ、おれは一度バスに戻るとけーちゃんと小町を保健室まで誘導して保健室に戻った。保健室に戻ると葉山と戸塚が降りてきており
葉 山「よかった。みんな無事だったんだって。それに仲間も増えたって聞いたぞ」
八 幡「あぁたまたま回収に行った先にいたり、道で遭遇したんだよ。それより早く荷物を上に上げよう。取り敢えず最初の便に小町と川崎の妹・由比ヶ浜の犬とうちの猫を荷物と一緒に上げようと思う」
葉 山「いいんじゃないか。じゃあ必要なのは保健室の外の警戒とバスの周囲警戒・それに荷物を運ぶ役か……」
八 幡「外に材木座がいるからやつには荷物を窓の所まで上げてもらう、だから中でエレベーターに入れるのをやってくれ。取り敢えず俺は外の警戒しながら材木座を手伝うから」
葉 山「わかった。じゃあ戸塚バスから保健室までの警戒を頼む。戸部は俺と一緒にエレベーターに積み込むぞ」
そういうと皆分かれて行動を開始する。
平塚先生以外の女性陣には保健室内で待機してもらい順次荷物と一緒に上に上がってもらい、上がるまでは荷物の受け取りをやってもらった。
俺と平塚先生と材木座の三人は、周囲の警戒をしつつ荷物を中の人に渡していく。
体育館に誘導したのが功を奏したか運搬中ゾンビに出くわすことがなかった。
そして最後の荷物を渡すと、車に鍵を閉め中に入っていく。
窓の外と保健室のドアからの警戒を残しエレベーターに積み込んでいく。
最後の便に先生が乗ってもらい、上に着いたのを確認して暗証番号を入力した。
そしてエレベーター入り口を見えなくするため物を動かして擬態した後、保健室に入ってこれないよう再度窓を封鎖して残していた梯子と武器を持って保健室を出た。
一応のため体育館から校舎までの扉を閉めて移動を開始した。
男5人ということで、周囲の警戒もしやすく楽に三階〜四階の踊り場まで来ることはできた。
唯一苦労したのは踊り場から梯子を使ってバリケードを越えるときに材木座が手間取っていたくらいだ。
そして防火扉を四回たたき合図を送るとロッカーが動く音が聞こえた後扉が開いた。
扉の先には雪ノ下がいい笑顔でカマクラを抱きしめながら出迎えてくれた。
そう思ったのは一瞬で
雪 乃「比企谷君。あなた川崎さんを名前で呼び捨てて呼んでるらしいじゃない。これからのことについてみんなで話し合いをしたいから早く来なさい」
今から始まる尋問に、今日一番の恐怖を感じたのであった。
【ただいまの生存確認人数17人と2匹】
後書き
川崎家に弟がもう一人いるということだったんですが原作見ても名前出てきてない気がするので○○と表記してます。
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第十話 | ||
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台本形式 ゾンビ やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 | ||
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