真・恋姫†無双 外史 〜天の御遣い伝説(side呂布軍)〜 第八十九回 第五章B:御遣い奪還編D・奉先様の元に帰れる機が訪れるぜ
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【司州、とある関所】

 

 

門兵A「おい、何かむこうの方から音がしないか?」

 

門兵B「ん?・・・そういえば確かに・・・というか、あれ、何かの影じゃないのか?」

 

 

 

時刻は日付が変わろうかという頃合い。

 

関所の門兵が遠くの方から聞こえてくる妙な音に気づき、相方の門兵に尋ねてみるが、

 

やはりもう一人の門兵にも聞こえるようで、聞き間違いではなさそうであり、むしろ何かしらの影が見えると告げた。

 

 

 

門兵A「むむ、本当だ。確か兵長が本国から厳戒態勢を敷くよう伝令があったと言っていたが、一応物見に確認してもらうか?」

 

門兵B「ああ、そうだ――――」

 

物見「報告っ!!ほうこーーーくっ!!!何やら怪しげな集団がこちらに急接近中っ!!!」

 

 

 

普段なら獣か何かが動いたのだろうと特段注意することはないのだが、その時はなぜか妙な胸騒ぎを覚えた門兵は、

 

物見に報告して、高い位置から確認してもらおうと提案し、もう一方の門兵が反応しようとしたその時、

 

その物見が大きな声で怪しげな集団の接近、つまり先ほど確認した謎の影が関所に接近している旨を伝えた。

 

その瞬間、門兵たちの顔色から血の気が引ける。

 

 

 

門兵A「馬鹿な!!まさか何者かの夜襲か!?」

 

門兵B「ここが誰の領内か知らないのか!?」

 

高順「もちろん知っての行動ですが?」

 

門兵B「・・・へ?――――――ぐへぇっ!?」

 

門兵A「な、おい貴様いったい何―――ぐはぁ!?」

 

 

 

物見からの敵襲の報を受け、慌てた様子で喚き合う門兵の会話にナチュラルに加わった高順は、

 

門兵たちに反応させる暇すら与えず無力化させた。

 

 

 

高順「時間がないのですから大人しくしていてください」

 

 

 

普段以上に冷たい瞳の高順は、仕事人モード、俗にいう陥陣営モードになっており、

 

門兵にまったく気づかれることなく死角から門兵の背後に接近し、門兵の意識を飛ばしたのであった。

 

 

 

陳宮「よし、とりあえず門前を確保です!!衝車部隊!!門を破るです!!」

 

衝車兵「応っ!!!」

 

 

 

高順が門前を確保したことにより陳宮が衝車部隊に号令をかけ、強行突破に移った。

 

 

 

物見「敵襲っ!!てきしゅーーーうっ!!!衝車を確認っ!!門を破ろうとしている模様っ!!」

 

 

 

門兵が倒され、謎の一団が関所を破ろうとしているのを目の当たりにし、

 

物見の兵士は銅鑼を鳴らし、大きな声で厳戒態勢に移るよう叫んだ。

 

 

 

警備兵長「野郎、させるか!!皆落ち着け!!奇襲に惑わされるな!!まずは寝ている兵を皆たたき起こせ!!弓隊!!賊を射殺せ!!」

 

 

 

部屋で一人、夜遅くまで関所の図面とにらみ合いながら、虎牢関や函谷関などのレベルとは比べ物にならないまでも、

 

並みの防衛施設としてのその可能性を模索していた、その類稀な武と知を備え、若くして国境の関所を任された警備兵長は、

 

銅鑼の音にいち早く反応すると、兵士たちが混乱に陥る前に檄を飛ばして落ち着かせ、冷静に指示を出していった。

 

 

 

弓兵長「応さ兵長ぉ!!全員位置につけぇ!!衝車を操ってる奴を狙えぇ!!火矢部隊も準備しろぉ!!お前らは衝車本体を狙えぇ!!」

 

弓兵「応っ!」

 

 

 

銅鑼の音で瞬時に眠りから覚醒した、警備兵長同様、若くしてその弓の才と指揮能力を買われ、

 

重役を任された弓兵長は、これまたたたき起こされる前に弓兵長の前に整列を完了させた弓兵たちに指示をとばし、

 

弓兵たちは眠気など一切感じさせない返事ですぐさま戦闘配置についた。

 

 

 

弓兵長「俺たちの貴重な睡眠を妨害したことを後悔させてやれぇ!!放てぇぇえぇええ!!!!」

 

弓兵A「死ねぇ素っ頓狂野郎!!」

 

火弓兵A「燃えちまいな!!」

 

 

 

そして、若き弓兵長の号令と共に、訓練の行き届いた、正確な射撃が衝車部隊を襲った。

 

 

 

が、しかし・・・

 

 

 

カキーーーーーーンッ

 

 

 

数十本もの矢、そして火矢は、音高い金属のぶつかる音を残して何かに弾き落とされてしまった。

 

 

 

弓兵A「何!?」

 

火弓兵A「弾かれた・・・だと・・・!?」

 

 

 

目の前で起きたことに驚きを隠せない弓兵たちの瞳に映ったのはとある人影。

 

この暗闇の中でもはっきりとわかる、深紅の髪に深紅の瞳。大きな方天画戟を携えるその人物は飛将軍と恐れられる人中の呂布その人。

 

 

 

呂布「・・・・・・させない」

 

 

 

呂布は静かに方天画戟を構えると、衝車部隊の傍にぴったりとついた。その圧倒的威圧感は、

 

仲間含め、同じ空間の空気を吸っているだけで押しつぶされそうなほど強力なものであった。

 

 

 

弓兵長「この夜闇で矢を弾くだと!?兵長ぉ!!この賊、只者じゃねぇぞぉ!?」

 

 

 

その瞬間、若き弓兵長はこの賊が、曹操軍に恨みを持つ、ねじの飛んだただのテロリストの類ではないと悟った。

 

 

 

警備兵長「くそっ、徐晃将軍が言っていたのはコイツらで間違いないな・・・分かっちゃいたが一筋縄じゃ行かない奴だったなんてな・・・

 

援軍を求めたいところだが、南下中の本国は頼れないか・・・狙いはそれだな・・・」

 

 

 

同様に、賊が只者ではないと感じた若き兵長は、援軍を求めるべき事態と判断するが、同時に、

 

本国が南下中でそれどころではなく、賊の狙いがまさにそれであると気づき、悔しそうに歯噛みした。

 

 

 

警備兵長「おいお前ら、この書状を手筈通り届けろ!」

 

警備兵B「はっ、軍師殿の密書でございますね!」

 

警備兵長「ああ、郭嘉様から預かったものだ。ここもいつまでもつか分からない、急いで届けろ!」

 

警備兵C「はっ!」

 

 

 

すると、若き兵長は懐から郭嘉より受け取った二つの書状を取り出すと、二人の兵士に託した。

 

 

 

警備兵長「おい、全員起きたな!?一班から三班まで打って出るぞ!!援軍の見込みは厳しい!!籠城しても押し切られるのがオチだ!!

 

だから、ここで何としても押し返すんだ!!曹操軍の精鋭としての気概を見せろ!!」

 

 

警備兵「おぉおおおおおおおお!!!!」

 

 

 

さらに、寝ていた兵士たちが全員起き、若き兵長の前に整列したのを確認すると、

 

 

 

檄を飛ばし、援軍が見込めない中、籠城策にはでず、迎撃に向かうべしと命じた。

 

兵士たちも眠気を吹き飛ばさんという意気も込め、大いに鬨の声を上げる。

 

 

 

弓兵長「よっしゃぁああああ!!火矢部隊、目標変更だぁ!!全体まんべんなく狙って明るくしろぉ!!それから援護射撃だぁ!!」

 

火弓兵A「アイサー!」

 

 

 

賊の規格外のスペックに若干弱気になり気味だった若き弓兵長だったが、警備兵たちの鬨の声に触発されるように気合を入れ直すと、

 

迎撃部隊が攻撃しやすいように火矢で辺りを明るくするよう命じた。

 

 

 

1警備班長「梯子を下ろせっ!降りたら勝つまで中には戻れないから覚悟しろっ!」

 

1警備兵「おぉおおおっ!!!」

 

2警備班長「私たちも一班に続くぞ!!必ずこの地を死守せよ!!」

 

2警備兵「はっ!!」

 

3警備班長「三班もだ!!ここで手柄挙げて名を挙げるぞ!!」

 

3警備兵「っしゃぁらぁあああああああ!!!」

 

 

 

そして、迎撃を命じられた三班も、それぞれ班の個性を出しながら次々に関所外に出ていった。

 

突然の夜襲に寝起きという悪条件にもかかわらず、士気は十分。

 

これも日々の訓練のたまものであり、そこらの兵士とは一味違った。

 

さらに言えば、たとえ曹操軍の精鋭とはいえ、全員が完璧なわけではなく、

 

中には取るに足らない兵士もいるのだが、幸いここの任についている兵士たちは、

 

兵長を筆頭にかなり真面目に任についている部類の者達であり、簡単に撃ち破るのは至難の業とも言えた。

 

だからこそ、曹操軍の領土の最西端に位置するこの関所を任されているとも言えたのだが、しかし・・・

 

 

 

1警備兵A「ぎゃっ!?」

2警備兵A「ぐへぇぁ!?」

3警備兵A「ぐぼぉおおおおおお!!??」

 

 

 

それら文字通りの精鋭と言われる曹操軍の兵士たちが次々に薙ぎ飛ばされ、突き刺され、叩き潰された。

 

 

 

張遼「なんやなんや、てっきり中に籠りっぱなしや思っとったら、けっこう根性あるやんか!」

 

馬超「いや、この場合ただ命知らずなだけじゃないのか?」

 

鳳徳「大胆ッ!」

 

 

 

彼らの迎撃を阻んだのは3人の女性。

 

飛龍偃月刀を頭上で回しながら構えたのは、サラシに羽織袴の張遼。

 

十文字槍についた血を切り払いながら構え直したのは、長いポニーテイルをなびかせる馬超。

 

黒棺を地面にずしりと置いたのは、白銀のツインテイルに漆黒の外套に身を包んだ鳳徳である。

 

 

 

馬岱「うー、出遅れちゃった・・・」

 

 

 

そして、三人に遅れる形で、片鎌槍を肩に担ぎながら馬岱がげんなりした様子で立ちはだかった。

 

 

 

1警備班長「こ、こいつらも一筋縄ではいかないと言うわけか・・・!」

 

 

 

眼の前の四人、少なくとも三人もまた、それぞれが呂布とはまた別の、

 

独特のプレッシャーを放っており、一班の班長は生唾を呑みながら握りしめる刀剣に力を込め直した。

 

 

 

2警備班長「・・・・・・・・・おい、この賊、いったい何人率いているんだ・・・!」

 

 

 

目を凝らしてみれば、夜闇の中ではっきりとはわからないが、火矢によって明るくなったその先を見てみれば、見えるのは人人人。

 

何人もの兵士が隊列を組んで張遼らの後ろに控えているではないか。

 

 

 

3警備班長「何でコイツ棺桶なんて振り回してやがるんだ!?っつーか、どっかで聞いたことがあるような・・・」

 

 

 

一方三班の班長は、部下が棺桶で杭の如く地に叩き潰された光景を目の当たりにし、愕然としながら恐慌に陥りそうになるも、

 

棺桶を武器として扱うというスタイルにどこか聞き覚えがあるのか、記憶の糸を辿っていた。

 

 

 

警備兵長「こ、こんなことが・・・!」

 

弓兵長「あ、ありえねぇ・・・・・・!」

 

 

 

関所の高いところから様子を見ていた若き兵長は、火矢によって明るくなった先に見える大量の敵兵の数に茫然としていた。

 

 

 

警備兵長「1万2万・・・いや、下手をすれば3万いるんじゃないのか!?これだけの賊、間違いなく国がらみじゃないか・・・!」

 

 

 

100や200といった大規模な賊が調子に乗って攻め込んできたなどという次元ではない。

 

一国が一国に対して戦争を仕掛けてきたレベルの兵力。

 

 

 

警備兵長「・・・・・・本国に伝令を飛ばせ」

 

 

 

それからの若き兵長の決断に迷いは一切なかった。

 

 

 

警備兵A「よ、よろしいのですか?救援など、本国にはそのような余裕は―――」

 

 

警備兵長「そうじゃない。お前、まだ戦う気でいるのか?ここはもう無理だ。籠城したところで援軍は間に合わないだろうし、門は時間

 

の問題で破られるだろう。当然この数を相手にしようなんて思うほど俺も馬鹿じゃないし、敵の頭を取ろうにもあいつらはこの場にいる

 

者で勝てるようない相手ではないのは見ればわかる。せいぜい、時間稼ぎが関の山だ。もちろん、少しでも時間を稼いで、ということも

 

考えられるが、その時間稼ぎの結果得られる本国にとっての利益と、兵の命を天秤にかけたら、どっちを選ぶかなんて考えるまでもない」

 

 

 

先ほど本国に援軍は求められないと言っていた若き兵長が本国に伝令をと命じたものだから、

 

兵士はなぜと問おうとするが、若き兵長は考え違いだと喰い気味に告げ、はっきりとした口調で籠城の無益さと、

 

時間稼ぎによる兵の損失を説き、戦いを続けることはできないと説明した。

 

この乱世の時代、自身の命は国のものなどという考え方はよくある話であるが、この若き兵長のような決断は、

 

命惜しさともとられかねない、極端なものが聞けば、死を覚悟し、

 

命を懸けて戦う兵たちに対する侮辱であるという反発を受けかねない、ある意味では珍しい選択だと言えた。

 

 

 

弓兵長「?昭さん・・・」

 

 

 

そして、そのような若き兵長の人となりを知っていた若き弓兵長は、

 

戦闘中は決して呼ばない若き兵長の名を口にすると、悔しそうにその場にうなだれた。

 

 

 

警備兵長「本国へは3万もの賊が関を強襲。突破され、そのまま東進を続けていると伝えろ。あと、数名大将並みの手練れも確認。数の

 

規模からも国規模の奴らが関わっている可能性ありとも伝えろ」

 

 

警備兵A「・・・・・・はっ!」

 

 

警備兵長「俺たちにできるせめてもの事は、賊の急襲をいち早く本国に伝え、万全の態勢で賊の排除に当たってもらうことぐらい。なに、

 

別に、戦うだけが時間稼ぎの方法ではないさ・・・」

 

 

 

賊による関所急襲の報を知らせるべく早馬が関から発って間もなく、兵長は降伏の意を示した。

 

 

 

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【豫州、潁川郡、許城地下牢】

 

 

北郷「そうか、君も恋の家臣だったのか。でも何でこんなところに?」

 

 

 

鉄格子を隔てて、北郷と臧覇は地面に座りながら話し込む態勢に入っていた。

 

兜を外して一息ついている臧覇を北郷は改めて確認した。

 

紫紺色を基調にした曹操兵の衣装に身を包んだ小柄な体躯に、腰のあたりまで伸びる長い黒髪のポニーテイル。

 

そして体の大きさ通りの幼い面影を残した可愛らしい面構えである。

 

 

 

臧覇「まぁ話せば長くなるんだが、事の始まりは曹操軍が下?に攻め込んで来た時だぜ。その時、俺は城門で防衛に当たっていたんだが、

 

突然あの三馬鹿が裏切ったのはアンタも知っての通りだぜ」

 

 

 

当時、呂布軍は下?にて曹操軍と対峙していた際、水攻めによって敗戦濃厚になったのをきっかけに、八健将の三人、

 

魏続、宋憲、侯成の裏切りにより呂布と陳宮は窮地に立たされたのだが、その際、北郷が降臨し、三人を撃退したのも随分前の話である。

 

 

 

臧覇「結局アンタが助けてくれたおかげで、奉先様も公台殿も死を免れ、元の覇気を取り戻した奉先様が城門の守りについてくれたから、

 

俺は高順殿と張遼と合流して夏候惇を潰しにかかろうとしたんだが、この時しょうもない失敗をしてしまったんだぜ」

 

 

北郷「失敗・・・?」

 

臧覇「そうだぜ、俺が高順殿と張遼と合流する前に、三羽烏に囲まれてしまったんだぜ。結果、俺は曹操軍に捕まってしまったんだぜ」

 

 

 

本来なら思い出したくもない苦い経験のはずなのに、臧覇は何ということはないといった軽い様子で、

 

可愛らしい容姿に不似合な、自虐の意も含んだニヒルな笑みを浮かべながら言葉を紡いでいく。

 

 

 

臧覇「もちろん俺は奉先様一筋だから、捕虜なんていう誘いに乗るつもりはなかったし、死ぬ覚悟だったぜ。だが、曹操が奉先様たちを

 

逃がしたって言うじゃないか。俺はその時確信したぜ。生きていれば、必ず奉先様の元に帰れる機が訪れるぜってな」

 

 

 

当然敵将たる呂布は処断されてしかるべき。

 

そのように考えていた臧覇が同様に死を望んだのはやむを得ないことかもしれないが、

 

それが生かされたという話になれば全然話が違ってくる。

 

その瞬間臧覇の心に芽生えたのは、再び呂布の元に帰参すると言う誓い。

 

そして、その誓いを果たすために、どんな手を使っても生き延びてみせるという強い意志であった。

 

 

 

臧覇「まぁ、幸い曹操軍は実力至上主義。能力さえあれば、元敵兵だろうが関係なく優遇されるんだぜ。それで、俺はこの腕っぷしだけ

 

で曹操軍に認められて、今まで過ごしてきたってわけだぜ」

 

 

北郷「それで、ずっと脱走の機会をうかがっていたのか。何年もの間・・・」

 

 

 

もし下手に脱走をしたら、最悪の場合追手の矛先が呂布に向けられるかもしれない。

 

それでは下?の二の舞になってしまう。

 

そのため、脱走するなら完璧に遂行しなければならない。

 

忠誠を誓った主君が別の場所で生きていると分かっていても、その元に馳せ参じることができない。

 

ただその期が訪れるまでじっと我慢をし続ける。

 

気づけば数年が経っている。

 

それがどれだけ辛いことか、北郷は想像するもしきれず、生唾を呑みながら真剣に臧覇の言葉に耳を傾けている。

 

 

 

臧覇「ああ、厳しい時間だったが、それでも、アンタが成都に入って以来の目覚ましい繁栄ぶりはここにも聞こえていたし、そういう話

 

を聞くたびに、俺は気合を入れ直したもんだぜ。奉先様たちが頑張ってるんだから、俺も踏ん張らなきゃいけないぜってな」

 

 

 

成都の領主が劉璋から北郷に代わってからの発展は許にも伝わっており、当然呂布の武勇も途絶えることなく大陸中に広まっていた。

 

それは当然許も例外ではなく、そのような話が臧覇にとっての心のよりどころであり、支えとなっていたのであった。

 

 

 

臧覇「それで、今度曹操が大規模な南征に移るって話が出て、これは千載一遇の機会だと思っていたら、アンタが捕えられたっていう話

 

が出てきたんだぜ。その時俺は思ったんだぜ。奉先様と離れ離れになって以来、全くお役に立てていなかった俺にできる精一杯のことは、

 

アンタを奉先様の元に返すことだぜってな」

 

 

 

北郷が捕えられている牢が、他の罪人が捕えられている牢から隔離された場所にいるためか、

 

臧覇は小さな声ながらも、やや語気を強めながら握る拳を強めた。

 

 

 

臧覇「残留組に選ばれるのには苦労したもんだぜ。ある程度、信頼を得てしまっていただけに、俺にも南征軍の招集がかかったからな。

 

幸い、ある人物の一言のおかげで、俺は城に残ることができたんだが、そういう意味でも天運は今俺たちについているぜ」

 

 

北郷(ある人物・・・?)

 

 

 

ある人物、という曖昧な表現に北郷は何か引っかかったような顔をするが、臧覇は特段気に留めることもなく、話を続けた。

 

 

 

臧覇「で、だぜ。ここまで話しておいてズルいかもしれないが、どうだぜ、俺と一緒にここから脱走して奉先様の元に帰らないか?」

 

 

北郷「ああ、君の話に嘘はなさそうだし、俺を試そうと曹操が仕掛けた罠でもなさそうだ。俺もここから脱出する機会を窺ってたんだ。

 

むしろこっちからお願いしたいくらいだよ」

 

 

 

そして、ここからが本題と、臧覇は顔を鉄格子に押し付けるほど近づけると、

 

脱走の話を再度持ち掛け、北郷は迷うことなく臧覇の話に乗った。

 

 

 

臧覇「決まりだぜ。ちょっと待ってろ。協力者は多い方が良いぜ。奉先様に縁のあるヤツらに声をかけてくるから、2,3日したらまた

 

来るぜ」

 

 

 

北郷から良い返事が返ってくると、臧覇は可愛らしくニヤリと嗤うと膝を打って立ち上がり、

 

2,3日後また戻ってくると、協力者を集めるため地下牢から出て行った。

 

 

 

【第八十九回 第五章B:御遣い奪還編D・奉先様の元に帰れる機が訪れるぜ 終】

 

 

 

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あとがき

 

 

第八十九回終了しましたがいかがだったでしょうか?

 

さて、恋たちの関所攻略が始まり、夜襲が成功したわけですが、

 

この関所の警備兵長こと?昭さんといえば、大元では諸葛亮率いる蜀軍を、陳倉にて少数で受けきったことでも有名な方ですが、

 

今回は時期的にまだ未熟であり、すぐの降伏となりました。あと20年もすれば恋たちは攻略できていなかったかもしれません。

 

一方、元呂布軍である臧覇と一刀君との出会い、そして脱走の誘い。

 

こちらは恋たちの思いとは全く関係なく動いているのですが、果たしてこの行動がどう影響するのか、、、

 

 

それではまた次回お会いしましょう!

 

 

 

ある人物とはいったい、、、?

 

説明
みなさんどうもお久しぶりです!初めましてな方はどうも初めまして!

ついに先日戦国恋姫Xを買ってしまいました。

これで更に執筆作業が滞ってしまいます、、、汗

さて、今回から本格的に関所攻略開始です。

一方、元呂布軍・臧覇と出会った一刀君は、、、?

それでは我が拙稿の極み、とくと御覧あれ・・・


※第七十二回 第五章A:御遣処刑編@・御遣い殿は真正の大馬鹿者と言えます<http://www.tinami.com/view/799206>
※第八十五回 第五章B:御遣い奪還編@・適材適所<http://www.tinami.com/view/850145>

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コメント
>この「ある人物」による一言、果たして天運に恵まれた偶然なのか、それとも曹操軍の罠なのか、あるいは、、、(sts)
ある人物って、罠に思えてしまう(聖龍)
一刀そこは、ある人物について確認しなきゃ。ある人物による罠の可能性もあるんだから。(神木ヒカリ)
もしかしてそれって単・・・。(未奈兎)
ある人物とやらが軍師のうちの誰かなら確実に罠だな・・・・・・(アルヤ)
ある人物って誰だ?罠じゃなければいいが(nao)
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