それぞれの告白 |
テレビでやってるドラマや映画で告白のシーンなんて何回も見たことあるけど、でもそれは私の中ではテレビの中だけだって思っていた。
けど、そんなことは実際になくて……たまたまそれを見てしまった。
その告白されている相手は、私大室櫻子の友人でいつも私のことを助けてくれている、赤座あかりちゃんだったんだ。
【それぞれの告白】
明咲桜照(あさきさくてる)
その日の放課後はごらく部も生徒会もなくて久しぶりに向日葵とちなつちゃんとあかりちゃんでアイス屋さんに寄って楽しく話して帰ろうって話になっていたんだけど、向日葵とちなつちゃんが掃除当番だったので下駄箱の前でしばらく待つことにしていたんだけど……二人共まだなかなか来なかった。
「二人とも遅いなー。何やってるんだろ?」
そんなに時間かからないと思うんだけどな。それか私が単に気が短いだけ? どちらにしても遅く感じる。
「そういえばあかりちゃんも呼ばれてたよね……もう用事済んだのかな?」
あかりちゃんはクラスの女の子に中庭に放課後呼び出されていたんだけど、何かの仕事の手伝いかな? あかりちゃんって色んな子に頼りにされているからなぁ。
それでもいやな顔一つせず笑顔でいつも頼まれたら何でもするあかりちゃんって、ホントにいい子だなぁって思う。 向日葵にも見習わせたいくらいだ。
「とりあえず、あかりちゃんの様子を見に行ってくるか」
上履きから靴に履き替えて、外に出た。 あかりちゃんがいるであろう中庭はすぐ近くなのでとりあえず向かった。
誰もいない中庭のベンチであかりちゃんとあかりちゃんを呼び出したクラスの女の子が何か話していた。
あかりちゃんと隣に座っているクラスの女の子は真剣な表情を浮かべている。 一体なんの話をしているのだろう?
まあいいや。とりあえず声をかけてみよう。
私はあかりちゃんに手を振りながら声をかけようとした。
「あかりちゃん、用事終わっ―――
しかし
「赤座さん、私とお付き合いしてくれませんか?」
突風が急に訪れたような、いきなりの告白に私の声はかき消された。
なに? なんなの? 突然の不意打ちを目の当たりにして私の目も少し泳いでしまう。
「え……えっ!?」
そしてあかりちゃんも突然の告白に少し慌ててるみたいだった。
「へ、返事はいつでも待ってるから!!それじゃ、またね!!」
クラスの女の子は涙を浮かべて、顔を真っ赤にしながらそう言って早歩きで去っていった。
突然の出来事で私はボーゼンとしてしまう。
え?ていうかあれ……告白? あかりちゃんに?
「え、えーっと……あ、櫻子ちゃんだぁ」
あかりちゃんも少し困惑しているような、恥ずかしがっているような表情を浮かべていたけど、近くにいる私に気付いて声をかけてくれた。
「どうしたの、櫻子ちゃん?」
「あ?あぁそうだった、あかりちゃんの用事終わったかなって思って呼びに行こうとしてたんだけど……ってそうじゃなくて!!」
そうなんだけど、そうじゃない。そうなんだけど、今はそうじゃない。
「あかりちゃん、今のって……」
「うん……告白されたねぇ」
努めて冷静そうに、あかりちゃんは答えた。さすがのあかりちゃんも自分が置かれている状況が分かっていたみたいだ。
そして、心なしか元気をなくしているようにも見えた。
「……」
「あかりちゃん?」
「あっ、ごめんね。櫻子ちゃんもびっくりしたよね……えへへ」
「私は平気だけど……あかりちゃん大丈夫?」
「……あかりは、平気だよ?」
「……」
なんとなくだけど、そうは見えなかった。
だって、あかりちゃんにとってはクラスで仲良くしてる友達なんだよ? 急に告白なんてされたら、これからどう接していけばいいのか悩むに決まってる。
私だってきっとそうだ……告白なんてされたことないけど。
「櫻子ちゃん」
「ん?」
「告白されたこと……黙っててくれる?」
あかりちゃんは不安そうにそう聞いてきた。
きっと他のクラスメイトや向日葵やちなつちゃんに、心配されたくないんだろう。
特にちなつちゃんは一緒のごらく部で親友だもんね……
あかりちゃんはそういう女の子なんだって……もちろん分かってるよ。
「うん、もちろんそれはいいけど」
「……ありがとう櫻子ちゃん」
私は、困ってたら誰かに話たらいいんじゃないか? と思ったけど、あかりちゃんの意思を尊重することにした。
「でも、その代わりに今日は私に付き合ってくれる?」
「えっ?」
「あっ、付き合うっていってもそういう意味じゃないよ。あかりちゃんと二人でどうしようか話合おうって思ったんだ」
「あかりと?」
「うん。あかりちゃん、困ってるように見えたから」
「……」
あかりちゃんが悪いことをとがめられてるみたいに、一瞬目線をそらす。やはり図星みたいだ。
「私も、れんあいのことについては素人だけど……一人で悩むよりかは二人で悩んだほうがいいかなって思ってさ」
「……うん、わかったよ」
「よしっ。そうと決まれば、今から私の家へ行こう」
「でも、ちなつちゃんと向日葵ちゃんは?」
「うーん、二人には悪いけど……今日は二人で帰るってケータイで連絡しとくよ。アイスはまた今度皆で食べよう?ね?」
「いいのかな? せっかく約束したのに……」
あかりちゃんは申し訳なさそうな顔をして俯いてしまう。
どうやら自分のせいでせっかく約束したことが破れるような形になったみたいで、悪いと思ってるようだ。
「大丈夫だって。これくらいであの二人があかりちゃんのこと、嫌いになんかならないって」
「……ホント?」
どうやらあかりちゃんは相当参ってしまったのか、少しのことでビクビクしてるようだ。そんなに気にしなくていいのに。
「ぜったい、ぜーったい大丈夫!!あかりちゃんのこと、誰も嫌いにならないよ!! あかりちゃんは心配性だなぁ」
まあ、誰に対してもそんな優しいところがあかりちゃんの良い所なんだけどね。
「……そうだよね。ごめんね、ヘンなこと聞いちゃって」
「気にしなくていいよ。じゃ、一緒に私の家へいこっか?」
「うんっ」
「あ、その前に電話するね」
向日葵にケータイで「今日はやっぱり二人で帰る」って伝えて、二人で自分の家で勉強するから今日は家に来るなよとウソの説明をすると「はぁ……赤座さんに迷惑かけるんじゃありませんわよ」という返事が帰ってきた。
『そんなことしないわ』と言いたかったけど、適当に返事をして、電話を切ったあと、二人で私の家に向かった。
「はい、あかりちゃん。おまたせ」
「うん、ありがとう……」
あかりちゃんを部屋に通して、あかりちゃんが好きなポテチのうすしお味とぴっちょんオレンジを持ってきた。
あかりちゃんはジュースの入ったコップを受け取ると、コップの中身を見るだけでなかなか飲もうとはしなかった。
「……」
「どうしたの? 飲んでいいんだよー」
「うん……」
「……」
あかりちゃんはさっきよりもみるみる落ち込んでいるように見えた。
あかりちゃんのことだ。きっと友達でいたいと考えているのだろうけど、相手を傷つけないように断ろうと考えている。
でも恋愛関係になるのが、友達との関係が恋愛に変わるのが、きっと怖いんだ。
あかりちゃんはみんなのことが大好きだけど、それは『友達としての好き』だから。
「……」
「ねえ、あかりちゃん」
「えっ?」
「あかりちゃんはあの子と、恋人? として付き合いたいの?」
「えぇっと、あかりは……」
「うん」
「あかりは……よくわからないんだぁ」
「わからない?」
意外な答えが帰ってきた。
私はあかりちゃんが断りたいって思っていたから……でも、なんでなんだろう?
私はとてもじゃないけど、あかりちゃんに恋愛なんてできそうにないって思ってる。本人に言ったら怒られそうだけど。
「あの子のこと、好きなの?」
「好き……?」
「だって、そうなっちゃうじゃん」
「うーん、あかりの友達としては好きだけど、なんて言ったらいいんだろう、えっと……」
「?」
あかりちゃんがどう答えたらいいのか分からず、少し焦っているようにも見えたので、落ち着いてもらうために「とりあえずジュース、飲もっか?」と勧めてみた。
するとあかりちゃんは「うん」と答えて少しだけ飲むと、しばらくして落ち着きを取り戻したみたいだった。
「落ち着いた?」
「うん……ごめんね櫻子ちゃん」
「ううん、あかりちゃんにはいつも助けてもらってるんだし」
「……」
「それで、あかりちゃんはその子とは友達としては、好きなんだよね?」
「……うん」
「でも、付き合いたいかはわからないと、そういうことでいいんだよね?」
「…………うん」
「それはどうしてなの?」
「…………」
あかりちゃんが困ったように、黙ってしまった。
今のところをまとめてみると、あかりちゃんは友達として好きだけど付き合いたいかどうかは分からないということだ。聞いたことそのまんまだけど。
そしてしばらくの沈黙が続いたあと、あかりちゃんの口が開いた。
「……あかりね」
「?」
「あかりね、初めて告白されてうれしかったから、あの子の期待に応えてあげたいって思っちゃったんだぁ」
「うん……」
それはそうだよね。自分のことが好きだって言ってくれてうれしくない人なんていない。
私も、きっと告白されたらうれしい。
……付き合いたいかどうかは別だけど。
「でもさ、あかりちゃんは怖くないの?」
「怖いって……なにが?」
「付き合ったらさ、色々あるんだよ? 私も誰かと付き合ったことないから分からないけど……キ、キス、とか」
「キ、キス? キス!?」
『キス』なんてこと言ったから、あかりちゃんの顔が真っ赤になってしまった。
つられて私も顔が熱くなった。 う〜……恥ずかしい。
「そ、そうだよねぇ……」
「テ、テレビでもやってたけどさ……キス以上のことだって、あるかもしれないんだよ?」
「うぅ……」
「手を繋いだり、抱きしめあったりするだけじゃ……済まないかもしれないんだよ?」
「……」
「それも含めて、あかりちゃんはどうしたいの?」
「……」
少し話が飛躍しすぎたかもしれない……あかりちゃんも顔を真っ赤にして固まっちゃったし。
でも『れんあい』ってそういうことだよね……誰かを特別扱いして、お昼に一緒にお弁当食べたり、デートしたりもして。
私の想像だけで、知らないことだっていっぱい……
「櫻子ちゃんは」
「ん?」
「櫻子ちゃんは……あかりがあの子と付き合うことについて、どう思う?」
「うーん、私は……」
私は、どうなんだろう?
実際に告白されたり、誰かを特別扱いしたことも、デートしたこともないからなぁ……
「……」
でも、あかりちゃんは、私から何かの答えを待っているみたいだった。
「……私は、あかりちゃんの好きなようにしたらいいと思うよ」
「……そっか」
「もちろん皆には内緒にするし、付き合うことになったら応援するし、アドバイスもしてあげる。あの子はあかりちゃんみたいに元気でいい子なのは知ってるし、悪くないと思うよ」
「……じゃあ、質問を少し変えるね」
「……うん?」
「もし、櫻子ちゃんはあかりがあの子と付き合うことになったら、どう思う?」
あかりちゃんは不安そうに、真剣な目をしながらそう聞いてきた。
しかも今度は付き合うこと『なったら』、付き合うことが決まったらの話をしてきた。
「うーん、そうだなぁ……」
あかりちゃんがねぇ……どうなのだろう?
私にとってあかりちゃんは、いつも困ったときには私を助けてくれて、まわりへの気配りもできるいい子で、いつもみんなの前で笑顔を絶やさないような、誰にでも優しい女の子。
一緒にいると楽しいし、ちょっとしたいたずらしたって本気で怒ったりしないし……いつも一緒にいてて飽きない、かな?
でも、あの子と付き合うってなったら……どうなるのだろう?
きっと今みたいに一緒にお昼ごはんも食べなくなって、きっと今以上に私たち四人との時間が、あかりちゃんとの時間が、なくなっちゃうかもしれない。
それに、ごらく部と過ごす時間だって……あかりちゃんにとって大切な時間が……いっぱい、いっぱいなくなっちゃうかもしれない。
春に桜を見に行ったり、夏に海水浴や祭りに行ったり、秋に紅葉狩りをしたり、冬に一緒にスケートしたりすることも、これから出来なくなっちゃうかもしれない。
それでも、それでもあかりちゃんはホントにあの子と付き合ってもいいの……付き合いたいの?
もし付き合い始めて、あの子と過ごしていくうちに、私の知っているあかりちゃんじゃなくなってしまったら……どうしよう。
「……」
「櫻子ちゃん?」
「……あかりちゃんはさ、いつか大人になりたいって、言ってたよね?」
「うん」
「確かに恋愛すれば今よりも大人について一歩でも近付くかもしれない、大人になることがどんなことか、分かるようになるかもしれない」
「うん……」
「私は、さっきも言った通り……あかりちゃんの好きなようにすればいいと思う」
「……」
「あかりちゃんの意思は尊重したいし、あかりちゃんのためにもなるかもしれない……でも」
「……でも?」
「……………………いやだ」
そう、私の声が力なく震える。
「や、やっぱりさ、あかりちゃんと私はこれからもずっと一緒に遊びたいって思うから……一緒にいる時間がなくなっちゃうのは、いやだから」
「……」
「確かに私たち、中学生だし、これからどんどん大人に近付いていくし、これからのために、色んなこと知っていきたいとは思うよ?」
「でも、私は、大人のことを、恋愛のことを知っていくのはゆっくりでもいいと思ってる」
そうだよ、今じゃなくてもいい。
「私自身あかりちゃんにまだまだ助けてもらわないとダメダメだからさ……あとそれにあかりちゃんともこれからもいっぱい、いっぱい遊びたいって考えてるし」
「せっかく、入学してから最初の友達になったんだよ?もっと一緒に過ごしたいじゃん?」
今の時間が、一番好きだから。
「だから、あかりちゃん……私たちから、私から離れないでよぉ!!うぅ、うっ、えぐっ……」
気付いたら泣いてしまっていた。
内心では、告白されたあかりちゃんをほんの少しだけ祝福してたけど……やっぱり、あかりちゃんが離れてしまうような気持ちになっちゃって、耐えられない。
あかりちゃんとこれからもずっと一緒にいたい。
「櫻子ちゃん……」
向かいに座っていたあかりちゃんが近付いて、自分のハンカチで私の涙を拭き取ってくれている。
私が「ごめんね、あかりちゃん」と言って謝ると、あかりちゃんが私のことを抱き締めてくれた。
「ううん、あかりのほうこそごめんね?櫻子ちゃんのこと、泣かせちゃったね」
「そんなこと、気にしないで」
「ごめんね、ごめんね……」
あかりちゃんは優しく微笑みながらそう呟いていた。
後日、あかりちゃんが告白の返事をしたいから付き合って欲しいと言われて放課後にまた学校の中庭へ一緒に向かった。
そしてベンチには前日にあかりちゃんに告白していたあの子が座っていた。
「あ、赤座さん」
「ごめんね、急に呼び出しちゃって」
「いいよ気にしなくて。でも、大室さんはどうして?」
まあ、それはそうだよね。一応部外者だし。
「あかりちゃんに、一人じゃ心配だからついてきてって言われたんだ」
「そっか……」
他の人に知られたことに対して、少し気まずくなったことに気付いたあかりちゃんが「櫻子ちゃん以外はこのこと知らないから大丈夫だよ」とフォローを入れる。
「だったらいいけど……大室さんだから少し心配、かな?」
「いやいや、私はホントに誰にも言ってないから!向日葵やちなつちゃんも知らないから!!」
「ははっ、ごめんごめんウソウソ。大室さんはそこまで口が柔らかいって思ってないから」
「ホントかよ……」
そうブツブツ言っているとあかりちゃんが「櫻子ちゃん、いいかな?」と聞いてきた。
「あ、ごめん。本題に入らないとね」
「うん……」
「……」
「赤座さん」
「?」
「私、赤座さんのこと……本気だから」
「!」
「だから、聞かせて? 赤座さんの答えを」
そう、顔を真っ赤にしながら真剣な目で言われてしまってあかりちゃんは少したじろいでしまった。
そんな目で見られたのが初めてのことだったのか、あかりちゃんは少し慌ててしまい、目線を泳がせてしまった。
「え、えっとぉ……」
「……」
「あかりちゃん」
返事をするのが怖くなってしまっているあかりちゃんの手を、私は握ってこう言った。
「大丈夫。怖くないよ」
「櫻子ちゃん……」
「私がついてる。心配しないで」
「……うん」
「……」
「えっとぉ、その、告白されて、うれしかったよ? ありがとう。あかり、今までこんなことなかったから」
「うん」
「……でも、ごめんなさい。あかり、あなたとお付き合いできません」
「……そっか」
「でも、これからもあかりのお友達でいてくれる?」
「……もちろん。そんなの当たり前じゃん」
告白の返事をされて、相手の女の子は泣いてしまっていたけど、それでもそう笑顔で答えてくれた。
「でも、ありがとう赤座さん。私の話、聞いてくれて」
「……うん」
「これからも、いつも通り接していいから!それじゃあ、またね!!」
そう言いながら、あの子は走って中庭をあとにして、校門のほうへ向かっていった。
あの子にとっても、きっと初めての『れんあい』で、初めての告白だったから、つらかったのだろう。
こういうことも、経験していくうちに……初めて大人になれるのだろうか?
「……」
「あかりちゃん」
あかりちゃんの手を引いて私はぎゅっと抱きしめてあげた。
「大丈夫?」
「……うん」
「うんって……そんなこと、ないでしょ?」
「……」
「だって、あかりちゃん泣いてるじゃん」
「……」
「ホントは誰かを傷つけちゃうんじゃないかって思って、怖かったんだよね? あかりちゃんは優しいから」
「……あかり、優しくなんかないよ。あの子だって、今頃傷ついてるもん」
「……」
「誰かを傷つけてしまうことが、こんなに怖いんだって、こんなに辛い思いをするんだって……思わなかった」
「あかり、これで良かったのかなぁ? 櫻子ちゃん……」
良かったかどうかなんて……そんなの、決まってる。
「……確かにあかりちゃんは、あの子のことを傷つけちゃったかもしれない。それはきっと、一生思い出として残ると思う」
「でも、私はこれで良かったと思ってるよ」
「……?」
「だって、あかりちゃんはあの子に勇気を出して、逃げないでちゃんと自分の気持ちを伝えたから、自分の気持ちに向き合ったから、だからあの子も泣いてたけど笑顔で答えてくれたんじゃないかな?」
「……」
「だから、あかりちゃんがそこまで思い詰めることはないと思うな」
「……ホントに?」
「ああもう、あかりちゃんは気にしすぎだよ。泣かないで」
そう言いながら頭を撫でると、あかりちゃんは徐々にではあるが、元気を取り戻してくれた。
「うん、ありがとう櫻子ちゃん」
「それでこそ、あかりちゃんだよ」
「えへへ……なんかごめんね。あかり、泣いちゃって」
「この前の私が泣いてしまったから、おあいこだよ」
「……うん」
「あかりちゃん」
「?」
「これからも、辛いこと、悲しいこと、あるかもしれないけどさ……一緒に乗り越えて行こうよ。私が支えてあげるからさ」
「うん、ありがとう櫻子ちゃん」
私の目の前に広がるのは、優しくてあったかい、飛びきりの笑顔だった。
そのためなら私はどんなに辛いことがあってもがんばっていける、そんな気がした。
【完】
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する予定がなくなったさくあか合同誌用に書いたSSです。 よろしくですー。 あとめっちゃ気が早いけど大室櫻子ちゃんお誕生日おめでとー!! |
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