〜薫る空〜14話(拠点:華琳√)
[全3ページ]
-1ページ-

 

 

 

 

 

 

さわやかな朝。

 

白い朝日を背に、風を感じて、紅茶を楽しみながら、優雅に…

 

【華琳】「それは随分素敵な朝ね」

 

行くはずもなく、そんな朝は我らが主の一声で終了した。

 

【一刀】「………おはよう」

 

【華琳】「えぇ。おはよう、一刀」

 

何事もなく、そこには華琳が立っていて、俺はといえば、寝台の上で座っていて、知らない者がみれば病人に見えないこともない状態。

 

【華琳】「それじゃ、いくわよ。一刀」

 

【一刀】「はい?」

 

突然何の前触れもなしに華琳が振り返り、部屋を出て行こうとする。

 

もはや勝手に入ってきたことに突っ込みを入れることすら叶わず。俺はそちらに気をやるしかなかった。

 

【一刀】「って、ちょ……どこいくんだよ」

 

【華琳】「どこって、決まっているでしょう」

 

寝起きの俺は華琳にすら引きずられてしまう始末で、そのままズルズルとついていく。

 

なぜかその途中で「顔くらい洗ったらどうなの?」と、責められ、顔を洗わされた。

 

どう考えても洗えなかったのは華琳のせいだと思うんだが…

 

そしてまた手を引かれ、さすがに引きずられるという事はなくなったがやはり逃げる事叶わず、華琳が向かう場所というところへと歩いていく。

 

【一刀】「って、服屋?」

 

ついていくと、華琳は廊下を渡って、城の外へ出てしまい、街を歩き、ついには服屋までたどり着いた。

 

【華琳】「もちろん、服屋よ」

 

なにがもちろんなのかはさて置き、華琳はそのまま店の中へ入っていく。

 

こんな朝から開いているものなのだろうかと疑問に思ったが、それも考えないようにした。

 

華琳なら平気で開店時間を早めかねない。

 

俺もその店の中へ入り、華琳の後へついていく。

 

【一刀】「欲しい服があるなら春蘭とか秋蘭と来たほうが良かったんじゃないか?わざわざこんなに朝早くに来なくても…」

 

【華琳】「同じ人間が選ぶ服というのはどうしても趣味が偏ってしまうもの。それに男から見たものというのも気になる。というのもあるわね。」

 

 

それだけ言って、華琳は奥のほうへ行ってしまう。

 

しかし………華琳に合うサイズの服って、あっちのほうしか…

 

俺はちらっとだけ、子供用のほうを振り向く。

 

【華琳】「そんなに首を撥ねて欲しいのなら、言ってくれればいつでも手伝うわよ、一刀?」

 

【一刀】「滅相もございません。」

 

背中越しにもかかわらず、相変わらずな殺気を心地よく放ってくれる華琳。

 

そんな覇王様が見ているものといえば、なんと下着コーナーじゃありませんか。

 

【一刀】「服じゃなかったのか…」

 

【華琳】「あら、下着くらいで緊張しているの?」

 

【一刀】「そ、そんなことはない!」

 

そう言うと、わざわざこちらを振り向いて……あああっ体に当てるな!!

 

【華琳】「どうかしら、一刀」

 

【一刀】「い、いいと、おもう…よ?」

 

【華琳】「……はっきりしないわね」

 

ニヤニヤしていた顔がまた不機嫌にもどる。

 

先ほどつけていた下着をもどして、ごそごそと別の物をあさり始める。

 

【華琳】「こっちは?」

 

【一刀】「ん……」

 

そういって見せてくるが、正直下着の違いなど分かったものではない。

 

精々色の違い程度。しかも尚悪いことに、また体に押し当てている。これで直視すれば俺は周りからは不審者扱いだろうか。

 

しかしそんな状況でも、目の前のこのお方はきちんとした意見を求めている。

 

何か言わないといけない。しかし、俺には見ることも調べることも叶わず、天に助けを求めるほか無かった。

 

一応天の遣いなんですけどね。

 

【一刀】「先のほうがよかったん…じゃ、ないか?」

 

恐る恐る、爆発物の導火線を切るように答える。間違えれば終わりな点では同じといえるかもしれない。

 

【華琳】「ふむ…」

 

しかし、華琳の反応は喜ぶ、怒るなどの予想したものではなく、また何か考え込んで持っていた下着を下ろした。

 

そして、そのまま先ほど選んだ下着をもち、店員のところへ……って!!

 

【一刀】「か、華琳!?それでいいのか?」

 

【華琳】「えぇ、元々ここではあなたが選んだものを買おうと思っていたから」

 

それはどういう意味でしょうか、華琳さん。

 

いい意味でとってもいいんでしょうか。

 

いい意味ってなんだよ。まさか華琳が俺を?いやいや、ないない。

 

いや、しかし、こんなところにつれてきて、下着を選ばせるくらい………

 

………………。

 

………。

 

 

 

【華琳】「一刀?」

 

【一刀】「いや、まだそんな結婚なんてはや…………。ん、んん!!さ、行こうか。華琳」

 

【華琳】「………………。」

 

 

 

俺達はそのまま、最初の店をでた。

 

 

 

-2ページ-

 

 

 

 

 

 

店を出た後、少し歩き、別の店を探す。

 

【一刀】「行く場所が決まってるわけじゃないのか?」

 

【華琳】「いつもは同じ店だけど、もうその辺りの店のものは全ててみてしまったのよ」

 

普段どんな買い物の仕方してるんだか…

 

まさか某姉妹みたいに「そこの棚のもの、全部くださる?」とかか?

 

さすがにそれは……

 

【華琳】「ん?」

 

華琳のほうを向くと目が合ってしまった。うむ、ありえそうだ。特に春蘭あたりと買い物に言った場合は。

 

【一刀】「そういえば、薫が呉で侍女の服きてたらしいけど、華琳はそういうの着ないのか?」

 

【華琳】「は?どうして主が侍女の服なんか………って、待ちなさい。今なんと言ったの?薫が侍女?」

 

急に華琳の雰囲気が変わった。

 

【一刀】「あ、あぁ。たしか孫策が着せたとか言ってたけど。」

 

【華琳】「なんてことかしら…………江東の小覇王の名は伊達ではないわね」

 

【一刀】「そ、そうなのか?」

 

【華琳】「あの薫に侍女をさせるなんて、物の本質を理解している証拠だわ」

 

………それでいいのだろうか…。

 

 

 

 

話していると、華琳が急に立ち止まる。どうやら目的の場所に着いたらしい。

 

しかし、目の前にあるのは服屋ではなく、なんだか見た事無いものばかりがおいてある店。

 

商品がひどく劣化していたり、古びているから、骨董屋みたいなものだろうか。

 

 

店全体が一般人を寄せ付けないオーラを漂わせ、店というより廃屋に近かった。

 

だが、そんな雰囲気を気にもせず、華琳は店の中へ入っていく。

 

【一刀】「服買いにきたんじゃなかったのか?」

 

俺もついていき、声をかける。

 

【華琳】「服だけとは言っていないわよ」

 

こちらを見ることなく、華琳は背中で答える。

 

 

そして、そのままさらに奥へと進み、並べられた商品を眺めていく。

 

そして、一番奥に置かれていた、一つの本を手にしていた。

 

【華琳】「………………こんなところにあったのね」

 

【一刀】「え?」

 

突然呟く華琳に戸惑い、そちらを向くと、華琳が持っていた本が見えた。

 

それは華琳がかつて探していた書物。

 

【一刀】「それって…」

 

【華琳】「えぇ」

 

最後まで言葉を聞かずとも分かるという風に、会話が成り立つ。

 

【一刀】「たしか、それを探してて、俺と薫が拾われたんだよな」

 

【華琳】「………そういえば、そうだったわね。大方この間の賊が見つけて売り払ったのでしょう。…………やはり、これにも感謝するべきかしら…」

 

物憂げに、華琳は小さく呟く。

 

そして、もっていた本を棚へと戻し、踵を返す。

 

【一刀】「いいのか?」

 

【華琳】「………こんなところにあったところで、意味の無いものよ。それに今手に入れても、それが機でなければ、またどこかへ行ってしまうから。」

 

華琳の言っている意味がいまいち理解できないまま、俺達は店を出る。

 

外に出れば空は夕焼けとなっていた。

 

 

【一刀】「もう一箇所くらいまわる?」

 

【華琳】「いえ、帰りましょうか」

 

空を見ながら、華琳が答える。

 

【一刀】「今日、下着しか買ってないんじゃ?」

 

【華琳】「えぇ、だから目的の物は買えたわ。」

 

【一刀】「目的って、下着が?服じゃなかったのか?」

 

【華琳】「………。」

 

 

振り返って、俺に背を向け、ギリギリ聞こえるかという声で、

 

 

【華琳】「あなたが選んだものなら、何でも良かったのよ」

 

そういった。

 

華琳はそのまま少し速めに歩き出す。

 

俺はその言葉に何も答えられず、彼女についていくしか出来なかった。

 

【一刀】「………それは、どういう意味で受け取ればいいんだよ、華琳。」

 

聞こえないように、静かに呟く。

 

夕方の街にその声とは正反対に、心臓だけが、うるさく鳴り響いていた。

 

 

 

 

-3ページ-

 

 

あとがき

 

とりあえず、華琳だけですが、拠点編第1弾ということであげてみました。

 

凪の分もできてから一緒にあげようかとも思ったんですが、あまりお待たせするのもどうかと思って一人分だけです。

 

 

こういう拠点的なお話を考えるのは個人的にはすごく苦手で、きちんと出来ているかすごく心配になります。

 

こんな苦手意識はなくなればいいんですが...無理だろうなぁ( ´ー`)

 

ボクの中では拠点=ニヤニヤ的なイメージがあって、どう書けばそう言う風なものになるのか…

 

とまぁ、めいっぱい卑屈になったところで、次回「拠点:凪√」です!

 

ちなみに、凪メインですが、真桜と沙和もすこしでます。

 

もうフラグたてまくってやんよ!

 

であであ〜(`・ω・´)ノ

説明
さて、いよいよ拠点フェイズです。
タイトルですが、試験的に変えてみました。
といっても真・恋姫を抜いただけですが、つぎの洛陽編にはいるとかっこの中の「拠点:●●√」が洛陽編に変わります。



最初は華琳から行きます。
予定では、華琳→凪→天和→薫の順番で書こうと思います。
総閲覧数 閲覧ユーザー 支援
6666 5551 85
コメント
はいきた!!それきた!!華琳様いいぜ〜い!!(motomaru)
最後のセリフ・・・・・思わずニヤニヤしますなw(cheat)
最後の台詞に陥落www (フィル)
ニヤニヤさせてもらいました(・∀・)凪√も期待してます!(温泉まんじゅう)
とても良かったです。   次回の凪、期待してます!!(キラ・リョウ)
華琳かわいかったな〜次回は凪ですか。楽しみですねw(ブックマン)
めっちゃフラグたちまくり? 大いに結構じゃないかwwwww もうちょい華琳のニヤニヤ度が多ければ・・・・尚良かったかも(ぁw) でも、十分ニヤニヤできたので良かったです〜^^w 次回の凪√が愉しみです^^w(Poussiere)
タグ
真・恋姫無双 華琳 一刀 カヲルソラ 

和兎(ユウサギ)さんの作品一覧

PC版
MY メニュー
ログイン
ログインするとコレクションと支援ができます。

<<戻る
携帯アクセス解析
(c)2018 - tinamini.com