恋姫無双ー異世界からの銃士ー 第7話 |
SIDE 撃
―前回までのあらすじ―
武闘会で賊を退けた俺は、曹操を襲った馬超の命を保障する事と
引き換えに話し合いに応じた。その際もアサシンに狙われる曹操を救ったり、
将軍である夏候惇に素顔を晒し、馬超の件を頼んだりした
その後、父の死の真相を知った馬超は解放されたが宿が無いため、俺達の宿に
連れて行ったのだが、嘘をついて出て行ったことがばれ、
愛紗に怒られてしまったが、その際、愛紗と鈴々ちゃんが俺にキスして
俺が2人から好かれていることがカミングアウトされた
カミングアウトされた次の日の朝
俺は椅子に座った状態で目を覚ました
撃「......朝か。」
昨日は大変だったな、賊退治に話し合い、挙句の果てにカミングアウト、と
俺は椅子から立ち上がって伸びをした
するとベッドの一つがもそもそと動いた
中から寝間着姿の馬超が出てきた
馬超「ふぁぁぁ。...おぉ、撃、おはよう。」
撃「おはよ。...あれ?星は?同じ寝床で寝てたはずじゃ。」
星「ここだここ。」
撃「え?」
星の声は聞こえるが姿が見えない
するとベッドとベッドの間から星が顔を出した
「星、なんでそんな所に?」
星「実はな、夜中に馬超に蹴り飛ばされたのだ。」
馬超「そ、そうだったのか!?悪い、アタシ昔から寝相悪くて。」
星「何、そう謝ることはない、私もお返しにお主が寝ている間に...いや、
見たところ生娘のようだし、何をしたかは黙っておいたほうがいいか。」
馬超「って!寝てる間にアタシに何かしたのか!?おい!?」
撃「気にするな、星が誰かをからかうのはよくある事だ。」
馬超「そ、そうだったのか。」
撃「...嘘かどうかは知らないが。」
馬超「ちょっと!?」
その後、全員が起きたので5人で朝食にした
馬超「いや〜相部屋させて貰ったうえに飯までおごってもらって悪いなぁ。」
鈴々「気にする事はないのだ!旅は道ずれ、世は...世は情けないって言うのだ。」
どんな世紀末だよおい
愛紗「世は情け、だ。まぁ、2人部屋に無理言って5人で泊まらせてもらっているのは
情けないと言えば情けないが...」
撃「そういや、あのごたごたのせいで武闘会も結局は中止になったからな。」
馬超「それで、賞金も結局は貰いはぐれたし。今からそれを言いに行くのもなぁ。」
撃「まぁ、過去を気にしてもしょうがない。それより、馬超はもう町を出るんだろ?」
馬超「あぁ、一度故郷に帰って、昨日聞いた事を家族に報告してくるよ。
お前たちは?」
撃「今日、この町を出るつもりだ。」
馬超「そうか。」
その後、雑談をしながら食事をした
SIDE 袁紹
撃や馬超が宿で目を覚ましたころ
私は今、夢を見ていました
猪々子や斗詩と共にいつも通りの生活を送っていた
でも、それが音を立てながら崩れていった
私は暗い世界に投げ出され、まとわりつくような闇が私を飲み込もうとした
袁紹「誰か!誰か助けて!」
声を上げて助けを求めても、誰も助けてはくれない
私の体が闇にのまれかけた時、誰かが私の手を掴んで引き揚げてくれた
???「もう、大丈夫。」
その人は全身を白い鎧で覆っていた 引き揚げてくれた人の手は布で覆われていたけど
それでもとても暖かい手だった
その顔は鎧で見えないはずなのに、私に微笑みかけてくれたように見えた
「あなたには、力がある、自信を持って。」
そう言われると私は強烈な光に包まれ目をつむってしまった
次に目を開けた時、そこはいつもの私の部屋だった
袁紹「あの方は、一体?」
袁紹が呟いていると顔良が扉を開けて入ってきた
顔良「麗羽様、今日はお早いお目覚めですね。」
袁紹「おはよう斗詩。」
そう言って袁紹はベッドから降りた
顔良「麗羽様、昨日はあのような事が有られたのですから、まだ眠っておられたほうが...」
袁紹「大丈夫よ、袁家の当主としてあれくらいでは動揺してはいられないわ。」
顔良「そうですか、では...」
すると後ろからメイド姿の給仕が部屋にはいって来た
「朝食の準備をしておきます。着替えてお待ちください。」
袁紹「わかったわ。」
私はメイドに手伝ってもらいながら着替えた後
窓の前に行き、町を眺め始めた
今、この町にあの方がいるのだろうか?
あの時、私に手を差し伸べてくれた白き鎧の男性
鎧を纏う前は布で頭を隠していたから素顔はわからない
でも、あの優しい声を思い出すだけで、私の胸は締め付けられた
私は袁家の当主としていくつものお見合いをしてきた
でも、彼らの瞳に映ったのは私自信ではなく『袁家の当主』の袁紹、としての
私だった でもあの人は私自身を見てくれた あんな人は初めてだった
あの人に会いたい 会って話したい あなたの事を知りたい
あの人のやさしさがほしい 私はそう思いながら町の様子を眺めていた
文醜「......はさま.....麗羽様!」
袁紹「ひゃっ!?」
後ろで突然猪々子の声がしたので素っ頓狂な声を上げてしまいした
「猪々子、びっくりさせないでちょうだい。」
文醜「だって何度呼んでも麗羽様、反応しなかったじゃないですか。」
袁紹「え?そうだったの?」
文醜「そうですよ、私、開いていたドアから2回は呼んだのに...
気付いてなかったんですか?」
袁紹「えぇ、考え事をしていたから...」
文醜「考え事?......あぁ、ひょっとして思い人とかですか?」
彼女は何気なく言ったつもりなのだろうが、彼の姿を思い出すと
体がカァァッと熱くなってしまった
「え?ちょっと?麗羽様?」
私の顔が赤くなっているのを見て猪々子も理解したようね
袁紹「...そうよ、昨日の白き鎧の方の姿が頭から離れないの。」
文醜「それって、昨日麗羽様を助けてくれたあの人ですか?」
袁紹「えぇ、あの人は私を助けてくれた、名誉でも、お金のためでもなく、
ただ純粋に人を助けたいという思いで私を助けた。
今まで私の前に現れた男性は皆、私の身分しか見ていなかった。
でもあの人は違った...だからかしらね。
......もう一度、あの人に会って話がしたいわ。」
文醜「そうは言いましても、手がかりと言えば、男性であることと、不思議な言葉を
話すこと、小さな筒を上下に並べたようなカラクリを使う事、あとは〜......
そういえば!」
袁紹「何?」
文醜「覚えてますか?曹操があの人を連れていく際、参加者の一人の
張飛と親しく話していたの!」
袁紹「!そう言えばそうね!」
文醜「きっと張飛ならあの人の素顔を知ってますよ!」
袁紹「そうね!...そうだわ!猪々子、昨日の武闘会の中止のお詫びと
して昼食会に張飛さんと馬超さんを招待しましょう!その上でさりとなく
張飛さんに彼の事を聞きましょう!」
文醜「さすが麗羽様!良い作戦ですね!」
袁紹「そうと決まれば、猪々子、招待状を書いて、町にいるはずの
張飛さんと馬超さんに届けて...馬超さんの方は見つからなければ
仕方ないわ。」
文醜「了解!」
すると部屋を飛び出していこうとする文醜
と、そこに袁紹を呼びに顔良が戻って来たのだが...
「斗詩!行くよ!」
顔良「え!?何!?ちょっと!?」
文醜が顔良の首根っこを掴んで引きずって行ってしまった
SIDE 撃
俺達5人が食事を終えて部屋に戻ろうとした時...
女将「あぁ、ちょっといいかい?張飛ってアンタだろ?」
鈴々「?鈴々がどうかしたのかなのだ?」
女将「袁紹さんの部下の人から預かりものがあってね、はいこれ。」
そう言うと、一通の手紙をもらった
鈴々「文なのだ。」
撃「ここで固まっていても邪魔だから部屋に戻ってから読もう。」
女将「それと、馬超ってのはアンタだろ?お前さんにも同じもんを渡してくれとさ。」
馬超「アタシにも?」
その後、部屋に戻って手紙を開いた
内容は宛先が違うだけで同じ内容だった
愛紗「それじゃ、読むぞ...
拝啓、張飛様及び馬超様、先日武闘会におきましては決勝を前に中断
してしまった事をここにお詫びします。付きましては本日正午、
決勝まで進出されたお二方に優勝金替わりとして袁紹邸にて昼食会を
開き、お二方を招待したいと思います。
友人や親族の参加も有り......と書いてある。」
鈴々「う〜ん、どういう事なのだ?」
撃「えっとね、昨日の大会がゴタゴタで中止になっただろ?
そこで決勝戦まで勝ち抜いた2人に優勝金替わりに昼食に招待するって事。」
星「そうか、二人が決勝まで行っていたのか。」
馬超「あぁ、でも決勝前に会場に曹操が現れたり、賊が現れたりで
結局あの後中止になっちまったんだよ。」
愛紗「これはその中止のお詫びと言う事か。」
撃「んで、鈴々ちゃんと馬超はどうする?行くの?」
馬超「そりゃ...なぁ、張飛?」
鈴々「もちろんなのだ!」
馬超・張飛「「絶対行く!(のだ!)」」
...だろうと思った
撃「仕方ない、出発は今日の午後一にしようか。」
愛紗「うむ、やむを得んか。」
その後、鈴々ちゃんと馬超は昼食会で出る料理について想像を話し合っていたが
愛紗と星が座っていた俺の近くにきた
星「白、お前はこの招待をどう思う?」
撃「何だよ?突然そんな事言いだして?」
星「いや、ただもしかしたら袁紹がお前の正体を知っていて
敢えて我らをおびき出すためにこのような手紙を送って来たのかと思ってな。」
撃「それは飛躍しすぎだろ?あの人は俺の正体、つまり白狼の素顔を知らないんだぜ?
いくらなんでもそれは無いだろう。」
星「そうか、杞憂で終わればいいが。」
撃「?」
星は何を言ってるんだ?何が杞憂で終われば良いんだ?
......まぁ気にしてもしょうがない
正午と言うとまだ時間があるな
「しかし、まだ朝食を取ったばかりだしな。昼までどうするか...
...メンテでもするか。」
そう言ってテーブルの近くに椅子を持って行って
懐からSAAと手首からデリンジャーを取り出す
さらに先端に綿のついた棒を腰の小物入れから取り出してから
銃弾を6発と2発をすべて抜き取り、棒で銃身の掃除を始めた
馬超「ん?撃、お前何してんだ?」
後ろから俺の様子を馬超がのぞき込んできた
撃「あぁ、ちょっとした手入れだ。今の内にやっておこうと思ってな。」
馬超「ん?なぁ、そのちっこいのってお前が昨日武闘会の時に
白狼を呼び出すのに使ったやつか?」
撃「ん?あぁ、デリンジャーか、そうだよ、このデリンジャーと
これを使って白狼を呼び出したんだ。」
そう言って白狼のレリーフが刻まれた白い銃弾を見える
馬超「で、でりんじゃー?何だその変な名前。」
星「そう言えば、白はたびたび変な言葉を使っているな。
せっとあっぷだとかなんとか、あれは一体何なのだ?」
撃「あぁ、あれは『英語』だ。」
星「英語?」
撃「そう、俺の居た国では複数の言語が使われている...
その一つが英語だ。例えば READY、これは準備を意味する英語なんだ。
後は……MY NAME IS GEKI SHINGUZI
これは英語で、『私の名前は神宮司撃です。』って意味だ。」
星「その英語がお前の国の母語なのか?」
撃「ううん、そうじゃないけど、今の俺の国は積極的に他の国の言葉を
覚える教育をしてるんだ。」
星「変わった国なんだな。」
撃「まぁ、もう帰れないと思うけどね。」
星「...そうか。」
馬超「...未練とかは無いのか?」
撃「ない、とは断言できないけど、今の俺にはやりたい事があるし、
未練とかはそんなにないよ。」
星「やりたい事?」
撃「まぁね。大したことじゃないさ。それより、星は主を探してるって言ってたけど
具体的にどんな人が候補なの?」
星「うむ、まだそこまで考えているわけではないが、おそらく自分の主に相応しい人物と
出会えれば直感でわかるだろう。」
撃「...そんなんでいいの?主探し。」
星「大丈夫、何とかなるさ。」
あれ?星ってこんな性格だっけ?
その後、思い思いに時間を潰した俺達は袁紹さんの邸宅までやってきた
撃「えっと、ここで良いのかな?」
愛紗「指定された入口はここのはずだが。」
すると目の前にあった大きな門の扉が音を立てながら開かれた
顔良「ようこそ、いらっしゃいました、張飛殿、馬超殿。」
入口から顔良が出てきた
「この度はようこそ、我が主が中でお待ちです。後ろの方たちは同伴の方ですか?」
鈴々「そうなのだ!鈴々の大事な仲間なのだ!」
顔良「わかりました、それではこちらへ。」
そういって案内されたのは大きな部屋、中央には長方形のテーブルがあり、
その奥の席にはすでに袁紹が座っていた
袁紹「ようこそ、張飛さん、馬超さん、後ろの方は?」
愛紗「私は関羽と申します。」
星「趙雲と申す。以後お見知りおきを。」
撃「撃と言います、初めまして。」
鈴々「みんな鈴々と大切な仲間なのだ!」
袁紹「そうですか、では、どうぞ各々好きな席におかけください。」
そう言われて好きな席に着く俺達 俺の左に鈴々ちゃん、右に愛紗
さらに右に星 鈴々ちゃんの向かい側に馬超が座った
その後、豪華な料理が運ばれてきて、鈴々ちゃんと馬超はそれに
食らいつくように食べている
それを愛紗が止めたりしてるけど...無駄みたいだね
僕も適当に料理を食べていく
そんな時だった...
SIDE 袁紹
袁紹『そろそろ...頃合いですわね。』
「時に、張飛さん、あなたは先日、私を助けてくれた方と
お知り合いのようでしたわね。あの方とは仲がよろしいのですか?」
鈴々「?白兄ちゃんがどうかしたのかなのだ?」
袁紹「白?それはあのお方の真名なのですか?」
鈴々「そうなのだ!白は白兄ちゃんの真名なのだ!」
馬超「それって白狼の事だろ?」
袁紹「白狼?」
馬超「あの時のあいつの名前らしいぜ、由来は知らないけど。」
袁紹『白、白狼...それがあのお方につながる手がかり。』
「他に、他に何か知りませんか?何でも良いのです。教えてください。」
顔良「麗羽様...」
鈴々「そんなに聞きたいなら本人に聞けば良いのだ。」
袁紹「え?」
愛紗「鈴々!お前何てことを!」
何故か隣の関羽さんが鈴々さんをたしなめている どういう事かしら?
馬超「何だよ、撃が白狼だって知られたらまずいのかよ。」
.........え? 馬超さんは今何て?
あそこにいる男性が、白狼?...あのお方だと言うの?
趙雲さんと関羽さんは言ってしまったと言わんばかりの顔をしていますが
それは、何よりの証拠
袁紹「今の話、本当ですの?」
馬超「あぁ、昨日アタシが曹操に捕まった後、助けるために撃が色々手を打って
くれたみたいでさ、その時、白狼の正体を知ったんだよ。」
袁紹「では......やはり...」
SIDE 撃
.........不味いなぁ
...料理じゃなくてこの状況がまずいなぁ
何か袁紹さんの視線を感じる......どうしよう
...............ふぅ
僕は手首からデリンジャーを出してテーブルに置いた
文醜「あ〜!それってあの白いのを呼び出したカラクリ!」
袁紹「で、では!やはりあなたが、あの時の!?」
撃「...こういう時は、お久しぶりです、と言うべきなのでしょうか?」
袁紹「本当なのですか?」
仕方ない、あれをやるか
撃「袁紹さん、これから大きな音を出しても構いませんか?」
袁紹「え?えぇ、よろしいですよ。」
撃「では...」
僕はデリンジャーに白い弾丸を込め立ち上がり、スポーツのスターターのように
上に向ける
「来い、白狼。」
引き金を引き、白狼を召還する
銃声と共に俺の頭上に現れる白狼
それには袁紹さんや近くにいる2人、馬超も驚いている
...そっか、馬超は細かい装着シーンは見たこと無かったっけ?
「これで証明になりますか?」
袁紹さん達は驚きのあまりこちらの声が聞こえてないみたいだ
「...白狼、RETURN」
『YES SIR』
白狼はデリンジャーに吸収されるように銃弾に戻った
それを見て、平静を取り戻した袁紹さん
撃「...先ほどの会話から自分に何か用があるとお見受けしたのですが?」
袁紹「わ、わたしは......」
文醜「麗羽様...」
文醜って人が袁紹さんに頑張れと応援しているのが何となくわかったが
どういう事だろう
袁紹「...別室で二人で話がしたいの、付いて来て下さる?」
撃「...わかりました。」
愛紗「!?撃!」
撃「大丈夫、部下の誘いなら断ってくるから、
それに、俺にこれを使わせたらやばいのはあの人もわかってるはずだから。」
小声で愛紗を安心させた
その後、僕は袁紹さんの後を付いていった
袁紹「...どうぞ。」
部屋について先に部屋に入るように促す袁紹さん
撃「失礼します。」
袁紹「中で少々お待ちください。今着替えてきます。」
撃「え?はい。」
すると部屋のドアを閉めてどこかへ行ってしまった
さて、ここは...客人ようの部屋かな?
ベッドに窓、机などが完備されているな
応接室みたいな所に案内されるかと思ったが...予想が外れたか
俺は部屋の窓を開けて外の景色を見た後、下を見た
下までざっと見積もっても学校の2階分に相当する高さだな
生身のまま飛び降りたら確実に大けがするが...
万が一の時はここから白狼を使って飛び降りるか
なんて、脱出プランを考えながら部屋の中を見回していた時
袁紹「お、お待たせしました。」
俺の後ろでドアが開いて袁紹さんが入って来たみたいだ
撃「あぁ、大丈夫ですよ、窓から町の風、景、を、なが...め......」
振り返って見たのは薄い布地の服を着た袁紹さんだった
服は確かに着ているのだが、どうやらその服自体の厚さがほとんどないようで
生地の下、つまり袁紹さんの肌がほとんど透けて見えるような感じだった
「え、えっと、その恰好は一体?」
正直直視できない、今までこんな経験なんてなかったからあそこが反応しそうで
怖い
さすがにそれは失礼だろうから、何とか抑える
袁紹「これは、その、先日のお礼も兼ねて...」
そう言うと手を叩く袁紹さん
すると部屋の外に控えていたメイドさんたちがお茶を持ってきて
テーブルで準備を始めた
「私はあなたとお話がしたいのです、どうぞ、お掛けください。」
撃「は、はぁ。」
畏まりながら席に腰を下ろす
袁紹さんが俺の反対側に座るけど...やっぱ見てるこっちが恥ずかしい
「そ、それで、お話と言うのは?」
袁紹「先日は私の事を救っていただき、誠に感謝しています。」
先日、賊の一件か
撃「気にしないでください、俺が勝手にやった事ですから。」
袁紹「あの時は、ごたごたしていてまともに話が出来ませんでしたが、
今日は、ただ単にあなたとお話がしたいのです。」
撃「そ、そうですか。」
じゃあ何でそんな服着てるの!?
袁紹「あなたは、何を思って私を助けてくれたのですか?」
撃「...人を泣かせるような奴は気に食わない、それだけです。」
袁紹「...私は今までいろんな殿方と会った事がありますが、あなたのような人は
初めてです。なぜ、そうまでして他人のために戦えるのですか?」
撃「私は、訳あってこの国に飛ばされてきました。故郷には...もう帰れないでしょう。」
袁紹「そんな過去が...」
撃「私はこの国での生活を第2の人生、と捉えております。
だからこそ、私は悔いのない生き方をしたいと思っています。」
袁紹「それがあの行いの意味なのですか?」
撃「例え自分が傷ついても、それでも誰かが傷つくのを見ているよりは
ましだと考えています。
ましてや、乙女を泣かせるなど言語道断、問答無用...
そんな奴らは許せないんですよ。
でも、そんな事を見て見ぬふりをすれば俺は何より自分を許せません。
そんな後悔はしたくありませんから。」
袁紹「......後悔は、したくない...ですか...」
『私の...後悔のない、生き方...』
「その、後悔のない生き方とは、人に相談できるでしょうか?」
撃「できはしますが...なぜですか?」
袁紹「私は...袁家の当主として生まれ、当主として生きてきました。
でも、今ではそれが何なのか、わからなくなってしまったのです。」
撃「......」
袁紹「私は...自分の生き方を悩んでいるのです。」
そりゃぁ、誰だって壁にぶつかる事はある、か
撃「......なぜ生まれて、来たかなんて、考えてもわからなんだ♪」
小声で歌いだす俺
袁紹「げ、撃殿?」
撃「だから、生きる、魂、燃やし生き抜いて、見つけ出す、いつか...♪」
袁紹「.........」
撃「今のは、俺の国の歌の歌詞の一部です。...俺は、この歌の歌詞通りだと思います。
自分が生まれたと言う事はそれ以外、何の事実も持たない気がします。
だからこそ、自分がやりたい事を精一杯やって生きる事が人の生きる意味だと思い
ます。」
袁紹「自分のやりたい事をするのが、人の生きる意味だと?」
撃「はい、だって...やりたくない事だらけの生活なんか
つまらないだけじゃないですか...だから、人生は自分のやりたい事を
やってこそだと思うんです。」
袁紹「やりたい事をやる......」
撃「...すみません、偉そうなこと言って、俺もまだ、そう言うのが言えるほど
できた人間ではなんですよね、すみません。」
袁紹「いえ、お気になさらず。」
『この方なら...』
「撃殿は、なぜ旅を?」
俺はその質問聞いて、立ち上がって、窓の方に歩いた
「撃殿?」
撃「俺には......もう帰る家がないのも理由の一つですが...
1番の理由は、自分を変えたいと思っているからです。俺は、ここに来るまで、
自分のやりたい事ができない生活を......いえ、やりたい事をやる勇気がない
生活をしていました。」
袁紹「.........」
撃「俺は...そんな自分が、嫌でしょうがなかった...何も変わらずに続く日常
親の言いなりの様な人生、恐れから自分の意見を前に出せない...弱い自分...
そんな自分が嫌でも...変えようと言う努力もしない...落ちこぼれの自分...
そんなすべてがいやだった......だからこそ、自分を変えるための旅をしようと
思ったのです。...誘われたのも、ありますが...」
と言って頬をかく俺
「......やっぱり、俺は他人の人生をアドバイスできるような...人間では
ありません......さっき言った事は忘れてください。」
そうだ...俺に他人をどうこう言う資格なんか...まだ無いんだ
まだ...何も変わってなどいないのだから
SIDE 袁紹
この人も、そうなのでしょうか?
この人は自分の弱さを自覚している それでも...
誰かのために戦おうとしている なら、私も自分のやりたい事を......
袁紹「あなたの仰った事、今ここで実行してもよろしいでしょうか?」
撃「?構いませんが?」
では...今ここで言おう、この人に!
袁紹「私と、結婚を前提にしたお付き合いをしてください!」
SIDE 撃
........................(ショート中)
.................................はっ!?(復活)
撃「えぇぇぇぇぇぇぇ!!??」
何やってんだよ俺!?何処でフラグ立てた!?あそこか!?会場でのか!?
何!?最近じゃカミングアウトが流行なわけ!?
「お、落ち着いてください!なんでそうなるのですか!?」
袁紹「あなたは、私を袁家の当主としてではなく、一人の女として、
励ましてくれました。今まで私がお見合いしてきた殿方に映ったのは
あくまで私の地位だけ...ですからその...これは...一目惚れですわ!」
......何やってんだよ俺!?フラグ立てすぎたぁぁ!
いやそりゃ女性には基本優しくしてきたつもりだけど...じゃなくて!
なにこれ...どうしてこうなった?
撃「えぇっと…袁紹さんほどの美しい方にそんな事を言われれば
男として恐悦至極な訳ですが…やはり私は土地も財産も無いただの
平民です。自分とそのような事になった場合、後々世間がうるさいのでは…」
袁紹「構いません!例え地位が無くなろうとも、私は私のやりたい事をやります!
あなたの教えていただいたように!」
ちくしょう!やっぱりそう言って来たか!
撃「お、お気持ちはありがたいですしうれしいのですが……急にそのような事を
言われましても……」
と、何とかしようとしたのだが……
袁紹「撃殿は……私の事が、お嫌い、ですか?」
と、涙目で訴えられてしまった
『ズキュゥゥゥン!』
グハッ!その目は卑怯だ!と、心の中で叫ぶ撃だった
撃「い、いえ!決して嫌いと言う訳ではありませんが!自分はまだ、その……
け、結婚とかを考えた事が無いものですから……どう答えていいか……
そ、それに!今の私は旅をしている身でして、その……」
袁紹「で、でしたら、もう……既成事実を作るまでですわ!」
と言うと、いきなり立ち上がって驚いたまま俺を
部屋のベッドに座らせる袁紹さん
そして、彼女は突然服を脱ぎだした
今まで、スケスケの服で少しだけ見えていた肌が、完全に露になった
おっぱいも……あそこも……俺は、目の前の袁紹さんの体から
視線を外すことが出来なった
呆然となる俺の膝の上に、跨るように座る袁紹さん
「私を……抱いてください。」
その言葉に、俺は完全に吹っ切れてしまった
俺は、体を捻るようにして逆に袁紹さんをベッドの上に押し倒した
撃「良い、んです、か……もう止まれませんよ。袁紹さん……」
麗羽「麗羽と、お呼びください。白様……」
撃「じゃあ……行きますよ。麗羽。」
そう言うと、俺は麗羽の唇を奪った 舌を入れるようにして、俺は彼女の口の中を
舐めまわした やがて、お互いの唾液まみれになった舌を引き抜くと、
彼女の顔はトロンと呆けた顔になっていた
「これが、最後の警告ですよ……ここから先は、ダメって言っても、俺、
止まりませんよ。」
目の前に置かれた、極上の体を、俺の中の衝動が求めている
そんな中でも、理性を保ちながらなんとか聞き返した俺
麗羽「はい……私を…女にしてください。」
その言葉を聞いた瞬間、俺は目の前に体に飛びつ―――きかけた
撃「ッ!ダメだダメだ!しっかりしろ!俺は………!」
そう言って、倒れている麗羽の上からどいて、ベッドの縁に腰かけたまま
両手で頭を抑えた
麗羽「……白様。私を……」
撃「………」
ダメだダメだ!しっかりするんだ!俺は!
麗羽「やはり……私は……あなた様にふさわしくないのですね。」
撃「違う!!そんなことはない!!ただ……麗羽。」
麗羽「何でしょうか?」
撃「俺に……俺に時間をくれないか?」
麗羽「え?」
その声を聞きながら俺は立ち上がり、麗羽の方を向いた
撃「俺は、まだこの国に来たばかりだ。何も知らない、力だけの存在だ。
今の俺は旅をしている。俺に、考える時間を与えてほしいんだ。」
麗羽「時間、ですか?」
撃「あぁ。……約束する。必ず君の言葉に対して俺は返事を持って
またこの町に戻ってくる。だから、すまない。
今の俺には、そこまでの甲斐性がないんだ。」
麗羽「本当に、戻ってきてくださいますか?」
撃「約束しよう。数年以内に、俺はまた君の前に現れる。だからその時まで、
待っていてほしいんだ。頼む。」
そう言って頭を下げる 正直、向こうがなんていうか……
麗羽「……わかりました。」
その言葉に俺は頭を上げた
「私は、いつまでのあなた様のお返事をお待ちしています。」
撃「……本当にすまない。」
その後、俺は麗羽と別れ、食事を続けていた愛紗達の元へと戻った
そして、4人と共に屋敷の外に出たのだが、お付きの二人、文醜と顔良と言う
彼女達から謝礼金をたんまりともらった
「良いのですか?こんなにたくさん。」
文醜「アンタには、麗羽様を救ってもらった恩があるからな。」
顔良「せめてものお礼です。お受け取りください。」
撃「そうですか。ありがとうございます。それでは、俺たちはこれで失礼します。」
そう言って俺達は屋敷から離れた
その後、結局俺達も馬超も町を出るのを一日延ばした
貰ったお金で別の、5人で泊まれる宿を見つけ、そこに移った夜の事
星「それで、白はあの袁紹になんと言われたのだ?」
あ〜〜、やっぱり聞かれた
撃「それが、その……」
愛紗「何だ?はっきりしないか。」
撃「……求婚された。」
馬超「は?」
撃「一目ぼれ、らしい。結婚を前提としたお付き合いをしてほしいと言ってきた。」
馬・愛・鈴「「「何だって〜〜〜!!??」」」
と、部屋に3人の大声が響いた
愛紗「そそそ、それでお前はどうしたんだ!?」
撃「……今日は断ったよ。俺だっていきなりそんな事を言われれば焦る。
……まだこっちに来てから数週間なんだ。見るもんも、感じるもんも
まだたくさんあるし、俺の居た国じゃ16、7での結婚なんて考えてる奴なんて
そうそう居ねえよ。まだ、本来なら勉強をしてる歳だからな。当面は、
みんなと旅を続けるつもりだ。返事は向こうに待ってもらってる。
……どういう返事をするかは、まだ考えが纏まってないけどな。」
鈴々「そうかなのだ。」
何とか納得してくれたのか、安堵している愛紗と鈴々ちゃん。
しかし……結婚を前提にしたお付き合い、か。向こうに居た時じゃ
こんな風に告白されるなんて思ってもいなかったもんな。
……しかも複数に……
……俺の人生、随分変わったな〜
なんて思いながら、俺は宿の窓から見えるこの世界の夜空を見上げていたのだった
だが、この時、俺は、愛紗が後ろから俺の背中を見つめていたのに、気づかなかった
第7話 END
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