艦隊 真・恋姫無双 117話目
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【 異議あり! の件 】

 

? 司隷 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

冥琳「───そ、それはどういう事だっ!?」

 

詠「ちょっと! 月やボク達にも理解できるように説明しなさいよ!!」

 

華琳「貴女達…………」

 

ーー

 

華琳の言葉を聞いて、軍師の地位にある冥琳と詠が勢い込んで、華琳の前に急ぎ駆け寄って来る。 自分達の服属している漢王朝がで一品の料理で滅亡──などと突拍子もない事を言われて、黙って居られる筈がない。 

 

たが、そんな二人にとった華琳の態度は──

 

ーー

 

華琳「───何を勘違いしてるの?」

 

「「────!?」」

 

華琳「貴女達、各々の国に仕えし軍師なんでしょう? 私に問い掛けて直ぐに答えを求めるよりも、先ず問題の品を食し、自分の頭で思考し纏めてから意見を発言するべきね。 まったく、そんな考えでは軍師の肩書きが泣くわよ?」 

 

詠「く、悔しいけど………何も言えない……」

 

冥琳「正論を説かれる、とはな…………ん?」

 

ーー

 

そんな二人に対して、にべもなく断る華琳。 断りの理由は当然過ぎて反論の余地さえ残されていない。 しかも、相手は元一国の王、知らぬ間に漂う覇気に、身体が強張る。

 

だが、そんな二人に近付く人影があり、横からは──椀に盛られた汁粉が。

 

ーー

 

鳳翔「──案ずるより産むが易しと申します。 先ずは、食べてから思案して頂ければと………」

 

詠「い、いいの? これ食べてって──あぁっ! ちょっと、冥琳っ!?」

 

冥琳「───ふむ、これが……かの汁粉と言う一品か。 わざわざ先方が情報を提供してくれるのだ。 有り難く頂かねば、失礼というものだぞ?」

 

詠「ば、馬鹿にしてぇ〜! いいわよ、ボクも貰うから!!」

 

 

 

 

華琳「(…………………そもそも、私は貴女達に命令する立場じゃないんだから。 た、頼りにしてくれるのは、嬉しいけど……)」

 

ーー

 

辛辣な正論で落ち込む二人に対し、供応の準備を終えた鳳翔が食すようにと汁粉を勧める。 その行動に疑問符を浮かべ躊躇する詠だが、冥琳は何でもない様に詠の目前にある椀を取り、口にして味を堪能していた。 

 

勿論、暗に早く食べるよう急かす為に行った冥琳の行動だが、別段他意は無い。 二つの椀を比べ、冥琳の取った椀の方が若干多かった……としてもだ。 

ついでに、背を向けながら呟く華琳の様子は……気にしない様に。 

 

ーー

 

冥琳「───ほう、これは………うむ、成る程。 美味だ」

 

詠「結構、上品な味わいじゃない。 これなら皆も好むと思うわ」

 

鳳翔「お褒めに預かり、光栄です」

 

ーー

 

二人の賞賛を聞いて、鳳翔の顔に頬笑みが浮かび、場が和む。 だが、その横からは、冷たい現実に戻す声が通り抜けた。 

 

ーー

 

華琳「──二人とも、存分に堪能したみたいだから、これで理解できたでしょう?」

 

「「 …………… 」」

 

華琳「まさか、未だに答えが定まらないとか、ふざけた事を言わないでしょうね? 軍師でもない私より知に劣るなんて、普通あり得ないわ!」

 

詠「あのねぇ! ボクはアンタみたいに天才でも完璧超人でもないの! 普通に師へ就き、勉学して努力した結果の末、ようやく軍師と認められたんだから! 『軍師要らず』のアンタが言っても、説得力なんか無いのよ!!」

 

冥琳「恥ずかしながら………私も同意見だ。 ただ、経験から言わせて貰えば、今の情報だけでは推測だけであり、完璧な答えなど出てこない。 新たな真実が分かれば、幾度も覆ってしまうのだからな」

 

華琳「そう………じゃあ、手掛かりを教えてあげる。 『時』『場所』『質』の三つ。 一つでも違えば策は発動しないのだけど……どうやら狙った可能性が高そうね──貴女は?」

 

鳳翔「…………………」

 

詠「ふ、ふん! それなら…………八割……ぐらいは理解できたわよ! だけど………本当に、この一品が国を傾けるの? ボクの考えだと……寧ろ逆に、国を救える気がするんだけど………」

 

冥琳「私は…………それなりに、だ」

 

華琳「それじゃあ、今から答え合わせとして説明するわ。 この料理が……『知足安分を守らぬ者』を破滅へと誘う(いざなう)魔性の料理……って言う事を…………」

 

 

 

◆◇◆

 

【 病と言えば……の件 】

 

? 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

華琳「──まずは『時』ね。 今の漢王朝には『蕭何』の如く誠実な人物は既に絶え、自分を『陳平』気取りで構えて、策謀を張り巡らす小人達が蠢いている。 更に周囲には取巻共が陣取り、甘い汁を吸わんと犇(ひし)める始末」

 

詠「それは理解できるわ。 賄賂、謝礼、臨時徴収と再三再四の税が上から命じられているわ。 月やボクのとこは、何とか遣り繰りして捻出しているけど、多くの太守達は更に民へ重税を掛けて、収支を合わせているとか……」

 

冥琳「…………私の所は知っての通り袁家だが………いや、今は置いておこう。 事実確認の方が優先だ。 私の知っている近隣諸侯も、同じ手口で下の者より税を搾り取っている。 無論、私達は行う事はしないぞ?」

 

ーー

 

華琳が口火を切ると、詠が今までの経験を語り、冥琳が同意。 

 

それから、華琳の話が続き『場所』『質』の説明に入る。

 

ーー

 

詠「えぇ………と。 華琳の説明からすると、この漢の中心部である『洛陽』が危険………と言うわけ?」

 

冥琳「いや、正確には言えば、陛下の御膝下である『この地』だろう。 民から吸い上げた税が最後に行き着く先、それは黒幕の下しか無い。 そうなれば………答えは自動的に判明する。 だが、三つ目の質は──」

 

華琳「質は質よ。 人とは……良く言えば探究心が強く、悪く言えば欲深いがため、常に上を目指す。 一般的に流通している物より、更に良い物を得たいと言う欲求に突き動かされ、それを得たいと願うから革新の原動力になる」

 

冥琳「………………」

 

詠「………………」

 

華琳「ここまで言えば、貴女達の考えと合わさるでしょう。 この鳳翔の狙いは、漢王朝の膝下である洛陽の王宮内で、汁粉の試食を振る舞い、調理方法を献上する策。 それが、私を計る為に仕掛けた策謀の刃になるのよ!」

 

鳳翔「…………………」

 

ーー

 

しかし、二人の軍師は首を傾げる。 

 

華琳の説明を纏めると……『艦娘《鳳翔》が、漢王朝へ新たな料理方法を教えれば簡単に籠絡され、高位の官位や大量の金品、もしくは無茶な願い事さえも叶えてくれるとなり、多額の資産流出による衰退』と予想していた。 

 

しかし、それでも──王朝が滅亡すると決め付けるには、早すぎる。 まだ何か見過ごしていないかと二人は思案し、未だに結論が出せなかった。

 

そんな不満な様子が伝わったか、少し頬を膨らました華琳は軽く溜め息を漏らし、冷静に静かな口調で二人に答える。

 

ーー

 

華琳「汁粉を伝えると……間違いなく三公を筆頭に汁粉三昧の日々を送るでしょうに。 有り余る財力、逆らえない権力、本能に忠実な食欲……それを持つ者が汁粉の虜となれば歯止めは効かない。 即ち『象牙の箸』と同じよ」

 

詠「そんな事──たかが料理じゃないっ!!」

 

冥琳「いや、まてっ! 愛沙や春蘭の件もある! 一概に決め付けはできんぞ! 食えば、何かしらの効力を発生するかも──」

 

ーー

 

何気に酷い冥琳だが悪意は無い。 事実を述べているだけである。

 

だが、当然ながら華琳達の騒動が大きくなり、大多数の艦娘や恋姫達が周囲に集り、事態の推移を見守る。 華琳達の後ろには恋姫達、鳳翔の後ろに艦娘達が半円を作り、手に汗を握りながら熱心に見ている者が大半だ。 

 

勿論、この中には──会話を聞いている春蘭達も居る訳で──

 

ーーー

ーー

 

春蘭「──ぶふぅ! 手伝いで疲れて、空腹のあまり汁粉へと手を出したが、まさかの罠とは!? な、なんと言う恐るべき謀! ああ……早くも三杯目に手を付けてしまった私は、どうすればぁ!! 御許しを、華琳様!!!」

 

秋蘭「……………姉者。 まず行う事は、その口に入れた汁粉を私の顔に吹き掛け、顔どころか衣服も汚した事に対する謝罪。 これをまず、最初に実行すべきだと思うのだが…………」

 

ーー

 

恋「……これで………十杯目。 ねね………お代り」

 

ねね「はいっです! 恋殿は気にせず、沢山お召し上がり下さい!!」

 

赤城「ちょ、ちょっと! 私、まだ! たったの五杯しか食べて──」

 

ねね「…………おかしいですな? 今回の宴は、危うい貴女方を恋殿を筆頭に華麗に助太刀して、その慰安だと聞いておりますぞ? それなのに、もてなし役の貴殿が、主賓である恋殿以上に食そうとするつもりですかっ!?」

 

赤城「───ぅ、ううう〜〜!」

 

ねね「恋殿〜お代りは、まだありますぞ〜!」

 

恋「………………コクッ」

 

ーー

 

赤城「うわぁ〜ん、桂花さん! この子、こんなに可愛いのにぃ、曙ちゃんや霞ちゃんみたく毒舌が酷いですぅ!! だって……まだなんですよっ!? まだ…………どんぶり五杯目なのにぃ………断られてしまいましたぁぁぁ!!!」

 

桂花「知らないわよ! そもそも私はアンタの仲間じゃないんだからっ! ほら、空の器を抱えて隅っこに引っ込んでなさいよ!!」 

 

赤城「嫌ですぅ! 桂花さんからも頼んで下さぁ……はぅ! ぅううう……」

 

桂花「ちょっ!? ───い、一体どうしたのよっ!?」

 

赤城「…………じ、持病の癪(しゃく)が…………!!」

 

桂花「───何よ、それっ!? ちょ、ちょっと! アンタは……ほらっ! 私に掴まって歩きなさい! 何処か空いてる場所に──」

 

ーー

 

季衣「モグモグモグ………そうかな? 前にも甘い物って普通にあったよね、流琉。 団子とか──モグゥ!?」

 

流琉「───しゃ、喋っちゃだめ!」

 

 

ーー

ーーー

 

 

────居なかった。 

 

 

いや、聞いていたけど……冥琳の話より華琳の話が大事らしい。 中には、華琳の話を無視する者、まさかのツッコミを入れる者やらが現れる。

 

ーー

 

詠「…………なるほど。 何となく理解できたわ」

 

冥琳「あれが、深入りする者の末路か。 軋轢を生み出し、政治的混乱を引き起こさせ、衰退化を早めさせる策とは………」

 

華琳「それは、あくまで副産物。 真の理由は、この料理を摂取し続ければ数年以内に発症する『病』になるわ。 甘い物を取り過ぎると罹病する『糖尿病』………天の国でも恐れられる治療の難しい病に………」

 

「「「─────!?!?」」」

 

ーー

 

それを聞いて、慌て出す汁粉を食べた者達。 

 

春蘭は再度吹き出し秋蘭に激怒されて説教、他の者達は顔を蒼白に変える!

 

ーー

 

冥琳「ほう…………天の国でさえ恐れる病か? それは興味深いな」

 

詠「ちょっ! 冥琳まで! ア、アンタだって汁粉を食べたんでしょ!? な、何で、そんなに落ち着いてるの! それに、華琳も華琳よ! こんな時に限ってボクの心労を増やすの!? いい加減にしなさいよ!!」

 

華琳「少しは落ち着きなさい。 ほら、この汁粉でも食べて──」

 

詠「──もう、だからぁ! 食べたら──食べた………アレ? 華琳、確か食べたわよね? 汁粉………」

 

華琳「ええ、最初に私が食べたわよ? だから、冥琳達に勧めたんじゃない」

 

冥琳「間違いないな、私の前に華琳が食べている。 それも、鳳翔殿より直に貰って二杯もだ」

 

詠「─────えっ!?」

 

ーー

 

『食べたら病になる』と認識していた詠は、冷静な冥琳、静かな華琳に違和感を覚え、再度聞いてみようと華琳に向き直った。

 

だが、その時! 詠の後ろより大音声かが響き渡る!

 

ーー

 

??「───何処だぁ! 病はぁ! 何処だぁあああああっ!?」

 

詠「ひぃ、ひゃああああっ!? 何ぃ? 何がおこった──」

 

冥琳「────!?」

 

華琳「あ、貴方───っ!?」

 

ーー

 

滝の様な汗を流しながら大きく目を見開き、華琳達に大音声で叫ぶ──漢が一人、突如と現れた!

 

 

◆◇◆

 

【 何故かジョ○。と○塾的 の件 】

 

? 洛陽 都城内 予備室 にて ?

 

 

そこに現れた漢──華陀は、詠の後ろ側に立ち、首を左右へと振り周囲を見渡す。 その顔には、鬼面を思わす厳しげな表情を浮かべ、とある物を見付け出さんとしているのが、ありありと判断できる。

 

どうやら、華琳や冥琳達の話す『糖尿病』の言葉に反応して、現れたようだ。

 

ーー

 

華陀「どこだ、どこに病魔の存在がっ!? 病が蔓延する気配あれば、患者が出る前に予防する事が、この俺の課せられた天命! 出てこい、病魔め! この華陀がゴットヴェイドォの誇りに掛け──貴様を倒す!!」

 

詠「きゅ、急に後ろから飛び出してぇ、驚かせるんじゃないわよ! ボクの心臓が止まるかと思ったじゃないっ! それに、華陀! アンタは一刀の治療を優先的に──」

 

華陀「───むっ、怒りの氣が高まり、身体能力が著しく向上している! もはや、病魔は既に──君の身体に!?」

 

詠「何、見当違いな事をほざいてるのよ! そんな事より、一刀をから離れた理由やボクを驚かせた謝罪ぐらいしたらどうなの!?」

 

華陀「──うおぉおおおっ! 何と言うことだ! 俺が気付くのに遅れたばかりに、早くも病魔に犯されて狂暴化を許してしまうとはぁ!!」

 

詠「このぉ熱血馬鹿!! いい加減に人を無視して話を進めるなっ!!」

 

華陀「すまない、俺が気付くのが遅れたばかりに、身体へ負担を掛けてしまったな。 ───だが、安心してくれ! ゴットヴェイドォは無敵だ! 俺の熱き魂と共に、君の身体へ巣くう病魔を倒し……必ず治癒してみせるっ!!」

 

───ブチッ!

 

詠「……き……切れた。 ボクの体の中で何かが切れた……決定的な何かが………」

 

華陀「し、しっかりするんだ! 自分の意識を持て──うぉおおおっ!?」

 

詠「うっさいっ! …………アンタはボクを怒らせたっ! 人の話が聞けないのなら、この拳で理解させてやるっ!! オラオラオラオラオラーッ!!」

 

華陀「ぐうぅぅぅっ! 想定していたよりも、患者の容態が急激に悪化している! くそぉぉぉ、何が原因で……此処まで酷い状態にぃ───!?」

 

詠「───アンタがぁっ! 泣くまでぇ! 殴るのを止めないっ!!」

 

ーー

 

こうして、堪忍袋が切れた詠、勘違いした華陀による──時間無制限一本勝負が始めるのであった。

 

 

★☆☆

 

 

華陀と詠が騒ぎを起こすのを見て、冥琳は我に返る。 話の内容が噛み合わないが、別に害を撒き散らす物でも無いと判断。 

 

それに、詠が些か気性が荒くなっているものの、元は文官。 対する華陀は一人でも奥地に入り、猛獣を仕留めると言われる猛者であり、本来は医者。

 

間違いなど起こる事などないと見越し、静観する構えをとるつもりだった。

 

だが、冥琳は自分の横で、可愛い柄模様の小さい布を口に噛み、それを下に引っ張り、悔しげな表情で華陀と詠の様子を望む──『漢女』という偉丈夫が居た事に、今頃になり気付いたのだった。 

 

ーー

 

卑弥呼「ぐぬうぅ──流石は三国一のツンデレ軍師よ! だぁりんを相手に見事な駆け引き! 普段、おなごの色香など一瞥もしないたぁりんが、物の見事に興味を示す様に持って行きおったかぁ!!」

 

冥琳「──忙しい時に申し訳ないが、何をなされておいでだ?」

 

卑弥呼「──ん、しゅ、周公瑾ッ!? ふ、ふん! べ、別に、だぁりんに構われなかったから、寂しいなどと……思っていなかったからな!?」 

 

冥琳「………………………」

 

ーー

 

冥琳が声を掛けたのは、華陀の助手であり、漢女道亜細亜方面前継承者の卑弥呼である。 詠と華陀の争いを羨ましそうに見ていたので、予測は着いていたが、まさかのツンデレ発言に頭を抱えそうになる。

 

だが、卑弥呼を見て思い付いた冥琳は、卑弥呼なら知っているかもしれないとある事を質問する。 

 

それは同時代の華琳に聞くより、華陀の助手であり、管理者としても動いている卑弥呼へ直に聞いた方が、より詳細が分かるのではと考えた為だ。 

 

ーー

 

冥琳「──『糖尿病』──この病名を知っているか?」

 

卑弥呼「ぬぅう! 糖尿病──だと!? し、信じられん! 現代病として恐れられる病の名を……この大陸で聞こうとは…………!?」

 

ーー

 

普段、うざい程に熱い卑弥呼だが……冥琳より病名を聞き及ぶと、表情が暗くなり、また同時に口数も重く、額から汗が流れ落ちた。

 

まるで、○塾某一号生達の様な対応をする冥琳と卑弥呼。 

 

ーー

 

卑弥呼「あの病は大陸に伝わる『消渇』の事を指す。 『病至れば水を常々欲し、小水未だに出ず』という症状を持つのだが、だぁりんの卓越した腕を持ってしても、治療までが精一杯。 完治が難しい病の一つなのだ」

 

冥琳「華陀ほどの名医でも………治療が難しい……のか?」

 

卑弥呼「正確には、この病を治療するに対して患者自体の食生活改善、運動量増加を実行しなければ始まらんのだ! だぁりん単独での針治療や薬方だけで、例え症状が軽くなっても、完治など夢のまた夢と思うが良かろう!」

 

冥琳「──で、では、もし発病した者が居ても、生活を改善すれば完治できるという事か? それなら、幾ら何でも自分の命が掛かっているのだ。 華陀の治療と共に療養へと行動すれば、完治など容易い事なのでは…………」

 

卑弥呼「ここは、うぬの生まれ育った大陸ゆえ、うぬが持つ情報を元に予測して見れば理解できるじゃろう。 だぁりんや別の者が生活改善策を進言し、その病を得た者が、どう対するか──とな」

 

ーー

 

卑弥呼の話を聞き、現在城内で見てきた高官共を想定して思い浮かべる。 そして、その高官に冥琳自身が問い掛けた。

 

『───糖尿病になった貴公は命を失うかもしれない。 だが、この病の治療をする方法はある。 豪奢な生活、贅沢三昧な食事こそ病の源。 これを改めて、侘しいながらも慎ましい暮らしを行えば、必ず改善する。 如何か?』

 

すると、空想の高官が……冥琳に返事を返す。

 

ーー

ーー

 

高官1 『───だが、断る!』

 

高官2 『無駄無駄無駄──ッ!!』

 

高官3 『俺の嫌いな言葉は、一番に《努力》で、二番目が《ガンバル》なんだぜぇ!!』

 

ーー

ーー

 

冥琳が頭の中で思い描く高官達は、クールに断りを入れる。 

 

『今の生活以上の待遇を望んでいるのに、何を改善する必要があるのか。 命を長らえても、貧しい生活など死んだも同じ』

 

そんな意味の言葉を、口々に言い放つ。

 

何で冥琳の空想で高官達が、この様な言葉使いをするのか原因は判らない。 

 

多分、きっと……絶対、北郷一刀の影響が知らずと入っていただろうと、推測するのみだ。

 

もし、実際の高官が語るのなら、こんな確たる言葉を話す事などあり得ない。 むしろ、居丈高な物言いで、皮肉を混ぜながら恫喝気味に迫る。 対等な者など僅か。 残りは全て煩わしい下郎に過ぎないのだから。

 

だが、本人達は気付いていない。 

 

贅沢に慣れてしまい、その環境でないと生き残れなくなった哀れな人種。 命と引き換えに得た栄華は、命と引き換えには手放すが出来ぬほど、身体に刻み込まれている事を。

 

本人達は自分の意志で選択しているつもりだが、既に本能では理解している。 成虫して数日で息絶える、ウスバカゲロウの様な生き方しかできない事を。

 

卑弥呼の語る言葉の裏に『太き短い人生を選ぶだろう』という意味があったが、それは………この事を示していたのだ。

 

ーー

 

冥琳「バ……バカな……か……簡単すぎる……あっけなさすぎる……」

 

卑弥呼「…………鳳翔……怖いおなごよ。 味方にすれば何かと頼りになるが、敵に回せば……これほど恐ろしい奴はいない……儂のだぁりんを除けばの。 ガッハッハッハッ!!」

 

ーー

 

その結果は──漢王朝の瓦解は避けられない。 

 

もし、鳳翔の策が実行されると………甘味一品で、四百年に渡り栄華を誇った王朝が……崩壊する。 智謀を尽くしても、避けられない破局の一手になると──冥琳が確信する瞬間であった。

 

説明
勢い余って、可笑しな話に……
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コメント
未奈兎提督 コメントありがとうございます! 艦これを未だに始めていない作者の作品ですが、お気に召して頂けたのなら凄く嬉しいです。 次回の話も作ってますが……11月入ってしまうかも。 (いた)
一気読みしました、先がたのしみ過ぎます!(未奈兎)
スネーク提督 情報ありがとうございます! この小説投稿した後、別のサイトで小説読んでいましたら糖尿病の話が。 同じように考える人は居るものだなと思いました。 織田信長が糖尿病で死んだif小説ですけど。(いた)
糖尿病…失明するか足が腐るか神経麻痺か(スネーク)
mokiti1976-2010提督 コメントありがとうございます! 合併症も重なると怖さが倍増、日常生活にも支障が出ます。 皆様も、どうか気を付けて! (いた)
まぁ…確かに糖尿病は怖いですね。(mokiti1976-2010)
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