北郷一刀と新たな英雄が紡ぐ外史 18話
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「はぁぁぁ…十常侍の牽制だけでも気力が奪われてるのに、更に曹操かよ〜勘弁してくれよ」

 

「文句言っても仕方ありませぬぞ、こうなってしまったからには開き直るのもまた一興」

 

「お前は少しは緊張感持てよ」

 

司州河内郡、曹操来襲の報が都・洛陽を震撼させる

十常侍をはじめとする朝廷の重臣達は、すぐさま大将軍の公孫?を呼び出し、帝の居城を攻めたてようとしている曹操を討てとの命が下る

 

十常侍からの命、つまりは帝の命となっている現状で、公孫?に拒否する選択肢は選べない。やむを得ずに承諾したものの、他者より秀でた部分のない平凡な自分が曹操に勝てる訳ないと、目からは生気を感じられずどんよりとした目つきになってしまっていた

 

「だいたいさ〜平凡な私が大将軍なんて地位に居る事がまずおかしいんだ!」

 

人衆がどんなになりたいと願っても就けない地位に居るにも関わらず、自分から何を言い出すんだと思いながらも、面白くなりそうな予感を感じた星は黙ったまま公孫?の話に耳を傾ける

 

「攻めてくる曹操と能力比べてみるとだ、武力は負けてるだろ?将兵の統率力も負けてるだろ?智謀なんて全く歯が立たないし、政治の駆け引きが出来ればこんな状況になってないし…やっぱり私なんて脇役がお似合いなんだぁ〜〜」

 

「白蓮殿の配下には有名を誇る白馬義従が居るではありませんか」

 

『白馬義従』

 

公孫?は白馬に跨り戦場を駆け抜け、、騎射のできる兵士を選りすぐって白馬に乗せた精強部隊であり、公孫?軍の中核。この部隊を率いて各地を転戦し、武功を重ねて今の地位に就いた生命線でもある

 

「確かに白馬義従を率いてからは負けた事ないけどさ…」

 

公孫?は一刀同様に、曹操の力を理解している。

曹操は天に選ばれたと言っても過言ではない程の才を誇る、その才相手に自分が勝てるかと問われれば…答えは否

。それだけ自分と曹操では役者が違いすぎると思っている

 

「星、あの二人を呼んでくれ。対策を話し合いたい」

 

星は公孫?の指示を素直に聞き入れ、すぐさま二人を呼びに行く…誰も居なくなった城壁で公孫?は考える。

大将軍という肩書から、諸侯に援軍要請を飛ばす事は出来るが、河北四州を手中に収めた曹操相手では腰が引けて軍を派遣しようとするところはないだろ…1つだけを除いて

 

「涼州・・・馬家なら援軍を出してくれるかもしれない。まぁ、これも私の希望的観測に過ぎないが」

 

黄巾党討伐を命じに直接赴いた涼州で会った愉快な人達…涼州軍なら自分の窮地に駆けつけてくれるのではないか…と思いたい半面、涼州軍が曹操を敵に回る利が無い。むしろ、曹操と手を組んで自分を滅ぼす方が自然な流れではある

 

「それでも、あいつらならきっと来てくれる。こんな事ばかり言ってるから、星からお人好しだのなんなの言われるんだろうなぁ」

 

お人好しと言われようが、何度人に騙されようが、公孫?は信じる事を辞めようとはしない…例えその結果、自らの身が滅ぶことになっても後悔はしないだろう

 

「救援要請は送った。あいつらが来た時に情けない姿は見せたくないからな・・・私なりに抵抗させてもらうぞ、曹操!」

 

 

 

 

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「兵の気配が全くないですって?」

 

「ハッ!我らも罠ではないかと捜索範囲を?陽から成?まで広げたのですが、一兵の姿すら見当たらなく、付近の村々にも人の気配がありません」

 

「華琳様、我らの勢いに恐れをなして籠城するつもりしょうか」

 

「それは無いわね。公孫?が武功を重ねられたのは白馬義従があってこそ。自軍最高の攻撃力を持つ部隊を殺すのは自分の首を絞めてるのと同じことだわ」

 

「でわ、この行動も公孫?の策だと」

 

「恐らくね。むしろ、この状況で策が無いなんて言ったら春蘭並みのバカよ」

 

「あのぉ〜華琳様、そこで私を引き合いに出さなくてもいいんじゃないかと思うのですが・・・」

 

「ふふ、それだけ春蘭が可愛いって事よ」

 

「あぁ・・・華琳様ぁぁぁ!」

 

曹家特有の百合百合しい雰囲気が発生しても、周りの兵士達が気にする素振りはない。この雰囲気を見慣れてしまったというのもあるが、以前この雰囲気を壊した事で曹操の機嫌が一気に悪くなり、この部隊には理不尽とも言えるとばっちりな指令が降った事もあり、気にしないようにすると言った方がいいかもしれない

 

「…また始まりましたわ」

 

「そう言わないでくだされ、姉者のお陰で戦前のいい息抜きになりました」

 

「まぁ、お姉様が笑ってるなら、わたくしからは何も言う事はありませんわ。それよりも、貴方もそのだらしない顔をなんとかしなさいな」

 

この姉大好きな夏侯淵が、夏候惇が可愛がられている状況で大人しくしていられるはずがなく、表情は冷静を保っているように見せかけて、かなりだらしなくなっている

 

「はぁ…それにしても、気が乗らない戦いですわね。この出兵でもかなりのお金を使ってますし・・・洛陽が取れれば、商人を確保出来てお釣りが来ますし文句はありませんけど」

 

「随分荒れてるわね栄華、春蘭を可愛がれば落ち着くわよ?」

 

「ご遠慮しますわ。私はお姉様みたいな趣味はありませんの。それに・・・春蘭はわたくしの好みではありませんわ」

 

曹操と曹洪、共に女の子が好きなのだが、二人の差は女の子での楽しみ方。

曹操は性的に気に入った子を可愛がるのが大好きなのに対して、曹洪は小さい子に可愛い服を着させたり恥ずかしがる所を見るのが至福の時間という具合だが、姉の曹操のにように手を出す事は無い

 

「あの子達に会えなくて元気が無いのは否定しませんが、わたくしが一番合戦で嫌なのは”男”が近くに居る事です」

 

曹洪は女の子大好きな一方で、曹操陣営では大の男嫌いで有名でもある。今までの合戦は諸葛亮や?統といった曹洪好みの子が陣中に居たから緩和されていたが、今回は曹洪を癒す女の子が不在。それが影響してか、曹洪はこの編成に強く反対し、決まってしまったからには早く決着をつけて帰りたい、そんな一心で一杯なのだ

 

「報告します!未だ敵兵の姿は確認出来ませんが、小部隊が何隊か落とし穴に嵌り、周囲の部隊が救護に当たっています!」

 

「落とし穴程度なら自力で脱出出来るはず…その落とし穴の場所まで案内なさい」

 

公孫?陣営が仕掛けた落とし穴を不審に思った曹操達は、すぐに落とし穴が掘られていた地点へと急行する

 

「…なんなの、この落とし穴」

 

「これは…惨すぎる」

 

落とし穴の現場に到着した曹操達は、その落とし穴の悲惨さに言葉を失う

落とし穴はかなり深く掘られていて、その中には蛙・蛇・ムカデ・トカゲ・ナメクジと言った主に爬虫類などが大量にうごめいていて、それらが穴に落ちた兵士達に纏わりつき悲惨な状況に陥っていた。

 

「流石にこれは…惨すぎるますわ」

 

男嫌いの曹洪ですら同情する悲惨さに、助け出された兵士達の目からは生気が一切感じられる廃人一歩手前にまで壊されてしまった。流石にこの者達には戦えと命じる事が出来ない曹操は、少数の護衛を付けて帰還させる

 

「皆の者!今まで以上に足元には注意しなさい!」

 

気が緩みかけていた曹操軍の兵士達は気を引き締めて進軍を再開する、先ほどは不意打ちで落ちただけ、注意していれば問題ない、そう思っていた兵士達の願い虚しく、次々と落とし穴が猛威を振るう

 

「申し上げます!”また”新たな落とし穴です!今度のは地面にびっしりと竹やりが埋め込まれており、落ちた者は即死との事!」

 

「ええい、小癪な!正々堂々戦え!」

 

爬虫類落とし穴を皮切りに、様々な罠が設置されている落とし穴の報告が次々と曹操の元へともたらされる。落とし穴の内容は兵士の心を折るモノや直接命を奪うモノまで、とにかくえげつない。散々な思いをしながら平野を抜けると、森林地帯へと道が変わる

 

「華琳様、ここなら落とし穴を掘ろうにも、木々が生い茂ってて掘るのは無理でしょう」

 

「秋蘭の言う事も頷けるのだけれど、短期間であれだけの落とし穴を用意した奴らが、ここに何もしてないとは考えにくい、兵士達に引き続き警戒するよう伝えなさい」

 

曹操の命を伝えに伝令が走り出したと同時に、曹操は道に置かれているものに気が付いた

 

「あれは…木と藁で出来ている人形かしら」

 

曹操軍の進路上…つまり、洛陽への道を示しているかのように右側には木を掘って作られた木人形、左側には藁を編んで作った藁人形が何百、何千と置かれかなり不気味な雰囲気を形成している

 

「気味が悪いけれど、人形の出来は職人芸なのがムカつくわね」

 

人形のモデルとなった人物を思いながら作ったのか、その出来は文化面にもその才を発揮させる曹操をも唸らせる程の腕前。しかし、精神的・肉体的に殺しにきていた落とし穴に続き、この不気味な人形の行列で完全に曹操軍の兵士達は恐怖に支配されてしまった。

 

現代とは違い、この時代はまやかしなどが信じられていた時代でもある。そんな時代に人形がずらっと並び、所々には人形を祀るような簡易的な神殿も作られている・・・

兵士達が今すぐにでも逃げ出したい心を、自分達は曹孟徳の精兵なのだと自らに言い聞かせて進軍を続ける

 

 

「公孫?の将で注意するのは趙雲ぐらいだと思ってたけど、これは相当な知恵者が控えていると見るべきか」

 

 

 

 

 

 

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「…様と…様の罠に曹操軍は引っかかり、多数の犠牲者を出したうえに士気が落ちています」

 

「いい気味ね、私にあんな態度を取った事・・・後悔させてやるんだから」

 

「そうだそうだ〜!私から奪った罪は重いですよ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なぁ…あの二人が怖いんだが」

 

「頼もしくていいではないですか。それに、あの二人が居ないと曹操に太刀打ち出来ませぬぞ」

 

「解ってはいるんだが、なんとも恐ろしくてな。ま、まぁ…頼りにしてるぞ、荀ケ、張勲」

 

 

 

 

 

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書き始めてから4日で投稿出来たのいつ以来だろ?と思うぐらい進みよくて投稿出来ました!

取り掛かるまでに時間かかっちゃってますが(-_-;)

 

ということで、攻められたのは白蓮で、二人は七乃と桂花でした

この辺りが寂しがりと似てるなぁーと自分でも思いつつ、前作とは違う展開にちゃんとしますのでご安心を?

 

原作での桂花の落とし穴、七乃の人形細工を取り入れてみたのですが・・・違和感ないか心配です(-_-;)

 

前話のコメントで皆さん言っていた通り、涼州軍は智略面で大きく後れを取っています。

登場してないキャラ達も今後続々出てきますが、涼州軍の軍師をどうしようかとまだ検討中なんですよね…

登場出来る時期が来たらちゃんとお知らせしようかと思います!

 

 

モチベ戻って来たので、次回は早めに投稿出来るように頑張ります(*- -)(*_ _)ペコリ

説明
今回は華琳様陣営と攻め込まれた側の視点ですの

タグでネタバレは控えます(;^_^A
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コメント
心理戦での、最凶な組み合わせじゃないですか(聖龍)
ああ、せめて桂花か七乃のどちらかが涼州陣営だったら一刀も多少は楽出来たでしょうに…それはともかく、確かにこの二人の取り合わせはなかなかに凶悪ですね。はわあわが不在なのが曹操陣営に不利に働きそうな気が。(mokiti1976-2010)
罠というよりは嫌がらせじゃ……(アストラナガンXD)
ありまー・・・なんか恐ろしい知恵者が二人も(未奈兎)
タグ
恋姫英雄譚 恋姫夢想 華琳 栄華 

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