ポケモンDPt 時空神風伝 30
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鋼鉄島のゲン

 

ミオシティでジュンと再会し、さらにジムリーダーであるトウガンと遭遇したクウヤは、打倒トウガンに向けて、ポケモン達を鍛えることにした。

そのために彼は船に乗って、ミオシティのトレーナーの修行の場と言われている鋼鉄島に向かった。

島について早々、クウヤは岩の陰で休息をとっている人間を発見した。

クウヤは、その人間に見覚えがあった。

 

「あ、あの時の!」

「やぁ」

 

青いスーツのその男性はクウヤにきづき、彼の方をみてにこっと笑うと立ち上がる。

 

「改めて、私はゲン。

シンオウをはじめ、多くの世界を旅しているポケモントレーナーだ」

「お、おれはクウヤっていうんだ!

今シンオウのジムを全部制覇するため修行中なんだよ!」

「シンオウ地方を・・・そうか、あれからキミはそういう道を選んだんだね。

それで、順調に進んでいるかい?」

「ああ!」

 

クウヤはゲンに対しそう元気に返事を返すと、自分がこの鋼鉄島にきた経緯を彼に話す。

 

「おれ、さっきミオジムのトウガンさんっていうジムリーダーにあったんだ。

あの人のポケモン、すっげぇ堅いみたいだから、それを打ち破るためにポケモンをもっと鍛えたいって思ったんだよ。」

「なるほど、それでここにきたってことか?」

「うん」

 

彼の話を聞いたゲンはうん、と腕を組み少し考える動作をとり、チラリとクウヤをみた。

きょとんとするクウヤの反応をみて、ゲンは提案した。

 

「よし、では私が修行につきあおうか」

「え、いいのか?」

「ああ、かまわない」

 

まさか、こんなことになるとは思ってなかったクウヤだが、修行につきあってやるというなら、このゲンという男はそれなりに実力に自信があるということ。

ゲンの申し出を、クウヤは疑うことなく受けた。

 

「じゃあ、よろしくおねがいしまーす!」

 

クウヤは純粋な笑顔で、彼に修行を申し込んだ。

 

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鋼鉄島にある洞窟で、もっとも広いエリアにでたクウヤとゲン。

 

「では、まずキミのポケモンを見せてくれるか?」

「うん!

さぁみんな、でてこい!」

 

クウヤは5個のモンスターボールを手に持つと、それを投げてそこに入っているポケモン達を全員出した。

 

「ゴウカザル、クロバット、ロトム、イーブイ、キリンリキか・・・。

うむ、全員キミを強く信頼しているし、とてもよく育てられているな」

「えへへ、さんきゅー」

「こちらもポケモンを紹介しなければな・・・。

私のパートナーはこのポケモン達だ。」

 

そういいゲンが出したのはアブソル、ボーマンダ、そしてルカリオだった。

ルカリオとあったことがあるクウヤは、そのルカリオに声をかけた。

 

「あ、お前も久しぶりだな!」

「ブルルルッ」

「さぁ、挨拶はここまでだ、早速修行しようか。

キミの相手になるのは、トウガンさんと同じはがねタイプであるこのルカリオだ。

そうだな・・・キミはそのゴウカザルを使ってきていい」

「うぇ!?」

 

ゲンがルカリオの相手として指名したのは、ほのおとかくとうタイプをあわせもつゴウカザルのヒーコ。

 

「ヒーコでいいのか?」

「ああ、おそらくキミはそのゴウカザルを主体として、他のポケモンをサポート役にして、あの人に挑むつもりなのだろう?

だったら、ますますそのポケモンの立ち回りをよくしなければな」

「・・・わかったよ、ゲンさん!

いくぞ、ヒーコ!」

「ゴォォウ!」

「アブソルとボーマンダは、彼の他のポケモン達をチェックしつつ鍛えてやってくれ」

 

洞窟を進み、外の広い場所にでたクウヤとゲンは互いに向かい合うと、ゴウカザルとルカリオをにらみ合わせる。

 

「ルカリオ、でんこうせっか!」

「ヒーコ、マッハパンチ!」

 

スピードのある二つの技がぶつかりあい、一度は互いに相殺しあった。

すると今度はルカリオがはどうだんを放ってきたのでヒーコはそれをかえんほうしゃでむかえうち相殺をねらう。

だが、はどうだんはかえんほうしゃを打ち抜き、ヒーコをそのまま攻撃した。

 

「くっ、なんてパワーだ!」

「ルカリオ、メタルクロー!」

「ヒーコ、かえんぐるまだ!」

 

鋼の技と炎の技ぶつかりあう。

本来ならかえんぐるまのほうが勝つのだが、ルカリオのメタルクローがうまくゴウカザルのかえんぐるまを弾き飛ばしていた。

 

「・・・!」

「ルカリオ、そのままボーンラッシュ!」

 

ゲンの指示にあわせてルカリオは休む間もなく次の技を指示し、そのままゴウカザルを攻撃する。

ボーンラッシュはじめん技で、ゴウカザルには効果抜群。

だが、相性のことなんてこの勝負には関係ない、現にルカリオははがねの技でヒーコの炎技とまともにやりあっていた。

この短い間で、確実にわかることは、ひとつだけ。

だが、それでわかることはひとつでも、それだけでも十分なことだった。

 

「・・・ゲンさんは・・・強い!」

「・・・ルカリオ、はどうだん!」

「だけどオレ達だって、負けないぜ!

ヒーコ、かえんぐるま!」

 

クウヤの指示にあわせてヒーコはかえんぐるまを使いルカリオにつっこむ。

はどうだんと衝突しそうになった、そのときだった。

 

「そのままかえんほうしゃだ!」

「むっ?」

 

かえんぐるまの威力を兼ねたかえんほうしゃが、はどうだんを打ち消し、そのままルカリオを攻撃した。

 

「大丈夫か、ルカリオ!」

「ブォォウ!」

「どうだ、これがヒーコの戦い方だ!」

「ゴォォォウ!」

 

炎の状態を解いたゴウカザルとクウヤは腕を高く突き上げた。

彼らのバトルスタイルは、攻撃的ではあるがしっかり考えられていることから、ゲンはこの少年のトレーナーとしての才能をさらにのばしたいと今このとき、確信した。

 

「おもしろい子だ・・・!

これは、修行の付けがいがある・・・さぁ、続けるぞ!」

「おう!」

 

こうして二人の修行は、日暮れまで行われた。

 

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最初の修行はおわった。

 

「もう日は暮れた、今日の修行はここまでにしようか」

「あ、ああ」

 

ぜいぜい、と呼吸を繰り返すクウヤとポケモン達。

鋼鉄島で修行するトレーナーのために置かれている休憩用の施設で、クウヤとゲンは食事をとり休息をとる。

その間、クウヤはゲンからいろいろな話を聞いた。

 

「え、ゲンさんってトウガンさんと知り合いだったの?」

「ああ、修行の旅の中ミオシティに立ち寄って、そこで偶然な。

彼は私のルカリオを気に入って、勝負を申し込んだよ」

「へぇ、結果は?」

「私が勝った」

「・・・!」

 

ミオジムのトウガンに勝ったが公式戦ではなかったためジムバッジを受け取らなかったことや、鋼鉄島での修行のことも、ゲンはクウヤに聞かせた。

彼が自分の話に対し興味津々な態度だったので、つい話を続けてしまう。

 

「それに、トウガンさんところのヒョウタくんも見所があってね・・・ここで一緒に修行したことがあったよ。」

「・・・はい?」

「?」

 

ゲンの口からさらりとでた名前に、クウヤはぽっかんとした。

 

「なんでそこでヒョウタさんの名前がでるんだ?

しかもトウガンさんとこのヒョウタくんって・・・なに?」

「え、もしかして知らなかったのかい?

トウガンさんとヒョウタくんは、実の親子なんだよ」

「えーっ!!?」

 

ゲンの口からでた衝撃の事実に、クウヤは驚き大声を上げてテンパる。

 

「まじで、ホントにっ!?」

「あ・・・ああ、本当だよ。」

 

予想以上に驚いているクウヤに、ゲンは苦笑しつつもあの二人の関係が事実であることを引き続き話す。

 

「二人とも堅くてごつごつとした系統のポケモンや、化石などが大好きでね・・・よく互いの意見で衝突したり意気投合したりしていたんだよ。」

「へぇー・・・。」

「トウガンさんも、ヒョウタくんのことは表向きではまだ青いとか未熟と入っているけど、実際は彼がクロガネジムのジムリーダーであり炭坑の採掘のリーダーとして立派に働いていることに喜んでいて認めている。

そしてヒョウタくんもまた、表向きではトウガンさんのことを子ども扱いするとか口うるさいとか言ってるけれど、実際は彼のことを男としても父親としても尊敬しているんだ。」

「・・・なんか素直じゃねぇな、二人とも」

「ふっ、確かにな」

「でもいいな・・・。

憎まれ口をたたき合ってても本心では二人とも、親子としてわかりあえてるって」

「?」

 

不意にクウヤが、どこか寂しそうな様子をみせたので、ゲンは少し疑問を持つ。

自分がそんな顔をしていたこと、そしてゲンが不思議そうな顔をしていることに気づいたクウヤは、苦笑しつつ自分のことを少しだけ話し始めた。

 

「・・・おれ、自分の父ちゃんと母ちゃんがわっかんねぇんだ。」

「わからない・・・?」

「うん」

 

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クウヤはどこか遠くを見ながら、話を続ける。

 

「おれ、さ・・・どこかからか誘拐されてきたみたいなんだ・・・変な連中に。

ずっと小さかった頃のおれをどこかからか誘拐して、ヘリで逃走中にそのヘリが事故ってある場所に不時着して・・・そのときその連中は事故で死んだ。

そして、おれはそこに偶然居合わせた二人のトレーナーに発見されて、二人はおれをそのままつれて帰ったんだ。

そのおかげで、おれは今生きてるんだ」

「・・・」

 

ゲンは正直、この少年がそんな壮絶な過去を背負っているとは思っていなかったため驚いていた。

だが、今は彼の話を真剣に聞くため、表情を変えず黙っていた。

 

「おれはホウエンの・・・ルネシティってわかるかな」

「ああ、そこなら行ったことがあるから知っているよ。

もしかして、その二人にそこで育てられたのかい」

「うーん・・・じじつじょうは、っていうのかな。

まぁそこは色々フクザツなことがあるから、今はノーコメントでいくぜ」

「・・・」

「まぁ、色々なことがあったよ。

それで12歳になったある時、おれはおれに優しくしてくれた人たちの手助けのおかげで、ポケモントレーナーとしてホウエンを旅することができるようになったんだ」

 

今この少年の脳裏を駆けめぐっているのは、ホウエンでの冒険のこと、会ってきた人達、戦った人達。

敵も味方も、たくさんのポケモンも・・・その中にいた。

だが、どう足掻いても、どうしても思い出にはならないものがある。

それは、自分自身のことだ。

 

「だから、おれはおれのことぜーんぜんわっかんないんだ。

どこで生まれたのかとか、きょうだいはいるのかいないのかとか・・・おれを生んだ父ちゃんと母ちゃんのことも。

クウヤって名前も、おれが着ていた服にそう書いてあっただけのことだし・・・誕生日だってあの二人がおれを見つけた日だし」

「辛いとは、思わないのか?」

「・・・」

 

ゲンの問いかけにクウヤはんーっと少し考えるように頭をポリポリと掻きだした。

 

「そんなこといわれても、わかんねぇもんはわかんねぇんだ。

どうしようもないから、そんなこと、ちっとも感じないよ」

「そうか、変なことを聞いて、すまなかったな」

「いいっていいって。

自分がわかんなくたって、困ったことはねぇよ。

ポケモンも仲間も友達もライバルも、ポケモントレーナーとなってから出会った人達も・・・おれは独りじゃないって感じるくらいにたっくさんいるからさ!」

「・・・」

「それに、旅してりゃいつかわかるかもしんねぇしさ!

だから旅を・・・冒険を、おれは全力で楽しみたいんだ!」

 

クウヤの性格が、わずかな時間だがわかった。

どこにでもいる明朗活発な元気少年であり、また純粋で人を素直に信じることができ、何事にもぶれず前を向き続ける強い心を持っている。

この性格と心は目の輝きと同等というほどに、彼の緑色の目は限りなく澄んでいた。

この心を汚すわけにはいかず、このまま強くなってほしい・・・その手助けを自分もしたい。

そうゲンはおもい、ふっと笑う。

 

「いい目だ」

「?」

「さぁ、今晩はゆっくり休んで、明日は朝から修行だ。

みっちりと鍛えるから、覚悟しておけ」

「おう、望むところだぜ!」

 

ゲンによるクウヤの、鋼鉄島にての修行は明日も続く。

 

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