空と風と大地とともに2
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:もう一人の自分そして、圧倒的強さ

 

 

 

「いたぞー。あそこだ、あの木の上だ!!」

 

 

黒いハトが何か言いかけた時、5人の賞金稼ぎが現れた。

 

ススは、3年前の事件で賞金をかけられたのだ。

 

 

「面倒くさいね・・・どうする?」

 

チラリと、横目で黒いハトを見た。

 

 

「殺しちゃだめだよ?」

 

「じゃ、逃げようか」

 

「うん・・・・ボクはいいけど、君は無理みたいだよ?」

 

 

確かに無理だ。

 

その数およそ10人強。

 

すでに、1人と一羽のいる木は囲まれている。

 

 

「あれ・・・増えてない?」

 

「4・5人じゃ、もう無理だって思われたって事じゃない?この3年で、何人病院送りにしたのさ」

 

「いやぁ、もう覚えてないなぁ・・・まぁいいでしょう。君もやる?それとも見てる?」

 

「見てようかな。あの人数じゃ手加減できないでしょ?死なないように、見張っとくよ」

 

「わかった。じゃ、行ってくる。」

 

 

枝の上から軽やかに飛び降りるスス。

 

腕には一本の枝を握っている。

 

そして、地に着くと同時に囲んでいた賞金稼ぎの2人が、同時に倒れた。

 

残った回りの賞金稼ぎが、技量の差に動きが止まった。

 

ススは、その隙を逃さずさらに2人を、ほぼ同時に切り倒す。

 

 

ススの技は、追われ続けるうちに3年間で目覚ましい進歩をとげていた。

 

 

「ちょっと ちょっと!やりすぎだよ!?フォローする身にもなってよね! もう~」

 

 

黒いハトは、ススについて行くうち、人間に使えるはずのない技術を身につけていた。

 

 

気がつけば、ススは半数を切り倒していた。

 

すでに賞金稼ぎ共は、敗色濃厚だ。

 

残りの賞金稼ぎ共は、走り出した。

 

逃げる気である。

 

 

 

「やれやれ・・・せめて倒れてる奴らぐらい、持って帰ってほしいね~」

 

「ムチャ言わないの。切られたら普通、死んでるんだから。」

 

 

そう・・・

 

切られれば人は死ぬ。

 

だが、黒いハトは死ぬはずの負傷でも 死なせはしなかった。

 

ススが生きているのも、その「力」あってこそだ。

 

 

「あの時、ボクが助けなかったらどうなってたか・・・分かってるの?少しは、僕の言う事も聞いてよね」

 

「そんな事いっても。しょうがないだろう。殺さなかっただけ マシじゃないか。結構難しいんだよ、切らないように斬るのは。・・・術具を使えばすぐに終わるけど、消えてしまうし・・・」

 

 

「キトリ(・・・)、もう、演じなくていいよ。誰も辺りにはいなくなったんだし・・」

 

 

そう、3年間で闘うための技術は目をみはるほど進歩した。

 

達人といえるほどの、腕前である。

 

 

しかし、その代償に人格構成とういう世にも不思議な事が起きてしまった。

 

それは、仕方がない事でススは人を傷つけると言う行為が、あの悪夢を思い出させてしまい、しかるべき結果である。

 

 

「そうかい、君が言うなら安心だ。それではススの事は、まかせるよ」

 

 

裏の人格はキトリ、表はスス(スカルテス)。

 

まかせるというのは、ススでも十分賞金稼ぎや、刺客追い返す実力は持っているのだが、人に傷を負わせる時の感触といい、脅える声のせいでススは意識を失ってしまう。

 

すると、その辺一体がさるも無残な姿に変えてしまうのだ。

 

ススは、術連の首位を争うほどの実力の持ち主なのだから、理性のカセが外れてしまった術は考えただけでも恐ろしいものだ。

 

 

「ああ、そういえば君の力は私、いかススのおかげだって言うことを忘れずに。さすがにあの時は助かったけど、ススにそうなると言うとフカさせられるよ。」

 

「・・・・。それは、それだけはイヤだ。止めてくれ。人語が喋れるようになったのも週に一回変な薬を打ち続けられているうちに、喋れるようになっただけで・・・あの時の気分は今思い出しただけでも吐き気がする。栄養剤といいながら・・・・・・、あぁ~思い出したくない」

 

 

喋れるようになったのは、ススの術のおかげで術といっても色々あり、図を描いて召喚したり唱えたりするのが全てではない。術具は薬も、その分類に入るのだ。術で一気に人語を喋るようにするのも可能だが、安全なのは地道に時間をかけた方が良いので、薬を打ったのだろう。

 

 

思い出したくない過去というのは、イオクル(黒いハト)が薬を打たれたその日、人になってしまった事だ。ススが試しに打ったものがイオクルの体と適合して変能したのだ。

 

 

「そうだよね、仕方がないか。ボクは君達の・・・」

 

 

急にキトリが、イオクルの首に無言で矛を突きつけてきた。

 

さっきまでは、何も手に持ってなかったのに・・・・これも、術の1つである。

 

 

「ふぅ~ん、イルクセイダルか・・・・」

 

イルクセイダルとは、キリトの術具の中で上の下のランクにあたる武器である。

 

矛の部分は、少し曲線をえがいており薙刀にちかいものがある。

 

尾の部分は赤で装飾がしてある。

 

 

「ごめん・・言い過ぎたよ。少し疲れていて、その上あんな事を思い出したら、愚痴の一つも言いたくなっちゃってさ。ほんと、ごめん。」

 

 

キリトは「ピット」と言うと、イルクセイダルは急に消えてしまった。

 

 

「まぁ、私も半分は冗談だ。ススのことはよろしく頼むよ。ガンバってな」

 

 

 

 

話し終わるとキトリは、クロ(黒いハト)を連れこの場を去る。

 

逃がした賞金稼ぎの事もあるが、それよりも倒した賞金稼ぎがころがるココでススに戻るわけにはいかない。

 

そんな事をすれば、ススのトラウマに触れる事になるだろう。

 

だが、キトリが最も懸念するのは、そんな事ではない。

 

 

キトリは自分がススの裏人格であることを知っている。

 

また、その事に対してキトリに不満はなかった。

 

気が付いた・・・・つまり、生まれた時からススと一緒だった彼にとって、それはあたりまえの事であり、実に居心地の良いものであった。

 

 

『1つの体に2つの精神は存在できない』キトリはそう思っている。

 

もし、自分がこの体を欲すれば2つの精神が相反しあい壊れるであろう。

 

それに確信はないが、キトリは深く考えなかった。

 

それは、その必要がなかったから・・・

 

 

キリトはススの『他を傷つけよう』とする心を基に成り立っている。

 

そう、ススが最も忌み嫌う『心』

 

 

自分はススの負の部分を受け持つ虚像だ。

 

それだけで存在できず、ただ、そこに確かにあるススの『心』を写し出している鏡にすぎない。

 

それゆえ、自分はススの裏人格でしかない。

 

もしかすると、それ以下かもしれない・・・・・

 

 

しかし、キトリはそれに不満をいだいてはいなかった。

 

まるで、あたりまえの様にススの裏人格として存在する。

 

 

それゆえ、キリトはススが自分に気付く事を恐れていた。

 

ススは自分に気付いていない、それは『鏡』である自分にはわかる。

 

しかし、いつまでもこのままではいられるのか・・・・

 

 

そう遠くないいつか、『スス』が『キトリ』を知るときが来るのが怖い。

 

『負』でしかない自分を知ったときススはきっと・・・・

 

 

「ねぇ、聞いてるの?」

 

クロの呼ぶ声に意識が現実に引き戻される。

 

クロは、すぐ目の前にいた。

 

 

こんな近くにいたのに、気付かなかったのか、私は・・・・

 

 

「しっかりしてよねー」

 

クロは、たいして気にしてないのか楽しそうに周りを先回しだした。

 

周りを見ると、あの場所からたいぶ離れている、もう大丈夫だろう。

 

 

「もどる・・・」

 

 

そういうと、体のコントロールをススにもどす。

 

場所が変わったことは、クロが上手くごまかすだろう。

 

最も、そんな事をしなくてもスス自身が記憶の補正をおこなっているんだが・・

 

 

キトリは、いつものように意識を中に沈ませていった。

 

説明
前回の続きです

今回は賞金首になったら
やはり命は狙われるもの
ということで
軽い戦闘です

スカルテスには
人を傷つけることを
最も恐れているために
攻撃ができない
さぁ、どうなる

といっても
読み始めたらすぐに分かりますが(笑
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ファンタジー

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