孤高の御遣い 北郷流無刀術阿修羅伝 君の真名を呼ぶ 26
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左慈「ふぅ・・・・・くっ・・・・・むう・・・・・ぐぅ・・・・・」

 

神殿では、床で座禅を組み冥想に浸る左慈が居た

 

于吉「(ああ、そのようにして悶える貴方も、実に良いですよ)」

 

そして、その様子を柱の影から覗き見て身震いするホモ眼鏡

 

左慈「うぅ、ぐっ、くうぅぅぅ・・・・・・・・・・がはぁっ!!」

 

そして、脂汗を滝のように流し、左慈は仰向けに寝そべった

 

于吉「・・・・・どうですか、イメージトレーニングは」

 

左慈「はぁ・・・・・はぁ・・・・・ふんっ、この様を見ればわかるだろう・・・・・」

 

これまでの一刀との闘い、雷刀と華佗の戦闘、そして凪の型を元に頭の中で一刀との戦いを疑似シミュレーションとして投影する

 

だが、この様子を見る限り、結果は芳しくないようだ

 

左慈「あれだけの大口を叩いておいて、想像の中の北郷にも後れを取る体たらくだ・・・・・」

 

于吉「この法術は正直ですからね、左慈の経験から客観的に結果を導き出しますから」

 

左慈「くそっ、やはり楽進だけでは足りん!せめて北郷と裏の北郷がぶつかり合ってくれれば、言うことは無いんだが!」

 

于吉「そしてその結果、共倒れしてくれるのが一番望ましいのですが」

 

左慈「何を言っていやがる、それじゃあこれまでの鍛錬が無駄になるだろうが!」

 

于吉「は?いえいえ、それが一番の形でしょう」

 

闘わずして人の兵を屈するは、善の善なるものなり

 

神仙にとっても兵法は無視できない重きを置くべき重要なものである

 

だからこれまで、記憶の捏造や、強制労働で弱った所を突くなり、相手の戦力を削いでから戦う手法を取って来たのだから

 

左慈「黙れ!!俺があの北郷を倒すんだ、余計な事はするなよ!!」

 

于吉「・・・・・・・・・・」

 

どうも目的がすげ変わってしまっているようである

 

この外史の破壊が今の自分達の当面の目標であるはずなのに

 

一体どうしてしまったのかと、普段の左慈らしくない言動に困惑していると

 

神農「ほほ、頑張っておるのう♪」

 

何処からともなく、物音を一切立てずに現れる神仙の長

 

左慈「・・・・・何しにきやがった?無様な俺を笑いに来たか?」

 

神農「いやいや、むしろその逆じゃよ、お主達の努力を称賛しに来たのじゃ♪」

 

左慈「何を企んでやがる、腹黒じじいが」

 

神農「随分じゃのう、せっかくお主達が今一番欲しい情報を持って来てやったと言うに♪」

 

于吉「一番欲しい情報ですか?」

 

神農「おお、楊州の盧陵、ここの荒野を覗いてみるがいい♪」

 

于吉「盧陵、一体何が・・・・・・・・・・っ!なんと・・・・・」

 

左慈「っ!!」

 

千里眼で言われた所を覗き込むと、一刀とその祖父が向かい合い一触即発の雰囲気を漂わせていた

 

于吉「まさかこのような組み合わせですか・・・・・これはある意味、北郷と裏の北郷がぶつかるよりも参考になるかもしれませんね」

 

神農「ほほ、どうじゃ?一番欲しい情報じゃろうに♪」

 

于吉「ええ、知らせていただいた事、感謝します・・・・・左慈、今回は貴方も礼を・・・・・」

 

左慈「・・・・・・・・・・」

 

その言葉が左慈の耳に届く事は無かった

 

千里眼の中の一刀と刀誠の一挙手一投足を見逃さぬよう全神経を傾けていた

 

于吉「・・・・・申し訳ありません、お咎めは私に」

 

神農「なぁに、気にはせん、もう慣れたわい♪」

 

于吉「寛大の極み、恐悦至極に存じます・・・・・」

 

左慈に変わり、恭しく神農に頭を下げる于吉

 

まるでドラ息子の世話に奔走する父親母親の様である

 

于吉「しかし、何故あのようなことに?あの二人が戦う理由など無いはずでは?」

 

神農「あ奴ら一族としてのケジメかのう・・・・・まったく、一族揃って不器用極まりないわい・・・・・」

 

于吉「・・・・・・・・・・」

 

このいかにも何か知っている物言いに、于吉も心の中で神農に疑惑を持ち始めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

桃香「・・・・・なんで、どうしてご主人様とおじい様が戦うの!!?」

 

雪蓮「ちょっと、なによあれ、どうなってるのよ!!?」

 

華琳「どうしてあの二人が戦かおうとしてるの!!?官輅、説明しなさい!!」

 

管輅「北郷一刀は、祖父から完全に自立する為、祖父はあの人なりに孫を思っての行い・・・・・ああいったやり方でしか答えを出せないのよ、あの一族は」

 

時雨「そんな、旦那様ぁ、おじい様ぁ・・・・・」

 

村長「やり方など、他にいくらでもあるでしょうに・・・・・」

 

華佗「頼む、どっちも生き残ってくれ、祖父殺しに孫殺しなんて、相打ちにでもなったら最悪だ・・・・・」

 

水晶玉から発せられる光景に息を飲む一同であったが

 

龍奈「ちょっと管輅!!あそこは何処!!?教えなさい!!」

 

貂蝉「え、ちょっと、龍奈ちゃん!?」

 

龍奈「あんな荒野何処にでもあるから詳しい場所が分からないよ!!今すぐ一刀に会いに行きたいの、お願い教えて!!」

 

管輅「・・・・・それは出来ないわ、刀誠殿が消えるまでは、決して北郷一刀の居場所は誰にも教えない、それがあの人との約束ですもの」

 

龍奈「ううううぅ〜〜〜〜!!」

 

姿は見えているのに会いに行けないじれったさに、龍奈は涙目で唇を噛み締める他なかった

 

卑弥呼「お主も難儀よのう・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

刀誠「・・・・・・・・・・」

 

そして、構えを取ったまま両者は睨み合う

 

一刀は左足を半歩前に出しての右構え

 

刀誠も左足を半歩前に出すまでは同じだが、両腕を前に出している

 

一刀「・・・・・っ」

 

そして、この沈黙を先に破ったのは一刀

 

縮地で刀誠に肉薄し右拳を繰り出す

 

刀誠「ふっ!!」

 

バシィッ!!

 

この鋭い突きを、受け流す

 

シュババババババババ!!!

 

続け様に、まるで壁ともいえる数の拳を一刀は繰り出す

 

これに対し、刀誠は縮地法子の型分歩と卯の型流歩で拳の弾幕を躱していく

 

二つの歩法の混合技は、まるで流れる分身のようで一刀の拳がすり抜けていく

 

しかし

 

ガシッ

 

刀誠「むっ!!」

 

更に間合いを詰め、刀誠の右腕を掴み分歩と流歩を封じる

 

一刀「捕まえてしまえば、その型は使えない・・・・・っ」

 

シュガガガガガガガガガ!!!

 

そこから乱打戦に持ち込む

 

それでも、刀誠は一刀の拳を冷静に受け流していく

 

パァンッ!!

 

最後に弾ける音と共に両者は離れた

 

刀誠「ふぅ・・・・・腕を上げたのう、完全に受け流しておるのに手が痺れるわい」

 

一刀「じいちゃんこそ、相変わらず見事過ぎる分歩と流歩だよ・・・・・見ていて気持ち悪くなって来るぜ」

 

刀誠「お前も相変わらず一言多いのう・・・・・っ!!」

 

そして、今度は刀誠が間合いを詰める

 

刀誠「ふんっ!!」

 

右足の蹴足が放たれる

 

一刀「ふっ」

 

この蹴りは、北郷流の防御の中でも最高峰に位置する丑の型嶽歩で防がれる

 

氣の壁に衝突した途端にズドンという鈍い音がし、まるで大砲のような威力である事を物語る

 

刀誠「ほほう、嶽歩も扱えるようになったか・・・・・じゃがっ!!」

 

次に刀誠は、左の肘鉄を嶽歩の壁に見舞う

 

一刀「っ!」

 

その瞬間に嶽歩が解除され、一刀は回避行動を取る

 

嶽歩で防御しているのだからそんな必要はないだろうと思うが

 

刀誠「嶽歩の弱点も覚えておったらしいのう」

 

一刀「当たり前だ、これを教えてくれたのはじいちゃんだろう」

 

嶽歩の弱点、それは特定の振動、衝撃に弱い事

 

嶽歩とは強固な鉄の壁を自らの周りに張る様なものである

 

であるが故に、それは鉄の鎧を身に纏うのと似た様な要領なのだ

 

無刀術の中には、そういった鎧を纏った相手を想定した技が幾つも存在する

 

空手の浸透突きや甲冑砕きの要領で、衝撃を内部に通す事は可能なのだ

 

一刀「フゥ〜〜〜・・・・・」

 

刀誠「コォ〜〜〜・・・・・」

 

そして、両者は構えを取り直す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

于吉「・・・・・ふむ、あの祖父を呼び出したのは正解だったようですね、北郷流の具体的な攻略法が次々と明かされていきます」

 

神農「なかなかに面白い戦いじゃのう♪」

 

左慈「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凪「・・・・・凄い」

 

沙和「こんな戦い見た事ないの・・・・・」

 

真桜「こないなので驚いとったらあかんのやろうけどな・・・・・」

 

そう、二人は氣を解放せずに戦っているのである

 

干支の型を発動する時に使うが、それも一瞬の事である

 

龍奈「も〜〜〜、二人共ちまちまやり過ぎよ!!一気に氣を使ってくれれば何処にいるか分かるのに!!」

 

二人の氣の変動を感知しようと、意識を周りに向けるが何も感じられない

 

あの程度の氣の変動ではこの天角に届く筈も無い

 

感知出来ればすぐにでも飛んでいくと言うのに

 

貂蝉「・・・・・それにしても拙いわねん」

 

卑弥呼「うむ、このままでは左慈達に北郷流の神髄が丸裸になってしまうわい・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・っ」

 

縮地で一気に間合いを詰める

 

拳を顔面に繰り出す、誰にでも出来る右ストレート

 

刀誠「捻りが無いわい!!」

 

当然そんな単純な攻撃に馬鹿正直に当たってやる宗家ではない

 

紙一重でこれを躱し、反撃しようとするが

 

グイッ

 

刀誠「むっ!」

 

右ストレートを繰り出したそのままの流れで、戦闘装束の奥襟を取られる

 

シュバッ

 

刀誠「むおっ!!」

 

そのまま組み付かれ、柔道の大外刈りで体を宙に浮かされる

 

その流れのまま左肘を喉元に突き付け倒れ込む

 

訃の楔、汐風

 

極まれば即死コースの技である

 

刀誠「ふっ!!」

 

しかし、刀誠はその流れに逆らわず、体を一回転させ肘を外し着地する

 

更に、取られた奥襟を外し、今度は一刀の右腕を掴み奥襟を取る

 

刀誠「今度はこっちの番じゃ!!」

 

左足で大外刈りをし、今度は一刀の体が宙に浮く

 

一刀「ぐっ!」

 

右腕を掴まれているので受け身が取れず、倒れ込む

 

そこに刀誠の右膝が顔面に迫る

 

訃の楔、矢風

 

これも綺麗に極まれば即死コースである

 

一刀「ふっ!」

 

この右膝を左手で防ぎ、力任せに刀誠を浮き上がらせやり過ごそうとする

 

刀誠「甘い!!」

 

しかし、刀誠は一刀の右腕を離さなかった

 

浮き上がった流れのままに一刀の右腕を反時計回りに捻る

 

一刀「ちぃっ!」

 

その流れに逆らわず、一刀は足を浮き上がらせ体を後ろに一回転させる

 

その拍子に右腕を外し、両者は再び向かい合う

 

一刀「えげつないな、矢風から雲龍十字に持っていくか・・・・・右腕が再起不能になる所だぜ」

 

刀誠「人の事を言えた義理か、汐風も十二分にえげつないわい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蒲公英「うわぁ〜〜〜、見ていられないよぉ〜〜〜・・・・・」

 

翠「どっちも危な過ぎだぜ・・・・・」

 

葵「ああ、最低でも大怪我をする技ばっかりだからな・・・・・」

 

純夏「これが、北郷流無刀術・・・・・」

 

思春「我らも、これまで一刀の無刀術を見てきたが、殆どがその本質とはかけ離れたものだったんだな・・・・・」

 

明命「はい、一刀様がどれだけ加減をしていたのかが分かります・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、腕や足の関節など、極めては返し極めては返しの繰り返しが続く

 

そのどれもが、相手の体を確実に破壊する殺法である

 

しかし、お互いに北郷流の達人同士、その対処法を知っているが故に勝負がつかない

 

悪戯に時間だけが経過し、気が付けば一時間ほどの純柔術試合が続いた

 

刀誠「ふぅ〜〜〜・・・・・埒が明かんのう」

 

一刀「だな、こういった組技関係は実力差が付きやすいはずなんだが、な!」

 

いきなり間合いを詰める一刀

 

そして、右足のローを繰り出す

 

刀誠「ふんっ!!」

 

このローに下半身に力を籠め耐えようとするが

 

ガシィッ!!

 

刀誠「ぐおっ!!!」

 

左足に来ると思われた蹴りが、上半身に襲い掛かる

 

咄嗟に反応し腕で防御するが、受け切れずに刀誠は後退する

 

刀誠「むぅ・・・・・三日月か」

 

そう、下半身に来た蹴りが軌道を変え上半身に来たのだ

 

一刀「ふっ!」

 

刀誠「むぅっ!!」

 

またしても右の蹴り足が来る

 

今度はあらゆる角度からも対処できるよう下半身と上半身を同時に守る

 

しかし

 

ビシィッ!!

 

刀誠「むぉっ!!・・・・・今度は菊月か」

 

今度は顎に蹴りが襲い掛かり、紙一重で躱す

 

刀誠の防御を避け、軌道を変えた蹴りが顔面に迫ったのである

 

そう、北郷流の蹴り技は、月をイメージして命名され、型が構成されるのである

 

刀誠「(いかんのう、こやつ蹴り技に掛けては、想像を超えておるわい)」

 

余りに早い一刀の蹴りに見切りが追い付かない

 

刀誠の蹴りの威力も速さも相当なものであるが、それでもこの世界で5年もの間実戦の中で培われてきた一刀の脚力

 

それから繰り出される蹴りの速度は、蹴りの軌道を変える時に発生するタイムラグなど感じさせない程である

 

刀誠「ふっ!!!」

 

今度は刀誠が右の蹴りを繰り出す

 

顔面を狙ったハイキックに一刀はすかさず左腕で防御しようとする

 

刀誠「ふんっ!!!」

 

その蹴りの軌道が変わる

 

先程の三日月の逆パターン、水無月

 

上半身に蹴りが来ると思わせて、下半身を狙う

 

ガシィッ!!

 

刀誠「むっ!!」

 

しかし、一刀は水無月を見切り右手で受け止めていた

 

一刀「遅い・・・・・っ!」

 

そのまま刀誠の顔面に左ストレートを叩き込む

 

バシィッ!!

 

この左拳を直撃する寸前で右の手の平で受け掴む

 

刀誠「ほっ!!」

 

その勢いを利用し、刀誠は上半身を仰け反らせる

 

一刀「(卯月・・・・・いや、長月!)」

 

北郷流では相手の攻撃の威力を利用して蹴りを見舞うのを卯月

 

後ろ回し蹴り全般を長月と言う

 

体を回転させ軸足である左足を振り上げる

 

左から後ろ回し蹴りが来ると思い、すかさず伸ばした左腕を引っ込め防御しようとするも

 

一刀「っ!!」

 

しかし、その読みは外れ上から踵落しが迫りこれを後ろに下がり紙一重で躱す

 

一刀「ふぅ・・・・・まさか睦月で来るとはな」

 

刀誠「かぁ〜〜〜!!惜しかったのう、もう少しで脳天にくれてやったものを」

 

三日月、水無月の別バージョン、睦月

 

これは本来なら三日月、水無月と同じように回し蹴りから変化させ踵落しに持っていくものである

 

それを咄嗟に長月で繰り出されたら、一刀も一瞬虚を突かれてしまう

 

しかし、これで一刀は冷静を取り戻し、今の奇襲じみた技は通用しなくなった

 

刀誠「(しかしまいったのう、よもや一回も決まらんとは・・・・・)」

 

蹴りによる攻防に入った途端に刀誠の攻撃は見事にいなされつつあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神農「これはいかんのう、一方的な展開になりつつあるわい」

 

于吉「ええ、どうやら若さの差が出始めたようですね・・・・・衰えた祖父と、今が全盛真っ盛りの北郷とでは体力差があって当然です」

 

神農「北郷一刀の方も全盛期から落ち始めておるとはいえ、この外史で培った実戦経験は決して揺るがんからのう」

 

左慈「勝負はこれからでなければ困る、あの祖父には少しでも耐えてもらって北郷流の技を一つでも多く零してもらわない事にはな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀誠「(さて、どうするかのう・・・・・)」

 

蹴り技で勝負するのは分が悪いと思うものの

 

一刀「っ!」

 

刀誠「まったく逸りおって、少しは考えさせい!!」

 

それでも一刀は向かってくる

 

縮地から強烈な右回し蹴りが迫る

 

刀誠「(これは避け切れん、ならば!!)」

 

バスンッ!

 

縮地法未の型、芯歩

 

体を綿のようにし、あらゆる衝撃を無効化する歩法でやり過ごそうとする

 

しかし

 

ドシンッ!!!

 

刀誠「がふあっ!!!」

 

右回し蹴りを受けたとほぼ同時に左回し蹴りが襲ってきて脇腹にクリーンヒットする

 

芯歩が仇となり吹っ飛んだ勢いが加わり衝撃が倍加し、激しく吹っ飛び地面を転がる

 

刀誠「ぐぅ!・・・・・今度は如月か」

 

右の蹴足を放つと同時に左蹴りを叩き込む如月は、北郷流蹴り技の中でも超高難度の技である

 

一刀「芯歩の弱点を知らないとでも思ったか?」

 

刀誠「むぐぅ・・・・・これを使うのを待っておったか・・・・・」

 

一刀「どうしたじいちゃん、俺の知っているじいちゃんはそんな程度じゃないぞ」

 

刀誠「言いよるわい・・・・・北郷流宗家を甘く目てもらっては困るのう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凪「・・・・・やはり、無刀術で一番怖いのは蹴り技だ」

 

星「なるほど、縮地法という仙術のような歩法を生み出す強靭な脚力から繰り出される蹴りか・・・・・確かに恐ろしいな・・・・・」

 

鈴々「でも、大丈夫なのか!!?おじいちゃん!!」

 

愛紗「ああ、見事に吹っ飛んだように見えたぞ!?」

 

斗詩「ご主人様、おじい様を殺す気ですか?・・・・・」

 

猪々子「おいおい、冗談じゃねぇぞ!!」

 

麗羽「その通りですわ、親族殺しなど、大陸五指に入る重罪ですわよ!!」

 

悠「いいや、これは真剣勝負だ、そこに血の繋がりなんて関係ないぜ」

 

彩「はい、どちらも罰する事など出来ません・・・・・」

 

七乃「試合や戦による死はあくまで結果でしかありませんからね・・・・・」

 

美羽「でも、悲しいのじゃ〜〜・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

刀誠「・・・・・しっ!!!」

 

一刀「はっ!」

 

ドカドカドカドカ!!!

 

蹴り技比べからいきなり乱打戦に移行

 

当身、蹴り当て、二本の腕と二本の脚を駆使しての殴打の応酬

 

拳同士がぶつかり、蹴り同士がぶつかり、肘同士がぶつかり合う

 

人間の体の凶器となりうる部分を相手に向ける

 

しかし、プロテクターや拳サポーター、グローブを一切付けずこれだけの打撃戦をしていながら、二人は怪我と言えるものを殆どしていない

 

これはひとえに強靭な内功によるものといえよう

 

内側に蓄えられた氣が打撃による衝撃をはね返しているのである

 

しかし

 

刀誠「はぁ、はぁ、はぁはぁ!」

 

どんなに内功が鍛えられていても、体力の差が覆る訳ではない

 

先に息が切れて来た刀誠の表情が急速に険しくなってくる

 

ガキィッ!!!

 

そして、一際大きい打撃音を最後に両者は離れた

 

刀誠「ふぅ〜〜〜〜!・・・・・体力も相当に付いておるみたいじゃのう」

 

一刀「こんな世界に来たら、嫌でもそうなるさ」

 

刀誠「確かにのう・・・・・っ」

 

一刀「(っ!?神威!)」

 

これまで左足を前に出しての構えを取って来た刀誠が右足を前に出しての左構えに変えて来た

 

おまけに腕をダランと下げ、防御を解いての余りに不用意な構えである

 

しかし、その構えを前にした途端、一刀の表情は一気に険しくなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

于吉「!・・・・・空気が変わりましたね」

 

神農「うむ、これまで以上に緊張感が増したのう、一体どういう事じゃろうな?」

 

左慈「分からないか?これまであいつらは右構えで試合ってきた、今は・・・・・」

 

于吉「左、ですか・・・・・」

 

神農「どうやら、左で構えることに何か秘密があるのじゃろうな・・・・・お手並みを見せてもらおうかのう」

 

左慈「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凪「そんな、あれは!!?」

 

風「どうしたんですか〜?凪ちゃん〜」

 

稟「何を驚いてるのですか?あんな構えと言えない構えなんて、何でもないでしょう?」

 

凪「あれは・・・・・神威の構えです・・・・・」

 

風「かむい・・・・・ですか〜?」

 

凪「あの構えは、相手を待ち構え、交差法で力を爆発させ相手に致命傷を与える構えなんです・・・・・」

 

風「なるほど〜、起死回生の構えと言えますね〜」

 

凪「ただし、文字通り完全な待ちの構えであり、防御を完全に捨てるため、しくじればあの世行きと言う、まさに捨て身の構えと言えます・・・・・」

 

稟「なんと・・・・・まさに背水の陣の構えと言う事ですね・・・・・」

 

風「ということは、この攻防でおじいさんの攻撃が決まれば、お兄さんは死んでしまうと言う事ですか〜!?」

 

稟「逆に失敗すれば、おじい様が死んでしまうと言う事ですよね!?」

 

凪「そういう事になります・・・・・どうか、どちらも死なないで下さい・・・・・」

 

風「・・・・・・・・・・」

 

稟「・・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「・・・・・・・・・・」

 

左構えの祖父に対し、一刀はこれまで通り右で構える

 

間合いを計りながら、仕掛けるタイミングを窺う

 

一刀「・・・・・っ!!」

 

一気に間合いを詰める一刀

 

分歩で分身体を作り出し、攪乱しようとするが

 

刀誠「そこじゃ!!!」

 

本体を正確に見極め、左足に渾身の力を込めて蹴り放つ

 

一刀「(躱せない!!)」

 

咄嗟に芯歩を発動し、祖父の左蹴りに対応しようとするが

 

ズシィッ!!!

 

一刀「ぐぅぅぅ!!」

 

神威の構えからの蹴りの威力は凄まじく、一刀の体をくの字に折る

 

一刀「ぐはぁっ!!!」

 

衝撃を受け切れずに大地を盛大に転がった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春蘭「うお!!?何だ今のは!!?」

 

秋蘭「左の蹴りを放ったようだが・・・・・」

 

霞「なんやて!!?無茶苦茶早くて何をしたか分からんかったで!!?」

 

焔耶「おじいさん、あれほどの力を隠していたのか・・・・・」

 

嵐「あれで80をゆうに超えていると言うのだから、恐れ入る・・・・・」

 

詠「それより、一刀は大丈夫なの!!?」

 

月「そうですよ、なんだか凄い勢いで地面に叩き付けられたように見えましたよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「くぅぅ・・・・・相変わらずここ一番の左は凄いもんだな・・・・・」

 

なんと、刀誠の左から前に掛けての地面が、蹴りの風圧だけで抉れていた

 

芯歩による衝撃緩和がなければ、骨の一二本は持って行かれていた

 

更に言えば、もしこれが氣を纏っていたら、こんな程度では済まなかったであろう

 

しかし

 

刀誠「ぐうぅぅ!!」

 

なぜか刀誠はその場で膝を付く、常道であれば追い打ちを掛けるところであるのに

 

刀誠「ぐぅ・・・・・本当に成長しおったのう・・・・・あの体勢から蹴り返すとはな・・・・・」

 

あの刀誠の渾身の左足が衝突し吹っ飛ばされる一瞬で、一刀は刀誠の右足に左ローを叩き込んでいた

 

右膝辺りがじんじんと痛み、摩って痛みを逃がそうとする

 

一刀の方も、体の芯を僅かに揺さぶられ、ダメージが抜けずその場で息を整える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

季衣「うわぁ〜〜、どっちも痛そぉ〜〜・・・・・」

 

流琉「うん、よくあんな殴り合いが出来るよ・・・・・」

 

亞莎「私も、元は武官で拳法には自信がありましたけど、あの人達にはどう足掻いても勝てる気がしません・・・・・」

 

穏「亞莎ちゃん、比べる対象が間違ってますよ〜・・・・・」

 

冥琳「その通りだ、北郷流はもはや我々の価値観で押し測れる代物ではない・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一刀「はぁ〜〜〜〜・・・・・」

 

刀誠「ふぅ〜〜〜〜・・・・・」

 

お互いにダメージが抜けて来て、再び両者は向かい合う

 

刀誠は、もう一度神威の構えを見せ、一刀は変わらず右で構える

 

左足の状態を確認しながら、全身を脱力させる刀誠であったが

 

シュドッ!!

 

刀誠「むおっ!!??」

 

いきなり一刀が眼前に迫る

 

下手な小細工無しに午の型筍歩で一気に間合いを詰めてきた

 

反射的に左足を振り抜くが

 

ドシィッ!!!

 

刀誠「がはぁっ!!!」

 

右の肘鉄が刀誠の鳩尾に綺麗に決まる

 

筍歩による突進力が加わり鳩尾から強烈な痛みが走る

 

神威の構えによる脱力が仇となり、その痛みは全身が麻痺したような感覚にまで至る

 

振り抜いた左足も、既に懐に入っていた一刀には太腿の部分しか当たらす、大したダメージにはならない

 

一刀「何度も同じ事が通用すると思ったか?・・・・・終わりにしてやる、じいちゃん!!!」

 

この機に全身から氣を解放する一刀

 

刀誠「むう!!・・・・・おおおおおおおおおお!!!」

 

そして、それに触発されたかのように刀誠も痛みに耐えながら氣を一気に解放する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍奈「居た!!!」

 

管輅「っ!!龍奈!!?」

 

恋「っ!!?」

 

蓮華「きゃあっ!!」

 

小蓮「ちょっと、どうしたの!!?」

 

杏奈「ヴリトラ様!!?」

 

二つの大きな氣の変動を感じ、龍奈は走りだす

 

チャイナ服と下着を脱ぎ捨て、龍の姿に変化し、天角から南東に向けて飛びたった

 

止める間もなく、その姿はあっという間に見えなくなる

 

貂蝉「龍奈ちゃん・・・・・そんな事しなくても、勝負が終われば菅路ちゃんが転移の術で送ってくれるのに・・・・・」

 

卑弥呼「それほどまでに、ご主人様のことが大切なのであろうな・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

龍奈「(お願い、間に合って!!!)」

 

南東の強い氣の変動に向けて翔ぶ龍奈であったが

 

龍奈「(もう、なんでこんな時に限って霧が濃いのよ!!!)」

 

もともと荊州は霧の発生しやすい土地であるが、今日は一段と濃い霧に覆われていた

 

おかげで龍族の視力を生かし、一刀と刀誠の姿を視認できない

 

おまけにこの地区特有の地面から突き出た200mを超す多くの巨大な石柱が邪魔をし、まっすぐ飛べなくスピードが出せない

 

高度を取りたいが、龍族が取れる高度は精々100m程

 

龍奈「(一刀、一刀、一刀!!!)」

 

頭の中には惚れた人の姿しかなく、石柱の間を縫って飛ぶ龍奈は只々急いだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

于吉「とうとう本気になりましたね」

 

左慈「さあ見せてみろ、北郷流の神髄を!!!」

 

千里眼の中の一刀と刀誠、この二人の技の細部に至るまで脳髄に叩き込もうとする

 

神農「・・・・・・・・・・」

 

しかし、左慈と于吉が二人の戦いに夢中になっている隣で、神農は別の場所を見ていた

 

神農「(あの龍め、鋭い感覚をしておるのう)」

 

天角から盧陵に向けて全力で向かう龍奈を目視する

 

神農「(ふむ、あの距離では決着が付くまでに間に合う筈も無しか・・・・・じゃが、もし間に合うとすれば、儂が・・・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

待て、後篇

説明
北郷の一族(前篇)
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コメント
早く早く早く早く!!(fW69hZ1OrMwbsMP)
キター!!(fW69hZ1OrMwbsMP)
早く次が読みたいですね(恋姫大好き)
キター(゚∀゚ 三 ゚∀゚)(恋姫大好き)
まってました!この戦いはじいちゃんが一刀を思っての事なのにどんどん技と対処法が敵に知られていくぜw(nao)
こっちも待ってましたーこの改行は間違いなくあなただなーってw(未奈兎)
更新、待ってました〜!!!!!(劉邦柾棟)
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