月達と共に 3話 |
「着いたぞ、北郷。ここが我々の主、董卓様の治める天水だ」
「あれが…天水の城…」
目に飛び込んでは、想像以上に高い城壁に囲まれた要塞
現代の日本に残る平城、山城を見た時も、その盛大さに唖然としたが、その時の比じゃないな…国土の差から、日本の城より大きいのは予想したけど…ここまでとは
「…びっくした?」
「うん…かなりびっくりしてる。」
「城内見たらもっとびっくりする。月や詠が一生懸命作った街が見れる」
「董卓様が心血を注いで作られた街だ。北郷も必ず気に入るさ」
今は恋の後ろに俺が乗り、華雄さんが並走している状況。
馬に乗れない俺は、自分より馬術が秀でた恋に乗せてもらった方がいいとの華雄さんの勧めと、自分が連れて行くと主張した恋の意向もあって、意識を取り戻してからは恋の後ろに乗せてもらっている。
華雄さん曰く、こうして我儘を言う恋は滅多にないらしく、自ら我儘を言ってきたことが嬉しいみたいだ
「おぉ〜!華雄、やっと帰ってきたん」
「張遼か、道中に色々あってな」
「ただいま、霞」
「おかえり〜!恋も一緒やったか」
華雄、呂布ときて張遼か。呉を震え上がらせた遼来来その人か…
やっぱり女性だけど、驚かなくなったのは喜んでいいのか、毒されてきたと思うべきか…
「ん、見慣れない兄ちゃんも居るやん。どこで拾ってきたん」
「北郷の事か、その事も含め、董卓様に報告したい。董卓様は執務中か」
「いんや、月っちも賈?っちも、華雄の帰りを今か今かと待っとるで」
「そうか…ならば、早く向かおう。これ以上、董卓様をお待たせするわけにはいかんからな」
張遼と呼ばれた女性を先頭に、彼女達が仕える主…董卓の待つ一室へと向かう。
この流れならば、董卓・賈?も女の子だろうと予想はつけらるが…董卓は「酒池肉林」「暴虐の徒」として後世にまで残る人物。いくらこの世界が|過去《正史》と違うとはいえ、董卓は董卓。
きっと、世間知らずで我儘で権力を振りかざす悪女に違いない
「と…思っていた時期が…ありました…」
「どうかしたの…?」
「なんでもないよ、心配してくれてありがと」
小声で呟いた俺を心配?してか、恋が声を掛けてくれたが、なんでもないと返すしかない。
だって…だって…あの酒池肉林が!とか儂に逆らう者は皆死刑だ!とかで有名な董卓が・・・・
「華雄さん、お疲れ様でした。急なお願いにも関わらず、力を貸してくれてありがとうございます」
「董卓様からの労いのお言葉を頂けるだけで、力を尽くした甲斐があるというものです。これからも私の力が必要とならば、いつでもご命令くだされ」
「はい、頼りにさせてもらいますね」
こんな可愛い子が董卓のハズがないだろ?!
儚げで可憐、慈愛に満ちた笑顔で部下を労う少女が董卓だと言って、誰が信じるか!
「戻って来て早々で悪いんだけど、報告の方を聞かせて貰えるかしら」
董卓さんの傍に控えていた女の子…先ほどの張遼さんの話に出てた賈?って人かな。
華雄さんは董卓さんと賈?さんに、俺と出会った事や賊と遭遇した事などを話し始めると、同じく事の詳細を聞いてなかった張遼さんも耳を傾けていた
「…という訳だ」
「あのね華雄…確かに賊を退治した事と、民間人を助けた事はよくやったと言いたいのだけれど…肝心の任務の方はどうしたの」
「何を言ってるのだ、いま説明しただろ?」
「違うでしょ!月があんたに頼んだ命令は、日中なのに見えた流れ星の落下地点付近で、何が落ちて来たのか調査でしょうが!」
え、華雄さんにそんな任務が下りてたの?
てっきり、賊退治のついでで俺を助けてくれたとばかり思ってた
「…おぉ、すっかり忘れてた」
「大事な任務を”忘れた”の一言で片づけるな!それと、なんで民間人の男を宮殿まで連れてきたの!賊から助けたのなら、道中で送り届ければ済んでた話でしょうが!」
その言葉を聞いた時に、俺と華雄さんは同時にッハ!となる
「そういえば…北郷」
「そういえば…華雄さん」
沈黙が辺りを支配する
2人の表情は真剣そのものであり、口を挟める雰囲気ではない。それに加え、お互い見入ったまま身動き一つしない
この2人が何を語るのか…
ただならぬ雰囲気の中…
2人の唇が動き出す
「なんで私は北郷をここに連れてきたんだ」
「なんで俺はここについて来ちゃったんですかね」
あれだけの真剣さはなんだったのか…と言いたくなる程、2人の口から放たれた言葉は緩かった。。
その発言を聞いた者は口を開けたまま硬直し、ある者は顔面から滑り落ち、ある者はわなわなと身をふるわせた
「あぁ…ここまでコテコテなボケされて、つっこむのもなんか嫌なんやけど…2人揃ってなんでやねん!」
根っからのつっこみ気質である張遼は、北郷と華雄の天然さに堪らずつっこみをぶちかます
「あの…どうしてこうなってしまったのか、詳しく教えて頂けませんか」
「北郷、すまないが董卓様に話してくれんか。私から説明したい所なのだが、私ではうまく説明出来無さそうだ」
「説明と言われましても…華雄さんに助けて頂いた後は、恋が俺に懐いてくれまして……雰囲気に流されてですかね?」
「そういう事になるな、解ってくれたか」
「なんで華雄が偉そうなのよ。結局ここに来た理由も、連れて来た意味も何もないわけね。それで、北郷はこれからどうするの、こっちが連れて来ちゃったから、家の場所さえ言ってくれれば送り届けさせるけれど」
「帰る場所…ですか…」
賈?さんの申し出は凄く嬉しい
俺が元々この世界の住人なら、お言葉に甘えて送って貰ってるけど…
適当な場所を言って送るだけしてもらうか?世界の土地勘はないけど、馬に乗せてもらってここで大丈夫と言って別れるのが一番か?
でも、身を守る武器を持ってないとなると、この先に生き残るのは難しい。道場を開いてたじいちゃんの手解きを受けてたとはいえ、どれぐらい通用するかは不透明。
一番の問題は…
”俺が人を殺せるかどうか”
後漢末期は戦乱の世、平和に過ごしていた日本じゃない。自分の命を守るために、殺さないといけない場面が必ず訪れる。人を殺める覚悟と恐怖…
「もしかして自分、帰る家がないんか」
張遼さんの声を聞いて思考の海から戻ると、帰る場所で言いよどみ、長く考えていたせいもあってか、みんなが心配そうな表情を浮かべながら俺の事を見ていた
ここで誤魔化すことは簡単だけど、後世に名を残す英傑達にその場しのぎの嘘は通じか。
なにより、素性もしれない初対面の俺に対してここまで親身になってくれいるんだ、そんな人達に嘘はつきたくない
「張遼さんの言う通り、帰る家が俺にはありません。なんで俺が賊に襲われていたのか、帰る家が無いのか、信じられないお話かもしれませんが…聞いて下さい」
この時代の人間じゃないこと
ここの人達は歴史で学んでいた
学んだ人物は男だけど、ここにいるみんなは女の子で驚いたこと
生まれてから過ごしていた未来の日本では約70年間戦がないこと
原因不明の出来事に巻き込まれてこの時代に来てしまったこと
混乱している時に賊に襲われて、華雄さんに助けてもらったこと
「これが今の俺が話せるすべてです」
「なんていうか…壮絶すぎてうちじゃ話についていけん。賈?っちは話しについていけた?」
「私でも辛うじてね。与太話、妄言と切り捨てていいなら楽なんだけどね」
「でも詠ちゃん、北郷さんは嘘ついてないと思うよ」
「解ってるわ。この場面で北郷が私達に嘘つく意味がないもの。嘘つくにしても、もっとマシな嘘があるしね」
「うーむ、私には全然解らんな。呂布は理解出来たか」
「恋にも解らなかったけど…北郷は嘘ついてなかった」
「恋も同意見なら嘘じゃないのは確定ね。原因については考えても仕方ないし、北郷のこれからに考えるべきかしら」
「詠ちゃん、それなんだけど…北郷さんはここに居てもらおうと思うの。華雄さんが連れて来たっていうのもあるけど…追い出しちゃったら恋さんが泣いちゃうから」
「月…ありがと」
董卓さんはくすっと微笑みながら、慈愛に満ちた表情で、俺にしがみつく恋を見つめていた
君主として、俺を追い出すのが本来なら正解のはず。にも関わらず、身内の将の為に君主としてではなく、個人の情を優先してくれた…心優しい女の子に感謝しきれないや
「董卓さん…ありがとうございます。これからよろしくお願いします」
ネタを下さい…
ネタが思い浮かばないです…
こういうの見たいとかあったらコメ下さい(切実
説明 | ||
3話投稿するの忘れてたました…w | ||
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コメント | ||
女の子だろうと予想はつけらるが→つけられるが(XOP) 馬一族と出会ったりとか黄巾党作る前の天和達に出会ったり益州の紫苑たちと出会ったり(出会いばっかり)…あれ、これ北郷さんハーレム√なのでわ…(はこざき(仮)) とりあえずは音々音を出して一刀にちんきゅーきっくを喰らわせましょう。そして、あえて洛陽に行かない選択肢を取るとか、月の下に西涼と益州を従えてしまって独立独歩の道を歩むとか…さすがに無理があるだろうか?(mokiti1976-2010) もういっそ反董卓連合ボッコボコにしてしまおうぜ完膚なくまでにってネタしか浮かばない頭脳を許して下さい(未奈兎) |
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