隣と隣
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3人でいること。これが当たり前だなんて思っていた時期もありました。今となってはそんなことを思っていた自分が少しだけ、羨ましくも思います。

 

 

 

それは私にとって大切なことだったのですから。

 

 

 

ラブライブ!で優勝し、μ'sを終わらせることを決めた私たちは、絵里・希・にこの3人が去った音ノ木坂学院で最上級生となりました。

 

 

 

μ'sでの活動もあり、新入生も多く入った今年は、いつも以上に活気づいているとも感じています。

 

 

 

穂乃果「新入生のみなしゃん・・・ごほん、皆さん、入学おめでとうございます、生徒会長の高坂穂乃果です。本日は・・えーと、あの・・なんだっけことりちゃん」

 

 

ことり「穂乃果ちゃん、こっち見ちゃだめだよー。」

 

 

生徒代表挨拶でも相変わらずの2人。かけがえのない2人。

 

 

穂乃果「えへへー、いやーとにかく音ノ木坂はいい学校なので楽しんでくださいねー、それと・・・」

 

 

一緒に考えた挨拶を全てなかったことにし、その場は笑いで包まれる。それでも

 

 

穂乃果「大した事は言えませんが、私から言えることはただ一つです。まずは自分がやりたいことを見つけてください。高校生活でしか出来ないこと、今だから出来ることそれは必ずあなたの傍にあるはずです。皆さんにとってのそれが何なのかは私には分かりません。やりたいことをやり切った先にあるものはあなた達にしか感じることができないものだからです。そのためにも3年という時間を大切にしてください。」

 

 

あなたはいつもそう。ふざけているのかと思えば、急に真剣になる。だからこそ、その背中はいつも私たちを導いてくれていました。

 

 

穂乃果「いやー緊張したー。穂乃果どうだったかなぁ?」

 

 

ことり「最初はドキッとしたけど、穂乃果ちゃんらしくて良かったんじゃないかなぁ」

 

 

海未「いえ、あれだけ考えた内容を全て忘れる時点で全くダメです」

 

 

穂乃果「ええー、そんなぁ」

 

 

ことり「大丈夫だよ穂乃果ちゃん。海未ちゃんだって本当は良かったって思ってるんだよ?最後のほう聞き入ってたもん」

 

 

海未「なっ////ことり何を言うんですか」

 

 

穂乃果「なんだー海未ちゃんも素直じゃないなぁ。穂乃果は褒めて伸びるタイプなんだからもっと褒めないと!」

 

 

何気ない会話に心地よい空間。小さいころからの当たり前の日常。2人と私。

 

 

μ'sでの活動が無くなった今、残り1年となった学生生活も日々穏やかに過ぎていきます。慌ただしかった毎日が懐かしく思えるほどに。

 

 

新入生が入った春が過ぎ、あっという間に夏になりました。私たちはいつも通り3人で生徒会室にいます。

 

 

穂乃果「書類多すぎだよー。今日は早く帰って見たいテレビがあるのにぃ」

 

 

海未「だったら文句を言わずに終わらせてください。大体穂乃果がこんなに溜め込んだのが悪いのでしょう。いつもあなたは・・・」

 

 

ことり「まあまあ海未ちゃん、一緒にやればそんなに時間かからないだろうし、頑張って終わらせちゃおうよ。」

 

 

海未「ことりは穂乃果に甘すぎます」

 

 

穂乃果「海未ちゃんは穂乃果に厳しすぎるくせに・・・」

 

 

ことり「ははは・・・」

 

 

絵里と希から引き継いだ生徒会の仕事も最初は大変でしたが、今ではここでの作業も3人での大切な時間になっています。穂乃果は相変わらずなのですが。そんな時にふと生徒会室の扉が開きました。

 

 

担任「高坂、園田、南、やっぱりここにいたか」

 

 

海未「先生、どうかしましたか?」

 

 

担任「いや、お前たちはいつも3人でいるからすぐに捕まるだろうと思っていたし、去年までは何かと忙しそうだったから、後回しにしていたことがあってな」

 

 

ことり「後回し?」

 

 

海未「穂乃果何か問題を起こしたのですか!?」

 

 

穂乃果「なんですぐにそんな考えになっちゃうの?ひどいよ!」

 

 

担任「相変わらず仲がいいな。高坂が何かしたわけではないが、3人ではもう話合っているのかもしれないな」

 

 

穂乃果「ほらー、海未ちゃんの早とちりだー。」

 

 

海未「その件は分かりましたから、では先生一体何の用なのですか?」

 

 

担任「ああ、3人とも進路については変更ないのか?」

 

 

生徒会室を後にし、下校する私たち。いつもの通いなれた3人で歩いてきた道。今日は少し足取りが違います。

 

 

先生の話を聞いた私たちは改めてその現実を考え始めました。残り少ない学生生活、いえ残り少ない3人での学生生活について。

 

 

穂乃果は実家の和菓子屋さんを継ぐためにその道の専門学校を志望し、ことりは以前話のあった海外へ服飾の勉強をしに行くことが決まっていました。私は文学の見聞を広めるためにある大学を志望している状況でした。

 

 

穂乃果「そっかー、進路かぁ。ラブライブで忙しくて考えてなかったなぁ」

 

 

ことり「穂乃果ちゃんはお家の和菓子屋さんを継ぐんだもんね。」

 

 

穂乃果「そうなるかなぁー。専門学校に行っても、そのあと実際にお店に入って修行とかあるってお父さん言ってたよ」

 

 

ことり「大変そうだけど、穂乃果ちゃんの作る和菓子食べてみたいなぁ。私と海未ちゃんが一番最初のお客さんになれたら凄く嬉しいよね、海未ちゃん」

 

 

海未「・・・・」

 

 

穂乃果「海未ちゃん?」

 

 

海未「はっ!何でしょうか穂乃果」

 

 

穂乃果「ぼーっとしちゃってどうしたの?具合でも悪い?」

 

 

ことり「えっ!?海未ちゃん具合悪いなら保健室寄ってくれば良かった・・・」

 

 

海未「いえ、大丈夫ですよ。心配かけてすみません。少し考え事をしていたものですから」

 

 

穂乃果「海未ちゃんはいつも考え事してるもんね」

 

 

海未「穂乃果はいつも何も考えていませんけどね」

 

 

穂乃果「ひどいよ!!海未ちゃん」

 

 

ことり「ははは・・・それで何を考えていたの?」

 

 

海未「大したことではありませんので大丈夫ですよ」

 

 

穂乃果「ならいいんだけど、何かあったら言ってね。穂乃果もことりちゃんも海未ちゃんの相談ならいつでも乗るよ!ね、ことりちゃん?」

 

 

ことり「うん、海未ちゃん何でも言ってね」

 

 

海未「ありがとうございます、2人とも」

 

 

家に着いた私は部屋へと戻り、机へと向かいました。そして引き出しの中にある1枚の写真を見つめていました。初めて3人で遊んだあの時の記念。穂乃果が誘ってくれたあの時から私は私の世界は・・・

 

 

いつまでも一緒にはいられない、頭では分かっていてもこの気持ちだけは簡単に整理できそうにありません。考えないようにしてきましたが、先生の話にもあった通りそう時間はありません。

 

 

穂乃果やことりはどう思っているのでしょうか?自分たちの道を見据えた2人に比べて私はまだ自分がどうしたいのかすら決まっていません。ラブライブだってそうでした。

 

 

穂乃果が始めて、ことりに誘われて始めたスクールアイドル。私はいつもあの2人の後ろについて行っているだけだった。

 

 

偉そうに穂乃果を説教などとしていますが、本当は私があの2人に助けられてきたのです。それを今まで伝えることが出来ず、そしてもうすぐ別の道に進まなければいけません。

 

 

海未「穂乃果、ことり、私は1人でも進んでいけるのでしょうか」

 

 

prrrrr・・・

 

 

静寂に包まれた部屋に携帯の着信音が響き渡る。

 

 

海未「!!びっくりしますね、誰でしょうか?」

 

 

携帯を開くとそこには懐かしい名前が出ていました。

 

 

東條希

 

 

海未「もしもし、海未です」

 

 

希「おっ、海未ちゃん相変わらず電話に出るのが早いんやね」

 

 

海未「たまたま近くに携帯があっただけですよ。ところでどうしたのですか急に」

 

 

希「いやいや、大学での愚痴を海未ちゃんにも聞いてもらいたいなぁって思って」

 

 

海未「希は大学生になっても相変わらずのようですね」

 

 

希「ウチはウチやしな。でも今日は確認の電話で、今度の日曜日に会ったりできんかな?」

 

 

海未「日曜ですか?とくに予定はありませんので大丈夫ですが・・・」

 

 

希「良かったー、実は凛ちゃんも誘ってるんやけど海未ちゃんも来るからおいでって言っちゃったんだ」

 

 

海未「全く・・・私が行けなかったらどうするつもりだったのですか?」

 

 

希「まあ来れるんやし、結果オーライってことで!日曜の11時にいつもの場所で待ってるね、じゃ」

 

 

海未「あっ、希・・・切られてしまいました」

 

 

希と話すのも久しぶりですし、凛とも以前よりは話す機会が減ってしまっていたのでいい機会かもしれません。進路のことも相談できるでしょうか。

 

 

日曜日

 

 

私たちのいつもの場所とは、練習場所でもあり希がよく手伝いをしていた神社。μ'sのメンバーとは別にlily whiteの3人でよく集まっていました。全員の学年が違うこともあって、お互いの悩みや相談をよくしたものです。

 

 

海未「さて、集合時間の10分前ですがもちろん2人は来ていませんね」

 

 

集まるときはいつも私が最初に到着する。そして5分後、いつも2番目には、

 

 

希「やっほー、海未ちゃん相変わらず早いなぁ」

 

 

海未「集合時間前に来るのは基本ですから。希も早いで・・・」

 

 

希「ん?」

 

 

私は希を見て驚きました。まだ卒業してから少ししか経っていないというのに、希は私の知らない大人の女性に見えました。

 

 

希「おーい、海未ちゃん。ウチにそんなに見惚れんといて」

 

 

海未「そんなわけないじゃないですか。私が希に見惚れるなんて・・・」

 

 

希「ふーん、まあええけどね。ところで凛ちゃんは今日も最後かなぁ?」

 

 

海未「そのようですね。まだ集合時間前なので問題ありませんが」

 

 

私が10分前、希が5分前。凛が時間ギリギリ。これもいつものこと。そしてそろそろ

 

 

凛「お待たせー」

 

 

海未「今日は時間に間に合いましたね」

 

 

凛「むー、海未ちゃんいつも遅刻してるみたいにいわないで」

 

 

凛は以前より髪を伸ばしました。今では穂乃果と同じくらいかそれより長いくらいです。短い時も可愛かったのですが、今は少し背伸びをしてみたいようです。そんな凛もとても可愛らしいと最近感じています。

 

 

希「凛ちゃん久しぶりやなぁ、髪も伸ばして綺麗になったやん」

 

 

凛「希ちゃん!ホントに綺麗になったかな?」

 

 

希「凛ちゃんはまだまだ伸び盛りだからねー。どんどん成長するはずや」チラ

 

 

凛「希ちゃん、どこ見て言ってるのかな」

 

 

海未「ほら、2人とも立ち話もなんですから移動しますよ。希、今日の予定は立ててあるのですか?」

 

 

希「ウチにまかしとき!!」

 

 

希の案内で向かったのは焼き肉屋ではなく、オープンテラスのあるお洒落なカフェでした。

 

 

希「最近エリちと見つけた場所なんやけど、2人にも教えときたいなぁって思っててな。どうかな、結構お気に入りなんだけど」

 

 

凛「すごいにゃー、さすが大学生だにゃー」

 

 

希「やっと凛ちゃんがにゃーって言ってくれたなぁ。それでこそ凛ちゃんや!」

 

 

凛「あっ、なるべく出さないようにしていたのに2人の前だと気が緩んじゃうから・・・」

 

 

海未「いいんですよ凛。私たちの前ではいつまでもあの頃の凛でいてくれて。そのほうが私は嬉しかったりしますよ」

 

 

希「ウチもウチも!凛ちゃんはウチらの妹みたいな感じやし、もっと甘えてもらいたいくらいなんだから」

 

 

凛「海未ちゃん、希ちゃん・・・わかったにゃ」

 

 

変わることと変わらないこと。ここでも同じようなことがあるのですね。lily whiteの3人としての関係もいつまでも続けたいものです。

 

 

それから、それぞれ軽めの昼食と名前を聞いたこともないドリンクを頼み席に戻りました。

 

 

希「さて、そろそろウチの愚痴でも聞いてもらおうかなぁ」

 

 

凛「待ってました!大学の話とか興味あるにゃー」

 

 

海未「・・・・・・」

 

 

希「よし、凛ちゃんそれでは大学とは如何なるところなのかを教えてしんぜよう」

 

 

凛「よろしくお願いするにゃー」

 

 

希「でもその前に、海未ちゃんの話を聞くことにしようかな」

 

 

海未「えっ!今日は希の話を聞きに来たのですよ。どうして急に」

 

 

希「そんなに暗い顔しとったら誰だって気づくよ?なあ凛ちゃん」

 

 

凛「うん、でもあんまり触れてほしくないのかなって思ったから」

 

 

海未「いえ、でもせっかくの機会を私の話で無駄にするのは・・・」

 

 

希「海未ちゃんの話をウチらにするのが無駄なん?ちょっとそれは寂しいなぁ」

 

 

凛「寂しいにゃー」

 

 

海未「ですが・・・」

 

 

希「ウチらってμ'sやlily whiteでなくなったら、相談もできない関係やったん?いろんなことで悩んで、いっぱい話合って、前に進んで今がある。ウチにとってはμ'sの9人は特別だけど、ここにいる3人も大切で特別なものやと思ってるよ。だからこそ悩んでる海未ちゃんが話してくれないのは寂しい」

 

 

海未「希・・・」

 

 

凛「凛は難しいことは分からないけど、海未ちゃんが悩んでるのを黙っていられるほどバカではないにゃ。凛だと頼りないのかもしれないから希ちゃんだけにでも話してほしいにゃ」

 

 

私はいつもこうだ。自分で抱えこんでしまう。穂乃果やことりに頼っているように、この2人にも頼り、そして心配をかけている。いつまでも変わらない、子供のままなのは私だけだ。

 

 

海未「2人に話してもいいのですか、2人を頼ってもいいのですか」

 

 

そう言ったあと、知らずと両目から涙が零れてしまいました。私はこんなにも恵まれているのだと感じてしまったから。

 

 

希「海未ちゃんのタイミングでええから、話してくれたら嬉しいよ」

 

 

凛「凛にも話してくれたら嬉しいにゃ」

 

 

私は大きく頷いたあと、少し合間を置いて話し始めました。

 

 

将来のこと。

 

 

穂乃果とことりのこと。

 

 

そして私のこと。

 

 

2人はしばらく考えたあとこう切り出しました。

 

 

希「海未ちゃん、真面目過ぎや」

 

 

凛「そうにゃ」

 

 

予想外の答えにあっけにとられる私をよそに2人は話し続けます。

 

 

希「将来のことなんて正しいとか間違いとかやってみてから決めればええんよ。前にいったやん、やってみればええやん、本当にやりたいことなんてそんな感じで見つかるんやない?って」

 

 

絵里がμ'sに入るとき、悩む絵里に希は確かにそう言っていた。

 

 

希「先のことばかり考えていたら、今大切なことを見逃してしまうよ。海未ちゃんにとって大切なことは将来の自分を考えて見据えることなん?3人でいないと自分がどうなってしまうか不安だと考えることなん?穂乃果ちゃんとことりちゃんはそんなことを望んでいると思う?」

 

 

凛「凛はまだ2年生だから、かよちんとも真姫ちゃんとも一緒にいられる。来年は海未ちゃんみたいにいっぱい悩むかもしれない。でも、かよちんと真姫ちゃんが凛のことで悩んでいるって知ったら、それが一番つらいにゃ」

 

 

希「ウチはエリち、にこっちとは別の道に進んでる。学校も違うし、音ノ木坂の時ほど一緒にはいられない。それでも今までの時間が無くなるわけやないんよ?かけがえのない時間を一緒に過ごしたあの時は今でも心の中に残ってる。だからこそ今では、たまに会ってたわいもない話をする時がウチにとっての宝物なんや。だったらそれ以上の時間を共にしてきた海未ちゃん達はどうなんやろね?」

 

 

凛「海未ちゃんはやっぱり海未ちゃんだから、凛達の言っていることをすぐに受け入れることはできないかもしれない。でも、たまには真面目じゃなくて、穂乃果ちゃんみたいに思った通りに行動してみるのもありだと思うにゃ。すぐ後ろにはことりちゃんもきっといるはずにゃ」

 

 

希「3人でいられなくなることが不安なら、まずは穂乃果ちゃんとことりちゃんに話してみること。ウチらでは分からんこともあの2人なら分かっているはずやし。それこそウチらよりもさらに海未ちゃんのことを大切に思っているんやから、話さずに別れたら後悔するよ。穂乃果ちゃんとことりちゃんはもうそれが分かってるはず」

 

 

あの2人は、お互いを想うあまり言い出せず、ぶつかって悩んで、それでも2人は今も一緒にいる。前よりも深く結びついて。

 

 

2人の話を聞いて思います。私はやっぱり何も変わっていなかった。穂乃果に手を差し出されたあの時の臆病な私のままだ。今の状態が壊れるのを恐れて、自分のしたいことをせずに考えてばかり。分かっていたつもりで分かっていなかった。

 

 

海未「ありがとうございます、希、凛」

 

 

希「もう大丈夫そうやね」

 

 

凛「海未ちゃんの笑顔が見られたにゃー」

 

 

海未「はい、考える前に穂乃果とことりにしっかりと話します。私が何を思っているのかを」

 

 

希「おせっかいついでに海未ちゃんにもう一つ伝えておこうかな」

 

 

海未「私にですか?」

 

 

希「うん、あんまり真面目な話をするのはウチには合ってないんだけどね。実は前から思っとったことがあるんよ。」

 

 

凛「希ちゃん、あの話するの?」

 

 

希「うん、今の海未ちゃんなら大丈夫やと思う。」

 

 

意味ありげに語る2人は、先ほどと同じように真剣な眼差しでこちらを見ています。

 

 

希「凛ちゃんから話してええよ。本当はもっと話したいと思うし」

 

 

凛「凛から!?うーん、うまく話せないかもしれないからその時はフォロー頼むにゃ」

 

 

希「りょーかい!」

 

 

凛「では、海未ちゃん。凛から言えることは、海未ちゃんはとっても凄いってこと。学校生活や家のしきたり、μ'sでの活動を全部文句のないようにこなしているのが海未ちゃんにゃ。」

 

 

海未「ですがそれは当たり前のことで・・・」

 

 

凛「それにゃ!!海未ちゃんは人から見たら大変なことも当たり前にこなすのが普通になっているんだよ。それってとても凄いことなんだよ。凛には絶対無理だもん。帰ったら練習で疲れて宿題せずに寝ちゃったり、食事もラーメンばっかり食べてるし、練習の指示だってしてない。そんな凛よりも大変な海未ちゃんはそれ以上のことを当たり前にこなしていたんだよ」

 

 

考えたこともありませんでした。自分がしてきたことがそれほど大変なことだなんて。確かにお稽古などは始めのうちは辛いときもあり、もっと穂乃果やことりと遊びたいと思う時期もありました。ですが今ではそれが普通になってしまっています。

 

 

凛「だからずっと心配だったよ、海未ちゃんが知らぬ間に無理をしてるんじゃないかって。海未ちゃんに頼り切ってしまっているんじゃないかって。」

 

 

海未「そんな、皆を頼っていたのはむしろ私のほうです。私は誰かの後ろを歩くことしかできません。」

 

 

そう言ったあと凛は声を荒げて

 

 

凛「後ろなんかじゃない!!穂乃果ちゃんが前で皆を背中で引っ張り、ことりちゃんがそんな皆をすぐ後ろから優しく包み込んで、海未ちゃんは皆の隣で手を引いてくれた。μ'sを作ってくれた3人は、ずっと私たちを支えてくれてたんだよ。だから・・・ずっと・・・」

 

 

そのまま凛は俯いてしまい、それを見ていた希は

 

 

希「凛ちゃんよく言えたね。あとはウチが話すよ」

 

 

凛「うん、上手く話せなくてごめんね」

 

 

凛がこんなに感情的になっている姿は初めて見たのかもしれません。私はまだそれがなぜなのかはっきりとは分かっていません。

 

 

希「海未ちゃんはμ'sに入って良かったって思う?」

 

 

海未「もちろんです。あの9人での時間は私にとってもかけがえのないものです」

 

 

希「だったら知ってる?海未ちゃんだけがわがまま言ったり、皆を巻き込むようなことを起こしてないんよ」

 

 

海未「わがままだったら私だって・・・」

 

 

希「ううん、山頂アタックは別として、海未ちゃん以外のメンバーは全員が誰かに助けられ、そして誰かを助けているんや。海未ちゃんはずっと誰かを助ける側であり続けた。だからずっと心配だった。メンバー全員が海未ちゃんを心配してた」

 

 

希の言葉に驚きを隠せませんでした。私を皆が心配していた?なぜ?

 

 

希「海未ちゃんは本当はどんな気持ちなんだろうって。大変なことを当たり前にこなすこともそう。悩みの1つでもあるんじゃないかって、だとしたら私たちは海未ちゃんに何がしてあげられるだろうって」

 

 

海未「私は何も・・・μ'sのメンバーといるのが楽しくてそれだけで・・・」

 

 

希「そしたら、穂乃果ちゃんが言ったんよ。そこまで何にも話してなかったのにね」

 

 

ーーー

穂乃果「海未ちゃんが言ってくれるまで待ってみようよ。穂乃果は海未ちゃんに頼りっぱなしだから、海未ちゃんから頼りにされないかもしれないけど、だからこそ待ちたい。海未ちゃんから話してくれるようなそんな存在でありたいよ。穂乃果には話してくれないかもしれないけどね、ははは・・・」

ーーー

 

 

希「それを聞いてことりちゃんもにっこりしてたんや。さすが穂乃果ちゃん!って感じにね。結局海未ちゃんは話してくれなかったけれど、それは今でも遅くはないはず。穂乃果ちゃんの気持ちを伝えるのはズルかったかもしれないけど、ウチは卒業した身やし時効ってことで」

 

 

海未「穂乃果がそんなことを・・・」

 

 

凛「かよちんも真姫ちゃんも絵里ちゃんもにこちゃんも、皆ずっと待ってたんだにゃ。海未ちゃんが話してくれるのを」

 

 

希「だから、今ウチら2人は凄く嬉しい。やっと海未ちゃんのこと聞けたから、海未ちゃんも私たちと同じ何かに悩み、想うそんな女の子なんだって知れたから。」

 

 

ああ、本当に自分はどうしようもない。大切なことは誰かが教えてくれる。自分もその誰かになれていたのだとすれば、私は

 

 

海未「希、凛、改めて言わせてください。」

 

 

希「何かな?」

 

 

凛「何だにゃ?」

 

 

海未「私はあなた達が、μ'sのメンバーが大好きです。今までもこれからもずっと」

 

 

希「海未ちゃんに告白されてしまったー。凛ちゃんこれは大事件や!」

 

 

凛「かよちんと真姫ちゃんにも報告にゃー」

 

 

海未「ふふふ、そういうところも大好きですよ」

 

 

新たな発見や自分の至らない部分、これは自分で考えて答えを出すよりも人が教えてくれたりする。私にはその大切な仲間がいた。だからこそあの2人には伝えよう。

 

 

希「というわけで、そろそろウチの愚痴でも聞いてもらうよー」

 

 

凛「凛はもう真剣な話はお腹いっぱいにゃー、希ちゃん楽しい話よろしくにゃ」

 

 

海未「私もぜひ聞きたいです。大学生活というものを」

 

 

希「ふっふっふっ、では始めようではないか」

 

 

時間を忘れ、頼んだ飲み物の氷は解けきっていたにも関わらず、あまりにも一瞬の出来事のように感じた。本当に大切な時間はあっという間だと再認識できました。

 

 

同日夜

 

 

穂乃果「海未ちゃんから話したいことがあるって連絡来たけどなんだろうね、ことりちゃん?」

 

 

ことり「うーん、そこは行ってからのお楽しみ!でいいんじゃないかな」

 

 

穂乃果「それもそうだね。なんだろうなぁ、楽しみだなぁ」

 

 

穂乃果とことりを初めて遊んだ公園へと呼び出し、時間より早く着いた私は少し緊張していました。

 

 

海未「上手く話せるでしょうか、私の気持ちを」

 

 

夏の公園は夜であっても少し蒸し暑さを残し、昼間には子供たちが遊んだであろう痕跡も数多くあります。

 

 

私たちもこの公園でよく遊びました。本当に楽しかった。

 

 

穂乃果とことり。

 

 

私は・・・

 

 

穂乃果「うーーみちゃーーん!!お待たせー」

 

 

ことり「海未ちゃん、こんばんわ」

 

 

海未「こんばんわ、ことり。穂乃果も挨拶くらいしてください」

 

 

穂乃果「えーー、穂乃果たちにそんなの必要ないよー。」

 

 

海未「いいえ、親しき中にも礼儀ありです」

 

 

穂乃果「むー、そんなことを言うために呼び出したんなら穂乃果帰っちゃうよ!!」

 

 

ことり「穂乃果ちゃん、それは海未ちゃんの話を聞いてからでも遅くないんじゃないかなぁ」

 

 

海未「はい、お呼びだてしてすみません。今日は2人に聞いてもらいたいことがあるのです」

 

 

穂乃果「海未ちゃんが私たちに話したいこと?なんだろうね、ことりちゃん」

 

 

ことり「海未ちゃんのことだからきっと大切なお話だよ。だからしっかり聞こうね穂乃果ちゃん」

 

 

海未「少々長くなるかと思いますが、まずは私の話を聞いてください」

 

 

晴天の夜空、ですが町の光が反射してすべての星が見えるわけではありません。それでもこの夜空は特別に感じました。

 

 

海未「先生から進路の話がありましたね。高校3年の夏ですから遅いくらいではあるのかと思います。進路を考えるにあたり私は色々と考えてしまいました。自分の将来のこと、音ノ木坂でのこと、そして穂乃果とことりのことです。」

 

 

穂乃果はまだよく分かっていないようですが、ことりは何かを察して微笑むようにこちらを見ていました。

 

 

海未「私は、自分がこの先どうなってしまうのかということよりも、穂乃果とことりといられる時間がもうすぐで終わってしまうことに不安を覚えました。私はいつも2人と一緒にいました。だからこそその日常が無くなってしまうことを改めて認識したとき、どうすればいいのか分からなくなってしまったのです。」

 

 

海未「臆病者の私はいつもあなた達に頼っていました。穂乃果に引っ張られ、ことりに支えられ、そうしないと何もできないそんな自分なのです。穂乃果に始めて遊ぼうと誘われたあの時から何も変わっていないのです。だからこそ、2人と離れ離れになることが怖くて仕方ありませんでした」

 

 

海未「学校を終え、自宅へ帰り1人になるとそんな気持ちに押しつぶされそうになってしまいます。今のままずっと一緒にいられればどれだけ幸せなのだろうと。」

 

 

海未「μ'sで活動していた時は考えもしませんでした。時にぶつかり、時に挫折し、時に涙し、時に笑いあう、そんな毎日が楽しくて仕方ありませんでした」

 

 

海未「それはいずれ来るこの時から目を背けていただけだったんです。今だけを見て後回しにして、逃げていただけなのです」

 

 

穂乃果「違う、海未ちゃんは・・・」

 

 

穂乃果の言葉を遮るように

 

 

ことり「穂乃果ちゃん、最後まで聞こう?」

 

 

穂乃果「うん・・・」

 

 

海未「そして今その問題は私の前に現れました、自分では決められない臆病な私の前に。正直な話、沢山悩みました。穂乃果とことりがいなくても私はやっていけるのだろうかと。」

 

 

海未「そうやって物事を1つの側面からしか捉えていなかった私にはいつまでたっても答えは出ませんでした。今も納得できる答えはありません。それでも、いやだからこそ考えるのではなく、正直な私の気持ちを2人には伝えます」

 

 

海未「穂乃果、あなたがいたから私は今の私でいられます。私に差し出してくれたあの手は、どんなものにも代えがたい私の宝物です。あなたの背中を追うだけの小さな私から、あなたの隣にいられるような私に、あなたに手を差し出せるような私になってみせます。だからこれからも私の前を走り続ける穂乃果でいてください」

 

 

海未「ことり、私の知らないところであなたはいつも私を支えてくれていました。その心地よさにその有難みを忘れ、無理をさせたときもありました。ことりの優しさやあたたかさは、たとえ一緒にいられなくても決して私から消えうるものではありません。それだけのことをしてくれたことりを今度は私に応援させてください。ことりの夢を叶えるために」

 

 

海未「私は自分自身では何かを始めることができない臆病者です。ですが、穂乃果やことり、μ'sのメンバーに対してはまずは自分の気持ちを伝えることにしました。それが正しいのか間違っているのかはきっとあなた達が教えてくれるはずだからです。」

 

 

海未「だからこそ、穂乃果。ことり」

 

 

海未「私の隣にいてくれて、いつも傍にいてくれてありがとうございます」

 

 

海未「あなた達がいたから私は前に進めます。いずれくるその時よりも、今この時を大事にして、今までの3人の思い出をさらに増やしていけたらと思っています」

 

 

海未「穂乃果、ことり」

 

 

海未「今まで本当に、ありがとう。これからもよろしくね」

 

 

話し終えた私。それを聞いてくれた2人。私の話が終わったと同時に訪れる静寂。しかしそれはほんの一時で私の体は暖かさで包まれる

 

 

穂乃果「海未ちゃんやっと話してくれたね」

 

 

ことり「ずっとずっと待ってたよ海未ちゃん」

 

 

2人に抱きしめられて、私も2人を抱きしめる。

 

 

ラブライブの最後の時のように3人で涙を流す。

 

 

あの時とは違った種類の嬉しい涙。

 

 

やっぱり私は恵まれている。

 

 

こんなにも大切に想ってくれる存在がいるのだから。

 

 

 

 

 

後日

 

 

 

穂乃果「海未ちゃん、なんでまた敬語になってるのー。この前みたいに話してよー」

 

 

海未「あれはあれ、これはこれです。大体敬語の何が悪いのですか」

 

 

ことり「ははは・・・穂乃果ちゃん無理して変えなくてもいいんじゃないかなぁ」

 

 

穂乃果「えー、海未ちゃんがタメ口なの嬉しかったのにー」

 

 

海未「ダメなものはだめです。それより穂乃果、次の授業は課題が出ていましたけどもちろん終わっていますよね?」

 

 

穂乃果「・・・・・てへ」

 

 

海未「穂乃果!!てへで済むと思っているのですか。あっ、待ちなさい穂乃果」

 

 

穂乃果「うわーん、ことりちゃん助けてー」

 

 

ことり「今日も平和でなによりです」

 

 

表面的には何も変わったようには見えないかもしれません。

 

 

ただそれでも、私は前に進めるんだ。

 

 

自分の力で。

 

 

何かあっても大丈夫。

 

 

私の隣には

 

 

2人がいるから。

説明
μ's解散後の海未ちゃんの気持ちを自分なりに表現してみました。文章や設定に間違いがあるかもしれませんが、優しい気持ちで読んでもらえれば幸いです。
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