ノーマネー ノーゲーム3
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「ノーマネー ノーゲーム3」

 

あの日の朝、僕たちがあの信じられない事態に巻き込まれるまでは、まだ1時間ほどあった。

僕とジョーとガモウ君は特別枠で、職員室に使う部屋でテレビを見ることが許されていた。

ガモウ君が林間学校の代表生徒として、教頭先生の前であいさつをすることになったんだ。自分たちも付き添って、そのあいさつ文を考えることになった。でも、あいさつ文はわずか10分でできあがってしまった。しょうもないんで、テレビを見て見聞を広めることが許された。

ジョーは「プリキュア」の再放送を見ようとしたが、朝井先生に止められた。変態妄想パワーが増幅しても、社会に対する見識が高まるとは思えなかったからだ。

ガモウ君が別のチャンネルに切り替えると、またしても「マネーのライオン」の放送が流れていた。

 

圭「え?生放送?!」

 

テロップには「今朝は特設スタジオで生放送」と出ている。

後ろから朝井先生もテレビを覗きこんで笑っている。

 

栄作「佐藤栄作です。今日は史上初の生放送です。番組の後半に特別コーナーを設けました。なんと、今日は視聴者のみなさまからチャレンジャーに対して、質問や激励のお電話を受け付けます。」

朝井「ほほう。これはおもしろそうだな」

 

今回のチャレンジャーは「情報秘書会社」といって、電話でどんなことでも質問できるサービスを月額1500円で提供するというものだ。さっそく小河原(おがわら)社長(行列ができるラーメン屋「なんだかんだ」の小河原フーズ社長)がベートーヴェンの生年月日がすぐわかるか質問する。難なく即答するチャレンジャー。

 

チャレンジャー「弊社のデーターベースの情報を元に、たいがいの質問には1分以内にお答えできます。特設事務所のデータセンターにオペレータが控えています」

小河原「どんな質問にも答えられる情報量と精度を用意するとなると、大変な手間がかかるよ。もし、本当にできたら化け物だよ。」

ガトー社長「じゃあ、僕も質問したいな。ピエスモンテとは何ですか?」

チャレンジャー「ピエスモンテ、お菓子の用語ですか?少々お待ちください」

 

データーセンターに携帯電話で尋ねるチャレンジャー(註。この小説の時代では、まだスマホが普及していないとお考えください)30秒もしないうちにデーターセンターのオペレータとのやりとりが完了する。

 

チャレンジャー「ウェディングケーキやコンクールでの出品作品など、いくつかのお菓子を積み上げてつくる大型の装飾菓子、のことです」

函南(かんなみ)社長「ちょっと待って。データーセンターのオペレータに質問したい。ベートーヴェンとかピエスモンテの情報はどこから取りましたか?御社のデーターベースですか?」

チャレンジャー「・・・も、もちろん、インターネットです」

 

ちょっと歯切れの悪い答え方をするチャレンジャー。

 

朝井「ぷぷっ!『もちろん』!」

ガモウ「可笑しいですか?」

朝井「チャレンジャーもなんだけど、鋭い質問をした函南社長も可笑しい人なんだよ。学生時代から外車の輸入を手掛けていたんだけど、脱税で国税庁に踏み込まれたことがあるんだ。思い出しちゃったよ。」

ガモウ「ええ?税務署じゃなくて国税庁ですか?」

 

さっそく丸の内社長がチャレンジャーに鋭いつっこみを入れていた。

 

丸の内「あなたね、インターネットの情報でしていいことと悪いことがあるんですよ」

チャレンジャー「はい?」

丸の内「インターネットの情報でお金儲けをしちゃいけないんです」

チャレンジャー「そうでしょうか?これはフリー情報と考えていますし、情報秘書として手間賃をいただいているだけです」

 

チャレンジャーは必死のあまり発汗していた。ハンカチで顔の汗をぬぐう。丸の内社長は眉間にしわを寄せて反論する。

 

丸の内「それはあなたが法律の網をかいくぐっているだけなんです!」

チャレンジャー「それでは、他の情報秘書会社の存在は許されないんですか?この手の商売を裁判で訴えても通らないはずです。友人の弁護士に法的な根拠を説明してもらいましょうか?」

函南「まあまあ。法律論はそれくらいにしましょう。双方が弁護士を立てて戦ってもすぐには結論が出ないでしょう。」

チャレンジャー「そうですね!」

 

チャレンジャーは函南社長に便乗して威勢よく発声する。

 

小河原「じゃあ、こんな質問はどうかな?僕が車で世田谷区のあたりを走っているとします。この辺で豚骨系のうまいラーメン屋さんが知りたいんだけど」

チャレンジャー「わかりました。世田谷区界隈のおいしい豚骨のラーメン屋さんですね?

3分ほどお時間をいただけますか?」

 

チャレンジャーは汗をぬぐいながらも、自信があるようだ。社長たちの質問を即座に理解できる能力も高いようだ。小河原社長は不敵な笑いを浮かべている。行列のできるラーメン屋「なんだかんだ」を外したら、データーの精度を批判するつもりなのだろうか?

2分くらいでオペレータからの返事があったようだ。

 

チャレンジャー「嵐山(らんざん)・・・牛豚(ぎゅうとん)・・・なんだかんだ・・・他数店です。全部列挙しましょうか?」

小河原「アハハハ、最後に『なんだかんだ』ですか?別に気を使わなくてもいいよ」

函南「イヤ、小河原社長、電話からちゃんと『なんだかんだ』と聞こえましたよ」

小河原「そう?まあ、それはいいよ。でも、このシステムの弱点が見事に出てしまったね」

チャレンジャー「えっ?」

小河原「嵐山さんも牛豚さんも数年前に閉店している。データが古いってことだよね。データの更新と管理がいかに難しいかということだよ」

チャレンジャー「・・・」

 

これで、ほぼノーマネーの流れができてあがってしまった。しかし、函南社長が激励する

 

函南「これではビジネスとしては成功できないね。でも、あなたの受け答えの仕方とかに非凡さを感じます。あなた、もしかして第1問のベートーヴェンの生年月日とか、第2問のピエスモンテの意味とか知っていたんじゃないの?」

チャレンジャー「はい、実はそうなんです。みなさんにオペレータとの交信の様子をお見せしたくて確認作業はしましたが。ある程度は私が生き字引にならないと、話にはならないと思いまして」

小河原「そうだったんですか。血の滲むような情報収集と研鑽に打ち込んできたということですね・・・」

函南「うん、すばらしいね。その非凡さを別のベクトルに向けるときっと別の事業で成功できるよ」

 

ここで佐藤栄作が締めに入る

 

栄作「投資額があなたの希望額に達しなかったので、ノーマネーでフィニッシュです。お疲れさまでした。今日は公開生放送ということで、視聴者の皆様からの激励や質問をお受けします!番号は、・・・」

函南「視聴者から、難問奇問が寄せられても面白いよね」

 

(ドーンッ!)

その時、研修センターの別館の付属図書館から大音響が伝わってくる。

 

朝井「なんだっ?!」

 

ガモウ君は脱兎のごとく職員室を飛び出して付属図書館へ向かう。ほどなくしてこの衝撃はテレビ局も察知する。

 

栄作「えっ?・・・皆様!緊急ニュース速報です!ただいま、板橋区の中台のあたりで緊迫した事態が発生した模様です!大爆発があったようです!」

丸の内「えっ?」

チャレンジャー「爆発ですか?」

 

ここでテレビの画面に、麻薬と拳銃の密輸犯、津川館長が映る

 

朝井「なんやねん?」

津川「フハハハハ!私には麻薬と拳銃の密輸の科で警察の手が及ばんとしている。しかし、私も死の商人の一員だ。簡単には捕まらんぞ」

ジョー「えっ?何っ?!警察?死の商人?」

圭「うーん、もしかして、この人が爆破の犯人かな?朝井先生、事前にこの研修センターの安全性とか確認したんですか?板橋区役所の人とか何か言ってませんでした?」

朝井「うーむ。そういえば、なんか危険な匂いがするとか、言われたような、言われなかったような・・・」

津川「今のは一発目の脅しの爆弾だ。2発目は携帯の小型原子爆弾が炸裂するぞ。フハハハハ。まあ、死の商人の特別枠もある。私が米軍横須賀基地から亡命するだけの時間があれば十分なんだがな。ククク」

ジョー「何だ?これは?生放送か?」

圭「画質からしてお粗末だから、作成したビデオだと思う。」

ジョー「なんでわかるの?」

圭「ぷよぷよフィーバー2のPSP版と任天堂DS版の画質のちがいがわからないと話にならないよ。ちな、僕はDS版の方が好きだけどね」

津川「ちゃんと聞けっ!ここで、クイズだ。答えられたら、核爆弾の起動スイッチを1時間だけ遅らせることができる。これから4ケタの数字を提示する。答えは何か、携帯爆弾の携帯ケースのディスプレーに入力してみろ!フハハハハ」

 

なぜか、ビデオの津川館長がいきり立つ。圭は携帯電話でガモウ君に携帯ケースのクイズの件を連絡する。津川館長は通信などで複数の人間が連絡を取り合って動かないと解決できないゲームを構築したようだ。

 

ガモウ「○○○○○○○○○○○○の定理。確かに○に入力しろとあるね。○は本当に12文字なのかな?それで、4ケタの数字は?」

圭「2718!」

ガモウ「2718・・・。どこかで見たような・・・」

津川「急いだ方がいいな。解除できない場合、制限時間は10分。あと、9分・・・フハハハハ」

ジョー「うるさいんだよ、君は!」

 

圭の後ろにはいつのまにか大友君が張り付いている。

 

大友「2.718!ネイピア数だ!大学の兄貴に聞いたことがあるぞ。答えは、オイスターの定理!」

ガモウ「そうそう、ネイピア数だ!・・・でも、大友さん、それは間違いですね。オイスターというのは牡蠣という意味なんだ。正解はオイラーの定理!」

朝井「オイスターソースとか売ってるもんね。あの赤いやつね」

圭「先生!それどころじゃないでしょっ?!」

 

この極限状態で、朝井先生は明治の「メルティキッス(くちどけラム&レーズン)」をほおばっている。

 

霊夢「今回のしくじり企業はキッコーマンなのか?」

魔理沙「キッコーマンは別にしくじっていないぞ。『オイスターソース』とかちゃんと販売しているし」

霊夢「でも、おまえ『キッコーマンのウーロン茶』というのは見たことないだろ?」

魔理沙「ピョンチャンオリンピックはもちろん、ソチオリンピックにも行かなかったからな。どこにそんなもの置いてあるんだ?その辺のところ逆に解説してくれ。明治のメルティキッスあげるから」

霊夢「ロッテのチョコ『ラミー』も付けてくれ。・・・じゃあ、教えてやろう。バカ高バスツアーの・・・」

魔理沙「やめとけ。それ以上言うと、麻酔銃で撃たれるぞ。で、なんで、今回はラミーなんだ?」

霊夢「うp主がユーザー名を決める時に『らんびー』か『らみー』か迷っていたが、ロヂャースで128円で特売していたからだ。」

魔理沙「何がロヂャースだ?ウソこくな、うp主。田舎にはドジャースしかないだろう」

霊夢「ちな、ユーザー名は『てるみ』というのも考えていたが(フランスの地名でテルミドールというところがある。語呂がいい)しくじり企業Lの『てるみくらぶ』(自力で海外から帰ってこいとぬかしやがった旅行会社)を見てやめた」

魔理沙「焼き鳥の『ジョセフィーヌ』にでもしとけ」

 

朝井「ガモウ君、せっかくだからマネーのライオンのチャレンジャーに電話してみたら?」

ガモウ「オイラーの定理など、質問するまでもない!もっと緊迫した事態になったら電話するつもりです!(やれやれ、やはり大人は想定外の事態に弱いな)」

 

朝井先生の間の抜けたようなアドバイスにイラっとくるガモウ君。

 

桜先生「ぎゃあああああああっ!」

 

圭の携帯から桜先生の絶叫が聞こえてくる。ガモウ君に続いて様子を見に来た桜先生が敷地外の様子を確認に行って戻ってきたのだ。

 

ガモウ「桜先生ッ?!どうしたんですっ?!・・・えっ・・・?」

 

携帯爆弾の起動はいったん阻止できたようだが、一発目の脅しの爆弾で想定外の事態が発生したようだ。30秒ほどしてガモウ君が叫ぶ

 

ガモウ「圭ちゃん!テレビ局の電話番号を!」

 

運よくガモウ君の電話が番組とつながる。

 

ガモウ「チャレンジャーさん!質問です!僕たちは大和小学校の生徒の代表100人です。今、板橋区中台の爆発後の緊迫した事態の中にあります!」

ガトー社長「ええっ!小学校っ?!」

 

汗をぬぐいながらも冷静に受け答えするチャレンジャー。

 

チャレンジャー「!!・・・みなさんは無事ですか?」

ガモウ「・・・いちおう無事です。みんな生きています。ただし、もう時間がありません!一つだけ質問します!」

チャレンジャー「はい・・・」

ガモウ「携帯の小型原子爆弾が爆発すれば、スモッグとかで青空が見えなくなりますか?」

チャレンジャー「携帯の小型原子爆弾ですか?・・・いいえ、スモッグだけでは済みません。周囲の様子はどうですか?外気の熱はどうですか?灼熱のような熱波が襲っていませんか?」

ガモウ「いえ、温度の変化はあまりありません」

チャレンジャー「それではご安心ください。先程の爆発は原子爆弾によるものではありません・・・。」

ガモウ「・・・」

 

ここで、双方の電話が切れてしまう。栄作が叫ぶ。

 

栄作「緊急速報です!爆発のあったのは板橋区中台の研修センターですが、その建物がこなごなに飛び散った模様です!」

丸の内「ええっ?!」

チャレンジャー「そんなバカな?!今、生徒さんと通話していたのに・・・」

 

チャレンジャーがリダイヤルしても、もはや全く反応がない。

 

ガモウ「なるほど、そういうことか。・・・悩んでいても仕方ない。まずは食料と水の確保だな・・・」

 

若原先生など数人が桜先生の元に駆け寄る。ガモウ君は力を使いはたして座り込んでいたが、ふらついた足取りで立ち上る。先生たちを無視して圭たちの元へ向う。なぜか圭との携帯電話もつながらなくなってしまったのだ。

ちな、ジョーの任天堂DSがバッテリー切れした理由はぷよぷよのやりすぎではなかったんだ。意味があってジョーのお供をすることになった任天堂DS。次回その秘密と活躍ぶりが明かされるよ。

 

つづく

 

説明
朝井先生をしょうもないキャラにしてしまいました。今回もマネーの虎の回顧録付です(勝手に修正していますが)
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