マイ「艦これ」「みほ3ん」EX回:第58話(改2.0)<生命の輝き> |
「生きてるからこそ泣きもする」
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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)
EX回:第58話(改2.0)<生命の輝き>
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砂浜に沿った道を日向と伊勢が並んで歩いていた。量産型とはいえ平時に伊勢に出会うのは初めてだ。
(伊勢か……確かに日向と雰囲気は似ているが、よく見ると、やっぱり違うな)
そんな、当たり前のことを思った。
二人は私の前まで来ると、まず伊勢が敬礼した。
「提督、日向にはいろいろ、お世話になりました! 本当に感謝します」
そして深々と、お辞儀をした。敬礼を返しながら私は応える。
「いいよ、そんなに最敬礼しなくても」
顔を上げた伊勢は、とても清々しい顔をしていた。
「お前の身体、もう大丈夫なのか?」
「はい! あの時は何も分からなくて、ただ恐怖ばかりで……でも今はこんなに素敵な妹と一緒になって私、とても嬉しくて」
そこまで一気に答えた彼女は感極まって目がウルウルしていた。
「え?」
まさか泣くのか? 少しビックリした。
「す、すみません。あれ? 別に泣くところじゃないですよねぇ」
伊勢も慌てて涙をこらえている。
「おっかしいなぁ。何処か故障しているのかな」
照れ隠しのようにブツブツ言いながらも結局は、ボロボロと涙がこぼれていた。
伊勢は恥ずかしそうに、溢れ出す流れる涙を必死に拭っていた。その姿は、まるで普通の少女そのものだった。
私も艦娘とは永らく接しているが彼女たちが自然に泣く姿を、あまり見たことが無い。もちろん感情的になる子は何人も見たが、それとこれとは微妙に違う。
「伊勢……ほら」
見かねた日向がハンケチを取り出した。
「あ、悪りぃ悪りぃ。やっぱ、あたしってダメな、お姉ちゃんだよね」
日向のハンケチで顔をぬぐう。
天真爛漫な姉と沈着冷静な妹か。
「姉妹だけど、やっぱ艦娘も微妙に違うものなんだな」
私も独り言のように呟いた。双子でなければ違って当然か。
そういえば美保にも祥高さんと技術参謀という月とスッポンのような……いや失礼。天と地みたいに落差のある姉妹も居るからな。
(もっとも、あれは特例か)
私は心の中で苦笑した。
「鎮守府から町へは今日、初めて外出したんです私。ココは良い所ですね」
落ち着いた伊勢は言った。
伊勢型航空戦艦の一番艦。本当は彼女の方が、お姉さんだ。しかし量産型で建造されて間もないとはいえ日向のほうが、しっかりしている印象を受ける。
「そうだ! 今夜はうちの提督が、ご馳走してくれるんですよね」
「あ、ああ……」
急に話題を変えてきてビックリした。
「美保の皆さんが来なければ、あり得ないことですね」
ニコニコしている伊勢。
(大丈夫か?)
私は彼女の感情の起伏に心配になってきた。
「伊勢。ちょっとハイになってないか?」
私の顔色を察した日向が、やんわりとセーブする。
「あ、ごめんなさい。調子に乗ってたね、私」
妹の意図は直ぐに察するんだな。さすが姉。
そんな伊勢の肩に手を置きながら日向が言った。
「では司令、もうしばらく伊勢と散策をしてから定時までには戻ります」
「分かった」
「はい、失礼します!」
ちょっとワザとらしく伊勢が私に敬礼する。
私も、ちょっと微笑みながら敬礼を返した。
傾いた夕日を浴びた二人は、砂浜を並んで歩いて行く。それを眺める私と青葉さん。建造の時期は違うとはいえ、さすが姉妹艦。並んで歩くと、やはり様になる。この2人は、とても良いペアに成りそうだ。
伊勢のオリジナルは、あまりよく知らないが試作型艦娘も意外に良い娘だな。
ただ残念なのは、この伊勢も「不完全レシピ」の申し子。その寿命が、いつまでなのか分からないことが不憫だ。
「はあ」
思わず、ため息が出てしまった。
「シ・レ・イ!」
急に改まった言い方をしてくる青葉さん。
「なんだよ、急に」
「もしかして、もしかして……泣いてません? えぇ」
勿体ぶった言い方をする。
「ば、ばかを言うな!」
(あれ?)
変だ。否定したとたん涙が出て来そうになる。焦る。
「泣く訳ない……」
そう言いながら私は慌ててハンケチでごまかす。
そんな私を見て一瞬フフンと鼻で笑ったような青葉さんだった。
だが急に周りを確認するような素振りをする。
「……?」
水辺にいる金剛姉妹や龍田さんが、こちらを見ていないことをチェックしたようだ。
そう思ったら青葉さんは急に私の背中に回って頭を押し付けてきた……。
(何をするんだ?)
彼女の意図を図りかねる私。
青葉さん、その姿勢のまま、語り始めた。
「別に良いんですよ司令。本当は……泣きたいのは私。済みません、ちょっとだけ背中お借りします」
「ああ……」
彼女は積極的で、精神的にもタフだから涙なんか見せないと思っていた。この行動は意外だ。
「変でしょ? 私」
「……」
搾り出すように続ける青葉さん。
「いろんな現場で見聞きしていると不意に胸が一杯になるんです。いえ、以前は、こんなこと無かったんです」
「……」
「もう誰にも見せたくないのに、すごく、すごく泣きたくなるんです。済みません司令」
(やっぱり何年も艦娘として生きてると感情みたいなものが成長するってのか……)
伊勢姉妹にも、それは感じた。青葉さんも、そうなのか。
「いや良いよ。お前も、いろいろ無理させていると思うし」
私は応えた。
すると青葉さんが反応する。
「司令!」
「うわっ」
急に声の調子が変わったぞ。
「お願い……何も言わないで下さい」
急に声を下げてボソボソと言う彼女。
(気のせいだろうか)
背中で青葉さんが咽(むせ)び泣いているような。
(いつも人を煙に巻くような言動が多い青葉さんも普通の女の子なんだ)
何故か、安心した。
提督という位置は、いろんな物が見える。だから多くの人(艦娘)の中心に立って命令するだけでなく時には受け止めることも必要だ。
それはまるで荒野に直立するスタンディング・ストーン(礎石)だ。
組織の要として、惑わず、国家存亡を賭けて戦うんだ。だから言葉が少なくても、そこに居るだけでも良い。そう感じていた。
数分くらいだろうか? しばらく背中でジッとしていた青葉さん。やがて、そっと背中を離れて背後でハンケチで顔を拭っていた。
「失礼しました司令! 充電完了です」
青葉さんは餌飼いになると改めて敬礼した。
それは、いつもの悪戯っぽい表情ではなく普通の少女のような素朴さを感じる表情だ。
「良かったな」
「はい! 司令、私も一蓮托生でガンバリますから」
「バカめ」
「へへっ」
舌を出した青葉さん。その反応に、ふと寛代を連想した。
(また壁が一つ消えて、こういう会話が出来るようなったんだな)
そんな印象を受けた。
「おーい!」
大声で海辺に向かって手を振る青葉さん。
そして急に言った。
「私も水浴びしてきます! これ、よろしくぅ」
彼女はカメラバックを私に押し付けて走り出した。
「お……」
まさに、有無を言わさない。でも、それは信頼の証か。
向こうの艦娘たちも手を振っていた。青葉さんは合流して一緒に戯れている。
「そうだな。生きてるからこそ泣きもするし、笑うこともあるよな」
傾いた夕日を反射させた海がキラキラと眩しく見えた。それは艦娘たちの生命の輝きを象徴しているようにも感じられるのだった。
以下魔除け
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。
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日向と伊勢に出会った司令は元気そうな試作型に安心する。だが青葉さんの様子が少し、おかしかくなっていた。 | ||
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