PokemonSM CosmosEpic 10:謎の少年・グラジオ |
謎の少年・グラジオ
「よーし、出発だよ!
目指すはスイレンちゃんの試練がある、せせらぎの丘だー!」
この日、ヨウカは気合いを入れていた。
なぜならば、アーカラ島の島巡りの試練、最初の試練に挑むために試練の場所へ向かう決心をしていたからだ。
「あれ、ハウくん?」
その先でヨウカはハウの姿を発見し彼に声をかけようと近寄る。
モンスターボールにポケモンを戻す様子を見るに、ポケモンバトルでもしていたようだ。
「どうしたの、ハウくん」
「ヨウカー、この人怖いよー!」
「え?」
自分の姿を見つけて迷わず駆け寄ってきたハウのその発言にヨウカはきょとんとする。
ハウの視線の先には、おそらくさっきまで刈れとポケモンバトルをしていた相手であろう少年がたっていた。
「ヨウカ・・・お前がヨウカなのか」
「・・・せやけど・・・あんた、誰?」
「フッ、警戒心があるのかないのか・・・」
ハウと戦っていた相手は、自分達より二つくらいは年上であろうと思わされる少年がいた。
金髪の髪は前髪だけ長く、顔半分ごとその鋭い翡翠色の目を片方隠している。
露出した耳にはイヤーカフがついており、全身が黒を基調とした、あちこちにファスナーのついた服を着ており肌はよけいに白くみえる。
ヨウカは見慣れぬこの少年に対し、なにかを感じて警戒をしているつもりだった。
あまり警戒らしい態度は、とれていないが。
「オレはグラジオ。
自らのポケモンを強くするために戦い続けている。
・・・まぁ、今はスカル団の雇われ用心棒だがな」
「スカル団!?」
グラジオの正体を知ったハウとヨウカは驚きの声を上げる。
「あんなのに味方してるの!?
あんな如何にも臭そうなチンピラ軍団に!?」
「・・・お前がスカル団にどういう印象を持ってるかはさておき、オレはあくまでスカル団でも手も足もでないような強者がでた場合にのみ動くだけだ。
あいつらがどうなろうと、なにしようと・・・オレの知ったことではない。
すべては、強くなるためにな」
「・・・んで、あたしの名前を知ってて、ハウくんのことも倒して、あなたはなにがしたいの・・・?」
「・・・そんなもの、決まっている」
スチャ、とグラジオはモンスターボールを構えた。
「・・・あたしとも、ポケモンバトルしようってこと?」
「・・・わかってるなら、お前も体制をとれ」
「・・・わかった・・・!」
ヨウカも同じようにモンスターボールを構えて戦う体制に入る。
そんなヨウカをハウは心配そうに見つめるが、ヨウカはハウにただ笑いかけるだけだった。
「ヨウカー」
「ハウくん、あたしなら大丈夫だよ」
「ゆけ、タイプ:ヌル!」
「タイプ:ヌル?」
「げっ」
グラジオが出してきたのは、タイプ:ヌルと呼ばれた見覚えのないポケモンだった。
鰭のような尾を持ち、前と後ろで形が違う4本の足に灰色にくすんだ体毛、茶色の仮面のようなものをつけとさかのようなものまでついたポケモンだ。
これはアローラのポケモンだろうが、にしたって初めて見る以上に妙な感覚があった。
「な、なんやのそのポケモン・・・ロトム!」
「おまかせロト・・・!?」
「どうしたの?」
相手のポケモンがなんなのかが解らず、側にいたロトムにその情報を求める。
だがロトムは驚愕の表情を浮かべつつ、ヨウカのほうをむく。
図鑑の画面には、なにも表示されていない。
「ズカンのデータにないロトーッ!」
「えぇっ!?」
ロトム図鑑もといポケモン図鑑にもないポケモンが存在するなんて。
そういう思いでヨウカはグラジオとタイプ:ヌルを二度見した。
「で、でもモンスターボールからでたし・・・ポケモンなんでしょ!?」
「どうせならお前のポケモンを全部出してかかってきても構わない」
「なに・・・それ、余裕っていいたいの・・・!?」
「ああ」
グラジオの言葉にヨウカは少しむっとしつつ、3つのモンスターボールを手に取り、ボールから3匹のポケモンを出した。。
「そんなにいうなら、あたし達もやっちゃうんだからね!
ニャーくん、タツくん、サニちゃん!」
「グゥ」
「ああ・・・こいつも出さねばな・・・ズバット!」
「やっぱ、一匹だけじゃなかったんだね」
相手のポケモンは2匹、こちらは3匹。
数で買ってるから後はレベルの問題だ、相手は少ない数で多い数を相手しようというのだから、自分のポケモンのレベルに相当な自信があるに違いない。
「ニャーくんとタツくんはひのこ、サニちゃんはその直後にバブルこうせん!」
まずはニャーくんとタツくんがひのこを浴びせて先制してダメージを与え、追撃でサニちゃんはバブルこうせんで攻撃する。
タイプ:ヌルもズバットもその一撃を受けるが倒れることはなく、むしろタイプ:ヌルは技を突っ切りながら鋭い爪を振りかざす。
「ヌル、ブレイククローッ!」
繰り出されたその技に、3匹は同時に吹っ飛ばされた。
その威力にヨウカは目を丸くする。
「うっそ!?」
「ズバット、きゅうけつ!」
「サニちゃん、ズバットにパワージェム!」
一瞬驚いたヨウカだが、すぐに気を持ち直してサニちゃんに指示を出してズバットにダメージを与える。
タツくんとニャーくんも、体勢を立て直して相手のポケモンをにらみつけていた。
「スバットはスピードスター、ヌルはめざめるパワーッ!」
「タツくんはりゅうのいかりでスピードスターを、サニちゃんはバブルこうせんでめざめるパワーを相殺して!
そしてニャーくんはほのおのキバ攻撃!」
ズバットとタイプ:ヌルの攻撃をサニちゃんとタツくんが止めている隙にニャーくんはほのおのキバをタイプ:ヌルに食らわせてダメージを与える。
そんなニャーくんにタイプ:ヌルはシャドークローで反撃した。
「簡単には倒れないねっ・・・!」
「ヌル、タツベイにブレイククロー!」
「タツくん!」
今度はタツくんに攻撃を繰り出すタイプ:ヌル。
突然自分に向かって飛んできた攻撃をなんとか踏ん張って耐えたタツくんは別の技でタイプ:ヌルにつっこんでいった。
「タツくん、しねんのずつき!」
「かわしてめざめるパワーッ!」
だが、しねんのずつきは空振りに終わった。
グラジオはそこにめざめるパワーを打ち込めという指示を送り、まずはタツくんを戦闘不能にした。
「タツくん・・・!」
「まずは一匹、と言ったところだ」
「・・・おつかれ、戻ってタツくん・・・!」
ヨウカはタツくんを、ボールに戻した。
「ズバット、サニーゴにきゅうけつ!」
「そうはさせないよ、パワージェム!」
指示をゆるめないグラジオ。
ヨウカもそれに負けじと、サニちゃんに指示をだして、ズバットを攻撃する。
それによって、ズバットも戦闘不能になった。
「ズッバァ!」
「ズバット・・・戻れ!
ヌル、サニーゴにシャドークロー!」
すかさずグラジオはズバットを戻すと、続けてタイプ:ヌルに指示を出してサニちゃんを戦闘不能にした。
この状況にヨウカは戸惑いにもにた感情を覚える。
「・・・やっと一匹倒せたけど・・・でも・・・こっちも結構ギリギリやね・・・!」
こちらが一匹を倒している間に二匹戦闘不能にさせられてしまった。
間違いない、グラジオはとてつもなく、強い。
だてに用心棒をしていないと言うことかと思いながらもこの勝負にたいし背中を見せたくないとヨウカは強く思った。
するとニャーくんもヨウカと同じ気持ちのようで、ヨウカの方を振り返るとにゃ、と強く鳴いた。
「ニャーくん、まだがんばれるん?」
「にゃぁぁあ!」
「・・・せやね、まだまだまけへんでっ!」
戦う体制を整え直したヨウカとニャーくんに、タイプ:ヌルは攻撃を仕掛けてくる。
「ヌル、めざめるパワー!」
「ひのこ!」
相手の攻撃を相殺しようとヨウカはひのこを指示したが、そのひのこは先ほどまでとは段違いの威力を持っており、めざめるパワーを打ち消した上でタイプ:ヌルを攻撃した。
「なに!」
「おぉ!?」
「えっ!!」
その威力の高い炎に、グラジオもハウもヨウカも驚く。
さっきまでとは威力の違うその炎は、ひのこじゃないとヨウカは直感で気づいた。
「今のは・・・ひのこじゃない・・・!」
「うん、そうだロト、あれはかえんほうしゃだロト!」
「かえん・・・ほうしゃ・・・!」
ひのこよりも強い炎の技を、ニャーくんは覚えた。
それを知ったヨウカは目つきを強くさせて、再び攻撃を仕掛けてきたタイプ:ヌルの動きを見てニャーくんにたいしかわす指示を出した。
「ニャーくん、そこだよ、かえんほうしゃ!」
「にゃあ!」
ニャーくんはヨウカの言うとおりに動いて、タイプ:ヌルの攻撃を回避し直後にかえんほうしゃを放ち攻撃する。
その炎を受けたタイプ:ヌルはダメージに耐えられず倒れた。
それは、戦闘不能の証拠だ。
「ヌル・・・!」
「すっげーヨウカ、勝っちゃったー!」
「・・・うん、この勝負はあたしの勝ちだよ!」
「・・・ああ・・・そうだな」
グラジオはタイプ:ヌルに駆け寄りその身体に手を添えつつ、自分の勝敗を素直に認め、すぐにタイプ:ヌルをモンスターボールに戻した。
「・・・」
その様子を見たヨウカは黙って目を丸くしていた。
あのポケモンを、彼はとても大事にしているのを知ったからだ。
タイプ:ヌルを戻したグラジオは振り返り、ヨウカに向かって言った。
「かなりできるトレーナーのようだな、お前は」
「えぇっ!?」
その言葉に対しヨウカは驚き、あわてて彼の言葉を否定する。
「それはないよ!」
「ある、そこはオレでもけじめはつけている」
「・・・で、でもでも!
今のバトルは無効だよ、あなたが2匹なのに対してあたしは3匹使っちゃったもん!
バトルはだいたい同じ数での勝負でしょ、なのに!」
「いや・・・」
グラジオがヨウカの実力を認め、その話を続けようとしたときだった。
「グラジオ、負けてやんのぉ!」
「むっ・・・」
「あぁ、スカル団!?」
スカル団の男女が彼らの前に姿を現したのだ。
二人の視線はグラジオ、そしてハウとヨウカに注がれる。
「グラジオを打ち負かしたそいつを、あたし達がやっちゃえば・・・いいよねぇ!」
「今なら連戦の疲れで、追い打ちをかけて倒せるかもしれないしなぁ!」
「ぐっ・・・」
まずい、とヨウカは思った。
タツくんとサニちゃんは戦闘不能、唯一残ったニャーくんも弱っている。
この状況でスカル団二人を相手できるのか。
急いでハウがヨウカに近付き彼女を手助けしようとモンスターボールを構えたときだった。
「やめときな」
「あぁん?」
グラジオは二人にそう言って制止する。
突然制止をかけられたことが気に入らないスカル団の男はグラジオをにらみつけるが、グラジオは動じない。
「オレに勝てないくせに、粋がるなって言ってるんだ。
現にお前達は、9匹でヌル1匹に挑んで・・・結局全滅させられているだろ」
「ぐっ!」
「無闇に戦って、無闇にポケモンを傷つけるな・・・!」
グラジオはその鋭い翡翠色の目をさらに厳しくさせてスカル団を睨みつける。
その底知れぬなにかと、グラジオの先ほどの発言によってスカル団の二人は戦意を喪失した。
「・・・チッ!」
「あーあ・・・やーる気なくしちゃった。
かーえろかえろ、ヤミカラスが鳴く前にかーえろっと」
「・・・お前、ボスに気に入られているからって、いい気になるなよ」
「・・・」
去り際スカル団の団員はグラジオに向かってそう囁きかけた。
スカル団の二人が去っていったあと、グラジオはヨウカとハウに対し話を続ける。
「言っておくが、そのハウってやつも弱くはない。
・・・ポケモンバトルを楽しんでる奴も、いたっていいさ」
そこまで言ったグラジオは、目を開きその鋭い目つきでハウを睨み怒鳴るような声で言葉を突きつける。
「だがそいつは!
しまキングである祖父に勝てないからそういう風にいいわけをしているのさ!」
「!?」
グラジオの言ってることに、少しついていけないヨウカ。
慌ててハウの方をみたが、当のハウはいつもの脳天気な顔をしていた。
「え、おれってつよいのー?
というかー、じーちゃんのことを知ってるのー?」
「・・・ハウくん・・・自覚なかったの?」
ぜんぜん変わってないそのマイペースっぷりにヨウカは思わずあきれて脱力してしまう。
その様子をみたグラジオはふい、と彼らから視線を逸らして立ち去っていった。
最後に、ヨウカに対して一言を残してから。
「次にあったら、必ずお前に勝つ」
「・・・」
ヨウカとハウはしばらく、グラジオの去っていった方向を見ていた。
とりあえずグラジオとの勝負で疲労したポケモン達を回復させるために、近くにあったポケモンセンターに向かったヨウカとハウ。
「変な人やったね、あの人」
「そーだねー」
そして今、ポケモン達の回復を終えたヨウカとハウはエネココアを飲みほしてから、さっきの少年の話をしていた。
「・・・でも」
「でもー?」
「こういう事言うのも思うのも、ちょっとヘンかもしれないけど・・・。
あの人、少なくとも悪い人じゃないと思うんよ。
自分のポケモンのことをちゃんと大事に思うてたり、スカル団に対してあんなに強く言い切って止めるんやもん。
まだ詳しく知った訳じゃないけどね」
「そっかぁー・・・まぁでもー、そういう考えを持つのはヨウカの自由だとおもうよー」
「うん」
ハウはリュックを整えて背負いながら、ヨウカに向かっていった。
「でもヨウカ、気をつけた方がいいよ?」
「え?」
「あいつが悪い人じゃなくてもー、強い奴と戦いたい要望はつよそーだしー。
ヨウカにたいしてー、必ず勝つっていってたでしょー?
だからこれからー、ヨウカに勝負を仕掛けてきそうだよー」
「あー、うん。
ちょっとは警戒しておくよ・・・でも」
「?」
ヨウカはどこか心配そうな顔で、ハウを見つめて言う。
「それを言うなら、ハウくんも同じだよ」
「えー?」
「だってハウくんもあのグラジオって人にねらわれてるかもしれないんだよ?」
ヨウカの言葉にたいし、ハウは大笑いする。
「それはないと思うよー、ヨウカ気にしすぎー!」
「え、でもあの人・・・ハウくんのこと」
「じーちゃんとおれのことー?」
ハウの言葉にヨウカはこくんと頷く。
ヨウカが気にしていたのは、グラジオがハウにむかって言ったあの言葉。
それでグラジオは別の意味で、ハウに敵意を向けているのだとヨウカは察していた。
だがハウはまだ、あの脳天気な笑顔を見せている。
「それもー、あいつのー思い過ごしだよー」
「でもっ」
「あ、おれいかなきゃー・・・じゃーねーっ!」
「あ、ハウくん!?」
ヨウカは慌ててハウを呼び止めようとしたが、ハウはそれを聞かずに走り出していた。
「・・・っ・・・」
ハウの脳裏によみがえってくるのは、グラジオの言葉。
自分は祖父より弱いから、楽しむと言って誤魔化しているという言葉。
脳裏にリピートされては、ハウは首を横に振ったりして消し去っていく。
「ちがう、ちがう・・・!
じーちゃんは強いけど・・・今は・・・関係ないよ・・・ごまかしてもないよ・・・いいわけなんかじゃ・・・ないよ・・・!
・・・おれは・・・ホントに、バトルを・・・たのしみたいんだよっ・・・!」
ハウは走り去りながら、そう自分に言い聞かせるようにそうつぶやいていた。
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今回も私の大好きなキャラクターがでてきます。 これからの活躍をお楽しみに! |
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