涼州戦記 ”天翔る龍騎兵”3章2話
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第3章.過去と未来編 2話 各陣営の1コマ(前編)

 

洛陽に戻った3人は自分達に割り当てられた執務室へ一族の主要なメンバーを集め会議を始めた。

 

机に地図を広げ、冀州と?州に黒い碁石を幽州、并州、司州、予州、徐州に白い碁石を置くと一刀が口を開く。

 

「この先我々の同盟の前に立ち塞がるのは袁紹と曹操。だからこれに対するに幽州、并州、司州、予州、徐州を押さえて奴らを包囲してこれ以上奴らの勢力が拡大するのを防ぎつつ、こちらの勢力を拡大する。だけど我々が今押さえていると言えるのは白蓮の幽州と月のここ司州のみ。并州、予州、徐州はこれから押さえないといけない。しかし桃香と菖蒲さんで3州は押さえられない。だから并州に異民族にも人望がある劉虞殿を当て残り2州を押さえる。」

 

一刀が一旦区切ると馬騰が続ける。

 

「でも劉虞殿は余り自前の戦力を持ってないからこちらの戦力を割いて守ってやる必要があり、予州と徐州については私が陶謙討っちゃったから私達が徐州に行くと反発を受ける恐れがあるので桃香ちゃんに行ってもらう。う〜ん、理屈としてはわかるけど月ちゃん達と桃香ちゃん達に負担をかけることになるわね。」

 

一刀と馬騰による戦略の説明が終わると殆どの者は難しい顔をして悩んでいた。

 

馬騰の言った通り、理屈としては正しい。

 

しかし感情はそうはいかない

 

特に賈駆はそうだろう。

 

馬騰達が来なければ自分達だけであの大軍と戦わなければならなかったのだ。

 

それを考えれば理屈ではわかっても戦力を割くなど了承できるはずがない。

 

一刀もそれはわかっていた、だが焦りの為それ以上頭が働かない。

 

そう一刀が持っている歴史知識を使っての歴史改変は後1回のみ。

 

一刀はそれには拘らないと決心したのだが、だからと言って硬直していた考えがすぐに柔軟になる訳でなく堂々巡りに陥ろうとしていた。

 

一刀には何かきっかけが必要だったのであるがそのきっかけは思わぬところから出てきた。

 

「なあ一刀、包囲する目的は袁紹や曹操が勢力を拡大させる為に他州へ攻め込むのを防ぐことだよな?」

 

「んっ、ああそうだよ。」

 

一刀に問いかけた馬超はその答えを聞き、喜色満面の笑みになる。

 

「だったら、并州に兵を割く必要はないよ。」

 

………

 

一刀と、馬騰を除く他の者達は何言ってるのかわからないと頭に?を浮かべる。

 

「だから、袁紹の北には白蓮が居て、南には月が居る。東は曹操だ。で西が空いてる訳だけど、袁紹が并州に攻め込もうとしたら南北から挟撃してやればいいんだよ。でもいくら袁紹が馬鹿でも配下には頭のいい奴もいるだろう?西が空いてるのは罠だと思って多分攻めてこないよ。」

 

「あっ!!そうか、無理に全てを押さえる必要はないんだ。………」

 

馬超の言は一刀の硬直していた頭を揺り動かす一撃となった。

 

「それならば、大軍は必要ない。袁紹の動きを監視する為の兵で十分だ。司州側は月のところか家から出せるし、幽州側は白蓮に出してもらえば、そうだ!并州の兵にも手伝わせればもっと負担は減る。後は………」

 

地図を指し示しながら考えをまとめるかのように説明する一刀を余所に馬岱が茶々を入れる。

 

「へ〜〜、脳筋のお姉さまが……なんか変なものでも食べたの?」

 

「ん?この間愛紗の料理を食わされそうに……って何言ってんだよ蒲公英!」

 

キャーキャー言いながら逃げる馬岱、真っ赤な顔で追いかける馬超、そして頭を押さえる一刀。爆笑する仲間を馬騰は微笑ましそうに眺めていた。

 

その頃、他の陣営では……

 

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董卓陣営

 

「まったく、あの馬鹿チ○コは……」

 

「詠ちゃん……」

 

未だ怒り心頭の賈駆を董卓が宥めていた。

 

「でもな〜包囲するっちゅうことは詠っちも認めとったやん。4陣営の中ではうちらが一番兵力は多いんやから少しくらい割くのは仕方ないんとちゃう?」

 

「霞、あんたあの時の絶望感もう忘れたの。僕は忘れない。もう2度とあんな気持ちは味わいたくないわ。」

 

張遼としてもそう言われると何も言えなくなる。

 

袁紹達に悪者にされ孤立無援となり大軍で押し潰されそうになったあの時の絶望感。

 

張遼としても2度と味わいたくないのは確かである。

 

「詠ちゃん、大丈夫だよ。」

 

「えっ、ゆっ月?」

 

賈駆を宥めていた董卓が穏やかな笑顔で言うと驚いた賈駆は董卓の方に顔を向ける。

 

「詠ちゃん、あの時は私達だけだった。でも今は菖蒲様達や桃香さん達という仲間がいる。それに陛下や詠ちゃんががんばったおかげで私達は何も悪くないと認めてもらえるようになってきた。だからこれからもっと仲間を増やすこともできるはず。…だから大丈夫だよ。」

 

「ゆっ月〜」

 

そう、水関での戦いが始まった頃から賈駆は商人達に真実を、袁紹の檄文はデタラメであることを大陸中に伝えるよう依頼していたのである。

 

当初は中々信じてもらえなかったが、連合軍との戦いに勝ち真実を皇帝の名で公表すると皇帝の威光が戻ったのか瞬く間に董卓達の正義が認められるようになっていったのである。

 

戦いの後のことを考えて賈駆が単独でやっていたことなのだが自分の主は、親友はちゃんと見ていてくれた。

 

それが賈駆にはうれしかった。

 

「では、并州の件は派兵に応じるということでいいな。次は徐州の件だが…」

 

「それについてなのですが、先ほど徐州から使者が来まして…」

 

涙と鼻水でグチャグチャの賈駆は置いておいて華雄が話しを進めると陳宮が最新情報について報告を始めていた。………

 

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劉備陣営

 

「………」

 

「………」

 

くっ空気が重い。

 

関羽が不機嫌のオーラを漂わせている為、皆発言するのを憚られ今のこの状態となっているのである。

 

「えー、えーと先ずは并州のことだけど……朱里ちゃん。」

 

「はっはわわ!え、えっと并州についてですが月ちゃん達と菖蒲さん達にまかせましょう。私達は兵力も少ないですからあちらに兵を割く余力はありません。」

 

諸葛亮の説明に関羽以外が一斉に頷く。

 

「次に徐州についてですが…」

 

ドン!!

 

関羽が机を叩く。

 

「あの男は何を考えているのだ!!1番難しそうな徐州に桃香様に行けとは。我々に損な役割ばかり押し付けおって。」

 

「こらこら、愛紗。何を言ってるのだ。」

 

怒髪天を突く状態の関羽に意見できるのは、現在のメンツでは趙雲しかおらずやれやれとばかりに落ち着かせようとするのだが

 

「そうではないか!我が陣営で決戦に参加したのは鈴々のみ、星は後方待機、私は洛陽の守備。他の陣営の武官は粗方参加しているのになぜ我々だけ参加できないんだ!」

 

「愛紗よ、それは自分が活躍の場を与えられなかったことへの不満か?」

 

「そういうことではない!我々に損な役ばかり割り振られていると言っているのだ!」

 

「それならば仕方なかろう?今回の決戦は最大の打撃力を以って短時間で決着を付けるという趣旨に則って人選されたのだから。それに決戦に殆どの戦力を注ぎ込んだのだ、洛陽が手薄になる。そんな状態で洛陽に何か在ってみろ、決戦どころではないぞ。となれば洛陽に攻守ともに信頼できる者を置いておくしかない。その任に堪え得るのは愛紗か私しかおらん。だが私は水関だ、となれば愛紗、お主しかおらんではないか。」

 

「理屈ではわかる。だが納得できんのだ!」

 

ここで劉備が関羽を宥めるように口を開く。

 

「納得してもらえないかな、愛紗ちゃん。一刀さんね、水関に行く前私に会いに来て今回私達が損な役回りになって申し訳ないって一生懸命謝っていたの。それにね、凱旋して陛下に戦勝を報告に行く時、最初は菖蒲さんと一刀さんと月ちゃんで行くはずだったの。でも一刀さんがこの勝利は皆で勝ち取ったものだから皆で行くべきだと強行に反対してね一悶着があったのよ。結局菖蒲さんが取り持ってくれて私と白蓮ちゃんも行くことになったんだけど。陛下に拝謁した際にも自分の功よりも洛陽をしっかりと守って皆が安心して決戦に望めるようにした私や愛紗ちゃんの功の方が上だと進言してくれたのよ。一刀さんは私達が小勢力だからといって侮るような人じゃない、むしろ私達にいろいろと気を使ってくれるやさしい人だよ。だから私は徐州に行こうと思ってる。これは損な役ではなく私達ならできると期待されてるんだと思うの。どうかな?愛紗ちゃん。」

 

「桃香様……」

 

穏やかな中に強い意志を持つ劉備の説得に関羽は落ち着きを取り戻す。

 

「桃香様の話しに追加ですが先ほど徐州より使者が来まして徐州に残っていた陶謙の配下から我々に恭順の意を示し我々の意に従うとのことです。ですから私も徐州に赴くことに賛成です。」

 

諸葛亮の最新情報に全員の表情が明るくなり、次々と賛成の声が上がる。

 

その中で関羽も

 

「そういうことなら私も賛成だ。しかし使者とは急な話しだな。」

 

関羽の何気ない問いに鳳統が答えた。

 

「実は急ということではないんです。決戦の後に流した連合軍を崩壊させる為の噂、あれ各地にも流したんです。討ち取った諸侯の領地に桃香様や我々の意を汲んだ人物を送り込む際の手助けになるように。」

 

「そうだったのか……」

 

「さあ、愛紗ちゃん俯いてる場合じゃないよ、これだけ期待してくれてるんだもん。がんばって徐州を平和で豊かな州にしよう。」

 

「「「応」」」

 

こうして劉備達は徐州へ向かうことを決めた。

 

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公孫賛陣営

 

「………」

 

「………」

 

空気が重い訳ではありません。

 

意見が出ないんです。

 

「殿、どうしましょうか?」

 

「だーー、どうしましょうかってなんか意見はないのか!」

 

激高する公孫賛を見て周りの武官、文官が口を開く。

 

「「はあ、我々は殿の指示に従うだけですから軍師のようなことは……」」

 

「おまえら、全部私に丸投げするつもりか?」

 

「いや〜、我が陣営には軍師がいませんから殿にやって頂くしかありませんな。」

 

「とほほ…桃香や星が居た頃が懐かしい。」

 

「でも、劉備殿を送り出したの殿でしょう?劉備殿、ぽや〜んとした人だからうまく言いくるめればまだここに居てくれたかもしれなかったのに。」

 

「いやいや、あれは殿にしては英断だったと思うぞ。だってあのまま劉備殿がここに居たらどっちが太守かわからなくなるところだ。」

 

「それはないだろう。でもお飾りの太守になってた可能性は高いな。」

 

「お・ま・え・ら〜、……決めた!桃香や月達に言ってだれか軍師を紹介してもらおう!」

 

部下達はきょとんとした顔になり、徐に公孫賛に言った。

 

「はあ、それはいいですが、来てくれますかな?劉備殿や董卓殿と違って殿は普通ですからな。」

 

「あの方達の知り合いとなると有名な人やかなり優秀な人となりそうですから普通の殿のところに来てくれるか……」

 

「お・ま・え・ら〜〜、コ・ロ・ス!」

 

公孫伯珪と愉快な仲間達はとりあえず軍師を探すことにした。

 

はたして誰がくるのやら。

 

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<あとがき>

 

どうも、hiroyukiです。

 

今回は拠点イベントという訳ではありませんが、会議の宿題について話し合う各陣営の1コマという感じにしてみました。

 

翠が頭を使っています。

 

いくらか成長しているんですね。

 

これからも翠には試練が降りかかり苦労するでしょうけどそれを糧に成長してもらう予定です。

 

次回は曹操と孫策陣営の1コマというか過去についての話しとなります。

 

では、あとがきはこのくらいにしてまた来週お会いしましょう。

説明
3章2話です。
今回と次回は拠点イベントみたい?な感じで各陣営の1コマとなります。
しかし書いてて思うんですけど白蓮ってなぜかギャグ担当になってしまうんですけど、どうしてでしょう?
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コメント
まぁ、何だ・・・・・ある意味一番家臣から愛されている君主な気がしてきた(cheat)
ハム可哀想・・・家臣なのに殿の事を普通連呼とは・・・ 次作期待(クォーツ)
だれか優秀な人を紹介してやってください。人材求む。特に軍師 白蓮(ブックマン)
皆様へ:白蓮は愛されているんですね。次回で彼女に軍師がやってきます。けっこう有名な人です。(hiroyuki)
軍師を!軍師を紹介してあげて〜!!(夜の荒鷲)
自然と白蓮に応援を送りたくなるぜ!!がんばれ〜〜〜!!(motomaru)
あははは・・・乾いた笑いが出てきてしまう・・白蓮、がんばれ。超がんばれ。(投影)
白蓮モブ達とがんばれww(ルーデル)
頑張れ白蓮。負けるな白蓮。きっと幸せが訪れる…んじゃないかなって思いたいというか…w(だめぱんだ♪)
白蓮にささやかなしあわせを(泣 (HIRO)
作者さんがどれほど白蓮さんを気に掛けて居られるかがよくわかりました。(トーヤ)
頑張れ白蓮・・・(泣(Nyao)
作者の白蓮への愛の深さがよく解るお話でしたw(nanashiの人)
普通・・・まぁ頑張れ(笑)・・・でもすこし「愛」の手を(大笑)(st205gt4)
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