スマブラ Abandon World 30「遭遇! ハオス」 |
何はともあれ、無事マック、ソレイユ、リュンヌ、ルキナを見つけ出したピット達は、
ラストホープに帰ろうとしていた。
「もっと時間がかかるかと思いましたが、意外にあっさりと見つかりましたね」
普通、仲間を見つけた時は何らかの大きな壁が立ち塞がると思っていたピットだったが、
戦った魔物がミュータントしかいなかったのでやや調子が狂っていた。
「水と食糧を無駄に消費するよりはマシでしょう?」
「まぁ、そうなんですけどね……」
八人は、ラストホープへ行く道を歩いていた。
「ゴホッ、ゴホッ」
「ゴホッ、ゴホッ」
ソレイユとリュンヌは、歩いていくうちに咳き込んだ。
何があったの、とパルテナが聞くと、二人は「空気が悪い」と言った。
パルテナが精神を集中させると、彼女は確かに淀んだ空気を感じた。
ラストホープにいると実感が沸かないが、ここが既に滅びた世界である事を思い知った。
「やはり、ここはもう……」
「待ちなさい、まだ希望が潰えたわけじゃないのよ? 私達は『ラストホープ』に帰ろうとしてるの」
「ラストホープ……ああ、最後の希望という意味ですね」
滅びた世界に唯一残った希望、ラストホープ。
ここが失われれば、もうこの世界を救う事はできなくなってしまうのだ。
「今の私達が縋れる希望はこれしかないの。だから、みんなで守っていきましょう」
「はい」
そう言ってパルテナ達は歩いていき、ラストホープに辿り着こうとした時だった。
「! 水と食糧がない!?」
なんと、水と食糧が手元からなくなってしまった。
「い、一体誰がこんな事をしたんです!?」
ルキナが上空を見ると、そこには藍色の髪と光のない金色の瞳の女性、ハオスが浮いていた。
彼女の手には、水と食糧が握られていた。
「それを今すぐ返しなさい!」
ルキナがハオスに向かって叫ぶが、彼女は表情一つ変えずに地上に降りる。
「……誰だ、お前は」
シークは警戒しながら戦闘態勢を取った。
「ボクの名はハオス。早速だけど、単刀直入に言う。キミ達、そんな意味のない事をしていいのかい?」
「どういう事だ」
「もう、この世界は滅びてしまったから、救う意味なんてないんじゃないのかい?」
「なっ? そんなわけ……!」
ハオスの言葉にシークは動揺し、慌てて否定しようとしたが次の言葉に打ち消される。
「あのアスティマという女も信用しない方がいいよ。
世界を救うとか言いながら、本当は世界に敵対しているんだよ?
そんな女に味方するキミ達は、どうかしてるよ」
「……」
「さあ、分かったならボクに味方してくれよ」
アスティマは確かに、世界を救ってほしいとスマブラメンバーに頼んだ。
だが、ハオスは嘘を言っているようには見えなかった。
シークは彼女の言葉を信じればいいか、それとも今まで通りアスティマを信じればいいか迷っていた、
その時だった。
「……私達が黙っているのをいい事に、好き放題言ってくれたわね……!」
パルテナは微笑みながらブラックオーラ全開でハオスに杖を向けた。
「ちょっ!」
「パルテナ様!?」
「貴女の要求には決して従いませんわ。もし世界滅亡をやりたいのならば、一人でやってくださいませ」
バッサリとハオスの要求を拒否するパルテナ。
彼女にとって、ハオスは全く信用できない存在のようだ。
ハオスは不機嫌そうな表情になり、腕を組みながらこう言った。
「そんなに従いたくないのならば、力ずくでも従ってもらうよ……!」
すると、ハオスの周囲から強烈な音波が放たれた。
「ぐっ……!」
「うあぁぁ、ぁぁぁぁ……!」
八人は両手で頭を抱えながら蹲る。
この音波を聞いていると、自分の意識が消えてしまいそうな感じがした。
「ふふふ……抵抗するだけ、無駄だと思うよ?」
「誰が、お前に従うものか……!」
「残念、じゃあこうなるんだ!!」
ハオスがそう叫ぶと、彼女が与える圧力が強まってきた。
八人は、頭が割れるかもしれないほどの激しい頭痛に苛まれてきた。
このままではもう、限界に達してしまう。
「……仲間、達、は、渡、しま、せん……」
「! ゼルダ、何をするつもりだ!」
その時、ゼルダは頭を押さえながらゆっくりとハオスの前に歩み寄った。
ゼルダがこの後何をするのか理解したシークは、急いで彼女を止めようとした。
「やめ、て、くだ、さい……」
しかし、ゼルダは止めようとしたシークを制止し、魔法でハオスと自分の周囲に結界を張った。
「シーク、達は、逃げ、て、くだ、さい……」
「ゼルダ……! だが……!」
「早く、行ってください……! このままでは、いずれ、あなた、達、も……」
ゼルダは必死な様子でシーク達にそう言った。
七人は彼女の意思を汲み取り、ハオスの洗脳術の影響を受けない方向へ走っていった。
(皆様……申し訳ありません……。私の意思はもうじき彼女に支配されるでしょう。
でも、シーク、ソレイユさん、リュンヌさん、ルキナさん、ピットさん、パルテナさん、
マックさん……今はあなた達だけでも、生き残ってください!)
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
「皆さん、無事だったのです……ね?」
シークは息を切らしながらよろよろと歩き、アスティマの胸に倒れる。
「……何かありましたか?」
「ゼルダが……ゼルダが……」
「落ち着いてください、何があったのですか?」
ゼルダは、シーク達を守るために自らハオスの洗脳術を受けた。
それを言うのはシークにとっては非常に辛いため、シークはあえて何も言わなかった。
「……おかしいですね、ゼルダさまがいませんよ? 一体、彼女はどうしたのです?
それに、水と食糧がありませんよ?」
「……すまない、シーク、言っていいか?」
「……」
このまま隠し通してもいけないと思ったのか、マックはシークの代わりに話す事にした。
シークの沈黙は、肯定の意味だ。
「ゼルダはオレ達を守るために、ハオスの術を自ら受け止めた。水と食糧は……ハオスに奪われた」
「マック……」
皆で一緒にラストホープに帰ってくるはずだった。
しかし、ハオスが現れたために、それが叶う事はなかった。
大切な仲間が一人……いない。
「うっ……うっ……うわぁぁぁぁぁぁぁ!」
普段は冷静なシークだが、この時ばかりは泣いた。
ゼルダが大切な仲間をハオスから守ったために、しかしその代償としてゼルダを失ったために。
「……もう大丈夫ですか?」
ひとしきり泣いた後、シークは涙を拭う。
「あ、ああ……。こんな無様な反応を見せてしまって、すまない……」
「仲間を失って耐えられないのはスマブラメンバーとしては当然の反応だと思いますが」
「……」
しばらくして、シークは真剣な表情をアスティマに向けた。
「僕達は、奪われた水と食糧のためにも、散ったゼルダのためにも、ハオスを倒さなければならない」
「シークさま……」
「だからアスティマ、まずはこの情報をマリオ達に伝えてくるがいいか?」
「……はい、構いませんが……」
シークがアスティマに今日の出来事を伝えると、アスティマはスマブラ四天王にテレパシーを送った。
スマブラ四天王はすぐにアスティマのところに行った。
「そうか、ゼルダはここにはいないのか……」
「畜生……畜生っ……! 仲間は見つかったのに、こんな事ってありなのかよ……!」
「リンク……」
ゼルダと最も関係の深いリンクが歯ぎしりする。
それはマリオ達も分かっているので、彼らはリンクを止めず責めもしない。
「でも、ゼルダは俺達を守ってくれたんだよな。
ここで立ち止まっていたら、ゼルダの意思を無駄にしちまう。だから、俺達はゼルダのためにも戦う!」
いつまでも引きずっていてはゼルダのためにならないと思ったリンクは、
この悲劇を振り切って次の事を考えた。
「アスティマ、次の仲間がどこにいるのか、テレパシーで探してくれないか」
「はいっ」
アスティマは杖を構え、精神を集中させた。
―ここは、広いな。
―ああ、広すぎるまでに広い。
―抜け出せるまでには時間がかかりそうだゾイ。
―しかも、その間に魔物が来てしまえば……。
―俺達は非常に不利な状況になるだろう。
―何とか脱出できる方法を探すゾイ!
「今、ぞい、って誰か言わなかった?」
カービィがアスティマのテレパシーの中から聞こえてきた「ゾイ」という言葉に反応する。
彼が反応したという事は、話しているのは……。
「デデデだな」
「うん、でもあと二人が分からないなぁ」
声質から男性である事は分かっているのだが、それが誰なのかははっきりしていなかった。
「こりゃ、実際に行ってみないと誰が見つかるかは分からねぇな……」
「水と食糧も盗られちまったし、ちゃっちゃと行ってちゃっちゃと帰ってくるのが一番だ」
「っというわけでアスティマ、仲間を探しに行ってくるぜ」
「お気をつけて……」
ハオスにゼルダと貴重な資源を奪われ、大きな打撃を受けてしまったスマブラメンバー。
しかし、ここで諦めるわけにはいかない。
大切なものを奪還し、そして世界を救うまで、スマブラメンバーは生き残り続けるのだ。
「待ってろよ、必ず救ってみせるからな……!」
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本作の悪役、ハオス再登場。なお話。 | ||
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