とある魔術と最遊記と死神代行
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光が見えた、とてもきれいで強く輝く金色の光

 

ガサツで乱暴に輝く紅の光

 

優しくにこやかに輝く緑の光

 

眩しく輝き続ける山吹色の光

 

光はどれもバラバラで、統一性がないけれど

 

だからこそ、

 

俺はこの光について行く

 

この光たちと共に歩んでいく――

 

 

 

――学園都市――

 

東京西部の未開拓地を一気に切り開いて作られた文字通り学生の街だ。

大小様々な教育機関に二三〇万人もの住民を抱えるこの街では、科学技術による超能力開発がおこなわれている。

 

 

 

学園都市 第7学区 とある学生寮

 

「さてと、今のこの状況を整理しようか」

 

今、一人の少年が部屋の中で重々しい空気の中で時計と睨み合っている。

目に飛び込んでくるほどの鮮やかなオレンジ色の髪に鋭い目つきの少年。

彼の名は“黒崎一護”。この学園都市に住む高校一年生である。

 

「今現在、この時計が示す時刻は六時一三分」

 

そう呟き、今度は携帯電話を手に取ると、開いた液晶画面の左上に掲示されている時刻を確かめた。携帯の液晶には七時五七分≠ニ出ていた。そして、再び時計の方へと目を見やる。相変わらず時計は六時一三分を指したままピクリと動かなかった。

もう一度言おう、時計は六時十三分を指したまま“ピクリと”動かなかった。

一護はこの状況を受け止めるのに数秒の時間を要した。

 

「うおおオォおおおオオオ!!!」

 

慌てて服を着替え始め、そのままの勢いで荷物を手に取り思いきり寮の部屋を飛び出した。

しかし、部屋から飛び出した途端に目の前に人影が現れた。自分の寮の登校時刻をとっくに過ぎていたので、この寮に人が居る筈がないと高を括っていた為に突然の人影に対応する事が出来ず、一護は飛び出した勢いで目の前の人にぶつかった。ぶつかった二人はその場で尻もちをつく。

 

「痛た…。悪い、急いでたもんだから――って、当麻か」

 

ぶつかった人を見ると、黒髪のツンツン頭が特徴の少年、“上条当麻”だった。

 

「なんだ、お前も遅刻か?」

 

「いやぁ、目覚ましセットした筈だったんだけど……アハハ」

 

言葉を濁らしながら苦笑いする上条で、一護は彼がこの時間にいる理由を納得した。

常日頃から不幸に遭い続けている当麻を知っている一護にはそう考えるのが普通の流れとなっていた。

 

「――っと、こうしてる場合じゃなかった。オイ、行くぞ。当麻!!」

 

「あぁッ!?ちょっと、俺を置いて行かないでくれ〜」

 

 

 

第7学区 慶雲院

 

一護たちが慌てて学校に行く為に部屋を出る一〇分ほど前、別の場所では二人と同じように一人の少年もとてつもない様子で慌てていた。

少年の部屋には服やお菓子の袋、漫画雑誌などが散漫していて足の踏み場はほとんどないに等しかった。

少年は“孫悟空”。この学園都市で暮らし、一護と同じクラスメイトである。

 

「やべーよ!これじゃ、遅刻じゃん!!」

 

慌ただしく部屋で着替える一人の少年たちを余所に、別の部屋で静かに茶を啜りながら、新聞を読む僧侶。

見た目は金糸の様なキメ細やかな金髪に深い紫暗の瞳、端整に整った顔つきは中世的で遠くから見ると女性と見間違えるほどの美貌の青年であった。

彼の名は“玄奘三蔵”。この学園都市に唯一ある寺院の慶雲院の寺主である。

三蔵は口に近づけていた湯のみを置くと深くため息を漏らした。

 

「チッ、朝くらいは静かにできんのか。あのサルは」

 

「おやおや、朝から大変ですね」

 

「全くだな、いつもキーキーとうるせえお猿ちゃんだぜ」

 

そこに片眼鏡をかけ、爽やかな笑顔と左耳に三つのカフスが特徴の青年“猪八戒”と真っ赤な髪と瞳、頬に刻まれた二本の傷跡が特徴の青年“紗悟浄”が慌ただしく着替える少年の様子を聞きながら、三蔵の部屋へと入って来た。

 

「八戒、何で起こしに来てくれなかったんだよ!?」

 

「僕はちゃんと起こしに行きましたよ。それでも起きなかったのは悟空なんですから」

 

やれやれと言わんばかりに肩をすくめる八戒の横で悟浄は笑いながら、悟空に指を指して口を開く。

 

「しょうがねえよ。どうせ、いつもの事なんだからよ。このサルに学習能力がある訳ねえんだから」

 

「んだと!!テメエにだけは言われたくねえよ。バーカ!!」

 

「ハッ。馬鹿猿にバカと言われたくねえんだよ。このバ―――――――――――カ!!」

 

口喧嘩はどんどんエスカレートしていき、ついに二人は取っ組み合いの喧嘩を始めた。そこにハリセンを携えた三蔵が二人の頭を思い切り叩いた。

 

「喧しい!!朝からギャーギャー騒ぐんじゃねえよ。殺すぞ」

 

「それよりも、悟空。時間大丈夫なのですか?」

 

八戒に言われて、悟空が時計の方に見上げると時計は既に『八時一五分』を示していた。

 

「うわーッ!忘れてたーッ。いってきまーす」

 

悟空は急いでカバンに、荷物を積めると、そのまま学校へと向かって行った。

 

「アイツ、真っ先に弁当を詰めやがったな。まだ『弁当だ』って言ってねえのに…」

 

悟空の食に対する執念に悟浄は感嘆の声を上げた。慌てて出て行った悟空を八戒は笑いながら見送り、三蔵は呆れながら溜め息を吐いた。

 

寺から学校へ向けて走る悟空は道中で同じく忙しそうに慌ただしく走る二人を見つける。

 

「アッ! 一護と当麻じゃん。お〜い!」

 

悟空は手を大きく振りながら、声を上げて二人に呼び掛けた。それに気付いた一護と当麻は悟空へと振り返った。

 

「あぁ、悟空か」

 

「どうしたんだよ」

 

「それはこっちのセリフだって、二人こそどうしたんだよ」

 

「こんな時間にいるんだ。理由は一つしかねえだろ」

 

一護の言葉に悟空は納得したようにうなずいた。一護は携帯を開いて確認すると、携帯の液晶は『八時二四分』を示していた。

 

「このままじゃ、間に合わねえな…。仕方ねえ、本気で走るか。行けるか、悟空?」

 

「オゥ!」

 

「……」

 

一護がそう言うと、当麻は露骨にいやな顔をした。

 

「どうした、当麻?」

 

「いや…、そりゃ一護は((能力|・・))を使えば早く走れるし、悟空は素で足が速い上に底なしの体力があるからいいんだけどさ。上条さんは普通の人間であるのでからして――」

 

「あぁっ!! ゴチャゴチャうるせえ! ほら、行くぞ」

 

一護は当麻の言葉を待たずして、彼の首根っこを掴んで一気に駆け出した。

 

「ぐえッ! お、お願い…せめてもう少し別の場所を掴んで――」

 

当麻の苦しみの声は一護の耳に届くことなく、「不幸だ〜〜〜!」と叫びが空しく響いた。

 

 

 

 

一護や当麻が通う学校では始業のチャイムが鳴り始め、教室に出席簿を携えた彼らの担任の“月詠小萌”が「おはようございまーす」とかわいらしく挨拶しながら入って来た。

135cm程度の身長と童顔により、見た目は小学生にしか見えないが、飲酒や喫煙をするれっきとした成人女性である。ちなみに彼女はこの学園都市の七不思議の一つとなっているが、当の本人は全く知らない。

 

「あれ?上条ちゃんと孫ちゃん、黒崎ちゃん……も、今日は欠席ですか?」

 

小萌が出席にペケ印を入れようとした途端、ドタバタと騒がしい足音がものすごい勢いで教室に近づいてきた。そして――、

 

「ギリギリセーフ!!」

 

「俺も俺も!!」

 

「ゼェハァゼェハァ…、死ぬかと思った――」

 

扉をぶち破らんばかりの勢いで、一護と悟空、そして、二人の横で青白い顔になってものすごく息を荒げている当麻が教室に入って来た。

 

「よかったです。けど、これから遅刻はしないでくださいね」

 

にこやかに小萌は出席簿に三人の欄に出席の丸をつけた。こうして、彼らのいつもの学園生活が始まった。

 

 

 

キーンコーンカーンコーン

 

「はい、今日の授業はこれで終わりです。それでは皆さん、また明日」

 

小萌が教室を出ると、教室の中では帰る準備をする者や部活に行く準備をする人たちで溢れた。

 

「うへ〜、やっと今日の授業が終わったぁ」

 

悟空は糸が切れた人形のように机に突っ伏して、動かなくなった。

 

「オイオイ、大丈夫か」

 

「大丈夫じゃないぃ〜」

 

「しょうがないな、肩でも揉んでやるよ」

 

悟空の元へ、当麻と一護、そして、彼らの同級生の土御門と青髪ピアスが寄って来た。

机から起きあがらない悟空に見かねて肩を揉む当麻の肩もみが心地よいのか、悟空は気持ちよさそうに「あ〜、極楽」と声を漏らす。

 

「さてと、これからどうする?」 

 

「アッ! そう言えば俺、これを持ってきてたんだ」

 

当麻が他の人に尋ねると、悟空はある事に気がついたのか、身を起こすと自分のカバンをあさり、ある箱を取り出した。

他の四人は何の箱か分からず、キョトンとしていたが、その疑問は悟空が箱を開けたことで氷解した。

 

「麻雀か…」

 

そう、箱の中には色とりどりの麻雀牌が入っていた。

 

「実は、今朝間違って持って来ちまったんだけど、どうせやることないし皆でやらねえか?」

 

「へえ、おもしろそうやな」

 

「にゃー、腕が鳴るぜい」

 

「俺も良いぜ。どうせ、帰ってもする事ねえし」

 

「そうだな」

 

上から、青髪、土御門、当麻、一護の順で四人は悟空の提案に賛同した。

 

「そういや、俺たち五人だけど…」

 

「あぁ、半荘でビリになった奴が交代で良いんじゃねえか」

 

それぞれが机を動かして、麻雀卓をつくる。

卓ができたら、五人でじゃんけんをして誰が最初に抜けるかを決める。じゃんけんの結果は青髪が負けたので、青髪は観戦となった。

一護たちの他に誰もいない教室に、彼らが麻雀牌を混ぜる時の擦れ、ぶつかり合う音が響く。

麻雀牌が一通り混ざったら、次に位置と親を決める。この対戦では一護が東家、土御門が南家、当麻が西家、悟空が北家となり、親は土御門となった。

 

 

 

三〇分後

 

「いやぁ、それにしても……カミやんは本当に弱いにゃー」

 

「うるさいな。全く、神様もこういうゲームくらいは国士無双が出るといった奇跡くらい起こしてくださってもいいと思うんですよ…」

 

溜息を吐きながら牌を切る上条に、一護は苦笑しながら言葉を返す。

 

「お前、何気に理想高いな――って、土御門! 今お前、牌入れ替えただろ!?」

 

「クロやん、言いがかりはよしてほしいぜい」

 

「だったらその牌を見せてみろよ」

 

土御門のイカサマ疑惑の言い合いをしていると、突然扉を力強く開ける一人の女生徒が現れた。彼女は“吹寄制理”。背が高く、抜群のスタイルの持ち主だが、とても固い性格をしているため、彼女からは色気が全く感じられない。彼女は教室の真ん中で合わせた机を囲んでいる男五人を強く睨み怒鳴りつけた。

 

「コラー、あんたたち!! さっきから変な音がするなと思えば、また学校で麻雀なんかやってるのね!?」

 

「ヤッベ、吹寄だ」

 

「あわわ、どうしよう――って、逃げんの速えー!! 俺を置いて行くなよー」

 

怒りの形相でこちらにやってくる吹寄に、悟空が慌てて一護たちの方に目をやった時には、一護たちは既に猛ダッシュで逃げていた。

男五人の逃避行は偶々通りかかった生活指導の((災誤|ゴリラ))と((警備員|アンチスキル))の黄泉川に出くわし、彼らはあっという間にお縄についた。

 

そして、学校に麻雀牌(いらないもの)を持ち込んだ挙句、それで遊んでいたという事もバレた彼らはきっちりしぼられたのは、言うまでもない。

 

 

 

彼らが学校を出たときには、すでに日は暮れて空は薄っすらと暗くなり始めていた。

 

「くそ、もうこんな時間かよ」

 

「ハァ〜、不幸だ…」

 

「腹減ったぁ〜」

 

これほどの時間まで学校にいた理由は、捕まった一護たち五人は災誤に罰として、校舎の裏側の草むしりをさせられていた。

夏真っ盛りのこの時期は雑草がとても青々と生い茂っていた為に、全部終えるのに時間がかかってしまったのである。

 

「そうや! これからファミレスでも寄ってメシでも食わへんか?」

 

「メシ!!! 行こうぜ、行こうぜ!!!」

 

青髪が発した“メシ”という単語に悟空は跳び付く程に食い付いた。

 

「じゃ、決定だな」

 

 

 

これは物語が始まる前の((序章|日常))である。

 

平和な毎日、ありふれた日常、こんなものは何時までも続くと信じていた。

 

しかし、彼らの運命は少しずつ傾いていた。

 

もうすぐ、夏休みが始まる――。

 

説明
総人口230万人のうち、8割が学生の街『学園都市』。
そこに住む学生の『黒崎一護』と『上条当麻』、そして、科学の街に寺院を構える最高僧の『玄奘三蔵』。
彼らが辿る物語とは―――。
化学と魔術が交差する時、新たな物語が生まれる。
須らく、看よ
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