真・恋姫†無双・公孫賛√ 〜白花繚乱〜第2話
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 さて、ある日目が覚めた俺は公孫賛に拾われていた。

 

 体を起こすと、目の前には公孫賛のぱんつが広がり、その後風呂に誘われ、なぜか俺は女の子になっている。さまざまな疑問をもちながら浴場に入れば、そこにはこれまた見覚えの在る顔が入浴中(当然女性)。彼女は俺の姿を見るなり突然ずいずいと迫りだし、妙に興奮していた。俺は逃げるように湯の中に飛び込む。

 

【一刀】「………はぁ」

 

 湯気が漂う風呂場で、俺はもうため息しかでなかった。

 

 ちゃぽちゃぽ音を立てながら、湯は波をつくって俺の体に当たる。自分で見てもすばらしいスタイルだ。自分の体でなければずっと見ていたいほどだ。

 

【公孫賛】「まぁ、そんなに気を落とすなよ。よくわかんないけど。」

 

 ここで俺が男だと言えば彼女はどう言う反応をするだろうか。悲鳴を上げて兵を呼ぶ?この場で俺を切り捨てる?

 

 ………あいつなら後者だろう。

 

【一刀】「………あいつって誰だっけ…」

 

 不意に浮かんだ顔。しかし、その顔が誰なのか思い出せない。

 

【公孫賛】「ふぅ……」

 

【一刀】「―――!?」

 

 突然、公孫賛が俺の隣に座ってきた。

 

【公孫賛】「うん?どうした?」

 

 どうしたもこうしたもあったものじゃない。多少見識はあってもほとんどしらない女性が裸で隣にいるのだから。

 

 緊張から逃げるように、俺はすこしずつ横へと体をずらす。

 

【公孫賛】「…………ん」

 

【一刀】「…………」

 

 しかし、なぜか公孫賛との距離が開かない。もう一度体を動かす。

 

【公孫賛】「………んしょ」

 

 また、二人の距離が開く事はない。

 

【一刀】「あの………何して………ぁ」

 

【公孫賛】「へ?」

 

 声をかける際に不意に視線を彼女へと向けてしまい、俺はあわてて目をそらす。そんな俺の態度をみてか、公孫賛は首をかしげている。

 

 どうやら、本当に俺の独り言は聞こえていなかったらしい。

 

 

 

 

 

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【公孫賛】「そういえば、まだ名前聞いてなかったな。」

 

【一刀】「……名前?」

 

 その言葉に俺は少し違和感を覚えた。女性になっているのだから、仕方ないかもしれないが、公孫賛は俺の名前くらい知っているはずだったから。

 

 そんな思いもあって、俺は少しためらったが、名前を名乗る。

 

【一刀】「俺は…北郷一刀。」

 

【公孫賛】「北郷……一刀?……妙な名前だな。」

 

【一刀】「そうかな」

 

 どこか既視感の在る会話。以前も同じように言葉を交わした気がした。

 

 そんな風に思っていると、隣から湯が弾ける音がした。

 

【趙雲】「ふぅ……一刀殿か。私は趙雲、字は子龍だ。」

 

【一刀】「ひっ……よ、よろしく…」

 

 相変わらずこちらが意識せざる終えない距離まで体を寄せてくる趙雲。正直、名前は知っていた。しかし体がどうにも拒絶反応を示している。

 

【公孫賛】「しかし、北郷一刀というのは何処までが姓でどこからが名なんだ?一刀と言うのが字になるのか?」

 

【一刀】「あぁ、えっと……」

 

 どう説明したものか。字と真名がないというのもここではおかしな話。以前もそれで随分と手間取った。

 

【一刀】「えーと、北郷が姓で、一刀が名兼、字兼、真名?」

 

【公孫賛】「は?」

 

 公孫賛が何を言っているのかわからないと言う顔になる。その気持ちも良く分かるんだが、他に説明のしようもない。なまじ以前よりここの知識がある分正直に言っても良いものか考えてしまう。

 

【趙雲】「あっはっは。白蓮殿。天の国での姓名のしきたりなど我らが知るはずもあるまい。」

 

【公孫賛】「ふむ。そんなものか。…しかし、真名をいきなり教えられるとな…。」

 

 公孫賛が苦笑いになる。

 

【趙雲】「ふむ。ならば、私も真名を授けなければなりませんな。」

 

【一刀】「え、い、いいの?」

 

【趙雲】「既に私は貴女の真名を呼んでしまっていますからな。一刀殿。我が真名は星と申します。」

 

 先ほどまでの態度とは打って変わって、星は俺に真名を預けてくれた。

 

【公孫賛】「うーん………」

 

【星】「さて、では一刀殿。そろそろ上がりましょうか。」

 

【一刀】「あ、はい」

 

 

 

 

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 腕を掴んでくる星の力は見た目とは反してかなり強く、俺は逆らう事も出来ないまま立ち上がる。

 

 そのまま先ほどの脱衣場まで連れて行かれる。

 

 しかし。

 

【一刀】「あ、あれ?」

 

 体を拭き、服を着ようとするが、そこにはさっきまで着ていた制服がなかった。

 

【星】「おや、どうやら侍女が持って行ってしまったようですな。」

 

【一刀】「え、ええええええ!!!?」

 

 風呂で火照った体が一気に冷えていく。なにしろ服はあれ一着しかないはずだ。

 

【公孫賛】「ん、どうしたんだ?」

 

 あとから上がってきた公孫賛が俺の様子を見て、聞いて来る。

 

【星】「どうやら服を侍女に持っていかれてしまったようで」

 

【公孫賛】「あちゃ〜……どうしたもんかな。」

 

 額に手をあてて、公孫賛は呟く。

 

【星】「………すこし、お待ちを」

 

 星はそう言うと、さっさと服を来て、外へとでていった。

 

【一刀】「えと………」

 

 その間裸でいろと?そう言いたくてたまらない瞬間だった。

 

 

 

 

 

 しばらくして、星は何かを手にもって戻ってきた。

 

【一刀】「………ガクブル」

 

【星】「おや、湯に浸かっていればよろしかったのに」

 

【一刀】「あぅ…………」

 

【星】「ほら、これを」

 

 星はそう言うと、俺に服のようなものを差し出してきた。体が冷えてきたのもあって、俺は確めも

 

せず、その服をいそいそと着始める。

 

 しかし、30秒後、俺は後悔した。

 

【一刀】「な、なんだこれ………」

 

【星】「ほう、よく似合っておられる。」

 

 くくくと笑いながら、星は俺の格好を眺める。

 

【公孫賛】「せ、星!これって私の服じゃないのか!」

 

【星】「えぇ、少し胸囲が足りないかと思いましたが、なんとか入ったようでよかったよかった。」

 

【一刀】「…………他にはないの……かな…?」

 

 恐る恐る聞いて見るが、星は俺の不安をひと笑いの下に切り捨てた。

 

 

 

 

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 風呂から上がった後、俺は公孫賛に連れられ、城壁へと来ていた。ここが一番話がしやすいということらしい。

 

【公孫賛】「ふぅ……いい風だな」

 

 城壁の上へと昇れば、涼しい風が流れる。

 

【一刀】「うん。………それで話って?」

 

【公孫賛】「えっと…お前の事だけどな。本当に天の御遣いなのか?」

 

【一刀】「あぁ……流れ星がどうって占いだっけ。それで俺がそこにいたから天の御遣いかもしれないって。」

 

【公孫賛】「ああ。もしほんとなら、それなりの扱いとかしないといけないだろ?」

 

 公孫賛の言葉に思わず笑いがこぼれそうになる。御遣いだからもてなさいとなんて、前の時とは随分違う。

 

【公孫賛】「で、どうなんだ?」

 

【一刀】「そうだな。俺が天から来たのはほんとだよ。でも御遣いかどうかは分からないってところかな」

 

【公孫賛】「……も、もう少し分かりやすくいってくれないか?」

 

【一刀】「――はは」

 

【公孫賛】「な、悪かったな。頭よくなくて」

 

【一刀】「ううん。……うん、そうだね。俺は御遣いだよ。公孫賛」

 

【公孫賛】「そうなのか?」

 

【一刀】「聞いといて疑うの?」

 

【公孫賛】「いや、そういうわけじゃないんだけどな…。天の御遣いなんて誰だって信じにくいだろ?」

 

【一刀】「それもそうだね。」

 

【公孫賛】「おいおい…お前のことだぞ?」

 

【一刀】「あぁ……ふふ。」

 

 何がおかしいわけでもないのに、笑みがこぼれる。

 

 空が晴れていて、城壁から見える外は何処までも広くて、ここから見下ろす街は活気があって、それだけで、なぜか嬉しくなった。

 

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【一刀】「この街を治めてるのは、公孫賛なんだよね」

 

【公孫賛】「え?…あ、あぁ」

 

【一刀】「頑張ってるんだね…。いい街だよ。」

 

【公孫賛】「へ!?」

 

【一刀】「前に聞いた事あるんだ。街が栄えるのは、そこを治める者が優れているからなんだって。優れたひとが頑張って治めて、初めて街は活気を持つ。」

 

【公孫賛】「そ、そんなこと……ないって」

 

 俺は改めて、街を眺める。

 

【一刀】「懐かしいな………」

 

 呟いた。

 

【公孫賛】「なつかしいって…」

 

 公孫賛が街を治めている。それは俺にとって一つの答えを出していた。

 

【一刀】「あぁ、そうか」

 

 俺はまた”始め”にいるんだと。

 

 記憶があいまいでよく覚えていないけれど、俺は一度この大陸を一つにした。

 

 だけど、ここは公孫賛が治めている。

 

 御遣いに対しての反応。星との会話。

 

 理由は分からないけれど、俺はまた、やり直さないといけないのか。

 

【公孫賛】「………一刀」

 

【一刀】「………え」

 

【公孫賛】「私の真名は白蓮だ。星が何度か呼んでいるから知っていると思うが、これからはそう呼んで欲しい。」

 

 公孫賛が、俺の事を一刀と呼んだ。そして、真名も。

 

 

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【一刀】「どうしたんだ、急に…。いいのか…?それにこれからって」

 

【公孫賛】「お前は御遣いなんだろう?だったら、私の手伝いをして欲しい。」

 

【一刀】「でも……」

 

【公孫賛】「さっきお前は言ってくれただろ。この街がいい街だって。私が頑張っているって。」

 

【一刀】「うん」

 

【公孫賛】「だったら、お前がいてくれれば私はもっと頑張れる気がする。だから……」

 

 公孫賛は俺の顔を見ながら、続け様に言った。

 

【一刀】「………これも、俺の役目…なのかな」

 

【公孫賛】「……え?」

 

 役目を果たして消えたはずの俺がここにいるのだから、公孫賛に拾われたのは、何か意味があるのかもしれない。

 

【一刀】「ここに、いていいかな、白蓮」

 

【白蓮】「……あ、あぁ。……あぁ!」

 

 白蓮はなんども頷いた。

 

【星】「こんなところにおられましたか。」

 

【白蓮】「お、星か」

 

 今度は星も城壁へと上ってきた。手には酒のようなものがぶら下がっている。

 

【星】「おや?なにやらよい雰囲気のようで」

 

【白蓮】「な、何言ってるんだよ」

 

【一刀】「俺、ここにいることになったんだよ、星」

 

【星】「ほぅ…。それはなにより。それに初めて我が真名を呼んでくださいましたな」

 

【一刀】「あれ、そうかな」

 

【星】「ふふふ…。あぁ、そういう事ならば、三人でのみますかな。良い酒が入りましたので。」

 

【白蓮】「…私はあまり酒は…」

 

【星】「まぁ、そう言わずに」

 

 星は白蓮の腕を引いて歩き出す。俺もそれについていく。

 

 ひょいひょいと城壁の屋根の上に上る星。そこまで身軽にとは行かないが、俺と白蓮もそれについて上っていく。

 

【星】「では」

 

 いつの間に用意していたのやら、三人分の器に酒をついでいく。

 

【白蓮】「はぁ…」

 

 白蓮がため息をつく。先ほどの言葉もあって、酒はそれほど得意ではないようだ。

 

 乾杯のように、俺達は互いの器をぶつけた。特に誰が音頭をとるわけでもない。静かに時間が流れて、それでもその酒は美味しいとおもえる味だった。

 

 

 

 

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・あとがき・

 

さて、なんとか2話投稿しました。和兎です。

 

白蓮メインで進めていくお話ですが、自然と星がくっついて回ってますね。

 

本当ならここまでで一話になるんですが、なにしろこれからつくって行くお話ですのであまりがんがん書けないです(´・ω・`)

 

ふつーふつーと言われ続けた白蓮ですが、このお話でちょっとでも脱ふつー、というか救われてくれるといいですね。

 

薫る空とあわせて、またこれから投稿していきますので、よろしくお願いしますm(__)m

説明
公孫賛√2話です。
最後は何気に桃園の誓い風にしたかった。

1話⇒http://www.tinami.com/view/99685

3話⇒http://www.tinami.com/view/100370
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コメント
救ってあげてください。やればできる子なんです。(ブックマン)
更新お疲れ様です。面白いです。楽しいです。次回も楽しみにさせていただきます。(トーヤ)
楽しく読ませていただきました。次回も楽しみにしています。・・・・一美と名乗ったらどうなったか気になりますww (黒猫)
次は桃香が来るのかな?次回が楽しみだ。(乱)
星が劉備のもとに行くのか、此処に留まるのか楽しみです。(韻)
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