近未来文明が残る惑星 第4話
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前回のあらすじ

 

惑星テラフェに現地調査にやってきたリックは、色々と世話になっている村で畑荒らしの話を聞く。

夜に畑で不審な物音を聞き、犯人と思われる人物を捕まえたが……

 

 

 

 

まだ夜が明けていない時間、3人は村はずれの畑に向かっていた。

 

リック「なんで村はずれの畑なんだ?」

瑠璃「あの畑にも作物被害があったの。それに畑を管理しているお婆さんしか普段は居ないから、夜になればいくらだって畑を荒らす事は出来ると思う。」

リック「そうか、カムイが居た畑には村の人が今夜も見張ってるしそこの畑にも行ってみるか。」

 

後ろからトボトボ歩いて付いてくるカムイにも話しかける。

 

リック「…なあカムイ、お前どこから来たんだ?」

瑠璃「見慣れない服着てるけど、リックと同じ遠くから来たの?」

 

カムイ「えっあっはい!…僕も自分がどこから来たのか分からなくて、それ以前に自分の名前も思い出すのがやっとで、お腹空いてひたすら歩いていた事しか覚えてないんだ…」

 

突然話しかけられて慌てるカムイと記憶喪失だったカムイに驚く2人

 

リック「記憶喪失かよ、うーん…そういう俺もここが本当に惑星テラフェなのか分からないし人の事あまり言えないか」

 

確かに惑星テラフェには無事到着した、しかしそこにはすでに滅んでいる地球のとある島国に存在した時代によく似ていた文明があった。確か惑星テラフェはまだごく一部の人間にしか存在が知られていない未知の惑星であり、地球によく似た文明があるのはおかしい。

体内に埋め込まれている通訳機でなんとか会話できているが、不安も多かった。

 

リック「あっ…そういえば!」

 

リックが何かを思い出したように顔を上げると、瑠璃の声が囁く

 

瑠璃「りく、あれってもしかして!」

 

瑠璃が指を指す先に背中に何か抱え込んでいる不審な人物がいた

 

リック「クソッ逃がすか!」

 

リックが勢いよく駆け出し犯人を捕まえようとするが、犯人と思われる大柄な男は右手には作物を刈る鎌を隠し持っていた。

 

リック「コイツ刃物を…!?」

 

そして近づいてきたリック目掛けて鎌を振り下ろす。

 

リックは自身の危機に目を瞑って、両腕で急所を防ごうと防御するその瞬間

 

大柄の男「うあああっなんだ!?手があああ!」

 

リックが予想もしない出来事に顔を上げる

鎌を持っている男の右手に何かが突き刺さって血が流れていた。

 

リック「何が起こったんだ!?これは氷?」

カムイ「リック大丈夫!?良かった無事だったんだね。」

リック「これお前がやったのか?」

 

カムイが心配そうに駆け寄る、男の手に突き刺さっていたのは鋭い氷の棘のようなものだった。

 

カムイ「リックが危ないから男の人を凍らせて動きを止めようとしてみたんだけど、失敗しちゃった…」

リック「凍らせようって、そんな事出来るのか?」

大柄の男「…うああ、小僧…よくも右手を!!」

 

右手の出血を抑えながら大柄の男がリック達を睨む

 

リック「なんで畑を荒らすんだ!皆迷惑してるんだぞ!」

 

男は左手でカムイを殴り掛かろうとした瞬間―――

男の後頭部に石が当たる

 

男が振り向いた先に瑠璃が居た。そして挑発しながらまた石を投げる

 

瑠璃「リックに怪我なんてさせない!…アナタみたいな卑怯な人は村から出て行って!」

 

瑠璃は勇気を振り絞り男に怒る

挑発が効いたのか男は瑠璃に向かって襲い掛かる、うっすらと瑠璃の口元が笑っていたのをカムイは見た。

そして男が少し土が凹んだ所を踏むと、勢いよく網がかかり男が身動き取れなくなった。

 

瑠璃「畑のお婆さんに猪用罠のこと聞いたの!暴れても無駄だよ」

 

いつの間にか畑の持ち主であるお婆さんまで作戦に協力していた

 

リック「瑠璃、なんで危ない事するんだ!怪我はしてないか?」

カムイ「有難う瑠璃、瑠璃が居なかったら僕らも危なかったよ」

瑠璃「うん、大丈夫。心配してくれてありがとう」

 

気が付くと日が出て辺りが明るく照らされていた。

 

 

その後、村の畑荒らしは男がやったと分かった。カムイは十分反省していた為、村の人もそれ以上責めるのをやめて、しばらく畑のお婆さんが預かる事になった。

 

瑠璃「お婆さん、大丈夫?カムイを預けちゃってもいいの?」

お婆さん「大丈夫よ、カムイちゃんとても優しいしちゃんと畑の手伝いもしてくれるから、逆に助かってるよ」

リック「そっか、なら大丈夫だな。これからも宜しくなカムイ!」

カムイ「うん、此方こそ宜しくお願いします!」

 

お婆さん「いい子なんだけれども…ただ…」

 

お婆さんがカムイの事を見ながら少し不思議そうな顔で呟く

 

お婆さん「あの子は何処から来たんだろうね?それに、あの子がいると時々家の中が外よりも寒く感じることがあるんだよ。前に氷の様な物を出して畑荒らしを捕まえただろう?その後も必要となれば、氷を手から出したり早く作物の種を発芽させることが出来たり、不思議な子だねぇ」

瑠璃「……」

 

 

 

畑荒らしの事件から4日後―――

 

リックは瑠璃の家で過ごしていると、家の外が少し騒めいていた。なんと城に仕える鷹羽が謁見の事で話があるらしく瑠璃の家まで態々訪ねてきた。

 

リック「あの人…確か前に町で…」

鷹羽「異国の者、しばらく待たせていてすまなかった。氏政様との謁見について報告がある、少しいいか?」

 

                     ――――

 

 

リック「じゃあ、本当に謁見できるんですか?」

鷹羽「ああ、氏政様も異国から来た者に興味があるようで、お前に会うのが楽しみだとおっしゃっていた」

瑠璃「凄いね!この国で一番偉い人に会うんだよ!失礼のないようにね!」

 

綺麗な服で行かなくちゃねとルンルン気分で兄の木タンスから服を漁る瑠璃をよそに、自分がなぜここに来たのか、遠く遙か宇宙から来た者であると伝えなければならない。

信じてもらえるか、受け入れてもらえるか…そもそも宇宙の事なんてまだ何も知らないんじゃないかと、考えれば考えるほど不安になるリック。

 

 

そして謁見する当日になった。

 

瑠璃の兄の綺麗な竹色の着物をなんとかリックの丈に合わせることができ、着させてもらった。

 

家から出ると村の人々が少し騒めいている、村の入口まで鷹羽が迎えに来ていたのだった。

瑠璃「私は付いていけないから、待ってるね。頑張って!」

カムイ「えっけん…?ってよくわからないけど、お土産楽しみにしてるね!」

 

見送りに来てくれる2人と村の人たちを見て複雑な気分になる。

一言でも受け答えを間違えれば即殺される、きっと自分の話は信じてもらえないと不安になっているリックを見た鷹羽は声を掛ける。

 

鷹羽「目的があるからここに来たのではないのか?何かをするのなら一人ではできない、その土地の人々の助けがいるのなら、しっかりと説明をして理解を得るべきだ」

 

鷹羽の思いがけない言葉にはっとさせられ、謁見をする覚悟が出来たリックは城に向かった。

 

 

 

 

鷹羽に案内されるまま城の中を歩いていく、皆見慣れない異国の者に興味津々だった。

そして謁見の間に辿り着く。広々とした大広間に何人の城に仕える武士が胡坐(あぐら)という独特の座り方をして氏政が来るのを待っていた。

 

リック「あの…皆さんと同じ座り方しないと駄目ですか…?ちょっと胡坐っていうのきついんですけれども…」

 

リックは斜め後ろに離れて座る鷹羽にプルプル身を震わせて言う

 

鷹羽「黙って…座っていろ…さもなくば今この場で斬るぞ」

鷹羽は活を入れる様に低い声でリックの申しを断る

 

リック「怖っ…凄い鋭い目で睨んできた…他の人たち…それになんか皆こっちジロジロ見てるし、大丈夫かよ…」

 

ザワザワと話し声が一気に止み静寂とした空気が流れた。

 

「すまない、少し遅くなった。…ほう、其方が鷹羽が言っておった異国の者か、なるほど」

 

リック(この人が…北条氏政…皆、胡坐したまま頭を下げている。俺もしなくちゃ)

リックも周りを見て頭を下げようとする…

 

北条氏政「よい、顔を見せろ。儂は回りくどい事は好かなくてな。早く其方の話が聞きたい、其方は何処から来たんだ?」

リック(いきなり悩んでた質問が来たー!?)

リック「じ、自分はこの国よりも遠い星から来ました。」

 

間に居た武士たちが騒めく

 

北条氏政「…言葉が通じるとは本当だったか、驚きだ。今まで異国の者を何人か見てきたが話す言葉が分からないものばかりで、会話に苦労した。其方はその心配が無さそうだな?…それで星とは天に浮かぶ星か?」

リック「はい、月よりも遠い星から来ました」

北条氏政「月よりも?おお……まあいい、とりあえず日ノ本の者ではない事は分かった」

 

そしてリックは意を決して自分の目的を語る

 

リック「…自分はこの星がどの様な環境か、文明があるのか調べに来ました。自分の要件は2つ、1つはこの町を中心に人々がどんな生活をしているのか、どんな環境なのか調査させてほしい事、もう一つは調査中に万が一外敵や獣に襲われた時に、自分を守ってくれる護衛が欲しい事です!」

 

静寂に包まれる

 

リック(しまった…一気に話し過ぎた。どうしよう…)

 

北条氏政「…そうか…この者だったらアレの正体が分かるかもしれんな……」

 

北条氏政はしばらく考え込んだ後、静かにリックに顔を向ける

 

北条氏政「陸(りく)と言ったか…其方が言いたい事はまあ分かった。もうよい、下がれ。鷹羽、後は頼んだ」

鷹羽「御意」

リック「えっあの……」

 

鷹羽に声を掛けられリックは急いで立ち上がるが、足が痺れて転んでしまった。

 

鷹羽「何している!?早く行くぞ」

リック「待ってください!足が痺れて…歩けない…」

 

鷹羽は仕方なく、リックの足の痛みが和らぐまで待ってから大広間を後にした。

 

      

                   ―――――

 

 

リックと鷹羽は村に戻る途中の城下町に寄っていた。

リックは小物屋が目に留まり、瑠璃に似合いそうなかんざしを選びながら少し落ち込んだ様子で鷹羽に声をかける。

 

リック「…あの…さっきは足が痺れてすみません。恥かかせましたよね?」

鷹羽「いや、気にするな。俺も足が痺れてるのに無理矢理歩かせようとしてすまなかった。」

リック「やっぱり信じてもらえなかったんでしょうか?怒らせてしまったのかな…」

鷹羽「…お前の話初耳だぞ。異国から来たっていうのは聞いたが、月から来たって…どういうことなんだ?それに調査?…お前は何者なんだ?」

リック「いや、月じゃなくて月よりも遙か遠くからです!」

 

質問ばかりする鷹羽を見てリックはやはり自分の話は、きっと誰一人理解できていなかったし、恐らくどんなに丁寧に説明しても文明の差で理解してもらえないんだろうと俯いた。

 

そして瑠璃とカムイにお土産を買い2人が待つ村に戻った。

 

 

 

                                        次回に続く

 

説明
閲覧有難うございます。
長い間更新が止まってしまい申し訳ありませんでした。
また再び定期的に話を更新する事を決めたので宜しくお願いします。

2021/8/8 誤字脱字等の為本文を少し編集しました。
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