英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜
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〜太陽の砦〜

 

「貴方達は一体…………」

「まあ、背後に兵士達を控えさせている事からしてクロスベルのVIP――――――もしかしたら、”六銃士”かその関係者だと思うよ。」

ヴァイス達の正体がわからないガイウスにアンゼリカは真剣な表情で自身の推測を口にし

「ええ…………アンゼリカの言っている事は当たっているわ。金髪の男性は”六銃士”の一人にしてクロスベル皇帝の一人でもある”黄金の戦王”ヴァイスハイト・ツェリンダー皇帝よ。」

「何だと…………!?」

「何でクロスベルの皇帝がこんな所に…………!?」

(ヴァイスハイト皇帝の傍にいる金髪の女性…………何となくだけど、メサイアに似ているような気がするのだけど…………)

(ひょっとしたらメサイアさんと血縁関係がある方かもしれませんね…………)

(しかもその横にいる騎士らしき女性は下半身が巨大な尻尾にしか見えない所からして、どう考えても異世界に存在する異種族の類なんでしょうね。)

サラの説明を聞いたユーシスとマキアスは驚きの声を上げ、マルギレッタに視線を向けたアリサの小声の言葉を聞いたエマはマルギレッタを見つめながら考え込み、セリーヌは目を細めてリ・アネスに視線を向けていた。

 

「フッ、俺に関しては自己紹介は必要なさそうだが、一応名乗っておこう。――――――クロスベル双皇帝が一人、ヴァイスハイト・ツェリンダーだ。」

「ヴァイスハイト皇帝が正妃の一人、リセル・ザイルードです。以後お見知りおきを。」

「ヴァイスハイト皇帝が側妃の一人にしてクロスベル帝国の経済方面の外交を担当しているマルギレッタ・シリオスと申します。」

「クロスベル双皇帝親衛隊副長にしてヴァイスハイト陛下の側妃の一人でもあるリ・アネスです。以後お見知りおき願います。」

(他の3人の女性はあの皇帝の妃とはね…………確かユーディットってカイエン公の娘とさっきの”六銃士”の一人もあの皇帝の妃らしいから、あの皇帝は妃を5人も娶っているから少なくてもとんでもない好色家である事は間違いないでしょうね…………)

(クッ…………ユーディット嬢だけに飽き足らず、あんなにもそれぞれ魅力的な部分があると思われる女性達を同時に娶るとは、さすがはエレボニアを滅ぼそうとする国の皇帝だけはあるね…………!)

(一体何に感心しているの、アンちゃん…………)

ヴァイス達が名乗った後ヴァイスの周りにいる女性達3人共ヴァイスの妃である事を知ったアリサ達がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中セリーヌは呆れた表情で呟き、悔しがっている様子のアンゼリカの小声を聞いたトワは疲れた表情で肩を落とした。

 

「ハハ…………まさかこんな所で再会する事になるとはね。ヴァイスとは”西ゼムリア通商会議”以来だが…………リセルさんとは、”影の国”以来になるね。」

「ええ…………オリヴァルト殿下の祖国とヴァイス様達が建国した新たなる国が戦争状態に陥った状態での再会は私個人としては非常に残念です。」

苦笑した後懐かしそうな表情で声をかけたオリヴァルト皇子の言葉に対してリセルは複雑そうな表情で答え

「耳が痛いね…………それにしても、ヴァイス。エレボニアの社交界では男性貴族達の憧れの的であったあのユーディット嬢を射止めたにも関わらず、リセルさんを含めた4人もの麗しき女性とまで結婚するなんて、かつて”影の国”で出会った転生前の君の”影の国”からの帰還後の活躍の中にあった10人以上もの女性達を侍らした事を再現するつもりかい?」

「ん?その口ぶりだと勘違いしているようだが…………俺の妃はリセル達だけじゃないぞ?俺の妃は全員で17人いる。」

「えええええっ!?き、妃が17人!?」

「リィンすらも足元にも及ばないとんでもない女タラシだね。」

「フィ、フィーちゃん!リィンさんにもそうですが、ヴァイスハイト陛下にも失礼ですよ!?」

リセルの言葉に対して疲れた表情で溜息を吐いた後に問いかけたオリヴァルト皇子の問いかけに答えたヴァイスの答えに仲間達と共に驚いたエリオットは思わず驚きの声を上げ、ジト目で呟いたフィーにエマは慌てた様子で指摘した。

 

「一応これでも、”娼館”には通っていないだけ転生前の時よりは”まだマシ”な状況ではあるのですけどね…………」

「ア、アハハ…………転生前のヴァイス様は”当時の私達”を侍らしていてもなお、”娼館”に頻繁に通っていらしていましたものね。」

「ですが今後の政策でもクロスベルの領土内に”娼館”を建てる計画を率先して行っていますから、”娼館”が建てばまた以前のように、”娼館”に通われるのでしょうね…………」

「フッ、何を当然の事を。”娼館”は男のロマンが詰まっているのだからな!」

疲れた表情で頭を抱えたリセル、苦笑しながら答えたマルギレッタ、呆れた表情で溜息を吐いたリ・アネスの言葉に対して堂々と答えたヴァイスの答えにその場にいる多くの者達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

 

「”娼館が男のロマン”って、これだから男は…………!」

「スケベ。」

「ちょっ、何でそこで僕達を睨むんだ!?」

「俺達が男だからと言って、男なら誰でも色に狂うと思う等、それはお前達”女”の偏見だ。」

我に返ったアリサとフィーはジト目でZ組の男性陣を睨み、睨まれたマキアスは慌て、ユーシスは呆れた表情で反論し

「クッ…………私は女でありながらも何故か不覚にもヴァイスハイト陛下の今の言葉が心に響いてしまったよ…………!」

「アンちゃんの場合はヴァイスハイト陛下と”同類”だから、心に響いたんだと思うよ…………」

真剣な表情で胸を押さえてのけぞったアンゼリカの様子にアリサ達が冷や汗をかいて脱力している中トワは呆れた表情で指摘した。

 

「ハハ…………そういえば、そちらのマルギレッタさんだったか。マルギレッタさんも転生前のヴァイスの事を知っているような口ぶりだったけど、もしかしてマルギレッタさん達も…………」

「ええ、私を含めたヴァイス様の多くの妃達はヴァイス様やリセルさんのように”メルキア皇帝”だった頃のヴァイス様達の妃達がそっくりそのまま転生した者達ですわ。」

「まあ、私やメイメイ殿達のような長寿の異種族という例外もいますけどね…………」

オリヴァルト皇子の疑問にマルギレッタとリ・アネスはそれぞれ答え

「まさか妃の方々まで、ヴァイスハイト陛下のような転生した人物達だったとは…………」

「やれやれ、生まれ変わってもなお、同じ男性と結ばれる事を望んだリセルさんを含めた多くの女性達にモテる方法を本気で学びたくなってきたよ…………」

「…………貴様の場合は、それ以前に学ぶべき事があるだろうが。」

二人の答えを聞いたエマは驚き、疲れた表情で呟いたオリヴァルト皇子にミュラーは顔に青筋を立てて指摘した。

 

「…………ひょっとして、メサイア――――――いえ、メサイア皇女殿下をクロスベル帝国の”皇女”として陛下達の養子にされたのも、その関係ですか?」

「フッ、”半分”は当たっているな。――――――メサイアは並行世界の過去の俺とマルギレッタの娘でな。俺達の死後、”諸事情”で城に居辛くなって、出奔したメサイアは旅先の転移門の事故でこちらのディル=リフィーナに並行時間移動したらしくてな。例え並行世界だろうと、メサイアが俺とマルギレッタの娘である事は変わらないから、養子として迎えたのだ。」

(メサイアにそのような過去があったとは…………)

(それ以前に並行世界で、それも過去からの移動とか非常識過ぎる…………)

(というかメサイアって、元々お姫様だったんだね…………物腰や口調からして、上流階級出身の人だとは思ってはいたけど…………)

サラの質問に答えたヴァイスの答えを聞いて真剣な表情を浮かべたラウラの小声の言葉に対してマキアスは疲れた表情で答え、エリオットは目を丸くして小声で呟いた。

 

「それとオリビエ、お前の身近にも俺とはタイプが違うが、多くの女性の心を掴む男がいたのだから、女にモテたかったら、まずはそいつから学べばいいのではないか?」

「私の?…………あー…………もしかして君が言っている人物って、リィン君の事かい?」

ヴァイスの指摘に対して不思議そうな表情をした後すぐに心当たりを思い出したオリヴァルト皇子は苦笑しながらヴァイスに確認し、二人の会話を聞いたアリサ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「ああ。何せあいつは現時点でメサイアを含めて8人もの女性を侍らせているのだからな。――――――おっと、リィンのハーレム要員になる事を希望しているミルディーヌ公女も含めれば9人か?ハッハッハッ、さすがは俺の未来の義理の息子だな!」

「ヴァイス様…………本人(リィンさん)がいない所で、その件を彼らに教えるのはさすがにどうかと思われるのですが…………」

オリヴァルト皇子の確認の言葉に頷いた後リィンの現状を教えて暢気に笑っているヴァイスにリセルは呆れた表情で指摘し

「は、8人!?」

「えっと………元々リィン君と”そういう関係”になっている女性ってエリゼちゃんとエリスちゃん、セレーネちゃんにメサイア皇女殿下で、そこにアルフィン殿下を加えてもまだ3人もの女性がわたし達の知らない間にリィン君と”そういう関係”になったって事だよね…………?」

「クッ…………まさかトールズからいなくなってからの短期間で、ハーレム要員を倍に増やすなんて、さすがはリィン君。君のどんな状況でも女性を惹きつけるそのハーレム体質には恐れ入ったよ。」

「ひ、人が心配している間に3人も増やすなんて…………!エリゼさんやセレーネ達は何をしていたのよ…………!?」

「まあエリゼ達がいても、リィンのあの”タラシ”な性格はどうしようもないと思うけど。」

ヴァイスの口から出た驚愕の答えに仲間達がそれぞれ驚いている中エリオットは驚きの声を上げ、トワは困った表情を浮かべて考え込み、アンゼリカは悔しそうな表情した後リィンを思い浮かべて感心し、アリサは身体を震わせながら全身に威圧を纏って怒りの表情で呟き、アリサの言葉に対してフィーはジト目で答えた。

 

「フッ、古来より”英雄色を好む”という諺があるだろう?リィンに限らず”英雄”は多くの女性達を侍らせて当然なのだから、それ程驚く必要はあるまい。」

「…………そうなのか?」

「そんな訳ないだろうが。例えばドライケルス大帝もエレボニアの”大英雄”ではあるが、妃は一人しか取っていないという話だ。」

静かな笑みを浮かべたヴァイスの指摘にアリサ達がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中不思議そうな表情をしているガイウスの疑問にユーシスが呆れた表情で否定した。

 

 

「さてと。緊迫した場を解す為の”雑談”はこのくらいにして、”本題”に入るか。――――――本来なら”敵国”であるお前達に教えてやる義理はないが、”影の国”でできた”友”に免じて”アルスター襲撃”関連で俺達が知る限りの情報を教えてやろう。――――――何が聞きたい?」

「そうだね…………それじゃあ、まずは何故”アルスター”の民達をクロスベルで匿ってくれている理由を教えてもらえないかい?」

ヴァイスの問いかけに対してオリヴァルト皇子は静かな表情で問い返した。

「フッ、何故も何も”アルスター”の民達を含めた”ラマール州”の民達は戦後、”クロスベルの民達になる事が決定している”のだから、俺達が未来のクロスベルの民達を匿う事は当然だろう?」

「ア、”アルスターの民達を含めたラマール州の民達が戦後クロスベルの民達になる事が決定しているって事”って…………!」

「…………既に”メンフィル・クロスベル連合がエレボニアを降した後の取り決め”もされていたのか。」

ヴァイスの答えにアリサ達が血相を変えている中エリオットは信じられない表情で声を上げ、ミュラーは複雑そうな表情を浮かべて呟いた。

 

「…………先程アルスターの民達から、護送の最中にも襲撃があったとの事ですが、その襲撃者達は何者だったのですか?」

「護送の際に襲撃してきた者達は複数の猟兵団とその”雇い主”を含めた裏組織、そして結社”身喰らう蛇”の執行者達です。」

「なお、クロスベルで再びの襲撃をした猟兵団の詳細は”西風の旅団”、”赤い星座”、そして”北の猟兵”で、”身喰らう蛇”の執行者は”道化師カンパネルラ”と”劫炎のマクバーン”との事ですわ。」

「という事はゼノ達に加えて”星座”まで護送の襲撃に関わってたんだ。」

「しかもノーザンブリアの連中も雇われて2度目の襲撃に関わっていたとはね…………」

「それに結社のあの”劫炎”まで襲撃してきたにも関わらず、”アルスター”の民達が無事だったのは、リィン達やメンフィル・クロスベル連合軍が”劫炎”を退けた事にもなるということになるが…………」

「そんなとんでもない連中が纏めて襲い掛かってきたにも関わらず撃退できるなんて、どれだけとんでもない強さなのよ、メンフィル・クロスベル連合は。」

アルゼイド子爵の問いかけに答えたリセルとマルギレッタの答えを聞いたフィーとサラは複雑そうな表情で呟き、考え込みながら呟いたガイウスに続くようにセリーヌは疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「そういえばZ組(お前達)の中には”西風の旅団”出身の者もいたな…………――――――襲撃の際に判明したのだが、”西風の旅団”出身であったお前にとって興味深い事実を教えてやろう。」

「…………何?」

ヴァイスに視線を向けられたフィーは真剣な表情でヴァイスを見つめ返したが

「襲撃した”西風の旅団”の者達の中に団長である”猟兵王”がいたぞ。」

「なお、”猟兵王”ルトガー・クラウゼルは”紫の騎神ゼクトール”の”起動者(ライザー)”である事も判明しました。」

「……………………ぇ……………………」

「何ですって!?」

ヴァイスとリセルが口にした驚愕の事実を知るとフィーは呆け、サラは血相を変えて声を上げた。

 

「”西風の旅団”の団長であり、フィーの育ての親でもある”猟兵王”…………確かフィーの話では2年前の”リベールの異変”で戦死したとの事だが…………」

「し、しかもそのフィーちゃんのお父さんが”騎神”の”起動者”でもあるなんて…………!」

「…………ちなみに何でその”猟兵王”とやらが”紫の騎神”の”起動者”だとわかったのかしら?」

ラウラは真剣な表情で呟き、エマは信じられない表情で呟き、セリーヌは目を細めてヴァイス達に問いかけた。

「アルスターの民達が乗った護送用のバスを襲撃しようとした所をエステル達が阻んで、そのエステル達に敗北した後撤退する為に”紫の騎神”を呼び寄せて”精霊の道”を発動して撤退した為、奴が”紫の騎神”の”起動者”である事が実際に、”赤い星座”と”西風の旅団”を同時に相手にしたエステル達の証言から判明した。」

「ハアッ!?それじゃあエステル達が二大猟兵団の猟兵達に加えてあの”猟兵王”まで撃退したんですか!?」

「カシウス卿のご息女達…………噂以上の相当な使い手のようですな。」

「ハハ、エステル君の仲間の中には子爵閣下よりも遥かに上の使い手もいるからね。多分だけど、その”猟兵王”を撃退したのはエステル君の仲間の一人である”彼女”の活躍によるものだと思うよ。」

「…………確かに”彼女”――――――フェミリンス殿なら、二大猟兵団の団長だろうと容易に撃退できるだろうな。」

ヴァイスの話を聞いたサラは信じられない表情で声を上げ、驚きの表情で呟いたアルゼイド子爵の言葉に苦笑しながら指摘したオリヴァルト皇子の話を聞いたミュラーは静かな表情でフェミリンスを思い浮かべた。

 

「ねえ…………本当に団長だったの…………?」

「さて。俺は”猟兵王”と顔見知りではなかったから俺自身ではその者が”猟兵王”であると保証できないが、その場にいた”猟兵王”と顔見知りの人物――――――”特務支援課”の一員であるランドルフ・オルランドがその者の事を”猟兵王”であると断定した様子だったから、恐らく”猟兵王”本人だと思うぞ?」

「ランドルフ――――――”闘神の息子”が…………だったら、その人は間違いなく団長なんだろうね…………でも、何で団長が生きて…………ちゃんとお墓も作って団長の遺体も埋めたのに…………」

「フィーちゃん…………」

亡き養父が蘇っているという事実を知って複雑そうな表情を浮かべているフィーをエマは心配そうな表情で見つめた。

「ヴァイスハイト殿の説明に補足をさせて頂きますが…………正確に言えば、”猟兵王”は”生者”ではない為、”猟兵王が生きている訳ではありません。”」

「”猟兵王は生者ではない為、猟兵王が生きている訳ではない”とは一体どういう事だろうか?」

「!まさか…………その猟兵王は”不死者”なの!?」

「ええ、その通りですわ。」

リ・アネスの説明を聞いたガイウスが不思議そうな表情をしている中察しがついたセリーヌは目を細めてヴァイス達に訊ね、セリーヌの推測にマルギレッタが肯定した。

 

「”不死者”って一体何なの?」

「”不死者”とは何らかの要因で死体から蘇った人――――――つまり、”ゾンビ”です。」

「ゾ、ゾゾゾゾ、”ゾンビ”!?」

「ひ、非常識にも程があるぞ!?」

「フン、今までさんざんその”非常識な出来事”を自分達の身で体験してきたのだから、”ゾンビ等今更”だろうが。」

トワの疑問に答えたエマの答えを聞いたエリオットとマキアスは表情を青褪めさせて声を上げ、ユーシスは呆れた表情で指摘した。

 

「団長がゾンビ…………でも、ちなみにそっちは何で団長がゾンビだと断定できたの?」

「俺達メンフィル・クロスベル連合にもそうだが、エステル達やロイド達の仲間の中にも生者と死者の見分けがすぐにできるエルフ族の血を引く者や天使族の者達もいるからな。その者達が”猟兵王”を含めた襲撃してきた者達の何人かが”不死者”であると指摘した時、襲撃者達は反論するどころか、肯定した上、実際に猟兵王を含めた”不死者”達と戦った者達が神聖魔術をその者達に命中させると”猟兵王”達には通常の魔獣に攻撃するよりも随分と効いたとの話だから、猟兵王達は間違いなく”不死者”であると断定した。」

「”神聖魔術”とは一体…………?」

フィーの疑問に答えたヴァイスの説明を聞いたラウラは不思議そうな表情で首を傾げ

「”神聖魔術”とはこのゼムリア大陸にとって異世界であるディル=リフィーナに昔から存在する魔術の一種の事で、”神聖魔術”による攻撃魔術は不死者や幽霊に対して最も効果的にダメージを与える事から、不死者や幽霊にとって”弱点”となる光の魔術なのですわ。」

「なるほどね…………要するに”神聖魔術”は”破邪”の魔法の類なのね。」

「そういえば”不死者”はフィーちゃんのお父さんの他にもいたような口ぶりでしたが…………フィーちゃんのお父さん以外はどの勢力の人物が”不死者”だったのですか?」

マルギレッタの説明を聞いたセリーヌは納得した様子で呟き、エマは真剣な表情で訊ねた。

 

「それを答える前にお前達が最も気になっているであろう猟兵達を雇って”第二のハーメル”を作ろうとした”元凶”を答える必要がある。――――――とはいっても、お前達も薄々とその”元凶”がどこの組織に所属している者なのか察しがついているのではないか?」

「そ、それって…………」

「”怪盗B”が言っていた”第二のハーメル”を作ろうとした結社と関係していた”とある組織”…………そして碌な調査もせずにリベールに冤罪を押し付けたオズボーン宰相の行動を考えると、心当たりは一つしかないね。」

「ええ…………”黒の工房”が”アルスター襲撃”の”真犯人”でいいんですか?」

ヴァイスの指摘を聞いて心当たりがあるアリサは不安そうな表情で答えを濁し、重々しい様子を纏って呟いたアンゼリカの言葉に頷いたサラは表情を引き締めてヴァイス達に訊ねた。

「はい。首謀者は”黒の工房”の”長”である”黒のアルベリヒ”。そしてアルベリヒ以外にも”黒の工房”に所属しているエージェントらしき使い手が2名、護送の際の襲撃に現れ、アルベリヒ達の話を聞いてすぐに”真犯人”が”黒の工房”である事を推理した”特務支援課”リーダーであるロイドさんの指摘に対してアルベリヒ達本人が認めました。」

「ロイド君が…………それにエステル君達だけじゃなく、”特務支援課”まで護送に関わっていたのか。」

リセルの説明を聞いたオリヴァルト皇子は目を丸くした後真剣な表情で呟いた。

 

「フッ、ロイド達だけじゃないぞ。護送の際にも襲撃が起こる事も想定して、予想される襲撃地点付近で待ち伏せをしていた俺達メンフィル・クロスベル連合軍に加えてセリカ達も襲撃者達を撃退してやった。」

「メンフィル・クロスベル連合軍どころか、セリカ殿達まで…………」

「ハハ…………エステル君達や君達どころか、セリカさん達とまで戦う羽目になった襲撃者の諸君は”哀れ”としか言いようがないね。」

静かな笑みを浮かべて答えたヴァイスの説明にミュラーは驚き、オリヴァルト皇子は苦笑した。

「まあ、襲撃者達――――――特に”北の猟兵”共に関しては”哀れ”だったのは事実だな。二大猟兵団の関係者や黒の工房、結社の使い手達は取り逃がしてしまったが、”北の猟兵”達は”北の猟兵”が数百人規模が参加する程の滅多にない大仕事のはずが依頼者達に”捨て駒”にされて俺達メンフィル・クロスベル連合軍によって一人残らず”皆殺し”にされたのだからな。」

「な――――――」

「す、数百人規模の”北の猟兵”達を皆殺しにしたって…………!」

「……………………何故、メンフィル・クロスベル連合軍はそのような惨い事を行ったのですか?護送の際の襲撃を想定していた事を考えると、陛下達も相手の戦力を予め把握し、その戦力を上回る戦力で反撃をしたと思われるのですから、捕縛する余裕はあったと思われるのですが。」

不敵な笑みを浮かべたヴァイスの答えにその場にいる多くの者達が驚いている中サラは絶句し、エリオットは信じられない表情で声を上げ、アルゼイド子爵は真剣な表情でヴァイス達に訊ねた。

 

「逆に聞くが何故雇われただけで、重要な情報も持っていない”猟兵という名の賊”如きの為に捕縛する労力や捕縛した猟兵達を生かす為の無駄な浪費を割かねばならない?”賊”は民達の生活を脅かす存在なのだから、こちらの世界の場合は殺すのが手っ取り早いだろうが。」

「……………………っ!」

「サラ…………」

ヴァイスが口にした冷酷な答えにアリサ達がそれぞれ驚いている中唇を噛み締めて顔を俯かせて身体を震わせているサラの様子に気づいたフィーは辛そうな表情でサラを見つめ

「ヴァイスハイト陛下は”この世界の場合”と言っていますが、異世界だと”賊”の処遇はどうなるんですか…………?」

「ディル=リフィーナの場合ですと”賊”を殺す以外の処罰を受けさせる場合、”犯罪奴隷”として奴隷商人に売られるか、もしくは一生死ぬまで鉱山等で強制労働させ続けられることになるかのどちらかでしょうね。」

「…………なるほどね。異世界ではゼムリア大陸ではとっくに廃れた文化がまだ残っているから、メンフィルも和解条約であんなとんでもない条件をつきつけてきたのね。」

複雑そうな表情をしたガイウスの疑問に答えたリ・アネスの答えを聞いたセリーヌは呆れた表情で呟いた。

 

「まあ、そもそも”北の猟兵”達はユミルの件でメンフィルが”北の猟兵という存在自体をメンフィルの敵”として認定していたから、どの道メンフィル・クロスベル連合軍が集結しているクロスベルの領土内で襲撃してきた時点で連中の命運は尽きたと言っても過言ではないだろう。」

「メ、”メンフィルがユミルの件で”北の猟兵という存在自体をメンフィルの敵”として認定していた”って………」

「父上の愚かな判断によって、雇われていただけの北の猟兵達まで父上のようにメンフィルの”逆鱗”に触れてしまったのか…………」

ヴァイスの説明を聞いたエリオットは不安そうな表情をし、重々しい様子を纏って呟いたユーシスは辛そうな表情でサラに視線を向け

「…………まさかとは思いますが、メンフィル帝国政府はエレボニアのように既にノーザンブリア自治州政府にも”ユミル襲撃”の件に対する賠償や謝罪等も要求しているのでしょうか?」

ある事に気づいたアルゼイド子爵は真剣な表情でヴァイス達に訊ねた。

 

「フッ、ノーザンブリアの場合はエレボニアの時と違って”要求”という生易しいものではない。――――――”命令”と”報復宣告”だ。」

「……………………メンフィル帝国政府は一度目の”ユミル襲撃”に対する賠償として、ノーザンブリア自治州政府に襲撃をした猟兵達を含めた北の猟兵――――――つまり、アルバレア公爵に雇われていた猟兵達全員を処刑し、その証拠として処刑した猟兵達の首をメンフィルに渡すか猟兵達の身柄をメンフィル帝国政府に引き渡す事と猟兵団”北の猟兵”の解散を”命令”し、”命令”に従わなければメンフィル帝国軍がノーザンブリア自治州に”ユミル襲撃”に対する”報復”としてノーザンブリア征伐を行う事を宣言しましたわ。」

「それとエレボニア帝国政府も”ユミル襲撃”の件でメンフィル・クロスベル連合と戦争になった事や自国の領土であるケルディックを焼き討ちにした事に対する莫大な賠償金をノーザンブリア自治州政府に要求し、要求に応じなければ相応の”報い”を受けさせる事を宣告したとの事です。」

「メ、メンフィル帝国政府だけじゃなく、エレボニア帝国政府までノーザンブリア自治州に”ユミル襲撃”の件で責任を要求していたなんて…………」

「どうやらエレボニアだけじゃなく、ノーザンブリアまで滅亡の危機に陥ってしまっていたようだね…………」

「…………貧困に喘ぎ、”北の猟兵”達の稼ぎで生き続ける事ができるノーザンブリアにとっては、両帝国政府の要求や指示はどれも受け入れられないものだろうから、ある意味エレボニアよりも厳しい状況かもしれん。」

「……………………っ!」

「サラ教官…………」

ヴァイスの後に答えたマルギレッタとリセルの説明を聞いた仲間達がそれぞれ血相を変えている中トワは不安そうな表情で呟き、アンゼリカとミュラーは重々しい様子を纏って呟き、その場で叫んでヴァイス達に詰め寄って怒鳴りたい気持ちを必死に抑えている様子のサラをアリサは辛そうな表情で見つめた。

 

「…………ヴァイス、ノーザンブリアの件で、せめて君達がリウイ陛下達を説得してメンフィルの怒りを抑える事はできないのかい?幾らアルバレア公に雇われていたとはいえ、エレボニアの事情による”とばっちり”でノーザンブリアや”北の猟兵”がそのような悲しい結末を迎える事は避けたいんだ…………」

「あのな…………”アルスター”の民達を虐殺する為だけにクロスベルに潜入して、クロスベルの領土内で襲撃事件を起こされたクロスベル帝国政府(おれたち)にそれを頼むのか?――――――さっきは説明しなかったが、”北の猟兵”達が襲撃する際クロスベル帝国軍の到着を遅らせる為に帝都となったクロスベルでも騒乱を起こすつもりで、”北の猟兵”の別働隊がクロスベル市の地下に広がる”ジオフロント”やクロスベル近郊の山道に潜伏して、メンフィル・クロスベル連合軍に加えてクロスベル警察、警備隊、そして遊撃士協会が協力してその連中を制圧もしくは殲滅したんだぞ。クロスベル帝国政府もメンフィル帝国政府と共にノーザンブリア自治州政府に賠償等を要求しないだけでも、ノーザンブリア自治州政府には感謝して欲しいくらいだ。――――――そもそも、メンフィルの件がなくても、お前の祖国が結局ノーザンブリアを滅ぼす事になると思うのだが?」

オリヴァルト皇子の頼みに対してヴァイスは呆れた表情で指摘し

「それは…………」

「アルスターの民達の虐殺を成功させる為に、北の猟兵達はクロスベルでも騒乱を起こそうとしていたのですか…………」

「結局は他人の血でミラを稼ごうとしていたあいつらの”自業自得”で、ノーザンブリアはいずれメンフィルかエレボニアに侵略されるって事ね…………フフ…………結局パパ達のやった事はノーザンブリアの寿命を少し伸ばしただけの結果に終わりそうね…………」

「サラ…………」

ヴァイスの指摘と説明に対して反論できないオリヴァルト皇子は答えを濁し、ラウラは複雑そうな表情を浮かべ、寂しげに笑っているサラをフィーは心配そうな表情で見つめていた。

 

「話を”黒の工房”の件に戻すが…………どうやら”猟兵王”を含めた”不死者”の登場には”黒の工房”が関わっているらしくてな。しかも”黒の工房”の関係者の一人である使い手もその”不死者”の一人の上、もう一人の使い手はその使い手に対するリィンとセレーネの口ぶりからしてリィンとセレーネの知り合いのようだったから、その人物はお前達にとっても知り合いかもしれん。」

「ええっ!?く、”黒の工房”の関係者がリィンとセレーネの知り合いって………!」

「リィンやセレーネの知り合いって事は特別実習や内戦でリィンやわたし達が知り合った人物…………ううん、最悪の場合トールズの関係者かもしれないね、その人物は。」

「…………ヴァイス。そのリィン君達と知り合いらしき”黒の工房”の関係者は一体何者なんだい?」

ヴァイスが口にした驚愕の事実にアリサ達がそれぞれ血相を変えている中エリオットは驚きの声を上げ、フィーは真剣な表情で呟き、オリヴァルト皇子は表情を引き締めてヴァイス達に訊ねた。

 

「件の人物は”銅のゲオルグ”と名乗った人物だが…………リィンとセレーネはその人物に対して別の名前でこう呼んだぞ。――――――『ジョルジュ先輩』と。」

「……………………ぇ………………………………」

「な――――――――――――」

「ジョ、ジョルジュ先輩が”黒の工房”の…………!?」

「嘘…………だろう…………?」

ヴァイスの答えに仲間達が再びそれぞれ血相を変えている中トワは呆けた声を出し、アンゼリカは絶句し、アリサは信じられない表情で声を上げ、マキアスは呆然とした様子で呟いた。

「それと残り一名の”黒の工房”の使い手――――――”蒼のジークフリード”と名乗った”不死者”でもある人物ですが、この人物は撤退する際に”猟兵王”のように”騎神”の”精霊の道”を発動してアルベリヒやゲオルグと共に撤退しました。なお、その”騎神”は実際にジークフリード達と戦ったリィンさん達の証言から、”蒼のジークフリード”は”蒼の騎神オルディーネ”の”起動者”である事が判明しています。」

「ええっ!?あ、”蒼の騎神”という事はまさか、その”蒼のジークフリード”という人物は…………!」

「……………………猟兵王のように不死者となったあのバンダナ男――――――クロウの可能性が非常に高いって事になるわよね…………」

リセルの話を聞いたエマは驚きの声を上げ、セリーヌは目を細めて呟いた。

 

「そちらの使い魔が今言ったジークフリードの件は”可能性が非常に高いではなく、確実”だ。実際にリィンがゲオルグにジークフリードが帝国解放戦線リーダー”C”――――――クロウ・アームブラストの遺体を使った不死者なのかという推測に対してゲオルグは肯定したのだからな。」

「そ、そんな…………それじゃあ死んだはずのクロウまで…………」

「オレ達の知らない所で、クロウやジョルジュ先輩の身に一体何があったんだ…………?」

ヴァイスの説明を聞いたエリオットは悲痛なそうな表情をし、ガイウスは複雑そうな表情で疑問を口にし

「さてな。それについてはゲオルグ達は何も答えなかったが、リィン達から後で聞いたがジークフリードの場合は猟兵王のようにかつての”クロウ・アームブラストとしての人格ではなかった”と言っていたから、ジークフリードに関してはクロウ・アームブラストの遺体を利用しただけの”別人”と思った方がいいかもしれんな。」

「そのジークフリードとやらがクロウの人格ではないという事は、まさか”黒の工房”がクロウを”不死者”とやらにする際に暗示等の何らかの手段でクロウの人格を変えたのか…………?」

「…………恐らくは。もしくは最悪の場合、クロウさんを”不死者”にした時点でクロウさんの人格は最初から存在しなかった事も考えられます…………実際にクロウさんは既に死んでしまったのですから、クロウさんの人格を含めた”魂”が冥府に向かった事も十分にありえますし…………」

「クロウ君の人格が…………それにジョルジュ君がどうして…………」

「……………………なるほどね。今までの話と”煌魔城”が消滅した後のジョルジュの行動を考えれば、ジョルジュの行動とそのジークフリードとやらの登場に繋がるね。」

ヴァイスの話を聞いて厳しい表情を浮かべて推測したユーシスの推測に対してエマは辛そうな表情で頷き、トワは悲しそうな表情で呟き、アンゼリカは重々しい様子を纏って呟いた。

 

「それは一体どういう事なのかしら?」

「……………………サラ教官は覚えていませんか?”クロウの葬式を手配したのは誰であった”のかを。」

サラの問いかけに対してアンゼリカは真剣な表情を浮かべて問い返した。

「ぁ…………」

「…………そういえばクロウの葬式を手配したのはジョルジュ先輩だったな…………」

「ん…………多分だけど、その時にクロウの遺体を偽物にすり替えたのかもね。」

「それに確か正規軍にオルディーネの保管の交渉や手配をしたのもジョルジュだったわね…………」

「それらの事実を考えるとジョルジュ先輩は最初から”黒の工房”の関係者だった疑惑が考えられますよね…………?」

アンゼリカの言葉を聞いたアリサは呆けた声を出し、ラウラとフィー、サラとマキアスはそれぞれ複雑そうな表情で呟いた。

 

「”黒の工房”と言えば…………先程ティーリアが内戦で貴族連合軍の”裏の協力者”と協力していた”黒の工房”の関係者のアルティナという少女がリィン達と共にいる話を聞いていますが…………何故敵である”黒の工房”の関係者である彼女がリィン達と共に?」

「アルティナはクロスベルでの迎撃戦の際に”パンダグリュエル”に乗船していてな。ルーファス・アルバレアがパンダグリュエルから離脱する際に護衛として同行して離脱用の飛行艇が保管されている格納庫へと向かったとの事だが、予めルーファス・アルバレアの行動を予測して格納庫に先回りして格納庫にいる兵達を殲滅した後ルーファス・アルバレア達を待ち構えていたリィン達と戦闘になり、ルーファス・アルバレアがリィンに討ち取られ、アルティナ自身もリィンの仲間達との戦闘に敗北後リィン達に投降してメンフィルの捕虜になったとの事だ。」

「そしてメンフィルの捕虜になった彼女は自身が持つ情報を全てメンフィル軍に提供させられた後”ユミル襲撃”の際にエリス嬢を拉致した超本人である彼女に処罰をリウイ陛下達がリィンさん達”シュバルツァー家”の関係者に委ねた際、リィンさん達はまだ幼い少女であるアルティナさんを保護する為に”シュバルツァー家の使用人として働かせるという処罰内容”を名目にして彼女の身柄をメンフィル軍から引き取り、リィンさん達から身柄を引き取られたアルティナさんはシュバルツァー家の使用人としてリィンさん達をサポートする為にエリス嬢達のようにメンフィル軍の”義勇兵”としてリィンさんの部隊の所属する事になったのです。」

「そのような経緯が…………」

「しかも兄上はクロスベル侵攻軍の指揮を執る総司令の立場でありながら、自分だけ助かる為に戦場から離脱するという貴族としてだけでなく、帝国人として恥晒しな事まで行おうとしていたのか…………」

「ユーシス…………」

ガイウスの疑問に答えたヴァイスとリセルの説明を聞いたラウラは驚き、複雑そうな表情で呟いたユーシスの様子をエリオットは辛そうな表情で見つめた。

 

「…………それにしてもルーファス卿の行動を分析した上での待ち伏せか。今までのリィンらしくないやり方だな。」

「確かにそうですよね…………?状況が状況とはいえ、特別実習や内戦での作戦行動も奇襲ばかりだった上、そもそもそんな高度な戦術は2年生のわたし達ですらも習わない戦術ですし…………」

「…………多分だけど、リィンがそんな腹黒い作戦を思いつけたのは”もう一人のリィンの担当教官”の影響じゃないかしら。」

ミュラーの指摘に頷いたトワが戸惑いの表情で考え込んでいる中事情を察したサラは苦々しげな表情で推測を口にした。

「も、”もう一人のリィンの担当教官”ってセシリア将軍の事ですよね?」

「確かにその可能性が一番考えられるわね。あの女将軍はメンフィル軍の”総参謀”を任せられる事からして、戦術の知識は明るいでしょうね。」

「そしてそのような者から”軍人”として学ぶべき事を教わったリィンも間違いなく、セシリア将軍の薫陶を受けているのであろうな。」

「それは……………………」

「ま、セシリア将軍は軍の中でもトップクラスの地位についている”戦争分野に関してプロの中のプロ”なんだから、少なくても”教官としての能力”は遊撃士のサラじゃ逆立ちしてもセシリア将軍に勝ち目はない事は最初からわかりきっていた事実だね。」

サラの口から出たある言葉を聞いたアリサは不安そうな表情でセシリアを思い浮かべて呟き、静かな表情で推測したセリーヌとアルゼイド子爵の推測を聞いたエマは複雑そうな表情で答えを濁し、冷静な様子で呟いたフィーの分析を聞いたアリサ達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

 

「うっさいわね!白兵戦だったら、勝負の行方はわからないわよ!」

「”教官としての能力”ではなく戦闘能力に頼っている時点で、既に”教官としての勝負には負けている”と思うのだがな。」

「え、えっと………話が逸れちゃいましたけど、アルティナちゃんはジョルジュ君達の事について何か知っているんですか?」

フィーの分析に対して顔に青筋をたてて反論したサラの答えにユーシスが呆れた表情で指摘し、困った表情を浮かべたトワは無理矢理話を戻してヴァイス達に訊ねた。

 

「リウイ達の話だと、アルティナは貴族連合軍に派遣された時点で”黒の工房”にいた頃の記憶は”黒の工房”の関係者達によって消されていたそうだから、”黒の工房”について大した情報は持っていなかったそうだ。」

「記憶が消された件に関してはミリアムちゃんと同じなんですか…………」

「――――――何にせよ、いずれジョルジュと再び会った時は”力づくでも”問い質す事ができたね。」

「アンちゃん…………」

ヴァイスの答えを聞いたエマが複雑そうな表情をしている中真剣な表情で自身の両手の拳を打ち付けたアンゼリカの決意を聞いたトワは辛そうな表情を浮かべた。

 

「”アルスター襲撃”関連でお前達に提供できる情報はこのくらいだ。――――――次は俺がオリビエとお前達に俺がお前達に対して抱いている疑問に答えてもらおうか。」

そしてヴァイスは真剣な表情でオリヴァルト皇子達を見回してオリヴァルト皇子達に対する質問を問いかける事を口にした――――――

 

 

 

説明
第31話
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