真・恋姫†無双-白き旅人- 第九章 |
「それで、次は何処に向かうんだ?」
それは、建業を出発する前日のこと
宿屋の一室の中、華雄の言った一言から始まった
「次、か・・・」
この言葉に、一刀は腕を組み小さく呟いた
それから、雛里を見つめフッと微笑む
「蜀の都、成都・・・なんて、どうかな?」
「あ、あわわ!?
成都ですか!?」
“いったい、どうしてですか?”と、雛里
よほど、その言葉に驚いたのだろう
それに対し、一刀は“ちょっとね”と笑う
「実は、“荊州”に用事があるんだけどね
その前に、成都でも荊州の情報を聞いておきたくてさ
このまま行くのも、ちょっと不安だし」
「確かに、まだ荊州は不安定な状況やしなぁ
色々、知っとくにこしたことはないやろ」
霞は、そう言って納得したよう頷く
そんな彼女のすぐ傍、雛里は考えるよう俯き
それから、“そうですね”と声をあげる
「それなら、少し急がなくてはなりませんね
あの、えっと、“ガチムチ虎さん”、でしたっけ?」
「違う、確か“こんにゃく”だ」
得意げな華雄の一言
雛里は、“そうでした”と笑う
「そうです、“こんにゃくさん”です
その人を私たちは魏国に送ったじゃないですか」
「あ〜、送ったな
確か、“全裸に兜だけ装着しお腹には『曹操は儂の女』と書かれた状態で、ウホッでガチムチなイイ男達の手によって魏国にまで送ったんだっけ”」
その通り
因みに、こんにゃくではなく“厳白虎”である
「それが魏に到着すれば、魏国も“天の御遣い”の存在に気付くことでしょう
それに、呉で起きた問題についても
そうなれば当然、各国の皆さんは急ぎ自国へと帰国する準備を始めると思われます
そして・・・もしかしたら、魏国は一刀さんの捜索をはじめるかもしれません」
「かもってか、やるだろうなぁ・・・はぁ」
「そうやねぇ・・・確実に、一刀を探すやろ
それにあの時、ウチも調子乗って名乗り上げてまったしなぁ」
消えたはずの天の御遣い
その傍らに、魏国を代表する将軍である張遼がいた
さらにいえば、蜀を代表する軍師である鳳統までいたのだ
話題にならないほうが無理な話である
「だとすれば、呉と蜀にも手が回る可能性があります
その前に・・・急いで、蜀に向いましょう」
雛里の言葉
“そうだね”と、一刀は溜め息と共に吐き出す
と、その隣で華雄もまた息を吐き出しながら呟いた
「しかし・・・そこまで慌てることもないだろう
此処から魏国まで、かなりの距離がある
“こんにゃく”が魏国に着くのは、恐らくは我々が蜀に着くのと同じくらいじゃないのか?」
「そうですね・・・早くても、それくらいでしょうか」
“なら、大丈夫だろ?”と、華雄
それに対し、一刀はフッと笑う
「ま、早く着くにこしたことはないよ
とにかく、目的地も決まったし
今日はもう、ゆっくり寝よう」
一刀の言葉
これで、その日はお休みとなった
「けど、なんだろ・・・なんか、嫌な予感がするんだよなぁ」
しかし・・・その時、彼は知らなかった
彼らの、その考えに
“予想外の事態”
それが・・・二つも、待ち受けていることを
一つは、その翌日
彼らの旅に合流することになる、小覇王こと雪蓮の存在
そして、もう一つは・・・
≪真・恋姫†無双-白き旅人-≫
第九章 いざ、成都へ〜女は帰れと、イイ男は笑う〜
ーーーー†ーーーー
「天の御遣い・・・アンタは、“イイ男”を舐めている」
ビッと指を差し、イイ笑顔を浮かべ言ったのは
青く輝くツナギを身に纏う、その笑顔に負けないくらいのイイ男である
一方その笑顔とは対照的に、彼のその向かい側
玉座の間に座る、金髪クルクル頭の少女は引き攣った笑みを浮かべていた
彼女の名は曹操、真名を華琳
魏国の王にして、大陸の覇王である
「おっと、すまない・・・魏国についた途端、周りには女しかいないもんだから少し気落ちしてしまってな」
「い、いえ、構わないわ
気にしないでちょうだい」
華琳の言葉
それに対し、“流石は魏王さまだ”とイイ男は笑う
「それじゃ、これが呉からの荷物だ
受け取ってくれ
詳しい事情は、この手紙に書いてある
俺が頼まれたのは、この男と手紙を魏国に届けることだけだからな」
「わかったわ」
差し出されたのは手紙と、なぜか“全裸に兜だけ装着しお腹には『曹操は儂の女』と書かれた状態の男”
華琳は傍に控えていた春蘭に合図し、彼女は手紙を受け取り何故か頬を赤くしハァハァと荒く息をする厳白虎を蹴とばしてから華琳に手紙を渡した
「ありがとう、春蘭
それから貴方・・・名前は、何と言ったかしら?」
「阿部たk・・・いや、名乗るほどの者でもないさ
ただの、イイ男だよ
勿論、“モノ”は凄いんだがな」
「そ、そう・・・まぁ、遠路はるばるご苦労様
建業からなら、相当時間がかかったでしょう」
「いや、三日だが」
「三日!?」
ザワリと、周囲で驚きの声があがる
そんな中、とうの本人はというと涼しい顔をしたまま“おいおい”と呆れたよう呟いた
「言っただろ、イイ男を舐めすぎだって
そこに男がいるんなら、おれ達は何だってできるんだぜ?
勿論、“ナニ”だってな」
そう・・・これが、一刀達にとってもう一つの予想外な出来事
僅か三日で、厳白虎が魏国へと着いてしまったのだ
それを運ぶ(食べる)、イイ男達の力によって・・・
「そ、そう・・・ととと、とにかく褒美をあげましょう
何がいいかしら?」
「いや、いらないさ
ただ帰り際、ちょっとこの国を観光して行こうと思っていてね」
「そ、そう・・・」
言って、玉座の間から退室しようと歩き出すイイ男
しかし、彼はその出口でピタリと足を止める
「それはそうと、魏王・・・」
それから・・・ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、こう言ったのだ
「この国のノンケ・・・全て喰ってしまっても、構わんのだろう?」
魏国の男達に、凄まじい死亡フラグが立った瞬間だった・・・
ーーーー†ーーーー
「な、何なのだあの男は・・・」
と、春蘭が引きつった表情でいったのも無理はない
特に彼女なんて、出会いがしらに“女は帰れ”と言われたのだ
その後に一悶着あったのは言うまでもない
「しかし、建業から三日だと?
そのような奴ら、我が国にいたか・・・?」
そう零したのは、呉国の王として魏国にやってきていた孫権
真名を蓮華である
その言葉に、周りの呉国の者も同意したように頷く
建業から魏国まで、僅か三日
驚くな、というほうが無理なことを平然とやってのける
それがイイ男という存在なのだ
「そういえば、華琳さん
お手紙、なんて書いてあったんですか〜?」
と、聞いたのは蜀の王
劉備、真名を桃香である
しかし、彼女の問いも空しく・・・華琳は、手紙を見つめたまま固まっていた
いや、その手が微かに震えている
「華琳様・・・?」
様子がおかしい
そう思い、彼女の隣にいた秋蘭は声をかける
其の声に対し、未だ震える声もそのままに
彼女は、言ったのだ
「一刀が・・・帰ってきた」
「っ・・・な!!!??」
言葉を失う面々
その視線を一身に浴びたまま、彼女が未だ見つめる手紙
その書き出しは、以下の通りに始まっていた
“天の御遣い、建業の危機に参上す”
ーーーー†ーーーー
「なんて、ことなの・・・」
呟き、彼女はその手紙からようやく目を離した
その手紙には、本当に様々なことが記されてあった
“皆が留守の建業に、厳白虎という者が『天の御遣い』を名乗り山越の兵を率い襲い掛かってきたこと”
“雪蓮が、政務をサボり酒を飲んでいたこと”
“その厳白虎の前に、本物の天の御遣いである【北郷一刀】が現れたこと”
“雪蓮が、竹簡を投げて遊んでいたこと”
“颯爽と現れた天の御遣いは、炎や謎の煙を操り厳白虎を懲らしめたということ”
“雪蓮が、一緒になって厳白虎を虐めていたこと”
“その御遣いの一行には、あの【張遼】、さらに後でわかったのだが【鳳統】がいたこと”
“あと一人、斧を持った人がいたが名前は【華なんとか】しか覚えていないということ”
“その事件がきっかけで、山越のほうから呉との友好関係を結びたいとの提案が出たこと”
“天の御遣いがボソッと、『面倒事は、人に押し付けるに限るよね』と言っていたこと”
“気付いたら、『旅に出ます♪』という手紙を残し雪蓮が消えていたということ”
“最近、胃が痛くて眠れないということ”
“雪蓮が消える直前、『成都、ねぇ』と雪蓮が怪しげな笑みを浮かべ呟いていたということ”
“胃だけでなく、頭も痛くなってきたこと”
“もう、故郷に帰りたいということ”
因みに・・・この手紙を書いたのは、孫呉の“次代を担う才人”にして“苦労人”こと亞莎である
その文面から伝わってきた彼女の想いに、思わず冥琳が涙を流すほどに
・・・胃のあたりを抑えながら
「私たちが此処に集まっている間に、とんでもない事態が起こっていた様ね」
華琳の言葉
それに、蓮華は頷いた
「そうだな
しかし・・・こうなった以上、一度我々は自国へと帰ろうと思う
民も心配しているだろうし、なにより山越からの提案について話し合う必要があるからな」
「そうね・・・桃香は、どうするのかしら?」
「私たちも、一度帰ります
その・・・雛里ちゃんのこと、気になるし」
桃香の言葉
それに、蜀の面々は同じように表情を曇らせる
一年前・・・雛里は、蜀を飛び出した
その理由を、蜀の面々は知らなかったのだ
彼女が置いて行った手紙には、“白い流星”について一切記されていなかったのだから
「それについては、こちらも同じね
まさか一年前に消えた霞が、一刀と一緒にいるなんて・・・」
そして彼女の言うとおり、それは魏国も同じだった
一年前に姿を消した霞がまさか御遣いと一緒にいるなど、想像すらしていなかったのだから
「でも、ちょっとおかしいですね〜・・・」
「風・・・」
そう言ったのは、魏国の軍師である程cこと風である
彼女は眠たげな瞳もそのままに、言葉を紡いでいく
「何でお兄さんは、建業にいるんでしょう?
いえ・・・もっと言ってしまえば」
〜お兄さんは何故、風達のところに帰ってこないのでしょう?〜
“痛いところをつかれた”と、華琳は苦笑する
それは、彼女も気にしていたところだ
もし仮に一刀が帰ってきたのが、その建業での事件の直後だったとしても
それならば、この厳白虎と一緒にこの魏に戻ってこればいいのだ
しかし彼は、事件の翌日には建業から去っていったという
「そうですね
考えれば、おかしな話です
一刀殿が、すぐに我らのもとへ帰ってこないなど」
風の言葉
同意するよう呟いたのは、郭嘉こと稟だ
「もしかして・・・」
その稟の一言
それに許緒、真名を季衣は泣きそうな表情を浮かべ・・・
「もしかして兄ちゃん・・・僕たちのこと、嫌いになったのかな?」
「・・・っ!」
そう、言ったのだ
それは、此処にいる魏国の皆が
薄々、思っていたこと
彼が此処に帰ってこないのはもしかして・・・
「そんなはずはないっ!!」
ふと、叫んだのは楽進こと凪だった
彼女は強く拳を握り締めたまま、玉座の間に響くほどの声で叫んだのだ
それから、華琳の前で大きく頭を下げる
「華琳様!!
今すぐ私に、隊長の捜索をご命じ下さい!
必ず・・・必ず、隊長を連れ戻してみせますっ!!」
「う、ウチも!!
ウチも、一緒に行くで!!」
「沙和もなのっ!!」
凪の行動に、咄嗟に反応したのは彼女の親友にして同期
李典こと、真名を真桜
于禁こと、真名を沙和の二人である
凪・真桜・沙和の三人
北郷一刀率いる、警邏隊の三人だ
彼を探したいという想いは、人一倍強いのだろう
もっとも、その想いは・・・“彼女達だけではない”
「駄目だ」
「・・・!!」
ふいに、響いた声
凛とした、美しい声の先
彼女は・・・春蘭は、真剣な表情を浮かべ立っていた
彼女はそのまま玉座に座る主のもとへと歩み寄ると、深々と頭を下げたのだ
「華琳様・・・北郷の捜索
私と、秋蘭にお任せください」
「春蘭様っ!?」
突然のことに、凪は驚きの声をあげる
いや、凪だけではない
この場にいるもの皆、驚いたように目を見開いていた
「華琳様・・・私からもお願いします」
「秋蘭・・・」
そんな中、秋蘭もまた姉と同じように頭を下げる
頭を下げる、二人のことを
華琳は、しばし見つめ続ける
「春蘭・・・貴女、どうして」
そのまま、零れ出た呟き
それに対し、彼女は顔をあげ苦笑いを浮かべ言う
「思えば、あ奴とは・・・まだ我らが3人しかいなかった頃からの付き合いでした」
「そうね・・・」
“そうだったわね”と、華琳は笑いを零す
つられ、秋蘭もまた笑っていた
そんな中、春蘭は柔らかな笑みを浮かべたまま話を続ける
「だからこそ、あ奴のことは・・・よく、わかっているつもりです」
「春蘭・・・」
「あ奴がすぐに此処に帰ってこないのには、きっと理由があるんだと思います
その理由が何のか、そのことはわかりません
それでも、くだらない理由で帰ってこないなんて・・・ましてや、我々のことが嫌いになったからなどと
そんなの絶対にないって、私は信じています」
春蘭の言葉
それに、華琳は一瞬大きく目を見開いた
「あ奴は間抜けで、女にだらしなくて、頼りなくて
だけど・・・秋蘭のことを助けてくれました
我々を、本当に心から愛してくれました
だからこそ・・・私は、知りたいんです
あ奴が、何をしようとしているのか・・・」
「春蘭・・・わかったわ」
フッと・・・吐き出すよう、華琳は呟いた
それから、近くに控えていた荀ケこと桂花に視線をうつし微笑む
「秋蘭がいない間、残っていた雑務は桂花に任せるわ」
「はい、お任せください!」
「それと兵の訓練などは、季衣と流琉に任せましょう
できるわね?」
「は、はいっ!」
「頑張ります!!」
指示を出し終え、華琳は再び息を吐き出した
それから見つめた先、春蘭と秋蘭は彼女の言葉を待っているようだった
そのことに気付いたのか、彼女は微笑を浮かべ言ったのだ
「春蘭、秋蘭・・・二人に命じるわ
必ず、“天の御遣い”を見つけだしなさい
其処から先の行動は、貴女達に任せるわっ!!」
「「御意っ!!」」
華琳の言葉
二人は、笑みを浮かべ大きく頭を下げる
今ここに、“天の御遣い”の捜索が始まったのだ
とは、言ったものの・・・
ーーーー†ーーーー
「まずは・・・どこを探せばいいのだろうか」
「姉者・・・」
予想できていた人も、多いだろうが
春蘭は、そこら辺のことをまったく考えていなかった
流石は春蘭、本日も通常運転である
「ちょっと、春蘭」
「む?」
そんな彼女に声をかけたのは、桂花である
その彼女の隣には、冥琳の姿もあった
「どうしたのだ、桂花」
「ちょっと、あのバカのことで
冥琳が、もしかしたら心当たりがあるかもしれないってね」
「本当か!?」
「ああ、残念ながらな」
言って、冥琳は笑う
若干の疲れを、その笑みに隠しながら
「亞莎からの手紙に、雪蓮も御遣い殿が出発した日に消えたとある
恐らく、雪蓮のことだ・・・面白そうだと、御遣い殿について行った可能性がある」
「雪蓮が、か?」
「うむ
それと消える直前・・・“成都”とブツブツ呟いていたそうだ」
「とすれば・・・雪蓮は、成都へと向かったということか?」
「恐らくは、な」
だとすれば、話は早い
そう思い、春蘭が見つめた先
秋蘭もまた、笑顔を浮かべ頷く
「感謝する、冥琳」
「いや、気にしないでくれ
こちらも、随分と世話になったようだしな
会えたら、礼を言っておいてくれ
それから・・・雪蓮には、拳骨の一発でも頼む」
「うむ、承知した」
“苦労人”である冥琳の言葉に、思わず秋蘭は苦笑してしまった
「それでは、我らは出発の準備をするとしよう」
「うむ、そうだな姉者」
そのまま、出発の準備をと歩き出す2人
そんな二人に向い・・・
「ちょっと・・・!」
桂花は、大きな声をあげたのだ
それに、足を止める2人
そんな二人に向い、彼女はまた大きく声をあげる
「あのバカのこと、任せたわよっ!」
2人が見つめた先
桂花は、その頬を赤く染めたまま
そう言っていたのだ
その言葉に、二人は顔を見合わせ笑った後・・・
「任せろ!」
「ああ、任せてくれ」
グッと拳を突出し、微笑んだのだ
胸の奥、確かな想いと共に・・・
「さて、行くぞ秋蘭」
「ああ、行こう姉者」
「「成都へ・・・北郷に、会うために」」
そうしてまた、二人は歩き出す
向うのは、蜀の都・・・“成都”
そこで待つ“再会”に
その心を、躍らせながら・・・
ーーーー†ーーーー
そういえば・・・
「さて・・・あとは、このゴミの処遇についてね」
「ひ、ヒィ!!?」
皆、忘れかけていたのではないだろうか?
春蘭たちがいない、玉座の間に未だ置かれたままの
呉から手紙と共に送られてきた男・・・厳白虎について
「呉では、随分と好き勝手言ってくれたみたいねぇ」
「そそそそそそ、それは、そのっ!!!??」
笑みを浮かべ、絶を首筋に宛がう華琳
その周りでは、殺気を纏った将達が囲んでいた
無論、呉の面々もである
そんな中、怯えずにいろ等というのが無理な話である
「しかも、だ・・・畏れ多くも、我らが隊長の名を騙るなど」
「ブチ殺されても、文句は言えへんよな?」
「その粗末な●●●、ぶった切ってやるの〜」
「兄様のことを利用するなんて・・・華琳様、許可を下さい
今すぐ私に、この豚を潰す許可を」
「華琳様、僕も許せないよ
コイツは兄ちゃんのこと、馬鹿にしたのと同じだよっ!!」
まぁ・・・特に殺気立ってるのは、やはり魏の面々なわけだが
さらに言えば、武闘派な者達だ
「華琳様、風も許せないのですよ」
「私も・・・さすがに、許せません」
風や稟、普段は冷静な二人ですらこのような状態なのだ
この光景に、蜀の王である桃香は密かに泣きそうになっていた
そんな状況の中、華琳は絶を宛がったまま再び微笑む
「私も、久しぶりよ
ここまで、頭にくるようなこと」
「ぁ・・・あぁ・・・・・・・」
「さて・・・」
〜覚悟は、いいかしら?〜
その後
玉座の間からは、絶えず一人の男の悲鳴が聞こえてきたそうな・・・
ーーーー†ーーーー
さて、一方その頃一刀達はというと・・・
「さて、どうしよっか・・・?」
成都へと向かう途中
その間にある、大きな森の入口にいた
5人とも、それぞれに表情を歪めながら・・・
森といえば、彼らの間に良い思い出はあまりない
虎とエンカウントしたり、熊と追いかけっこしたり
山賊に出会ったり、などなど
雛里と霞との出会いも確かに森の中だったが、その時は絶賛迷子中だったり
果ては、崖からの落下だ
こんな経験をしたうえで“ウホww森ktkr”と入っていけるかと言えば、もちろん“否”だ
しかし、彼らが現在表情を歪めているのは・・・それが原因ではないのだ
「びええぇぇぇええ〜〜〜〜〜〜ん!!!!」
森の入口
そこから、大きな泣き声が聞こえてきていたのだ
よく見ればそこで、誰かが座り込み泣いているようだった
「いや・・・本当にどうしようか?」
その姿を見つめたまま、彼は皆に声をかける
「このまま通り過ぎるっちゅうんも、ちょい後味悪いしなぁ・・・」
と、霞
その隣では、華雄が険しい表情のまま頷いていた
「しかし・・・なぁ」
それでも、“うぅむ”と悩むよう唸り声をあげる華雄
彼女の傍で、雛里と雪蓮は引き攣った笑みを浮かべながら未だ大きな声で泣く“人物”を見つめていた
「た、確かにそうなんですけど・・・」
「うん、わかるわよ・・・確かに、後味が悪いしね
けど、ねぇ・・・」
そうして、皆の視線は再びその泣きじゃくる人物に集まる
その人物は、相変わらず大声で泣き続けていた
「びええぇぇぇええ〜〜〜〜〜〜ん!!!!」
「「「「「・・・」」」」」
その様子に、皆は顔を見合わせ苦笑する
そんな中、スッと一人の女性が手をあげた
「私が、行こう・・・」
華雄だ
彼女は未だ引き攣った表情もそのままに、震えながらも手をあげていたのだ
「いえ、ここは・・・私が、いきますっ!」
それに続いたのは、なんと雛里だった
小さな背で、一生懸命にその手をあげながら
彼女は、大きな声でそう言ったのだ
「いや、ここはウチに任せとき」
そんな彼女の姿に感化されたのだろうか
霞が、ニッと笑みを浮かべ手をあげる
「まったく・・・しょうがないわね
私が、行くわよ」
これに続いたのが雪蓮だ
彼女は“私に任せて”と、優しく微笑む
そんな彼女たちの姿を見つめ・・・知らずのうち、一刀は微笑んでいた
温かな想いに、思わずこぼれ出たものだった
だからこそ、彼はその手をあげたのだ
「わかった・・・俺が、行くよ」
「「「「どうぞどうぞ」」」」
「ああ、任せてってええぇぇぇぇぇぇええええええええええええ!!!!!????」
そして、その瞬間がチャンスとばかりに手を下す4人
驚く一刀もよそに、雛里は“決まりました”とばかりに笑みを浮かべる
“鳳統の罠”だった
「ちょ、ま、えぇぇええええ!!!??」
あまりの衝撃に、未だ声を上げ続ける一刀
そんな彼を見つめたまま、4人は嬉しそうに笑う
「それじゃ一刀、頑張って♪」
「魏の種馬の、本領発揮やね♪」
「あわわ、ファイトです」
「見守っているぞ、一刀」
そして、それぞれ彼の肩を叩き声をかける
彼はそんな状況の中、心の中で涙を流したのだった
“仲が良いのは、良いことだ”と思いつつも、どこか納得ができない
特に霞と雪蓮・・・いつの間に、そんな息ピッタリになったのだろうか?
「仕方ない、か」
そうして、もはや口癖となってしまった一言を吐き出し
彼は、ゆっくりと歩き出す
森の入り口
そこで泣きじゃくる“人物”へと向かって・・・
さて、ここで一つ疑問があると思う
何故、早く声をかけなかったのか?
一刀が優しいなどと、いまさら語ることでもないだろう
それにその仲間である4人も共に、困っている者を放っておくなど・・・とてもするような人物ではない
ならば何故、すぐに声をかけなかったのか?
「びええぇぇぇええ〜〜〜〜〜〜ん!!!!」
それは、その泣きじゃくる人物にこそ原因があった
「びええぇぇぇええ〜〜〜〜〜〜ん!!!!」
・・・等と、テンプレな泣き方をする人物
その人物の姿を見つめ、一刀は頬を引き攣らせる
身に纏う衣服は、黒くフリフリとした所謂“ゴスロリ”といわれる服だ
その額には何故か、“愛”と書いてある
それだけならば、まだいい
重要なのは、その人物そのものなのだ
「びええぇぇぇええ〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!」
こうして、現在進行形で泣き続けているのは・・・“男”なのだ
しかもスキンヘッドでサングラスをしていて、体つきに至っては凄まじい筋肉によって着ているゴスロリ服がパツンパツンになるほどの
それはもう、明らかに男なのだ
「え、え〜っと・・・」
だからこそ、彼らは躊躇った
できれば、このまま何事もなくスルーしたかったのだ
しかし・・・それは、彼らの良心が許してくれなかった
「びええぇぇぇええ〜〜〜〜〜〜ん!!!!!!!!!!!」
「あの〜、その、ちょっといいですかぁ〜?」
だからこそ、彼は静かに声をかけたのだ
例えそこに・・・
「びぇえ・・・・・・ウホッ、イイ男♪」
「ひっ!!?」
凄まじく嫌な予感しか、感じないとしても・・・
・・・続く
あとがき
九章になります
ついに問題児が登場致しました
ある意味、準レギュラーともいうべく男の登場です
この作品は登場するオリキャラ、すべてが“最後の展開”に関係していきます
つまり、こんなんでも重要キャラなのです。
では、またお会いする日まで
説明 | ||
九章、公開します すごく・・・大きいです 序章 http://www.tinami.com/view/1001073 |
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呂蒙ブワ( ;∀;)(marumo ) 一難去ってまた一難…そういえばいたな、ゴスロリ男。波乱ばかり続くが…ファイト、一刀。(mokiti1976-2010) |
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