真・恋姫†無双-白き旅人- 第二十一章
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「遅い・・・」

 

 

それは、もうすっかりと日も落ち切った頃のことだった

椅子にだらしなく座ったまま、馬良は不機嫌そうに言ったのだ

が、その表情は何処か心配しているようにもみえた

 

と、いうのも馬良と司馬懿が此処に来てもう随分と経つのだが

未だ、馬良の妹は戻らないままなのだ

“方向音痴で、こんなことは日常茶飯事だ”と言っていた馬良だったが、流石に心配になってきたようだ

その証拠に、先ほどよりも口数が少ない

 

そんな彼女の様子を見て、司馬懿もまた心配そうに口を開いた

 

 

「確かに・・・もう、外は真っ暗だっていうのにまだ帰ってこないなんて

妹さんは普段、山にいったらその日のうちに帰ってくるのかい?」

 

「ああ・・・いくら方向音痴でも、私が知る限りは遅くとも夕方には帰ってきていた」

 

 

“もっとも、私がいない間に方向音痴に磨きがかかっていたなら話は別だが”と、馬良は苦笑いだ

“仕方ない”と、司馬懿は立ち上がった

 

 

「俺・・・少し、近くを見てくるよ」

 

「いや、私の妹だし私も・・・」

 

「いいっていいって

一宿の恩は、返さなくっちゃいけないし

それにもし入れ違いなんかになったら、大変だしな」

 

 

“ま、任せてよ”と言い、司馬懿は笑う

そんな彼のことを見て、馬良は苦笑し溜め息を吐き出す

それから、“わかったよ”と彼女が納得した

 

その、時・・・

 

 

 

 

「やったぁ!

やっと、お家に到着しましたぁっ!!」

 

 

 

 

 

と、まぁこんな感じで

何とも大きく元気いっぱいに声をあげながら、一人の少女が家の中に入ってきたのだ

その少女の姿を見つめ、馬良は一瞬驚いた後

深く、溜め息を吐き出した

 

 

「ヤレヤレ・・・やっと、帰ってきたのか」

 

「て、ことは彼女が・・・」

 

「ああ・・・私の妹の、“馬謖”だ」

 

 

言われ、司馬懿が見つめる先

其処には馬良よりも背の低い、だがそんな自身の身長に対しとても大きなリュックを背負った少女が立っていた

彼女が“馬謖”、つまりは馬良の妹なのだろう

司馬懿がそう考える中、開かれた玄関の先

何やら、複数の話し声が聞こえてきた

 

 

「あ、あれ?

なんで姉上が、ここにいるんですかぁ?」

 

「それは、その・・・てか、なんか入口が騒がしくないかい?

なんだ、お客さんか登山仲間かい?」

 

「ああ、それは・・・」

 

 

と、馬謖が言いかけた時だった

その件の入口から、ゾロゾロと人が入ってきたのである

それを見て馬良は何やら面倒そうに溜め息を吐き出し、馬謖は“いらっしゃい〜”と笑いながら言い

 

そして・・・司馬懿は、“言葉を失っていた”

 

 

 

「み・・・みんな」

 

 

 

と、司馬懿

それに対し、家にあがってきた人たちの中から・・・四人の少女が、その表情を大きく変えたのだ

霞、華雄、雛里、雪蓮の四人である

彼女達もまた、彼の存在に気付いたからだ

 

やがて、四人はそれぞれ破顔し口を開いた

 

 

「一刀っ!」

 

「一刀!」

 

「一刀さんっ!」

 

「皆っ・・・」

 

 

司馬懿は、軽く涙ぐんでいた

無理もない話である

あのような断崖絶壁から落下し、はぐれてしまったのだ

泣きたくもなるというものである

 

まさに、感動の再開であ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「かぁぁぁあずぅぅぅぅううううとおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

「うっおおおぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!!??」

 

 

 

 

 

 

 

と、まぁ

そうは、問屋が下ろすはずもなく

 

彼は哀れにも、こうなった原因である“彼女”の全力の突撃を喰らい

それはもう呆気なく、意識を手離してしまうのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪真・恋姫†無双-白き旅人-≫

二十一章 華雄さんが、なんかどんどん恐くなってきたんだが・・・By一刀

 

 

 

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「何故、君は、すぐに・・・突撃する」

 

「すすすすす、すまん一刀っ!!」

 

 

数分後

司馬懿こと、北郷一刀は息を引き返した(ぇ

そして、ようやく意識を取り戻した彼がまず初めにいった言葉がこれである

若干、苦しそうだ

まだ腹部に、かなりのダメージが残っているようである

それに対し、華雄は何度も頭を下げていた

 

 

「ま、まぁ一刀

許してあげなさいよ」

 

「せや

華雄やって、責任感じてるんやで?」

 

「いや、まぁわかるけどさ」

 

 

“けどあれ、俺じゃなかったら死んでたよ?”と、彼は思い出し身震いした

思い出すんじゃなかったと、後悔したのはそのすぐ後だ

と、彼はひとまず華雄を宥め

それから、視線を移した

 

 

「ていうか、なんで袁術と張勲までいるのさ?」

 

「そ、それは妾が聞きたいのじゃ

何故妾は、ここにいるのじゃ?」

 

「お嬢様、もう忘れちゃったんですか?

孫策さんに無理やり連れてこられたんですよう」

 

「雪蓮・・・お前」

 

「イイじゃない、べつに

この二人だって、山の中で迷って困ってたみたいだしさ」

 

 

“ただの、人助けよ”と、雪蓮

しかし何故だろう

彼女が袁術を見つめ浮かべる笑みは、何だかまったく別の目的があるように見えた

 

 

 

 

「良い暇つぶしになりそうだし」

 

「言っちゃったよ

モノローグで折角それっぽく伏せたのに、普通に言っちゃったよ」

 

 

一刀のツッコミ

何故か、雪蓮は照れていた

“駄目だ、ツッコミきれん”と、彼はすっかりツッコむことを諦めた

 

 

 

「おいおい、司馬懿

アンタ、凄い知り合いばっかじゃねぇかよ」

 

 

と、そんな中

彼に向い、そう言ったのは馬良である

彼女は驚きを隠しきれないといった様子のまま、彼の旅のお供に目をやった

 

 

「神速の張遼に、小覇王と呼ばれた孫策

蜀の二大軍師の一人、鳳統様まで・・・」

 

 

“まじかよ”と、彼女は息を呑んだ

そんな彼女の傍

歩み寄ったのは、華雄だった

それからわざとらしく咳払いをし、何故かソワソワしている

 

 

「アンタは・・・」

 

「うむ、私は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・誰?」

 

「う、うわぁぁぁぁあああああああん!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

“無茶しやがって”と、一刀は涙を堪えた

憐れ、華雄

君のことは、僕が知っているから

 

そんなことを思いながら、一刀は泣いていた華雄の肩を叩いた

華雄は、“猪でもいいから、突撃野郎でもいいから”と声を漏らしていた

“いや、よくないだろ”と、やっぱり一刀は涙を堪えきれなかった

 

 

 

「それにしても、一刀さん

本当に、無事でよかったです」

 

「雛里ちゃん・・・うん、なんとか無事だったよ」

 

 

ふと、雛里の言葉

一刀は、苦笑しながらそう言った

それから雛里は、その視線を馬良へとうつした

 

 

「それと・・・お久しぶりです、馬良さん」

 

「お久しぶりです、鳳統様」

 

 

雛里の言葉

馬良は、スッと頭を下げた

そんな二人の様子を見て、一刀は首を傾げる

 

 

「二人は、知り合いなのかい?」

 

「知り合いというか、彼女には荊州での政策を任せていましたので」

 

「マジで?」

 

「まぁ、な」

 

 

馬良は、そう言って苦笑する

しかし彼女はすぐに、“ま、でも”と懐から一枚の紙を取り出し

それから、それを見つめ言った

 

 

「けど、それも昔の話だよ

アタシは、もう文官を辞めてきました

今は、ただの民です」

 

「えっ・・・?」

 

 

その言葉に

一刀と雛里は、言葉を失っていた

 

やがて、彼女が見せた紙

その紙には確かに、彼女が“職を辞したことが記されていた”・・・

 

 

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

「嫌になったんだよ・・・あの、くだらない喧嘩がさ」

 

 

そう彼女が言ったのは、もう晩御飯も済んだ後のこと

皆の視線を一身に集め、彼女は吐き捨てるようにそう言ったのだ

 

 

「乱世が終わったってぇのに、いつまでも子供みたいに領地を取り合ってさ

なんか、やるせなくなってねぇ」

 

 

“だから、辞めてきた”と馬良

そんな姉の言葉に、妹である馬謖は納得したように頷いた

 

 

「だから、私の家に・・・」

 

「そ〜いうこと

悪いけど、しばらく世話になるよ」

 

 

“それは、構いませんけど”と、馬謖は複雑そうな表情だ

それと同じよう、雛里はさらに複雑そうに表情を歪めていた

 

 

「未だに、この荊州には問題が山積みなんです

呉蜀間の領土問題は、予想以上に深刻でした」

 

「そうねぇ

私がまだ王だったころから、この問題ばっかりはすぐに解決とはいかないだろうと思ってたけど

まだ、続きそうねぇ」

 

 

雪蓮の言葉

それに対し、声を発したのは霞だった

 

 

「なんや、あんまし長引いとるからやろうか

華琳も、そろそろ口を出そうとしとるって聞いたことあんなぁ」

 

「それは・・・さらに、ややこしくなりそうだな」

 

 

“やれやれだ”と、華雄

そんな彼女のすぐ傍

一刀は、静かに腕を組み立っていた

 

 

「なるほど、ねぇ・・・」

 

「一刀・・・?」

 

 

その、彼の様子

視線は、自然と彼に集まっていた

彼はやがて、腕を組んだまま・・・笑う

その笑顔を見て、彼の旅のお供である雛里は思う

 

 

“これは、何かを企んでる顔だ”と

 

 

 

 

「ねぇ、馬良・・・」

 

「ん?」

 

 

やがて彼は、笑みを浮かべたまま馬良の名を呼んだ

其の声に、馬良は首を傾げたまま答えた

 

それに対し、彼はやはり笑みを浮かべたままで言う

 

 

 

「馬良はさ

いつまでもくだらない喧嘩をする皆が、馬鹿らしいって思ったんだろ?」

 

「まぁな」

 

「だったら、さ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“一緒に、最高に面白いことをやらかしてみないかい?”

 

 

 

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

「さて・・・と」

 

 

とある一室

書簡を机に置き、一人の女性が息を吐き出していた

 

彼女の名前は呂蒙、真名を“亞莎”

呉の将軍にして、あの周瑜や陸遜にその知を認められたという才女でもある

 

さて、そんな彼女

彼女は今、はるばる荊州にまでやって来ていた

その理由は、この地で行われる行事の為だ

 

 

“呉蜀・合同荊州会談”

 

 

乱世が終わって以来、毎年続けられる合同会談である

その内容は主に、荊州の領有権について話し合う場なのだが

残念ながら、ここ数年は話し合いは上手くいっていない

どころか、ますます両国の関係は悪化しているのだ

故に、この問題に際しては両国とも優秀な才人を派遣する

その派遣される者に、見事に選ばれたのが彼女であった

 

 

「はぁ・・・き、緊張でお腹が」

 

 

腹部をおさえ、彼女は溜め息をついた

幾ら優秀な彼女といえど、本来ならばこれは周瑜や陸遜が出るべきものである

しかし、そうもいかなかった

呉国は今、長年の敵であった山越との共存の話し合いが急速に進んでいたのである

それは少し前、“ある人物”によって成された

まさに、“歴史に残るであろう出来事”であった

その為、周瑜も陸遜も今は呉を動けないのだ

“落ち着き次第、合流する”と、周瑜は言っていたが

それでも会談の序盤は、自分が何とかするしかない

彼女は、根っからの苦労人体質のようだった

 

 

 

「と、とにかく・・・頑張んないと」

 

 

“すっごい体が震えるけど”と、彼女

意気込みは、とりあえず十分だった

しかし、彼女は一つ気がかりなことがあった

 

 

「なんだか、嫌な予感がします・・・」

 

 

 

これである

彼女は建業を発って今日まで、ずっとこの妙な“不安”に悩んでいたのである

“まさか、雪蓮様でもあるまいし”と、そう何度も気のせいだとは思っているのだが

しかし、相変わらずその不安は消えない

 

むしろ・・・“強くなっていく”ような気さえした

 

 

 

「気のせい、ですよね」

 

 

“気のせい”

そう言い聞かせたのも、何度目だろう

そう思い、彼女は苦笑する

 

 

「考えすぎ、ですよ・・・きっと」

 

 

呟き、見つめる先

窓の向こうは、星も何も見えない

真っ暗な闇

 

その闇は、彼女の心を・・・微かに、ザワつかせた

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

「以上が、合同会談の資料です」

 

「うむ、ごくろう」

 

 

“下がってよい”と、男

そのことばに、兵は頭を下げ部屋から出ていった

それを見届けると、男は机の上にある資料を手に取る

 

 

「ふん・・・くだらんな」

 

 

言って、男は資料を投げる

カランと音をたて、資料である書簡は部屋の床に落ちた

男は、深い溜息を吐き出す

 

 

「このようなやり取りも、もう何度目になるか

しかし、一向に呉蜀間の関係はよくならん」

 

 

“これでは、意味がない”と、男は笑う

それは、悲しそうな笑みだった

 

 

「おまけに、頼りだった部下にも愛想をつかされる始末

まったく・・・不甲斐ないものよ」

 

 

そう言って、男はまた溜め息をついた

 

男の名は“趙累”

蜀の代表で、荊州を治める者だ

その統治能力をかわれ、乱世が終わってからずっと荊州を治めてきた

 

しかし、だ

そんな彼でも、未だにこの荊州に渦巻く問題は解決できないでいた

 

 

「どうしたものか・・・」

 

 

呟き、彼は苦笑した

恐らく、この問題はきっと

“このままでは、いつまでも解決しない”

 

故に、彼は思う

 

 

 

 

 

「“風”が、必要なのだ・・・」

 

 

 

 

 

“風”

彼は、そう考えていた

 

 

「この、混迷の地を吹き抜け

新しい時代を運ぶ、“新しい風”が・・・必要なのだ」

 

 

故に、彼は心底残念そうに息を吐き出す

彼にとって、つい先日に自身のもとを出ていった部下もまた

その風であろうと、そう思ったからだ

 

それらが全て、己の不甲斐なさからくるものだと知っているからこそ

彼は、もはやどうしていいのかもわからないでいた

 

 

 

「さて・・・どうしたもの、か」

 

 

 

趙累の悩み

それは、外の暗闇と同じく

深く・・・尽きそうもなかった

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

「行きなさい」

 

「「御意」」

 

 

一人の少女

その言葉に従い、兵は二手に別れ駆けて行く

行く先は、一方は呉

もう一方は蜀だ

その兵の姿を見届けると、少女は満足気に頷いていた

 

 

 

「これで、大丈夫ね」

 

 

 

少女の名は、曹操・・・真名を“華琳”

知る人ぞ知る、魏の“覇王”だ

そんな彼女

彼女は今、主だった者達を率い荊州の入口にいた

其処から、二国の“荊州会談”の代表者へと書簡を送ったのだ

 

内容は・・・“魏国の介入”

 

彼女は前々から、この荊州の問題には参っていたのだ

乱世が終わったというのに、何時までも続く争いに

心底、疲れていた

 

そんな時、“あの手紙”は渡りに船だった

 

あの手紙・・・北郷一刀から届いた、あの手紙だ

 

 

 

 

“荊州で、待っている”

 

 

 

 

彼からの手紙に導かれ向かった荊州

ならば折角だからと、彼女は今回の会談への介入を決めたのだ

 

 

「しかし・・・あのバカは、本当に来るのでしょうか?」

 

 

ふと、彼女の隣

猫耳フードを被った少女・・・荀ケこと、桂花が呟く

“あのバカ”とは、もはや言わずもがなである

そんな彼女の言葉

華琳はフッと笑い、言うのだった

 

 

 

「来るわよ・・・間違いなく、ね」

 

 

 

紡がれる言葉

瞬間、彼女の傍を・・・風が、吹き抜けていった

その風に運ばれるよう

 

 

 

「さぁ、一刀

感動の再会と、洒落込みましょうか?」

 

 

 

 

彼女の言葉は、夜の闇に溶け込んでいくのだった・・・

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

「いよいよ、か」

 

「いよいよ、ですな」

 

 

暗い、本当に薄暗い一室

二人の男が、顔を見合わせ話していた

その顔に、不気味な笑みを浮かべながら・・・

 

 

 

「呉蜀・合同荊州会談の、この時期こそ・・・まさに好機」

 

「二国は乱れ、人々の怒りが集まる今こそ・・・まさに好機」

 

 

 

言って、2人は声を出して笑った

その声は、暗い一室の中

不気味に響き渡る

 

 

 

 

「乱世は終わり、はや三年の月日が流れた」

 

 

 

 

 

と、そんな中

突如として響いた“声”

 

“第三の声”

 

二人の男は嗤うのを止め、その視線を同時に移した

その先に、一人の男が立っていた

その額に赤き“刺青”を掘り込んだ・・・精悍な顔立ちの男だ

 

 

「その三年の間、奴らはこの地に何かを齎したか?」

 

 

“否”

男は、そう言って拳を強く握りしめる

 

 

「この地は、何一つ変わっていない

それどころか、ますます酷くなるばかり

そのような愚かな国王共を、貴殿らは許せるのか?」

 

「「否・・・断じて、許されません」」

 

 

同時に言葉を発し、2人は頭を下げる

その二人の姿を見つめ、男は満足そうに頷いた

 

 

「なれば、我らが力を貸そう」

 

 

言って、男は嗤う

その“黒き法衣”を揺らし、男は唯々嗤ったのだ

 

 

 

 

 

「この地こそ、三国の中心

ならばこの地を、三国の“終わりを誘う渦”へと変えるのだ」

 

「「御意!」」

 

 

 

 

 

暗闇の中

“男”は、いつまでも

 

 

 

「さぁ、足掻いてみせろ・・・“北郷”っ!!」

 

 

 

いつまでも、笑い続けていた・・・

 

 

 

 

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ーーー†ーーー

 

「疲れた〜・・・」

 

 

場所は変わり、ある村の前

三人の少女が、その村の入口に立っていた

 

一人は、桃色の髪をした少女

もう一人は、水色の髪をした少女

最後の一人は、薄紫の髪色の少女だ

 

三人の名は上から、天和・地和・人和

そんな彼女達

彼女達はこの大陸に住む者ならば誰もが知っている、かの有名なアイドル

“数え役満☆しすたぁず”である

 

さて、その三人なのだが

彼女達は、次の目的地を荊州とし旅をしていた

しかし、荊州でのライブの場所が中々決まらない

そのまま、ズルズルと旅をしていたのだ

 

そうして辿り着いたのが、この小さな村である

 

 

 

「よかった〜、なんとか村を見つけられて」

 

「そうね

これで、野宿は避けられそう」

 

 

地和の言葉に、人和も心底安堵の息を漏らしていた

そんな二人をよそに、長女である天和は足早に村へと駆けて行く

 

 

「ほら、2人とも急いで〜

早く宿を見つけなくちゃ、休めないよ〜?」

 

「あ、ちょっと待ってよ〜」

 

 

その後を、地和もついていく

この光景に、人和は疲れたように溜め息をついていた

 

 

 

「はぁ・・・さっきまであんなに疲れた疲れた五月蝿かったのに」

 

 

“しょうがないわね”と、人和

彼女はそれから、2人とは対照的に

ゆっくりと、其の場から歩き出した

 

その、最中だった

 

 

 

 

 

「ん・・・?」

 

 

気付けば、彼女は足を止めていた

何故?

その理由は、“声”だった

 

 

「誰かの、声・・・?」

 

 

声が、聴こえた気がしたのだ

いや・・・夜とはいえ、ここは村の入口

人の声くらいするだろう

 

しかし、彼女が足を止めた理由はそれだけじゃない

 

聴こえてきた声

それが・・・どこか、“懐かしく響いたからだ”

 

 

 

「そんな、まさか・・・有り得ない、よね」

 

 

“有り得ない”

そう言いながらも、彼女の足は自然と動いていた

村の中にではない

その村の外れ

暗闇の中、立っていた一本の大きな木へと

 

 

「そんな、わけ・・・」

 

 

暗闇の中

かろうじて見えるその木

その傍に、彼女は・・・“見た”

 

 

「う、そ・・・」

 

 

暗い闇のはずなのに

ウソみたいに、彼女にはハッキリと見えていた

 

白い外衣を揺らし、其処に立つ青年の姿が・・・

 

 

 

「か、一刀さん・・・?」

 

「え・・・?」

 

 

 

そして、零れ出る言葉

その言葉に、青年は視線を向けてきた

 

“あぁ、間違いない”と、少女は息を呑んだ

 

 

白き外衣の下に見える、あの白く輝く衣服

少し大人びた、だけど見覚えのある顔

 

 

 

 

「一刀さんっ・・・!」

 

「れ、人和・・・」

 

 

 

 

叫び、駆けだす彼女

その彼女の体を、青年は戸惑いながらも

 

そっと、受け止めるのだった・・・

 

 

 

 

 

 

惑う大地・・・荊州

その物語は、いよいよ加速していく

 

 

-9ページ-

★あとがき★

 

二十一話になります

様々な人物がログインしてきた今回

 

やばい大変です

 

では、またお会いしましょう

説明
二十一章です
またまた、再会、騒動

序章
http://www.tinami.com/view/1001073
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