連載小説36?40 |
なんだかんだで部活見学を楽しんだ。
高校生活の滑り出しとしては、そんなに悪くないかな。
「ただいま〜」
「お帰り。遅かったね」
開口一番「遅かったね」とは、あんまりだ。
「うん、部活見学行って来たからね〜」
私はそれだけ答えて、部屋に戻った。
「部活見学? どこ行って来たの?」
お母さんの興味を引いてしまったらしい。着替えて居間に戻って来ると、
真っ先に訊かれた。
「文芸部」
「文芸部? 作文の苦手なえりかが? なんで?」
いくら親とはいえ、この言われ用はちとひどい。
「なんでって、友達に誘われたから」
「友達って、楓ちゃん?」
そっか、お母さんには木谷さんの事は話してなかったっけ。
「クラスで出来た友達」
「人付き合いの苦手なえりかにクラスの友達なんて、また珍しい事もあるもんだ」
く〜〜〜っ! この親にしてこの子なんだろうけど、娘に向かって、
「人付き合いの苦手な」はないと思う。
「向こうから声をかけてくれたんだよ。珍しいと思ったけど…」
意外なほど、木谷さんとはフィーリングが合う。これはこれで、幸いな事だった。
「ふぅん」
「ちょ、ふぅん、て。自分から訊いといて!」
ひどい母だ、全く。
「でも、他に応えようがないし」
「そ、そう…」
わ、我が親ながらやり辛い…
「で? その友達が文学少女なわけだ」
「ぶ、文学少女かどうかは知らないけど、今日もずっと小説書いてたなぁ」
今時文学少女はないけど、まぁ、文学に勤しんではいたなぁ。
「小説? すごい子なんだ」
「うーん、まぁ…」
色んな意味ですごい子だよ、彼女は。
「で、えりかはどうするの? 文芸部に入るわけ? 他の部活も見るの?」
「えぇ? もともとは帰宅部予定だったから、誘われて行っただけだし…」
とはいえ、面白かったのは事実だなぁ。木谷さんの文章も見たいし、
私の文章も見てもらいたい。
「他に興味のある部活もないから、まだ文芸部に行ってみるつもりだけど…」
「ふぅん。ま、いい事だ」
なーんか、会話が続かない。切られちゃうなぁ…ま、いいけど。
「ところで、おやつない?」
「おやつ? 適当に漁れば何かあるんじゃないの?」
いつものパターンか。
「へいへい」
私は台所に向かって、お菓子ハントに旅立った。。。
〜つづく〜
冷蔵庫では、チョコビスケが見つかった。
冷蔵庫で程よく固く冷えてるのが、美味しいなぁ、と思う。
「ちょっと、粉落とさないでよ?」
「大丈夫だよ。だからテーブルで食べてるんじゃん。じゃなかったら、
ソファーで食べてます」
ばりぼり。やっぱり美味しいけど…口の中がもくもくする。
「紅茶飲もうっと…」
ティーバッグを探し出して、お湯を沸かす。
「ところでえりか、部活動するの? 帰宅部?」
「うーん…さっきも言ったけど、ちょっと考え中…」
文芸部にするか、帰宅部にするか、他の部活を見てみるか。
「出入りは自由で、顧問と担任の許可があればいいみたいだから、
そんなに深くは考えてないけど…」
「そう。ま、後悔しないようにしなさいよ」
後悔か…
「うん、そーする」
ボリ…
「もくもくもく…」
紅茶を飲みながら食べる冷えビスケット、サイコー。
「晩ご飯前なんだから、食べ過ぎたら怒るからね」
「あーい、分かってまーす」
全く、こっちも子供じゃないんだし、その辺は大丈夫だっていうのに。
「でも、ホント部活どうしよっかな…」
とりあえず、私はまだ答えを決めかねていた。
〜つづく〜
夕食後、いつものように勉強タイム。
くどいようだけど私はあんまりテレビを見ない。
ニュース、スポーツ中継、ドラマ、音楽番組、バラエティ、アニメ。
ジャンルは色々やってるけど、見るのは主にニュースだ。
後は、友達やお母さんに強く勧められたドラマくらい。
そんな事はさておき、勉強タイムだ。
といっても、まだ教科書を見返す程度しかしてないけど。
「これをこの学年中にやるのか…高校は重いなぁ…」
っと、あれ?
「メール?」
気付かなかった…
「誰からかな?」
ぱかり。
「木谷さんか…」
今日の事があるからな、来ても不思議はないか。
「なんだろう」
『今日はありがとう』
ふむふむ
『今日は文芸部に付き合ってくれてありがとう。
明日もよろしく』
ひぃぃぃ!
「ね、念押しメールだ!」
ど、どう答えよう。素直に答えるか。
『こちらこそ』
タイトルはこんなもんか。
『思ったより楽しかったから、こちらこそありがとう
あ、明日は…一応考え中って事で
じゃ、また明日学校でね』
いよし、こんなもんだ。下手に期待させても悪いし、絵文字はなしで。
「送信っと」
緑のランプが光って、送信中を告げる。
「木谷さん、恐るべしだな…」
その後しばらくは、ケータイから目を離せなかった…
〜つづく〜
夕食後、いつものように勉強タイム。
くどいようだけど私はあんまりテレビを見ない。
ニュース、スポーツ中継、ドラマ、音楽番組、バラエティ、アニメ。
ジャンルは色々やってるけど、見るのは主にニュースだ。
後は、友達やお母さんに強く勧められたドラマくらい。
そんな事はさておき、勉強タイムだ。
といっても、まだ教科書を見返す程度しかしてないけど。
「これをこの学年中にやるのか…高校は重いなぁ…」
っと、あれ?
「メール?」
気付かなかった…
「誰からかな?」
ぱかり。
「木谷さんか…」
今日の事があるからな、来ても不思議はないか。
「なんだろう」
『今日はありがとう』
ふむふむ
『今日は文芸部に付き合ってくれてありがとう。
明日もよろしく』
ひぃぃぃ!
「ね、念押しメールだ!」
ど、どう答えよう。素直に答えるか。
『こちらこそ』
タイトルはこんなもんか。
『思ったより楽しかったから、こちらこそありがとう
あ、明日は…一応考え中って事で
じゃ、また明日学校でね』
いよし、こんなもんだ。下手に期待させても悪いし、絵文字はなしで。
「送信っと」
緑のランプが光って、送信中を告げる。
「木谷さん、恐るべしだな…」
その後しばらくは、ケータイから目を離せなかった…
〜つづく〜
翌朝、楓と二人で電車を待っていた。
「えりか、昨日はどうだった?」
「んー、部活?」
まさか、ここでこの話題が出るとは。
「そうそう。行ったんでしょ? 文芸部」
「まぁね」
ふぅ、まさかこの話題が出るとは…
「どうだったの? 木谷さんの一押しだったんでしょ?」
「うん。まぁ、楽しかったよ」
一応、嘘は言ってないぞ。
「ん? なんか、声のトーンが…」
「いや、まぁ…」
私は、部長さん達に自分をイメージに作品を造りたいと言われた事、
夜に木谷さんからメールが来た事、を伝えた。
「へぇ〜、そんな事が。木谷さんも、本格的なんだね…」
「みたい」
なんか、朝からぐったりだよ。
「で、今日も行くの?」
「一応ね。楽しかったのは嘘じゃないし、ここで断ったら怖そうだし…」
木谷さん、地の果てまで追っかけてきそうだしなぁ…
「確かにねー。木谷さん、地の果てまで追っかけてきそうだよね」
「わ、私と同じ事を」
さすが楓、フィーリング満点だぜ。
「んでも、珍しいね、えりかが乗り気だなんて」
「うん、珍しいかも。きっかけ、なのかな…やっぱ」
木谷さんと出会わなかったら、部活が盛んって情報も入らなかったし。
「いい出会いだったんじゃないの?」
「そう思いたい」
なんて会話をしつつ、電車がやって来た。
「さて、今日も圧縮されますか」
「余計なお肉、減るといいのにね〜」
他愛もない会話が繰り広げられる、いつもの朝。
〜つづく〜
学校に到着して、楓と別れて、私は席でおとなしくしていた。
「木谷さんが来たら…どうしようかな…」
そんな複雑な思い出待つ事十分、木谷さんがやって来た。
「おはよー」
「おはよ」
まずは、当たり障りのない挨拶から。
「昨日は付き合ってくれて、ありがとう」
「ううん、私も楽しかったし。まぁ、夕べの念押しメールにはびびったけど」
さりげなくアピールする。
「あ、もしかして迷惑だった?」
「いやー、そこまでは。ただ、ああいうメールをもらった事がなかったから」
それが正直なところだ。
「なるほど。じゃあ…やっぱりちょっと困らせちゃったみたいね?」
「ご、ごめん、そういうつもりじゃ…」
おっとおっと。気まずい空気にはなりたくないぞ? なんとか盛り返さなきゃ。
「ううん、いいの。もともと私が無理言ったんだし。で、今日はどうする?」
「ぬはっ!」
気にしてるくせに抜かりない! コレなら…雰囲気悪くはならないか…
「えぇっと…一応文芸部にお邪魔するよていだけど…」
「そう、よかった。そうそう、楓さんは?」
ん? 楓?
「楓は行かないと思うよ。運動部限定だし…」
「うん、それは聞いてるから、そうじゃなくて、楓さんは今日どうするのかなー、って」
あぁ、そういう事か。日本語って、難しい。
「今日かぁ…昨日はバスケ部とか言ってたけど、今日はバレー部って言ってたかな」
多分、運動部は全部回るんじゃないかな…楓。
「楓さん、運動得意なんだっけ」
「運動だけはオールマイティだね、楓は。私とは偉い違い」
とはいえ、私だって無能ってわけじゃないけど…
「じゃあ、倉橋さんの得意分野は?」
「わ、私? 私は…」
訊かれて、困ってしまった。無能じゃないといっても、答えには困る。
「うーん、なんだろう…」
「じゃあ、課題ね。部活中に教えてね」
げ!
「何それ〜〜〜。ハードル高いんだけど…」
「そういう、自分を見つめる事も大事なのよ」
はぁ、そういうものですか。
「楽しみに、してるから…」
し、しないで欲しいな…
私は授業中も、この難題と向き合う事になってしまった…
〜つづく〜
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第36回から第40回 | ||
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