紫閃の軌跡 |
〜サザーラント州西部 イストミア大森林 エリンの里〜
ハーメルでの一件の翌日、里の長であるローゼリアのアトリエにてアスベル達は情報交換をしていた。その中には、合流したばかりの“向こうのゼムリア世界の”レクター・アランドールも参加する羽目になっていた。
その理由は、アッシュ・カーバイドが推薦したというのが大きい。
「ま、いけすかねえ野郎に思うところはあるが、此奴はあの野郎とどことなく違う。それに、近しい奴なら知ってることもあるだろうからな」
アッシュの正論に対し、面倒そうな表情を浮かべるレクター。これには鉄血に近しい立場であったアルティナ・オライオンもキョトンとした表情を浮かべた。
どうやら、レクターはその辺を飄々と流していたらしい。ミリアム・オライオンのことに関しては、胃薬抱えながら仕事していた可能性も否定できないが。
「―――クロイツェン州とサザーラント州がそうなってるとはな」
「うん。公爵代行のユーシスは不在だったけど、特に大きな混乱は出ていなかったよ」
「しっかし、“黄昏”の強制力はやべえな。“至宝”クラスといっても過言じゃねえぞ……いや、経緯を考えれば妥当なラインでの力だろうなァ」
黄昏の誕生の経緯はローゼリアから聞き及んでいるが、それを耳にしたレクターは盛大に頭を抱えた。聡い類の人間なので、ギリアス・オズボーンが何を思ってそういった行動をとったのか大凡の予測を弾き出した。
「てか、あのオッサン、下手したら大陸全体巻き込んでの大戦でもやらかすつもりかもしれん」
「国家総動員法によって人的資源の軛が外れた以上、現状100万の帝国軍が最低でも倍に増えるでしょうね……あの“黄昏”には、人の負の感情に取り入って闘争を掻き立てる力があるようですし」
「に、200万の帝国軍って……」
「だが、それが出来ちまう環境ってこったなァ。にしても、流石現役の王国軍中将」
「帝国軍情報局の人間に言われるとは、褒め言葉として受け取っておきますよ」
このやり取りの後、アスベルが遊撃士兼王国軍中将ということを話すと、一同は驚いていた。何せ、特例や制約なしにはありえない組み合わせといっても過言ではないからだ。すると、レクターはアッシュに尋ねてみた。
「アッシュだったか。お前さんは何か言いたそうな表情をしてるぞ?」
「そういうところはあの野郎に似てるとはな……確かに鉄血の野郎やその周辺にいる奴らもやべえが、あの“エセふわ”も似た様なもんだろ」
「……ミュゼ・イーグレット。いや、ミルディーヌ・ユーゼリス・ド・カイエンのことか」
アッシュはパンタグリュエルで保護されていたが、そこから脱走した……いや、アッシュの性格を見抜いていたミュゼがそうなってもいいように差し向けた可能性がある。それ以降、貴族の有志による決起軍の動きは分からないとアッシュは話す。
「ま、俺が知ってるのはこんぐらいしかねえがな」
「何にせよ、一度会って話はしておかないと。事情はどうあれ、ミュゼはミュゼだもの」
前向きな発言をするユウナだが、この状況においては彼女が一番の原動力となっているのも事実。不幸中の幸いなのは、彼女がロイド・バニングスの毒牙に掛からなかったことだろう。これに関しては、別行動中のランディ・オルランドも同意見だった。
新Z組が先に退出したところで、残った面々の中で最初に口を開いたのはローゼリアだった。
「しかし、よもや騎神が増えるとは妾ですら想定してなかったぞ。お主の騎神―――“アクエリオス”じゃったか」
「ええ。その((核|ケルン))の人格の元となったのは結社の執行者、『剣帝』レオンハルトです。彼が何を思ってそれを望んだのかは分かりませんが、少なくとも彼は味方と考えるべきでしょう」
他の騎神に関しても、恐らく“原作”で亡くなってしまった人物が憑代になっている可能性が高いだろう。久々に転生者らしい考えをしたな、と思った。すると、ローゼリアは更に尋ねた。
「他の者たち―――お前さんや彼のような人間がこの世界に来ている可能性はあるのか?」
「あるというか、既に数人と連絡は取れましたが……どうやらクロスベル方面に向かったようで、それ以降の連絡は取れていません」
取れていないというよりも『情報漏洩を防ぐために連絡していない』だけなのだが。それにしても、こんな形でオリヴァルト皇子の保有していたアーティファクトが役立つとは想定外にも程があると内心で独り言ちた。
この後、同行するメンバーに関しては、帝国西部という地域と猟兵の経験からフィーに頼むこととした。別に新Z組の教官になったわけではないのだが、面倒事は尽きないと愚痴を吐きたくなってしまったのは否定しない。
◇ ◆ ◇
〜エレボニア帝国 ラマール州南東部 エイボン丘陵〜
そのさらに翌日、転位石でエイボン丘陵に到着。その場所に最初に気付いたのは他ならぬアッシュだった。ラクウェル出身ということで、この辺の地理にも詳しいようだ。聞けば、期末試験もそれなりにいい成績を残していたらしい。
「てか、アンタも来たことがあるのか?」
「武術訓練の一環でな。ウォレス准将と手合せしたのもここだったな……彼曰く『将軍の上と言っても過言ではない』と言われたが」
(『鬼の力』を解放した教官と互角に渡り合ったあの准将以上……凄まじいな)
(でも、迷宮では本気を見せていませんから)
アッシュのパワーレベリングということで、丘陵での経験値稼ぎ(“黄昏”の影響で魔物が強化されていたが、ユウナ達からすれば準備運動程度のレベル)をこなしつつ、丘陵のすぐ東にあるミルサンテという町に向かうこととした。すると、とある邸宅で出会った人物―――ディアナという女性に、アスベルは既視感を覚えた。
ユウナ達を他の分校生がいるという店に向かわせた後、アスベルはディアナに向き直った。
「えと、なにかあったのかしら?」
「……初対面の人にこういうプライベートのことを尋ねるのは失礼かもしれませんが、もしかしてエリィ・マクダエルの関係者でしょうか?」
「!? あなた、エリィを知っているの?」
「ええ、まあ。顔見知り程度のものですが……ご心配なく。貴女のことを言い触らしたりはしません。これは((女神|エイドス))に誓ってのものと思われて結構です」
“この世界の”エリィとは面識などないが、エリィ・マクダエルという人間となら面識を持っているのは事実。なので、決して嘘は言っていない。どうしてここにいるのか、などというのはプライベートな部分に踏み込むために追及は避けた。すると、ディアナはアスベルに一つ頼みごととして手紙を差し出した。
「このご時世ですから、時間が掛かっても構いません。娘に、この手紙を渡してください」
「……分かりました、お引き受けしましょう」
現状判明している“特異点”は5ヶ所。だが、エレボニア帝国という範囲を条件とするなら、帝都とクロスベルもそれに含まれると推測した。それに、他の面々と合流することを鑑みれば、近いうちにクロスベル方面へ向かう必要がある。そのついでに手紙を渡すだけなので、別段難しいことでもない。
それに、帝国やその協力者とて特務支援課の面々を殺すような真似をすれば、それを発端とした火種が帝国に波及しかねない。なので、いくらルーファス・アルバレアやギリアス・オズボーンといえども、彼らの妨害はできても捕まえるような行為には至れていない。それだけ特務支援課という存在がクロスベルにとって大きいものになっているという証左だろう。
アスベルがそれを懐に仕舞い、町の広いところに集まっているユウナ達に合流したのだが、まるでオカルトじみた何かを見たかのような様相を呈していた。なお、アスベル自身は守護騎士という職務上オカルト系統を嫌というほど見てきたので、とうに慣れてしまっていた。慣れって本当に怖いものだと言わざるを得ない。
東側―――リーヴス方面は政府の動きも活発化しているため、危険を冒す必要性はないし、今は特異点の特定が最優先ということでラクウェルに向かうこととなった。街に入る直前で、アスベルはボックスから色とりどりの伊達眼鏡を取り出した。
「えと、これって?」
「特殊な法術を付与した眼鏡だ。これを掛けた人間は特定の人物を除いて周囲から“ごく普通の人間”にしか見えないようになっている」
「特定の人物っつーと、俺ら以外にも含まれんのか?」
「帝国政府に肯定的な思考を持ってる人はダメだけど。後は、君らの教官と顔見知りの人間なら認識できるようにしている」
両方の条件を満たす場合、前者の条件が優先適応となるために認識される可能性は限りなく低い。ここまでしたのは、アッシュの変装を完璧なものとすることと、新Z組の面々がラクウェルを訪れたことがあるということからくるものだった。
「クク、成程な。俺らが大手を振って歩いても、この眼鏡があれば普通の帝国民としか見られねえわけか……またオカルトっつーことを除けば真っ当なんだが」
「君らが体験していることや戦おうとしている敵がその最たるものだからな。ま、これも慣れるために必要なことだと割り切れ」
騎神もそうだが、結社なんてオカルトの塊みたいなものだ。その目的を推察してルドガーに話したことはあったが、ルドガーはそれを聞いて「推察が本当だったら、俺は真っ先に潰すことを選択するわ。人間を生きているだけの人形にするなんて真っ平御免だからな」と言っていた。この世界の結社は、最終計画を見る暇もなく叩き潰されるのだろう……少しだけ哀れに思えてきた。
ラクウェルでは、アッシュに関する情報は無論“皇帝を銃撃した犯人”扱いだった。そのことはアッシュの悪友や彼の面倒を見ていた人物達からも証言が得られた。クライスト商会の連中が嗅ぎまわっていたようだったが、見つからずにやり過ごした……というよりも、対策をしていたおかげで発見されなかった。
だが、その直後に思わぬ出会い―――ヴィンセント・フロラルドとレックスの2人と遭遇。場所を移して情報交換することとなった。
ヴィンセントが言うには、ヒューゴ・クライスト―――帝国政府と繋がりのある商会の跡取りともいえる人物と会い、取り決めを交わしていた。それは、ミュゼもといミルディーヌ公女を旗頭とする『ヴァイスラント決起軍』の存在を認めないのであれば処罰はしないというもの。
「成程。確かに帝国政府としては認められないでしょうね」
「ああ、それを認めちまえば“内紛”になる。とても共和国との戦争とか言ってる雰囲気じゃねえだろうよ」
決起軍と正規軍の戦力差は1:10という圧倒的大差。だが、帝国軍は決起軍を今の段階では滅ぼすという選択肢を選べない。何故なら、事を起こした時点で内紛があるということを明るみにしてしまうようなものだ。それが周辺諸国に知られれば、それがどのような影響を与えるかということにも繋がりかねない。
「けれども、軍や政府はそれを排除する手段に訴えられない。だからこそ味方となる貴族を引き剥がしに掛かった……このあたりも、あの公女の読み通りと思うか?」
「恐らくはな」
正規軍からすれば寡兵と言われても否定できない。だが、決起軍の存在はいわば懐刀……いや、短剣と言うべきもの。乾坤一擲で中核を壊滅させられれば、正規軍の指揮系統は一気に崩壊する。勇猛な将はいても、絶大的なカリスマを持つギリアス・オズボーンやルーファス・アルバレアを失えば屋台骨を根こそぎ持っていかれる形になる。
されど、それだけでは明らかに足りない。推定180〜200万に膨らむであろうエレボニア帝国軍に決定的な一打を与えるためには、それらの大半を引き付ける何かが必要だ……そこまで考えたうえで、アスベルは冷や汗を流した。
「アスベルさん? 何か気付いたんですか?」
「いや、あの公女がやろうとしていることの予想がついた……この予想が正しければ、とんでもないことになる。あと一つの判断材料があれば、その予想の正誤もできるだろう」
実を言えば、アスベルが対エレボニア帝国に立てた作戦の一つである「焔の矢」の中には、エレボニア帝国以外の周辺国とアルテリア法国による武力行使というプランも含まれている。ミュゼは恐らく、黄昏という驚異と増長する帝国軍を完全に抑え込むため、帝国内の切り崩しではなく諸外国に共闘を持ち掛けることだろう。
2年前の内戦で貴族連合と共和国が一時的に共闘関係を結んでいたことからして、その時に築いた伝手は残っているとみられる。共和国としても帝国に奪われたクロスベルという大義名分があるため、話に乗る可能性が高い。
リベール王国とレミフェリア公国としても、自国の主権を守るために共闘する可能性が非常に高い。特にリベール王国は百日戦役でエレボニア帝国の被害を受けた側なので、いくらその時のことを水に流しても“黄昏”という驚異を野放しにはできない。とりわけ王国軍のトップに立っているであろう人物は、そういった特異的・超常的な現象の対応に長けている。D∴G教団以上の脅威と分かれば、否応にも対応せざるを得なくなる。
だが、これらはあくまでも仮説の領域。何か1つの判断材料があれば、それで分かるとアスベルは断言した。
「何せ、現時点で得られるだけの情報から仮組した程度のものだ。憶測で混乱させたくないから、ここで言うのは止めておく」
「ふむ……彼に似通った雰囲気を持っているようだが、何者かな?」
「Z組の関係者ってところと認識してくれて構わないよ」
なお、レックスからマルガリータのことを話題に出されて無駄に咳き込むヴィンセントの姿があり、つまり2人は恋人関係になったということのようだ。まあ、マルガリータの体質を知っている人間でないと誰しもがビビると思う。何せ、初めてその現象に出くわした自分もビビったのだから。痩せの大食いならまだわからなくもないが、太りやすく痩せやすい体質なんてオカルトの極みだと思う。
◇ ◆ ◇
ラクウェルから北上し、反応のあった辺境・鉱山方面へ向かうこととなった。途中でグスタフと情報交換をし、辺境の町であるアルスターの途中にあるロッジ「ノーチェ」で休憩することとなった。ここから先だとノーザンブリア方面の分岐もあるが、特異点の条件となるラマール州という条件には含まれないだろう。
すると、話はオリヴァルト皇子の流れになった。アルスターはオリヴァルト皇子が過ごしてきた故郷であり、カレイジャス爆破の件は間違いなく伝わっているのだろう。
「そういや、アンタはその皇子様に会ったことがあるのか?」
「こっちじゃないけれどな。ま、愉快な御仁という点に変わりはないけれど」
「……」
そこは変わってほしかった、とクルトは無言で項垂れていた。
オリヴァルト皇子の幼少期の話は酒の席で聞いたことはあったが、あれだけの経験をしたら普通は父親を恨んでも仕方ないかもしれない。それでも、オズボーン宰相からの言葉に靡かずに“宣戦布告”をした。アスベルの世界では、特大級の土台を拵えられた神輿みたいなものにグレードアップしているが。
「クルトの兄さんにも話を聞いていたが、彼は彼で思うところはあった。未熟さを痛感したのだろうな」
ユリアとミュラーのやりとりのことはシュトレオンとクローディアから聞き及んでいる。彼のアドバイスは恐らく自分自身に対して言い聞かせたようなものだろう。そういえば、シュトレオンも城にいたことを考えれば、恐らく飛ばされている可能性が高い。彼の「イクスヴェリア」は幻の至宝『デミウルゴス』を動力源としているため、あの1機だけで帝国軍と対等以上に渡り合えてしまうだろう。
「そういえば、アスベル以外の知り合いってどれぐらい強いの?」
「そうだな……最低でも、1対数千を無傷で生還する実力者が複数いるな」
「多少の怪我前提ならどれぐらいいけるんですか……」
そもそも、王国軍の軍備が整っている関係で味方の損害をする戦いはしなくなってきている。試験的に大剣を海に向けて割と本気で振り下ろしたら、海が綺麗に割れた。なので、現在における本気中の本気は未だに出したことがない。
多分、斬撃の剣圧だけで数万は消飛ばせると思う……これじゃ人外じゃないですか、ヤダー……内心項垂れているところで、自分たちに声を掛けてきた人物がいた。「どちらさま?」と首を傾げる人物が殆どの中、アスベルは内心で溜息を吐いた。なにせ、その片方は向こうの世界で面識のある人物だったからだ。
「ふふ、こんにちは。急に声を掛けてごめんなさいね。学生さん、かしら? こんなご時世に山歩きでも?」
「いえ、実は知り合いがいるので尋ねる途中でして」
金髪の女性―――“この世界の”ルーシー・セイランドであるのは間違いないだろう。もし、この世界に来ているとしたら真っ先にレクターのいるエリンの里に来ている可能性が高い。それだけ彼女の対レクター・アランドールの察知センサーが優れている証拠だ。またの名を女の勘。
「……失礼ですが、そちらは? どうやら外国の方のようですが」
「ふふ、ノーザンブリア方面から導力車で来ていてね。ちょっとした仕事というか……」
すると、薄茶髪の女性が小声で止めに入った。2人とも帝国出身者ではないが、この大陸では生まれる地方(厳密にはその地方出身者)が違うと髪の色が異なる傾向にある。なので、名も知らぬ女性がレミフェリア公国出身者でないことは明白。
そもそも、エレボニア帝国が戦争というご時世に仕事として来る……流石に殺傷事ではないだろうが(レクターが絡むと鉄拳事になるかもしれないが)、戦争ビジネスという雰囲気でもない。こうやって声を掛けてきたということは、ある程度の仕事を終えたと解釈できるような雰囲気だった。
すると、導力車と聞いてアッシュが直球を投げかけた。
「成程。表に停まってる豪勢な導力車となれば……ノーザンブリアの更にお隣、つまりはレミフェリアってトコか?」
「正解よ。さっきも言ったけど仕事で帝国に入ったばかりで、ハリアスクにも用事があったから、そのルートを通ることにしたの」
「ハリアスク……ノーザンブリア旧自治州の旧都でしたか」
セイランド家の人間はレミフェリア公国でも国の中枢に近いほどの人物。その係累である彼女が単なる仕事ならば、態々導力車を使う必要がない。まだ戦端が開いていないので、国際便を利用して帝国入りしてくることも可能。ノーザンブリアにも飛行船の発着場はあるし、領土化した以上は急ピッチの回復をあの鉄血宰相ならやってのけているはず。
その選択肢を取らなかった理由はひとつ。彼女の隣にいる薄茶髪の女性が『エレボニア帝国に身分を明かすと拙い人間』である可能性だ。その女性はユウナ達に情報を引き出されたことが悔しかったのか、こちらに追及の眼差しを向けた。
「しかし、この近くになると“アルスター”になるわね。こんなご時世に6人連れで導力車も使わず、魔獣もでる山道を徒歩で移動……フフ、まるで隠れ忍んで行動しているみたいに見えるけれど?」
……その洞察力は感心したが、フィーやアッシュといった面々に加え、クルトやアルティナまでいる以上は分が悪いとしか言いようがない。すると、その女性が殺気を飛ばしてきたので、それを塗りつぶすようにしつつ、彼女だけに殺気を放った。
「―――詮索は止めることね。お互い色々あるのだし。さもなくばこの場で……っ!?」
「ええ。そうしたほうがお互いの為ですし、ここは憩いの場ですから、そういう無粋なものはとっとと引っ込めてくださいね?」
アスベルが殺気を飛ばすのをやめると、薄茶髪の女性は腰が抜けたのかその場にへたり込んでしまった。すると、その場に穏やかな声が響く。
「あらあら、賑やかですね」
殺気が飛んでいた状況を“賑やか”と言ってしまうあたり、相応の実力者である人物―――エーデルがその場に姿を見せた。薄茶髪の女性をすんなり立たせた上で、ルーシーに差し入れまで渡していた。こうして見ると、ほんわかとした雰囲気を持つだけにルドガーが嫌がらなかったのも理解できなくはない。彼女のスタイルが学生時よりも更に目立っているのは言うまでもないが。
「すみません、管理人さん。色々お手数をおかけして……彼らの教官代理をしているアスベルと言います」
(教官代理って……でも、間違ってないのよね)
(教官よりも数段以上強い代理というのも変な気がしますが)
(あの女を殺気で黙らせるなんて“普通”じゃねえ筆頭だな)
その教えを受けている時点で“普通”の枠組みが微塵も無くなっているということにユウナ達が気付くのは、そう遠くない未来であった。
令和になってからの投稿なので、初投稿です。
色々やっているせいでモチベーションの優先順位がかなり落ちていました。
なので、1話当たりの文字数は多めです。
あと、戦闘シーンがかなり“強くてニューゲーム”状態となることはご了承ください。
流石に即落ち2コマみたいなことになることだけはしませんがw
説明 | ||
外伝〜導き手の目指す先にあるもの〜 | ||
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更新ありがとうごさいます。また続き楽しみにしています(Setsuna) おぉ…更新来てた…(黄泉) |
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