近未来文明が残る惑星 第6話 |
この物語はフィクションです。実際の場所や人物は関係ありません。
夢の中である記憶を思い出していた。
自分が士官学校に通っていた頃、地球に存在していた国の歴史や文化を調べる授業があった。
自分は特に調べたい国や歴史も思いつかず、ネタ探しのつもりでコロニー最大級の図書館に行き、歴史分野の棚を散策したり世界地図をなんとなく眺めていた。するとふと目に付いた国があった。それはアジア圏のとある島国だった。不思議とその島国に魅かれて歴史文献や資料をいくつか見た。その中にこの惑星に繋がる時代が書かれていたのをうっすらと思い出していた…。
「…お…い……おーい……」
ふと誰かのこれが聞こえた。リックはハッと目を覚め飛び起きた。
どうやら自分はあの船を見た後ショックで気絶してしまったらしい、布団に寝かされているのを見て悟った。
「良かったーっ、突然倒れたから驚いたよ。大丈夫?」
里巳が心配そうにリックの顔を覗き込む。
「だっ大丈夫です、すいませんでした。」
「何があったのか教えてくれないか?」
声を掛けてくれた里巳にリックは返事をした、すると鷹羽が湯呑を持ってきてリックに差し出す。湯呑の中には温かい緑茶が淹れてあった。
リックはお茶を飲み、少し安心したのか倒れた原因を話し始める。
自分が乗ってきた船が完全に故障して、故郷のコロニーに帰れる可能性がほぼ無くなった事を伝えた。
「船の通信機能が活きていたらまだ、帰れる可能性はあったんですけど……それもダメで。
そうなったら、あちら側から助けに来てくれるのを期待して待つしかないでしょう。」
「…色々分からない事はあるんだがとりあえず、あちら側とは?」
「自分が生まれ育った故郷です。」
初めて聞いた言葉に疑問を持ちながらも必死にリックの話を理解しようとする鷹羽と里巳。
「つまり故郷に帰れなくなったから、その調査というものが終わってもしばらくこの国にいるって事?」
「…はい、迷惑は掛けない様にします!お願いします!」
「私は構わないけど、そういうのは北条様に聞かないと…ねぇ?」
リックの必死のお願いに困惑する里巳は鷹羽に声を掛ける。
「……そうだな、それは氏政様が決める事だ。また後日謁見がある、そこで改めて話そう。
日もだいぶ暮れてきたし、今日はもう帰ろう。」
「そうですね…里巳さん、今日は色々有難う御座います。」
「いいよ、またおいで」
外に出ると鷹羽の言った通り夕暮れだった、そして2人は里巳の家を後に町がある方向に向かった。
辺りが薄暗くなってひんやりとした風が吹く頃、鷹羽は持参していた風呂敷の中からある物を取り出した。
それはガラスの様な透明な囲いの中に白いロウソクがあり、その上には金属で出来た物体が乗っていて、取っ手の様な持つ部分がある。
まさにそれは――――
「ランタン!?ですかそれは…」
「ん?ああ、そうだ。ランタンを見るのは初めてか?」
「はい……なぜランタンを持ってるのですか?」
ランタンが存在している事に驚くリック。いや、時代的にはこの国は恐らく15世紀から16世紀の間のどこかだろう。西洋ではすでにランタンが発明されていてもおかしくない、何故、その西洋で発明された物がこの国にあるのかが疑問だった。
未知の星であるこの惑星に、まさかこの島国同様、世界にはヨーロッパそっくりな文化や文明を持った場所があるのか?そこから伝わった物なのか?
リックは疑問ばかり頭に浮かぶ。
「…そうだな…確か1年ぐらい前に小田原にお前と同じ、異国から来た商人がやって来たんだ。そいつから買ったんだが…」
「そ、その商人って!?どんな人でしたか!?どこから来たんですか?」
ランタンを見るなり、急に興奮し鷹羽に質問してくるリックに、鷹羽はやや引き気味で質問に答える。
「うーん…格好はお前を初めて見た時はと違い、普通の海の外からの来訪者という服だったぞ。お前とはまた違った風変わりな服を着ていたが、金髪で青い瞳をしていたんでな、共通点はあるんじゃないか?」
自分とは違う…それを聞いたリックは考え込む。
その異国の商人は恐らく、この国と同様、西洋諸国そっくりな文明を持つ場所から来た者と考えた。
(やっぱり、この惑星は何かがおかしい。ヨーロッパに似た場所もあるなんて…どうなっているんだ?)
そんな考え込むリックを余所に、慣れた手つきでランタンのロウソクに火をつける鷹羽であった。
「火が付いたぞ、明かりがあれば少しは暗闇でも歩けるだろう?宿を予約してある、そこまでもうちょっとだ頑張れ。」
「本当ですか!?やったー!」
リックに声を掛け、再び歩き出す。辺りはすっかり真っ暗になっていて星も見えていた。
電気が普及する前までロウソクで暗闇を照らしていた。そんな資料でしか見た事なかった過去の貴重な遺物を実際に見て手で触れることが出来た事、コロニーに居た頃とはまた違って地上から見た星空は草の香り、虫の音、心地よい風など自然環境も含めて幻想的で美しく、リックの心を明るく灯す。
(あの星一つ一つが惑星なんだ…。俺が住んでいたコロニーもこの星空の中にあるのかな?
例え遙か遠い場所でも、こうして光として目に見える。不可能じゃない、きっと大丈夫。)
リックは美しい星空に感動しつつ、いつかあちらから迎えに来てくれる事を信じて、前向きに待つ事を心に決める。
そして小田原の町の近くにある宿に辿り着き、歩き疲れた体を休めた。
翌朝、リックと鷹羽は朝食を食べ終え小田原の町に向かう。
鷹羽「このまま、城に向かう。構わないか?」
リック「はい、いいですよ。確か氏政様との謁見でしたっけ?…大丈夫かな?」
リックは前回の謁見で一言二言会話しただけで終わってしまったのを気にかけていた。
俺は謁見するほど大した人物じゃない、必要ないと思われてしまったのではないかと心配だった。
――――――――――
小田原城・謁見の間
(うう…やっぱりこの場所緊張するなぁ…それに足痺れない様にしないと!)
足早に謁見の間に到着し、間に入る2人。
「おお、久しいな。変わりが無い様で安心したぞ。それで、今回呼んだ要件なんだが…
其方が以前言っていた…この町周辺にあるアレの正体を調べる事と護衛が欲しいとの事だったな?」
北条氏政は前回謁見した事を思い出しながら淡々と話す。
「あっはい…そうです。(護衛が欲しいのは合ってるけど、もう一つはこの町の文明調査させてほしい事だよ!アレってなんだよ。)」
「ん?何か言いたげな顔をしておるな…?」
(げーっ!思った事見抜かれてた!?どうしよう…この人千里眼とかなんなのか?)
知らずのうちに思った事を表情に出していた事に気づかないリックであった。
「い、いえ…その…護衛の事はおっしゃった通りなんですが、アレの正体を調べるとは…?」
恐る恐る氏政に質問する。
「んん?アレの説明をしていなかったのか、鷹羽!?」
氏政は驚いた顔をして鷹羽の方を見る、それと同時に周りにいた家来たちも一斉に鷹羽の方に目を向ける。
「もっ申し訳ございません!今からそこに連れて説明いたします!」
鷹羽はうっかり忘れていた様で、冷や汗をかきながら謝罪する。
「はぁ…もうよい、いつもならそれなりの罰を受けてもらうが、お前には役目がある。
鷹羽、お前がこの陸(りく)の護衛となり、面倒とついでに剣の稽古を付けろ、いいな?」
「御意。」
鷹羽のうっかりに少し飽きれる様に氏政は任務を話す。
そして再びリックの方に顔を向ける。
「陸(りく)、其方の報告を期待しておる。近頃近隣の動きが怪しい、忍びや何者かと遭遇する羽目になる事もあるかもしれないが、まあ大丈夫だろう。なあ鷹羽?」
「はい…!」
今度は忘れるなよと言わんばかりに、鷹羽にプレッシャーを与える氏政であった。
「…あの一つお聞きしたい事があります。」
「どうした?」
「自分の名前はリックというんですが、氏政様は自分の事を陸って呼んでいます。これはどういう事なのでしょうか…?」
「どういうも何も、其方の名が単に言いにくく、儂が勝手に其方の名を考えて呼んでいたことだ。不満か?」
「いえいえ、とんでもないです!嬉しいです!」
流石一国の主、異国から来た者だろうと容赦なく好き勝手にする。
「陸は良い名だと思うんだがな?その其方の名前の言葉の響きにも似ておる。どうじゃ?」
(言葉の響き…発音の事かな…?まあ確かに似てるけど……まあいいか。)
「はい、そうおっしゃられると愛着が湧いてきました。有難う御座います。
陸という名前、大切にします!」
「うむ、陸、其方の報告期待しておるぞ!」
そうして前回よりもちゃんとした会話が出来た事に満足し、これから本格的に任務が始まる事に、胸を高鳴らせてやる気を出すリックであった。
次回に続く
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閲覧有難うございます。今回も色々な事が判明し物語が進みます。 次回も11月中を目標に更新できるよう努力します。 もし宜しければ感想やアドバイス等お願いします。 |
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