真・恋姫†無双・公孫賛√ 〜白花繚乱〜第4話 |
【一刀】「うぅ〜……」
一刀がここ公孫賛宅に居座るようになって三日目の朝。昨日とは違い、今日はずいぶんと早起きの一刀だが、その表情は一刻を争うものだった。
それはたとえ性別が変わろうとも襲ってくる生理現象で、昨日までの時点ではそれほど問題視していなかった。
だが、さすがに三日目ともなると行かないわけにはいかない。
一刀は走る。この苦しみからの解放を求めて。
【一刀】「………れ……」
うめくような声で呟きながらも、その足は止めない。
そして、ついに目的の場所までやってきた。
――『The・厠』
【一刀】「よ…よし」
意を決し、一刀はその扉を開ける。
【白蓮】「……へ…?」
【一刀】「………え」
そこには、下半身を丸出しにしたこの街の太守様がいた。
【白蓮】「……………………。」
【一刀】「……………………。」
二人して同時に沈黙する。お互い今の状況を把握するのに頭をフル回転させるも、全力で空回りする結果となっていた。
【白蓮】「……………………。」
【一刀】「……………………。」
やはり沈黙する二人。
――ジョロジョロ
しかし、そんな二人の沈黙を破ったのは、無情にも水の弾ける音。
【白蓮】「〜〜〜〜〜!!!!」
一気に白蓮の顔が紅潮する。
【一刀】「ぱ、白蓮!?ちょ、ちょっとおちつけ!え、えと――」
【白蓮】「いいから閉めろ!馬鹿!!!」
【一刀】「は、はい!」
その一瞬は音速も超えたのではないかという速度がでた。それほどのスピードで閉めた扉は大きな音をたてて、二人の間に壁を作った。
しばらくして、太守様こと白蓮が中からでてきた。顔は相変わらず赤いままだった。
一刀は頬を掻きながら、ごめんとだけ言って、中へと入った。
【一刀】「ん、よく考えたら鍵閉め忘れた白蓮も白蓮じゃないか?」
呟いた後、扉の向こうから殺気のようなものを感じたので、それ以上は続けることは出来なかった。
気持ちを切り替えて、ズボンを下ろして、用を足そうをする。
【一刀】「ん、あれ?」
しかし、どこか違和感。
手順がひとつ足りない。おかしい。
そこでようやく、自分の体のことを思い出した。
【一刀】「あぁ………そうだった……」
こんなところで女性になったことを実感するのもつらい話。
だが、同時に昨日起きたこともおもいだした。そう、昨日はあったのだ。まだ男性の名残が。
【一刀】「……消えてる……………。…ホワイ?」
日々変化する体に意識が追いつかず、もはや諦めるしかなかった。
【一刀】「まさか……夢だったとか?」
むしろこの状況が夢としか思えないのも事実だった。
少し考えてみるが、結局答えはでない。
【一刀】「ん〜〜〜………」
その頃扉の向こうでは。
”ほ、北郷殿はまだでしょうか…”
”あう〜……”
”くっ……負けぬ…負けぬぞ!!…この程度で負けては公孫の家に仕える者として……”
”あぁ〜ん………だんだん快感になってきたかも……”
【白蓮】「この地獄絵図はなんだ……」
【星】「まさに行列の出来る厠ですな」
一刀が入ってから既に一時間を過ぎようとしていた。
〜街〜
【一刀】「あう……面目ない……」
【白蓮】「まったくだ…。家臣に変な性癖をもたれたらどうする。」
【星】「何名かは既に遅い気もしましたが……」
厠での騒ぎを一通り治め、一刀たちは街へと来ていた。街のことを知りたいとは一刀の希望だったが、昨日は午後からで、すでに街は撤収モードだったし、何気にあの女の子二人に時間を取られた。
さらに言えば、あれから帰って白蓮に叱られてしまったわけだが、その内容は8:2の割合で何故自分を連れて行かなかったのかというものと、純粋に頭痛の件を心配したもの。もちろん頭痛が2だ。
【白蓮】「ま、そっちはもういいけどさ。」
【一刀】「うん」
白蓮から許しをもらえると、一刀は街を見渡すように視線を動かす。あちこちに人が行き来していて、昨日よりもずっと活気に溢れてる。
”お、伯珪ちゃんじゃないか。どうだい、今日もいいのあるよ〜”
歩いていると、白蓮に話しかける男性が現れた。何かの店の店主ようで、ずいぶん親しそうに話しかけてくる。
【白蓮】「おじさん…ちゃんはもうやめてくれよ〜。もう子供じゃないんだからさぁ」
”うははは。俺らからしたら伯珪ちゃんは昔から何もかわっちゃいねぇよ”
【白蓮】「はぁ…それ気にしてるんだけどなぁ…」
ものすごく小声で、白蓮は呟いた。その声は一刀以外にはほとんど聞こえないようなものだった。
”んー?なんかいったかい?”
【白蓮】「いや、なんでもないよおじさん」
上げた顔は既にいつも通りの白蓮だった。
それからまた歩き出して、一刀たちは街を回っていた。
【白蓮】「…………一刀って、不思議だな」
【一刀】「え?」
突然言い出した白蓮の言葉はそんなものだった。
【白蓮】「だって、お前ちゃんと回るのは今日が初めてだろ?なのに………」
白蓮が言っていることは、ここまで歩いてくる間、街の人間が妙に一刀と親しげだったこと。先ほどの店主のように、主に白蓮に話しかけてくるのだが、一刀のことを目に留めると”おや、まぁ……”などと声を漏らしながら一刀へと近づいていく。
そして”あんたが天の御遣い様かい?”と皆同じような話題をかけてくる。ひどい時なら三人同時など。
始めは興味で話しかけていた人たちだが、一刀と話す間に次第に声が弾み始める。
【星】「一刀殿はそういう才に長けた方ということですよ、白蓮殿。」
最終的には笑い声となって、その場がまとまってしまう。
【一刀】「よくわからないけど……」
一刀にしてみれば、それは天然故の自然体で出来てしまう事であり、あまり気にするようなものではなかった。
【白蓮】「ん〜、そういうものかな」
【星】「そういうものです」
星はどこか達観しているようなところがあり、その言葉には変な説得力があった。
【星】「む!」
【一刀】「星?」
歩いていると、突然星の目つきが変わった。その視線の先には………
【白蓮】「あれは……行商?」
治安のせいもあって、最近はめっきり減ってしまったが、そんな数少ない行商が少し離れた場所で商いをしていた。
星はそんな商人から目を離すことなく、ずいずいと歩き出した。
【白蓮】「あ、おい、星、どこいくんだよ」
【星】「先に行っておいてくだされ。急用ができました故」
【一刀】「行っちゃった…ほしいものでもあるのかな………」
【白蓮】「あいつはたまに謎になるからな……」
そんな星を見守ることしか出来ず、二人してため息の後、星をおいて進みだした。
〜side一刀
二人になって、少し歩く。
【白蓮】「………………。」
【一刀】「………………。」
しかし、ここまで来ると二人では話題など浮かばず、沈黙の中を二人して歩いていた。
…………気まずい。はっきり言って気まずい。さっきまでは星がいてくれたからまだ何とかなったが、二人になると異様に意識してしまう。
しかも、俺は今朝よりにもよって白蓮のトイレシーンに遭遇しちゃってるわけで………
こっそり白蓮のほうを見る。
【一刀】「――――っ。」
【白蓮】「―――!」
目が合った。
視線が交わるどころか、完全に重なってしまった。
途端に意識が強くなると、顔が熱くなってくる。
思い出すのは、今朝の白蓮の姿だった。当然トイレにいたんだから、その姿は下半身丸出しというものだ。形のいい尻とかも当然見てしまったわけで。
……………やば。
自分でも思った以上に鮮明に覚えてしまっていた。今だけは女でよかったと心底思う。こんなところで前かがみになって歩くなんてほんとに情けない。
【白蓮】「か、一刀!」
【一刀】「はい!ごめんなさい!!」
突然呼ばれた声に脊髄反射で謝ってしまった。
【白蓮】「……へ?」
【一刀】「………え」
【白蓮】「ぷ……くくっ……あはははは!!」
噴出すように白蓮は笑い始めて………止まらなくなった。
【白蓮】「あっははははは!!まったく…なんなんだお前は!……あ、ほら、涙でてきちゃったじゃないか」
そんなにツボになるようなことを言ったつもりは無かったが、白蓮の笑いは止まらなかった。
【白蓮】「あっははっは……はぁ……ふふ……あぁ、だめだ……」
必死にこらえようとしているが、奥からどんどんこみ上げてくるらしい。
【白蓮】「か、一刀………っっ……ち、昼食でも……」
【一刀】「あ、うん。そろそろご飯にしよっか」
【白蓮】「あ、あぁ………ふふふ……」
【一刀】「もう、白蓮〜……」
それから店に入り、昼食を終えるまで白蓮は終始笑い続けていた。
【白蓮】「あ〜笑ったぁ…」
【一刀】「も〜…」
【白蓮】「さて、次どこいこうか」
ようやく落ち着いたようで、白蓮は俺の前を歩いていた。時々振り返っては、どこいこうかと聞いてくる。
【一刀】「そうだな……」
とは言うものの、街の中はもう一通り回ってしまった。知りたかった街の状況はもう把握したから、はっきり言ってしまえば、もう帰ってしまっても問題ないのだが………
【白蓮】「―――?」
ここ数日、ドタバタしててあまり見る機会もなかったが、こうしてちゃんと見ると、白蓮は結構可愛い。アイドルのような華やかさがあるものではないが、整った顔立ちをしている。
スタイルだって悪くない。いわゆるスレンダータイプというやつだろうか。
【白蓮】「一刀?どうしたんだ、ぼーっとして」
【一刀】「え、あ、うん。なんでもない。んー、それじゃ―――」
もう少し一緒に回りたい。そう思って、俺は適当にどこか答えようとした。
【戯志才】「おや、これは北郷殿。」
【一刀】「え?………あ」
声をかけられて、そちらを向けば、そこには昨日の鼻血の二人がいた。
【程立】「お久しぶりなのです〜」
【戯志才】「風、昨日あったばかりだ」
【程立】「おおぅ」
相変わらずの調子だったが、めがねをかけた子―戯志才の鼻血はどうやらもういいようだ。あれだけの出血だったので少し心配になっていた。
【白蓮】「一刀、二人は?」
【一刀】「あ、えと、昨日話した二人だよ。程立さんと戯志才さん」
それぞれを指して紹介する。
【戯志才】「以後、見知りおきください。公孫賛殿。」
【白蓮】「私の事は知っているのか。」
【程立】「ちょっとした噂になっていますからね〜」
【白蓮】「噂?」
【戯志才】「公孫賛殿の下に天の遣いが降りたという噂ですよ」
【白蓮】「あぁ、なるほど」
白蓮は俺のほうをみて納得していた。
【一刀】「二人は何してるんだ?」
【戯志才】「何、というほどのことではありませんが、街の中を見て回っていました。」
【一刀】「へぇ、なら俺と同じだね」
【戯志才】「同じ、とは?」
戯志才は首をかしげながら聞き返してきた。
【一刀】「俺も街をみてたんだよ、まだここにきて日も浅いしね。」
【戯志才】「なるほど」
納得したように頷く。
それから、しばらく話していたが、時間もあまりないということで二人とは別れた。
再び白蓮と二人きりになる。夕方近くなってきた街の中を歩いていると――
【白蓮】「楽しそうだったな」
【一刀】「――?」
白蓮が少し低いトーンの声で話しかけてきた。
【白蓮】「さっきの二人と楽しそうにしているお前」
【一刀】「あぁ、そう?」
【白蓮】「あぁ……」
そういった白蓮の顔はずいぶんと沈んでいた。
【白蓮】「……楽しそうだった。」
【一刀】「白蓮?」
【白蓮】「………………いや、なんでもないさ。それより――」
白蓮は何か振り切るように首を振った後、またあそこに行かないかといって、俺を城壁へと連れた。
城壁へとたどり着く頃には、空は赤くなっていた。
【白蓮】「ふぅ………やっぱりここはいいな」
涼やかな風を受けながら、白蓮は笑っていた。
【一刀】「うん」
今朝、さっきまで、今。一日でずいぶんいろんな表情を白蓮は見せてくれた。どれが彼女にとって自然であるのかなんて考えていると、俺は短く返事することしか出来なくなっていた。
朝はこれが夢であってほしい。夢だと信じたいと思ったけれど、今になって俺はやはり現実であってほしいと願っている。
ずいぶん自分勝手な思考だった。
空の色みたいに、時間が経つにつれて考え方も変わっていく。あの二人と話しているときも。
【白蓮】「お前はやっぱり不思議だな」
【一刀】「………え?」
【白蓮】「まだ会って三日なのに、ずいぶん一緒にいるような気がする。」
【一刀】「そう、かな」
【白蓮】「あぁ、なんだか」
【一刀】「――?」
【白蓮】「お前って男みたいだよな」
【一刀】「――ぶっ!!………ごほっ…ごほっ」
【白蓮】「お、おい、大丈夫か。冗談だから気にするなって」
何処で気づかれたのかと本気で記憶を探ってしまった。
【白蓮】「まぁ、でも、あんなモノまで生えちゃってるんだから、案外実は男だったりしてな」
【一刀】「ア、アハハハハハ」
笑えない。本気で笑えない。既に男だったら許されない悪行が積みあがってしまっている。
【一刀】「あぁ、でもアレ、今朝見たら消えてたんだよ」
【白蓮】「き、消えちゃったのか…!?」
【一刀】「うん、綺麗さっぱり。ほんとに謎だよ……まったく」
【白蓮】「そ、そうなのか…」
【一刀】「………………残念?」
【白蓮】「そんなわけあるかっ!」
覗きこむようにたずねると、思い切り叫ばれてしまった。
【一刀】「ま、街もある程度知ることもできたし、明日から仕事も始めるよ」
【白蓮】「あぁ、頼むよ」
二日前と同じ場所で、二人は笑いあう。
【一刀】「………白蓮」
【白蓮】「うん?」
【一刀】「これから先さ、たぶん間違いなく、乱世が来るよね」
【白蓮】「あ、あぁ、たぶんな」
【一刀】「俺って結構優柔不断だから、ここで約束しとくね」
【白蓮】「うん?」
息を吸って、白蓮のほうを向く。
二度目の宣言だ。迷うはずも無い。
【一刀】「この先何があっても、白蓮の事、守って見せるから。」
【白蓮】「――!?」
【一刀】「白蓮が乱世を生き抜くように、守っていく。」
一度目の事はあまり覚えていないけれど、思い出せないことにとらわれていても仕方がない。
これからまた、争いの世が始まるのだから、俺はそれを全力で生き抜く。
この人の下に落ちたのは、何かの縁。味方のいないこの子を守ってあげないといけない。
【一刀】「約束。」
【白蓮】「………………あぁ……ありがとう……一刀」
手をだして、白蓮もそれを握り返してくれた。
顔は下を向いてたけど、心配にはならなかった。
今だけは彼女の感情はなんとなく分かってしまったから。
【白蓮】「守るだなんて、ほんとに男みたいだな………」
【一刀】「あぅ………」
が、やはり格好はつかないようだ。
〜宿屋〜
【戯志才】「どう思った、風」
【程立】「御遣いさんのことですか〜」
【戯志才】「えぇ」
宿屋の一室にて、昼間の二人は会話していた。
内容は、当然、今日あった御遣いとその主についてだ。
【程立】「豚に真珠。蛇が龍を飼っているようなものですね〜」
【戯志才】「ずいぶんとはっきりいうんだな…。」
【程立】「いえいえ〜」
【戯志才】「………………まぁ、しかし臣下のほうに大器を見出すとは、困ったものですね。」
がたんという音。戯志才が立ち上がり、椅子が床を跳ねる音だった。
【戯志才】「一度内側へ入ってみるのもいいかもしれない」
【程立】「公孫へ入るんですか?」
【戯志才】「いや」
少し間が空いて、戯志才は呟いた。
【戯志才】「”北郷”に、な」
説明 | ||
なんとか4話投稿です。 一応今回で、正式に一刀は公孫の家臣となります。 かなり原作から外れた内容ですので、ニガテな方がいらっしゃれば申し訳ないです(´・ω・`) 追記:フタナリ化については話が進めばまた明らかになりますwまぁ、また出てくるでのそれまでお待ちを(´・ω・`) 第3話⇒http://www.tinami.com/view/100370 第5話⇒http://www.tinami.com/view/101887 |
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風辛口ですねw一刀から白蓮を守る宣言でました。(ブックマン) ツンネコ様@TINAMI様:報告ありがとうございます〜直しておきました(`・ω・´)(和兎) なんだか下克上の予感www(フィル) 豚に真珠、蛇が龍を飼う・・・・白蓮かわいそうにw(韻) 楽しく読ませていただきました。風、稟フラグが立ちましたね。一刀のナニはいつ立つのでしょうね?・・・w(黒猫) あってもなくても一刀は一刀だ!やる時にはやるさ。(乱) 一刀頑張れ!!モノが無くても大丈夫!!お前ならやれる・(トーヤ) 自信ないですが珀圭じゃなく伯珪じゃないかなと……携帯から見てるのでP数解りませんが、おじさんとの会話のところが。(ツンネコ様@TINAMI) チン○がなくても出来ることはあるもんっ>< 華琳ちゃんを見習えっ、チ○コがないのにあんなに激s(ザシュ ・・・返事が無い。絶によって首が飛んだようだ。(ティリ) チ○コのない一刀など、チャーシュー抜きのチャーシューメンみたいなのに(´・ω・`)(yosi) |
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