若葉の輝き
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 「若葉の輝き」

 

 五月の良く晴れた日の午前中、ふと何かの拍子で部屋の窓の外へ視線を向けると、向かいのマンションの棟のドアの並ぶ玄関側に、早終わりの日程なのか、その時間に下校して来たらしい中学生の姿が見えた。

 こちらの部屋と同じ一階の通路を真横に移動して行く、衣替えしたばかりで彩光を放つ真白いシャツカラーの上の綺麗な横顔に思わず心が惹かれた。しかしこちらがそれを意識した直後にその子は突き当たりの外階段を登り始め、そこを囲っている壁の向こう側へ隠れてしまった。そんな僅かの間では性別も男子なのか女子なのかはっきりとは分からなかったので、次に通路に現れる所ではっきり確かめようと思ってずっと上の階の方を注視し続けていた。しかしこちらの視線の位置や角度が悪かったのか、相手がどこかに出たのを知らずに見過ごしたらしく、いつまで経っても再び目に捉える事が出来なかった。

 

 それからしばらくしてそこのマンションの真下にある躑躅の植え込みの端先の若葉が一枚、風で表面の向きが変わって陽射しが反射し、ぎらっとその瞬間だけ金属の様な虹色に輝くのが視界に映った。

 代わりにこちらに見えたのはそれくらいの物だった。

 

 終わり

説明
原稿用紙、約一枚分の掌編です。他サイトに投稿した分とは文章を変えています。
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中学生 躑躅 掌編 

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