女として死んでいる |
女は健常者だった。
しかし、女として欠落していた。
何がかと言われると、はっきり言葉には出来ないが、何かが、欠落していた。
女は異世界に住んでいる。我々から見てだが。
女の名前を神庭(カニワ)という。
名字でもあり名前でもある。
この異世界ではそれが常識なのである。
異世界は異世界としか言い様がないのだが、この世界の住人は、この世界を「イーストサン」と呼んでいる。
「東の太陽」という意味だが、太陽に何か感じるものがあるらしく、特にカニワが暮らすこの国では、太陽神が主に崇められている。
困った時の太陽神
実は、太陽神と言っても何者かは誰も知らない。しかし、困った時太陽神を呼べば、助けが来る事を誰でも知っている。
カニワは日常生活の仕事で、それを試してみた。
彼女は仕事を転々としているが、とりあえず今は冒険者の仕事をしている。
そんな中、彼女はモンスター退治の仕事(クエスト)を受けていた。
受けるまではともかくとして、(ただ黙って仕事を受ける事を受付嬢にでも伝えれば良い。)受けてからが仲間集めに難航するカニワだった。
(”女として死んでいる”以上、男相手にしても女相手にしても・・・。)
試しにちょっと仲間集めをしてみよう。
「ちょっといい?」
「何ですか?」
美男子くずれの剣を持った戦士が応答する。
「仲間集めをしているんだけど、仲間にならない?」
「いや、結構です。」
女なら女言葉を使えと言うのだろうか?
断られてしまう。
また、女性で試してみよう。
「ちょっといい?」
「何でしょう?」
若い魔術師、杖を持った女性が応答する。
「仲間集めをしているけど・・・仲間にならない?」
「結構ですわ。」
断られてしまう。
何がいけないのかが分からない。
ちなみに、私はこういう格好をしている。
短剣を装備して、魔術師の黒い格好をして三角帽子をかぶっている。もちろん黒いのだ。金髪碧眼のいわゆる美少女だが、何故か好かれない。
私唯一の友人によると、「女として死んでいる」からだそう。
まあ、それはともかくとして太陽神に助けを乞う事にした。
「太陽神さま、太陽神さま。助けてください。」
すると、光輪が頭の上にある黒髪の美少女が翼を伴って、降りて来たのを見た。
天使である。
その天使は白衣を着ており、その白衣はシンプルな形状をしていた。
「どうした?」
天使が問いかける。
恐らく、助けについてだろう。
「私はカニワと申します。太陽神さまの天使ですね?・・・冒険者の仕事についてなのですが・・・。」
「なるほど。」
「仲間集めについてです。助けが欲しいのは。」
「なるほど、分かった。」
納得してもらえたらしい。
太陽神の天使
天使は光り輝く光輪を頭の上にしながら、仲間集めをし始めた。
「あのー、すみません。」
「何でしょうか?」
「私、天使ですが、仲間集めをしています。一緒に仲間になりませんか?」
「良いですわ。」
男性は全滅だったが、女性は概ね成功だった。
3人程集まった。
「ありがとうございます。天使さま。」
「どういたしまして。ところで、私を仲間にして欲しいんだけど。」
「いいですよ。」
私は快く承諾する。
「じゃあ、よろしく。」
「では、自己紹介して欲しい。」(カニワ)
「良いですわ。私四日街(ヨッカガイ)ともうします。お見知り置きを。職業は魔術師をしております。」(ヨッカガイ)
以下省略。
その後、仕事をしに洞窟へ向かう。(仲間登録は済ませた。)
「仕事内容はゴブリン退治ですわ。天使さま、カニワさん、その他皆さん、準備はいいですか?」(ヨッカガイ)
「はい。OKです。」(天使)
「ああ。準備は万端だ。」(カニワ)
以下省略。
ゴブリン退治
「ゴブリン退治ですわ。編成は前衛から天使さま、カニワさん、私、その他でよろしいですか?」(ヨッカガイ)
「いいよ。」(カニワ)
私、カニワの鶴の一声で決定となった。
ちなみに天使は剣を一振り持っている。
1番前衛という訳だ。
一行は洞窟の奥へ奥へと進んで行く。
3匹程のゴブリンが現れた。
まず、私カニワとヨッカガイがファイアを撃つ。
「ファイア!」(カニワ)
「ファイア。」(ヨッカガイ)
私の撃ったファイアが1匹のゴブリンに当たりダメージを負わせる。
ヨッカガイの撃ったファイアは別のゴブリン1匹に当たってゴブリンを死亡させる。
天使が近づいていって、無傷のゴブリンを切って死亡させる。
私自身がダメージを与えたゴブリンに近づいて短剣で切る。ダメージを喰らって怯んでいる為、まともに受けて死亡する。
次には4匹、その次には7匹、現れたが、同じ様にして倒した。
ゴブリンは短剣等を持っていたが、背が低いゴブリンでは到底命中させられるものではなかった。
しかし、洞窟の奥、ゴブリンの溜まり場では、ゴブリンの武器庫があり、豊富な扱い易い武器が有った。
天使はそこに切り込む。パーティー全体としても天使に続くのだった・・・。
私はその武器庫で扱い易い片手剣を見つけるのだった。
ゴブリンが何十体もいる。
主力は天使、私、ヨッカガイの3名である。
武器庫を背にしつつ、向かって来るゴブリンに応戦する。
30分後、ゴブリンの溜まり場は全滅していた。
無論、パーティーの勝利である。
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女は健常者だった。 しかし、女として欠落していた。 何がかと言われると、はっきり言葉には出来ないが、何かが、欠落していた。 |
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