近未来文明が残る惑星 第9話
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この作品はフィクションです。

実際の地名や歴史上の出来事、人物とは関係ありません。

 

前回のあらすじ

戦国時代と思われる時代の小田原と呼ばれる町に不時着したリックは、そこでこの時代に存在するはずのない近未来文明品を次々と発見する。しかし、ある朝リックは浜辺で何者かに襲われ連れ去られてしまった。連れ去らった人物の名は松利、真田の忍びをしているらしく彼女から衝撃の一言を聞く。

 

 

突然背後から襲われ誘拐された挙句の果てに、世話になった村や城下町が戦場になるという怒濤の展開にリックは一瞬頭が真っ白になった。

 

「……は?……」

「突然の事で混乱しますよね…お気持ちお察しします。」

 

リックの絶望した表情を見て、松利は嘘っぽく同情するそぶりを見せる。

 

(何言ってるんだ…?じゃあ今頃、瑠璃やカムイ、鷹羽様は敵に襲われているって事なのか!?)

 

これがこの国の歴史通りなのか分からないが、自分だけ戦火を逃れて黙って見ているなんて出来ない。リックは悔しさで手をぐっと握る。

 

「助けなきゃ、皆を助けに行く!!小田原に返してくれ!」

 

リックは再び怒鳴るように叫んだ。

 

「いけません!今頃は戦の真っ最中かもしれません。危険ですよ!」

「だからって世話になった人たちを置いて俺だけ、安全な所にいるのは嫌だ!」

「いつ…安全な所って言いました?」

 

松利は目を大きく見開きリックを見つめる。

 

「知ってるんですよ、貴方が遠くから来た異邦人で我々には知らない文明を数多く知っているとか」

 

(うっ……俺の事が知れ渡ってる!?まあ、こんな変な奴いたらそうか…)

 

リックは身構える。

 

「とにかく小田原の事は諦めて、ひとまず私達の隠れ家に移動します!付いてきて下さい」

「…俺が途中で逃げるかもしれないとか考えないのか?」

「この山には無数の罠が設置しています。それから難なく逃れられるとは思いませんけど?」

「…分かった。」

「ふふっ賢明な判断ですね」

 

小雨も止み、2人は洞窟から出て松利の案内の元その隠れ家に向かうが――――

 

「…さっきの山道とは違ってまた急な登り坂だな…」

 

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洞窟から出て体内時計ではおおよそ2時間って言ったところだろうか、リックはふと気が付いた。道案内してる松利との距離が段々離れてきていた。

 

(もしかしたら今なら逃げれる!?)

 

リックは一瞬そう考えた。幸い松利は土砂崩れの様な岩山を上るのに集中している。

周りには無数の木が生えていて、隠れることも出来る。

 

(そうだ今しかない!せめて瑠璃とカムイだけは助けるんだ…!)

 

リックはすぐに行動を起こした。山に設置されている罠の事を忘れて。

最初は足音出さずに静かに後ずさりをした後、後ろを向き全速力で走った。

 

「あっ…はあ…もうどうなっても知りませんよ…!」

 

うっかりしていたのか松利も慌てて追いかけた。

 

(久々にこんな全力で走ってる…苦しいけど、もしかしたら…!)

 

リックが一瞬油断した瞬間――――

 

                パンッ………!!!

 

乾いた破裂音が鳴り響くと同時にリックに激痛が走る。どこかで聞き覚えのある音…

リックは急には立ち止まれず、転がりながら山道を下り木に激突した。

 

「…うう…ああああ!…何が起きたんだ…!?」

 

耐え難い痛みに悶えながら激痛が走った右足を見た。

右足の膝から少し上の辺りから赤く大量出血している。

 

「あ、あああ!なんで!?どうしよう!」

 

リックは両手で出血を抑えようとするが、血が貫通した所から噴き出し、益々両手や衣服を赤く染める。

 

「うっ動かないで下さい!!!死にたくなければ大人しく私の所に来てください!!」

 

動くなと言いつつ自分の所に来いと矛盾して発言する松利に、ツッコミを入れてる余裕はなかった。

リックは恐る恐る木の陰から松利を見ると、彼女の手には―――

 

「じゅ…銃!?しかもハンドガン!?」

 

松利はこの国の時代には存在しない未来の武器でリックを撃ったのだった。

しかしその松利からは手が少し震えていて、不安そうな表情を浮かべていた。

 

「幸村様から頂いたこの武器、まだ使いこなせてないんです!大きな音が鳴ってこっちだって驚くし…次は何処に当たるか分かりません!私は貴方を殺したくないんです!」

 

涙目になりながら銃を構える松利だったが、その思いはリックには届かなかった。

 

(確かに今動いたら、今度こそ死ぬ…それでも!世話になった恩を返したい!)

 

リックは右足に口で髪切った衣服の切れ端を巻いて応急処置代わりをした。

再び両足で立ち上がると激痛で走れる状態では無かった。

リック自身馬鹿な考えで間違った選択をしているのは承知だ。

 

リックは右足を少し引きずるように再び走り出した、先には削られた崖の間に不自然に盛り上がった形の地形があった。

松利はすぐさま足音がする方向へとリックを追いかけるが、松利が次にリックを目でとらえた時には―――

 

「あっ!だめです!そこには罠がっ…!」

 

リックが盛り上がった場所に足を踏み入れた瞬間、大きくその場所が窪み轟音と共にリックは崩れた穴の底に落ちていった。

 

「大変…!だから大人しくしていれば良いのに!面倒だなぁ…」

 

松利は次々起こる予想外の事に頭を抱え、指笛を空に向かって吹いた。

 

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「う…うう…」

 

再び気絶から目を覚ましたリックは、突然高い所から落下したのを思い出した。

先ほどよりも右足の激痛が増している事や落下した時に、本能的に頭を守った体勢をとっていたせいか、腕や下腹部などに痣や鈍痛が痛んだ。

出血の貧血状態になりながらも必死に立ち上がり、辺りを見回す。

 

「なんだここは…はあ…頭がくらくらする。本当にまずいかもしれない…」

 

暗いが真っ暗ではない場所だった。所々オレンジ色に光っている明かりが規則的な距離でまっすぐ並んでいる。足元には以前、小田原の端で見た黒い石で出来た道アスファルトを目撃した。所々白い線が消えていたり、草が生えているがそれがここにも一面広がっているのだ。

そして動物たちの住処だったんだろうか、鹿や狐達が少しリックから距離を置いて、突然落下してきたリックを警戒しているようだった。

 

「ご、ごめん…わざとじゃないんだ…住処をこんな風に荒らしてごめん…」

 

毛を逆立て威嚇する狐にリックは謝罪した。

すると左奥から一筋の光が見えた。

「あれって、もしかして出口!?」

 

リックはその淡い期待を抱いてその光の方へゆっくり歩いたが……

 

 

「何やってんだよ!だから言っただろう!お前には無理だって!…大人しくいつもみたいに罠作成とかして家で待っていればよかったのに。」

 

光の先に木や草原の一部が見えていて、外に出られるのは間違いなかった。

しかし、この空洞に声が響く。出口付近には2人会話をしていた。

 

「那岐(なぎ)…だって…」

「っていうか、あの武器は途中で敵の忍びに出くわした時とか、どうしようもない時の切り札だろ!無駄な使い方しやがって!!このバカ!」

 

リックはその様子を見て出口に近づくのを止めた。

 

(もう俺がいる場所がわかったのかよ…どうしよう…逃げられない!)

 

そんな松利と那岐の背後から近づいてくる者がいた。

 

「…騒がしいですね…どうなさいましたか?」

2人はそのものを見ると驚いた様に硬直した。

 

「その変わった髪と眼の色…貴女は…まさか…神様…?神様ですよね!」

「…神様ではありません」

 

その人は風鈴の様な透き通る声で静かに話す。

雪の様な真っ白な着物を少し着崩した金髪と蛍色のグラデーションが特徴の女性だった。

 

次回に続く

説明
閲覧有難うございます。
いつもよりも少し遅れてしまってすみませんでした。
今回もまた新キャラの登場や新展開があります。
ついに第1章の終盤に差し掛かります。次回も来月中を目標に頑張ります。
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