春の残り陽、私の音 |
春の残り陽、私の音
雨泉 洋悠
春の残り陽
それは、何処かで確かに聞いた様な。
「この子、可愛いですね」
振り返る私の視界の端に映り込むのは、私のあの子と、同じ色。
それはひと季節前に、この国を彩った花。
周囲を歩く、沢山の人の音の中でも、一際目立って、視線を集めてしまいそうな、その音。
そして、その捉えた視線を、離させない、自然と私の視界の端から、真ん中へと移って来てしまうその子の持つ、春の色彩。
「ですよね〜私、この子の声当ててるんですよ〜」
自然と解ける、私の頬と、この子の為の、何時もの私の、音。
「素敵ですよね、アイドルっぽい」
その子は、私の大事なこの子の、等身大に描かれた姿を見ながら微笑んでいる。
この子と少し、雰囲気は似ているのかも知れない。
何より、髪型は同じで、持つ色も同じ。
でも、ひと時ごとにその纏う春を私の心に振らせる様な、引き込んで行く様なその姿は、正に光。
「はい、アイドルなんです。私、これからこの子と二人で、一緒にアイドルになって行くんです。私がこの子を一番のアイドルにしてあげるんです」
自然と湧き上がった、そんな私の音と心は、その今初めて会った彼女の持つ春の光が、私の心に自然と振り落ちて敷き積もるものだったから。
その子は、その心の色を微かに頬に落としながら、微笑みを絶やすこと無く、私の方へと向き直る。
「出来ますよ」
その言葉に宿るのは、私達二人の目指す高さに、既に多くの想いや意味を積み上げた人だけが持つ、大きな確信に裏打ちされた、限り無い春の暖かさ。
「大丈夫、お姉さんと、この子なら」
赤味を増した、その子の心の春と同様に、私達の心も紅色に染まる。
私達の内に、彼女が湧き上がらせて行くのは、限り無い、未来への期待。
静かに、静かに、私は心の内をさらけ出す。
「ありがとう!私達、絶対に一番のアイドルになってみせるね!」
不思議と、自然に口をついて出るのは、そんな友達に伝えるかの様な、誓いの言葉。
「はい、楽しみにしてます。うん、ずっと傍で、見続けて行きます」
そして彼女は、より一層華やかに、朗らかに笑った後、翻って足早に去って行く。
その背中に、光の残照と、私達の心に、春の花びらを、降り積もらせたまま。
私の音
気恥ずかしくも見つめれば、そこに居るその子の姿。
「この子、可愛いですね」
それはとても、何時でも暖かく。
「ですよね〜私、この子の声当ててるんですよ〜」
上へ下へ、ひとつところに、留まらず。
「素敵ですよね、アイドルっぽい」
私はこの子の見た目が、少しのむず痒さと共に、とても好きだなと思う。
「はい、アイドルなんです。私、これからこの子と二人で、一緒にアイドルになって行くんです。私がこの子を一番のアイドルにしてあげるんです」
私は、自然と浮かび上がって来る、照れを内々に押し留めながら、その言葉の先に視線を向ける。
大きな窓から差し込む光は、その子の姿を照らす。
「出来ますよ」
私はこの子の笑顔が、とても素敵だなと思う。
「大丈夫、お姉さんと、この子なら」
名前を呼べないもどかしさ、少しだけ私の心を乱し、その乱れをいつもの私が覆い隠し、私は、耳を澄ます。
「ありがとう!私達、絶対に一番のアイドルになってみせるね!」
そして、私は彼女の生み出す音を、とても愛おしく思う。
「はい、楽しみにしてます。うん、ずっと傍で、見続けて行きます」
私の音を背中に残して、微かな未練をいつもの私が再び覆い隠して、私は走り出す。
私は、私の音と一緒に、私達は二人で、そこへ行く。
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