英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜
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同日、PM8:10――――――

 

〜ロゼのアトリエ〜

 

「それで?メサイア以外は一度会ったか、初対面の私達まで呼んだ”本当の理由”は何かしら?」

「ほ、”本当の理由”って……」

「ロゼさんが言ったように、リィンと常にいる貴女達が知っているリィン達の近況以外に聞く事はないと思うのだが……」

アトリエ内の会議をする部屋にそれぞれが着席するとベルフェゴールが意味ありげな笑みを浮かべてアリサ達に問いかけ、ベルフェゴールの問いかけにアリサ達が驚いている中エリオットとガイウスは戸惑っていた。

「……なるほどね。ふざけた言動やそんな破廉恥な格好をしているとはいえ、”闇夜の眷属最強の種族”とやらだけあって、ロゼさんがリィンに頼んだ時から”気づいていたようね。”」

「まあ、言動や見た目に惑わされるなって事よ。――――――身近な例で言うとロゼね。」

「セ、セリーヌ。」

「そこで何故妾を例に出すのじゃ、セリーヌよ!ヌシも、妾の”真の姿”はヴィータにも負けない”ないすばでー”で威厳ある長である事は知っているじゃろうが!?」

真剣な表情を浮かべたサラの言葉に答えたセリーヌの答えにエマが冷や汗をかいてローゼリアを気にしている中、ローゼリアは反論し、それを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて脱力した。

 

「”そういう所”が侮られる原因になっているって事よ……」

「ア、アハハ……え、えっと……ロゼさんはメサイアさん達からの話でリィン君達の近況を聞く事と、紅き翼(わたし達)の目的である”第三の道”で今回の戦争を終わらせる為にも知る必要がある事実――――――リィン君達が知った”黄昏”の件以外にも隠されていると思われるメンフィル・クロスベル連合の”真実”を知る為ですよね?」

セリーヌが呆れた表情でローゼリアに指摘している中苦笑していたトワは気を取り直してローゼリアに確認し

「うむ。それに魔女の眷属(ヘクセンブリード)としても伝承上の神々の中でも相当高位の位に位置するオリンポスの神々の一柱やこのゼムリアには存在していなかった天使がリィンをそれぞれ自分達の”契約相手”に選んだ理由等も気になっているのじゃ。」

「確かにそれも私達は気になっていたね。」

「まあ、普通に考えりゃ女神や天使みたいな”作り話”に出てくるような存在が揃って、あの”灰色の騎士”サマのハーレムの一員になるとかイミフだからな。」

「後はメサイアはヴァイスハイト皇帝達の娘だからな。オリヴァルト殿下達も把握していないヴァイスハイト皇帝たちの事について何か知っている可能性はあるだろうな。」

トワの確認にローゼリアは頷き、ローゼリアの言葉にアンゼリカとアッシュはそれぞれ同意し、ユーシスは真剣な表情でメサイアを見つめた。

 

「アハハ……お父様達に会った皆さんも、もうご存じとは思いますが、私は”並行世界”の存在ですから、こちらの世界での転生を果たしたこちらの世界のお父様自身を知っている訳ではありませんわよ?」

「それでも内面的な部分――――――例えば性格とかは、あまり変わっていないんじゃないの?」

「それとギュランドロスさん達の事もだな。オレ達は”六銃士”の中でギュランドロスさんとルイーネさん、エルミナさん、それにパティルナさんの詳しい過去については知らないんだ。」

苦笑しながら答えたメサイアの話を聞いたフィーは真剣な表情で、ガイウスは静かな表情で指摘した。

「えっと……お父様達の内面的な部分の件はともかく、ギュランドロス陛下達の事は”知識”としては知ってはいますが、実際に顔を合わせて話をしたのはこちらの世界に来てからですから、ギュランドロス陛下達の性格等については私もそれ程詳しくありませんわよ?」

「それでも何も知らないよりはよほどマシよ……異世界(ディル=リフィーナ)の人達が協力者にいない今の私達にとっては、異世界(ディル=リフィーナ)出身のクロスベル帝国の上層部についての情報はどんな些細な情報でも貴重な情報なの。」

「うむ…………だが、その件については話が長くなるであろうから先にアイドス殿とユリーシャ殿の件について聞きたいのだが……――――――アイドス殿、ローゼングリン城で我等と出会った翌日には”用事”とやらがクロスベルにあるとの事で、ガレリア要塞へと向かう我らが乗った列車でそのままクロスベルに向かったが……その”用事”とは何だったのだろうか?」

戸惑いの表情を浮かべたメサイアの指摘にアリサは答え、アリサの言葉に頷いたラウラはアイドスにかつての疑問を訊ねた。

 

「貴方の実家に泊めてもらったその日の夜に私自身を占ってみたのよ。それでその結果が翌日貴方達と共に乗る列車の終着駅であるクロスベルで、私にとっての”再会”が訪れるという内容でその時の私にとっては特にこれといった今後の方針が無かったからクロスベルへと向かったのよ。」

「め、女神が自分自身を占うって……」

「ま、女神自身が占うんだから信憑性はあるだろうな。」

アイドスの話を聞いたZ組の面々がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中アリサはジト目で呟き、クロウは苦笑しながら呟いた。

「そのアイドスさんにとっての”再会”とは一体誰の事だったんだ?」

「―――セリカよ。」

「セ、”セリカ”ってもしかしてわたし達がクロスベルでの特異点の時に出会った……!」

「例の異世界の”神殺し”とやらか。」

「そういえばレン皇女殿下がその”神殺し”という人物とアイドスさんは何らかの関係があるような事を口にしていたが……その…………お二人は一体どういう関係なんでしょうか?」

アイドスの答えを聞いたトワは驚き、ユーシスは真剣な表情で呟き、マキアスは不安そうな表情でアイドスを見つめて訊ねた。

 

「う〜ん…………簡単に言えば遥か昔は”どちらかが滅びるまで戦った関係”で、”今は義理の兄妹の関係”といった所かしら?ほら、セリカは私にとっての姉であるアストライアお姉様の肉体の持ち主で、アストライアお姉様にとっての恋人でもあるし。」

「あの…………さりげなくとんでもない事を仰っている事はさすがに自覚していますわよね?」

アイドスが口にしたとんでもない答えにアリサ達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中メサイアは表情を引き攣らせながらアイドスに指摘した。

「大昔はそんな険悪な関係なのに、何で今はそんな関係になっているとか、増々イミフな女神だぜ。」

「その……何故、アイドスさんとその”神殺し”という人物は遥か昔はそのような険悪な関係だったのでしょうか……?」

「もしかして”神殺し”の肉体が”正義の女神”だから、その関係かしら?」

我に返ったアッシュは疲れた表情で溜息を吐き、エマとセリーヌは真剣な表情でアイドスに訊ねた。

 

「――――――申し訳ないけどその話は凄く長い内容になるし、その話は私と未来を共にする人達にしかするつもりはないのよ。」

「要するに”身内”以外には話すつもりはないって事か。」

「まあ、”女神”と”神殺し”の話――――――いや、”物語”じゃから、それこそ言葉通り”神話”のような内容じゃろうから、おいそれと”部外者”に話す事はしないじゃろうな。」

「……今の彼女の話だと、リィンもそうだけど貴女達も当然その話を知っているのよね?」

「ええ。」

「一体どんな話をリィンはアイドスさんから聞いて、アイドスさんと”契約”をすることにしたんだろう……?」

アイドスが話す事を拒否するとZ組の面々がそれぞれ驚いている中フィーは静かな表情で呟き、ローゼリアは納得した様子で呟き、サラの問いかけにメサイヤが頷くとエリオットは複雑そうな表情を浮かべた。

 

「フム…………その件については置いておくとして、貴女がリィン君と契約した理由は一体何だったんだい?」

「……”この世界が本来の歴史から改変された世界”である貴女達も知っているように、零の御子――――――キーアによる因果改変による影響を受けた世界はこの世界だけでなく、”無数にある並行世界”にも”ディル=リフィーナと繋がったゼムリアの世界”がいくつか存在していて、キーアから聞いた話によると更にその世界で私とリィンが出会った世界は、どれも私がリィンと”契約”を交わしていたそうなのよ。だから私は私自身にとっての”運命の相手”であるリィンの人柄等を確かめてから、彼と”契約”する事を決めたのよ。」

「まさかそんな単純な理由だけで女神が人と”契約”を交した挙句、寵愛までするとか非常識かつ前代未聞よ……」

アンゼリカの質問に答えたアイドスの答えを聞いたアリサ達が冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中セリーヌは疲れた表情で溜息を吐いた。

「あら、”契約”の件については私よりも先にフェミリンスがエステルから、『友人として自分達と一緒に世界を見て廻って欲しい』と言われて、それが理由でエステルと”契約”したと聞いているから、私とリィンの契約が”前代未聞”ではないわよ?」

「そっちもそっちで非常識過ぎる話よ。」

「エステル殿というと、何度か殿下達の話に出てきたカシウス卿のご息女か……フフ、今の話を聞いて増々どのような人物なのか気になってきたな。」

「一体今までどんな超展開があって、今の状況になっているのか、本気でエステルに聞きたくなってきたわ……」

アイドスが口にしたとんでもない答えにアリサ達が再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中セリーヌはジト目で呟き、ラウラは興味ありげな表情で呟き、サラは疲れた表情で溜息を吐いた。

 

「えっと……アイドスさん。以前ベルフェゴールさんが私達に会いに来たときに貴女はリィンさんを将来”神格者”か”使徒”という存在にするつもりだと仰っていましたけど、本当にそのつもりなのでしょうか?」

「ええ。既にリィンにもその話をして、将来私から”神格位”を受け取って”神格者”として私と共に生きてくれることを約束してくれたわ。」

「!リィンがそんな約束を……」

「あれ程”鬼の力”――――――いや、”自分が普通の人間ではない事”を気にしていたのに、何故自ら”人外”の道を歩む事を決めたのだ……?」

「……慈悲の女神よ。ヌシは”永遠に生きる”という事が”人”にとって、ある意味”最も酷な事”であると理解していながらも、リィンに”神格者”とやらになる提案等をしたのか?」

「ロゼ……」

エマの質問に答えたアイドスの答えを聞いたアリサは驚いた後複雑そうな表情をし、ユーシスは重々しい様子を纏って呟き、真剣な表情でアイドスを見つめて問いかけたローゼリアの問いかけを聞いたセリーヌは実際に数百年生きているローゼリアの言葉の重みにも気づいていた為複雑そうな表情でローゼリアを見つめた。

 

「へ……何で”永遠に生きる事が、人にとって最も酷な事”なんですか?」

「”不老不死”なんて、僕達”人”からしたら夢のような話に聞こえるのですが……何か問題があるのですか?」

一方ローゼリアの言葉の意味を理解していなかったエリオットとマキアスは戸惑いの表情でローゼリアに訊ねた。

「……確かに老いずに永遠の時を生き続ける事は一見夢のような話に聞こえるが……………逆に言えばそれは自分だけが”取り残される”という事じゃ。……周りの者達が年を取り、そして最後は老いた友人達を看取っていく中、自分だけは一生変わらずに生き続けなければならないのじゃぞ。それを聞いてもなお、夢のような話に思えるか?」

「それは…………」

ローゼリアの指摘を聞いたラウラは複雑そうな表情で答えを濁し

「ま、そういう意味で言えば不死者の肉体にマクバーンの神焔(カクヅチ)を心臓替わりにして生きている俺も多分だが時が経てば”神格者”とやらになったリィンと同じ状況になるだろうな。」

「ぁ…………」

「クロウ君……」

苦笑しながら肩をすくめて答えたクロウの推測を聞いたアリサは呆けた声を出し、トワは辛そうな表情でクロウを見つめた。

 

「それで?あんたはロゼさんが今言った問題についての対策とかも考えた上で、リィンを”神格者”とやらにするつもりなのかしら?リィンが”神格者”とやらになったら、いずれリィンはエリゼ達も看取る事になるのよ?」

「それについては問題ないわよ。”神格者”になれば”使徒”も作れるから、リィンがエリゼ達を自分の”使徒”にすればエリゼ達もリィンと同じように老いず、永遠に生きられる事は可能でその話をリィンにもそうだけど、エリゼ達にも説明したら、エリゼ達――――――私達と同じようにリィンと将来結ばれる女性達もみんな、”神格者”になったリィンの”使徒”になる事を決めたから、エリゼ達もリィンや私と一緒に”永遠の時”を生き続けるわよ。」

「そんな反則技ありかよ!?」

「はっはっはっ、ハーレムを築いているリィン君ならではの反則技と言っても過言ではないねぇ。」

厳しい表情を浮かべたサラの問いかけにアイドスが答えるとアリサ達はそれぞれ冷や汗をかいて脱力し、アッシュは思わず呆れた表情で声を上げ、アンゼリカは呑気に笑いながら答えた。

「それにリィン達の祖国――――――メンフィル帝国は幸いにも”闇夜の眷属”を含めた長寿の異種族や”魔神”のように女神の私同様”寿命や老化が存在しない”種族もいるから、リィン達だけが取り残されるなんてことはないわ。」

「そ、そういえばメンフィル帝国は皇族が魔神と女神の血を引いている事でメンフィル皇家の人達は異種族の中でも相当長寿で、中にはリウイ前皇帝陛下のように”寿命や老化が存在しない”皇族もいるんだったよね……」

「ん……リィンや殲滅天使達から聞いた話だとメンフィル帝国の跡継ぎで、エリゼの”主”の”聖魔皇女”はあんな見た目でも数十年生きているって話だし、”魔弓将”に至っては数万年以上生きているって話だったね。」

「……なるほどね。おまけに”英雄王”達はみんな、”化物中の化物”の強さって話だから、幾ら人外じみた力を持っているリィンでもさすがに”英雄王”達程ではないでしょうから、”そういった方面”でもメンフィルはリィンにとってピッタリな国のようね。」

アイドスの話を聞いたZ組の面々がそれぞれ冷や汗をかいて表情を引き攣らせている中エリオットは困った表情で呟き、フィーとセリーヌは静かな表情で呟いた。

 

「クロスベルでの活動の時にセシルさんからヴァイスハイト皇帝の側妃の一人にエルフ族がいる事も聞いたけど……確か、御伽話とかだとエルフ族もかなりの長寿の種族のような内容だけど……?」

「アハハ……エルファティシア様の正確な年齢は私やお父様達どころか、”エルファティシア様本人すらも把握はしていません”が、少なくても数百年は生きている事は確実との事ですわ。」

一方ある事に気づいたトワは表情を引き攣らせながらメサイアに視線を向け、トワの視線にメサイアが苦笑しながら答えるとアリサ達は再び冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。

「そのエルフ、下手したらロゼよりも年上なんじゃないの?」

「ぬぐぐ……っ!えーいっ!何故異世界(ディル=リフィーナ)の連中は揃いも揃って、”ちーと”だらけなのじゃ!?」

我に返ったセリーヌはジト目で呟き、ローゼリアは唸った後悔しそうな表情で声を上げ、それを聞いたその場にいる全員は脱力した。

 

「…………………………」

「エマ?どうかしたの?」

その時複雑そうな表情で黙り込んでいるエマの様子が気になったセリーヌは不思議そうな表情で訊ね

「うん…………改めて私が魔女としてあまりにも未熟である事に身に染みているのよ……本来なら今の状況だからこそ、リィンさんを”導いた”魔女である私がリィンさんを支えたり相談にのったりしなければならないのに、今のリィンさんには私の力なんて必要としていない上遥か先の未来の事まで決めているようだし…………”魔女”として力になろうにも、今のリィンさんの周りには私なんて遠く及ばない魔術師の方達がリィンさんの力になっているし……―――何よりも、私はリィンさんの祖国であるメンフィル帝国について”何も知らないもの。”」

「エマ……」

「今のリィンの周り……”灰獅子隊”の連中ね。」

「そういえば自己紹介の時に二人程、委員長のような存在である事を言っていたな……」

「ん。確かリシテアとドロテアだっけ。」

辛そうな表情で語ったエマの本音を知ったセリーヌは複雑そうな表情をし、サラは苦々しげな表情で呟き、重々しい様子を纏って呟いたラウラの言葉にフィーは頷いて答えた。

 

「別にエマだけの責任という訳でもあるまい。メンフィルの件は異世界とゼムリアが繋がった時から異世界についての情報収集を怠った妾に一番の責任があるし、魔術師達の件についても、そもそもあの者達は戦(いくさ)の為にメンフィルによって育てられた『破壊や殺戮に特化した魔術師』――――――いわゆる、『戦闘魔術師』じゃろう。そのような者達はエマや妾達――――――魔女の眷属(ヘクセンブリード)とは根本的に違う存在じゃから、比べる事自体が間違っておる。だから、そう重く受け止めるでない。」

「おばあちゃん……」

自分に対する慰めの言葉をかけたローゼリアに対してエマは驚き

(うふふ、あの眼鏡の女の子もご主人様の新たなハーレムメンバーの候補になりそうな予感がするわ♪)

(アハハ……まあ、エマさんはアリサさん程ではないですが、元々リィン様を意識していらっしゃっていますし……)

その様子を見たベルフェゴールはからかいの表情でメサイアに念話を送り、メサイアは苦笑しながら答えた。

 

「えっと……話を戻しますけど、ユリーシャさんはどうしてリィン君の使い――――――いえ、”守護天使”になったのでしょうか?」

そしてトワは場の空気を変えるためにユリーシャに訊ねた。

「それはこの身が我が主より一生返しきれぬ恩を受け、更には我が主がこの身が仕える相応しい人物だからこそ、我が主に”守護天使契約”を申し出て、その申し出を我が主が受け入れて頂いたからです。」

「リ、リィンが天使であるユリーシャさんが”一生返しきれない恩”と思うほどの事をしたんですか?」

「まあ、あいつらしいと言えばらしいが……一体リィンはあんたに何をしたんだ?」

ユリーシャの答えを聞いたマキアスは戸惑い、クロウは不思議そうな表情でユリーシャに訊ねた。

 

「―――それを貴方達に教えるつもりはありません。エリゼ達のような我が主の身内でもなく、我が主のかつての学友の方々――――――”灰獅子隊”の部隊長達やそれぞれの”目的”の為に我が主と共に戦うクルト達のように我が主と同じ志を持たない貴方達には。」

「……ッ!」

「エリゼ達はともかく、貴女はオレ達よりも灰獅子隊――――――いや、”黒獅子の学級(ルーヴェン・クラッセ)”の人達を信用しているのか……」

ユリーシャが口にした冷たい答えにZ組の面々がそれぞれ血相を変えている中アリサは辛そうな表情で唇を噛み締め、ガイウスは複雑そうな表情でユリーシャを見つめ

「ハッ、”灰色の騎士”サマに随分な入れ込んでいる頭の固い天使だぜ。その”灰色の騎士”サマは最近までダチだった連中と別れて、ダチだった連中の祖国との戦争で活躍―――要するにエレボニアの連中を殺しまくる事も天使のテメェにとっては問題とかないのかよ?」

アッシュはユリーシャを嘲笑して指摘した。

 

「逆に聞かせて頂きますが……”それのどこが問題なのですか?”戦争を終える為には必ずどちらかが犠牲にならなければなりませんし、我が主がその刃を向ける相手は”敵国”の兵や将達。今回の戦争の事情についても一通り我が主達から教えて頂きましたが、”義”は我が主達の祖国にあって、”非”があるのは卑劣にも宣戦布告もせずに我が主の故郷を襲撃し、我が主の妹にして領主の娘でもあるエリスを拉致し、更には我が主の父君であられるユミルの領主に重傷を負わせた貴方達の国なのでは?」

「そ、それは…………」

「……………」

アッシュの問いかけに対して答えたユリーシャの話に反論できないトワは辛そうな表情で答えを濁し、アンゼリカは重々しい様子を纏って黙り込んでいた。

「……あの子の志が正しいか、間違っているかはともかく………それでも、リィンにとってエレボニアで結んだ”絆”はZ組(あたし達)を含めて大切なはずよ。それを自らの手で壊そうとしている事で内心は傷ついているであろうリィンに対して何も思わないの!?」

「その傷ついた心を癒し、支えるのが我が主の”守護天使”たるこの身の役目でもあります。それに我が主は決して孤独ではありません。エリゼ達やこの身のような我が主と共に将来を歩む事を決めた者達、そして肩を並べて共に戦う”戦友”達がいるのですから。」

厳しい表情を浮かべたサラの指摘に対してユリーシャは堂々とした様子で答え

「……伝承等では天使は自身が”導く”と決めた主にはとことん尽くすような話をよく聞くけど……まさにその通りね。」

「フン……確かにリィンに対する忠誠心は篤いようだが、あの”神速”を思い浮かべさせる程”主”であるリィンに心酔しているのが理解できんな。」

ユリーシャの答えを聞いたセリーヌは静かな表情で呟き、ユーシスは鼻を鳴らした後呆れた表情で呟いた。

 

「……ねぇ。殲滅天使の話だとわたし達の目の前にいるユリーシャは並行世界から来たんだよね?……もしかして、わたし達の世界の方のユリーシャの”主”のジェダルって傭兵やその周りの人達の事についても知っているんじゃないの?」

「……確かにジェダル様達の事も存じてはいますが……それを貴方達に教えるつもりはありません。短い間だったとはいえ、この身もこの身の世界のジェダル様達のお世話になった恩があるのですから、その恩を仇で返すといった天使として風下にも置けない事はできません。」

「ユリーシャさん…………」

フィーの質問をにべもなく断ったユリーシャの様子を見て、ユリーシャの過去を知っているメサイアはユリーシャがジェダル達を庇っている事に驚いていた。

「て、”天使として風下にも置けない”って幾ら何でも大げさじゃあ……」

「まあ、その辺りは”種族による価値観の違い”じゃろうな。伝承等で天使はその高潔な精神で神々や主に絶対の忠誠を持って仕えていると言われておるからの。主であるリィンの方針とは異なる――――――いや、リィンと対立する可能性が考えられるヌシ達に対しては余計な情報を話すつもりはないのじゃろう。」

「”種族による価値観の違い”か………」

ユリーシャの言葉に困惑しているエリオットの疑問にローゼリアは静かな表情で推測を口にし、ローゼリアの推測を聞いたガイウスは複雑そうな表情で呟いた。

 

「その割には”灰色の騎士”サマがハーレムを築いている事を容認しているとかおかしくねぇか?高潔な精神とやらなら、ハーレムを築いている野郎の事なんて軽蔑するんじゃねぇのか?」

「ア、アッシュ君。」

呆れた表情で指摘したアッシュの指摘を聞いたトワは冷や汗をかいてユリーシャを気にした。

「フフ、我が主を貶めるような貴方の発言は貴方自身の”器”が小さい事を自白しているようなものですから、あまり自分を貶めるような発言は止めた方がいいですよ。」

「んだとっ!?オレに喧嘩売ってんのか!?」

「落ち着きなさい、アッシュ!今のはアンタが悪いわよ!それにせっかくロゼさんがリィンに頭を下げてまで貴重な話を聞ける機会を設けてくれたのに、リィンもそうだけどロゼさんの顔に泥を塗るつもり!?」

自分の言葉に対して苦笑しながら答えたユリーシャの言葉を聞いたアッシュは立ち上がってユリーシャを睨み、それを見たサラはアッシュを注意した。

 

「チ……ッ!」

サラに注意されたアッシュは舌打ちをして席に座り

「えっと……それじゃあ、メサイア。ギュランドロス皇帝達の過去について教えてもらえないかしら?」

アリサは話の空気を変えるためにメサイアに質問をした――――――

説明
第78話
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