ガリ教授の憂鬱
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いくら考えたって分からないことは、この町にあふれ返ってる。

いくら日本語の正しさを教卓で説いたところで、授業を受けている

大半は、女子までもが訳の分からない言葉を使っている・・・・。

 

小森楓太は橋並大学の教授だった。ただ、アスベルガーであり、

他の人達とはその世界は少し違っていた。例えば「ことば」に異常な

ほどの興味を示し、しかしその「ことば」を使った結果、他の人が

どう思うか?ということに関してはほとんど無頓着だった。

 

そんな小森教授につけられたあだ名は「ガリ」。近所の回転寿司屋に

よく行くので有名で、だが彼はいつも中トロとかっぱ巻き、それと

大量のガリをどういう訳かよく好んで食べた。以前一度、教員仲間と

寿司屋に行きその味にやみつきになり、それからは一人で寿司屋に

行っては、ガリばかり好んで食べるようになったのだという。

それで彼についたのがそのあだ名だった。

 

ある日、彼はどうしても分からないことがあると、物理学の

早谷勇次教授を無理矢理誘い出し、例の寿司屋に連れて行った。

いつものお決まりの席に座ると、こう切り出した。

「あの」早谷は小森の勢いに少し、身を引いた。

 

「ガリって、なんで寿司のメインじゃないんでしょう?」

「は!?」

「だってこんなに美味しいのに・・・。」

「・・・・・・・・・・・」

 

それ以来早谷は、小森との距離をおくようになった。

 

小森は相変わらず研究室で、授業以外の時間、

分厚い辞書を片っ端から読んでいた。

傍らにはいつもの通り、駅弁の隅にあったガリを取り出して置いていた。

 

やがて一限目の終りの鐘が鳴ると、彼は辞書から

顔を上げて呟いた

「何で誰も知らないんだろう・・・・ガリの悩みについて。きっと、

寿司の脇役でいいはずがないのに」

 

小森教授が時折、校庭に面した窓にもたれて一人憂鬱そうに外を

眺めている原因が、そこにあることは誰一人として知らない。

いつも図書館前で日向ぼっこをしている黒猫でさえも。

 

説明
がり教授の人に言えない 憂鬱とは・・・?
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