英雄伝説〜灰の騎士の成り上がり〜 |
〜連絡回廊〜
「トマス教官……!」
「それに姉さんも……!」
心強き援軍の登場にサラとエマは明るい表情を浮かべた。
「えええええええええええっ!?あ、あの人達は………!」
「リウイ前皇帝陛下……!それにリフィア皇女殿下も……!」
「あぁ、御身自ら援軍に来てくださるなんて、光栄ですわ、マスター……っ!」
「しかも”戦妃”に”空の覇者”もいるし、あのメイドは確か”殲滅天使”の話にあった”姫将軍”とやらだね。」
「ふふっ、まさか師匠達が助けに来るとは思いませんでしたよ。」
「フウ………予想はしていたけど、やっぱり貴女も来たのね――――――リフィア。」
「将軍もドンピシャですわ♪」
「ギュランドロスさん……!それにルイーネさんにエルミナさん、パティルナさんも……!」
「何……っ!?という事はあの4人がガイウスの話にあった俺達がまだ会った事がなかった残りの”六銃士”か……!」
「って、ここで来るのかよ!?」
「アハハ、”影の国”でケビン神父達を助けに行った時の事を思い出しますね。」
「ああ……まあ、あの時と違って、俺達は劣勢という訳じゃなかったがな。」
一方リウイ達の登場にエリオットとラウラは驚きの声を上げ、デュバリィは目を輝かせてリアンヌを見つめ、フィーは目を丸くし、シェラザードは苦笑し、溜息を吐いたエリゼは苦笑しながらリフィアを見つめ、ミュゼは微笑みを浮かべてオーレリア将軍を見つめ、明るい表情を浮かべてギュランドロス達を見つめて声を上げたガイウスの言葉を聞いたユーシスは驚き、突然の驚愕の出来事にアッシュは思わず声を上げ、苦笑しながら呟いたアネラスの言葉にアガットは頷いた。
「フフ、ちょうどいいタイミングだったみたいね。」
「皆さんもそうですが、皇太子殿下もご無事のようですね。」
クロチルダはアリサ達に微笑み、トマスは安堵の表情を浮かべ
「だぁはっはっはっ!中々面白い状況になっているようだな!」
「うむ!そしてここからは余達の”力”を鉄血宰相達に思い知らせてやる機会という事じゃな!」
「”加減”はしておけ。奴等――――――特に”黒の騎神を滅する機会は今ではないのだからな。”」
豪快に笑いながら答えたギュランドロスの言葉にリフィアは力強く頷き、リウイは静かな表情で指摘し
「この場は我らに任せて撤退の準備を始めるがよい―――!」
「各々方、いざ参りましょう―――」
そしてそれぞれの得物をイシュメルガ達に向けたオーレリア将軍とリアンヌの言葉を合図にリウイ、ギュランドロス、リアンヌ、エクリアはイシュメルガ、オーレリア将軍はガウェイン、ルイーネはレクター少佐、エルミナはクレア少佐、パティルナはクルーガー、ファーミシルスはシャーリィ、クロチルダ、ペテレーネ、カーリアン、リフィアはゲオルグとアルベリヒと対峙し、それぞれの相手との戦闘を開始した!
「ふふっ、六銃士の”紅き暴君”に”英雄王”………部下達の救出の為にわざわざこのような所にまで足を運んだ事には驚嘆に値するが、”総大将”自らが危険を犯すとは、あまりにも軽はずみだと思われるのだが?」
「クク、わかってねぇなぁ……”総大将”であるオレ様達自らが出陣(で)るからこそ、部下達はやる気を出すんだよ。」
「そもそも、貴様”如き”、俺達にとっては”危険を犯すような相手”ではない。」
オズボーン宰相は自身が操縦するイシュメルガと対峙したギュランドロスとリウイに対して不敵な笑みを浮かべて指摘したが、対するギュランドロスは獰猛な笑みを浮かべて答え、リウイは堂々とした様子で宣言し、それを聞いたその場にいる多くの者達は冷や汗をかいて表情を引き攣らせ
「オ、オズボーン宰相――――――それも、騎神を”如き”呼ばわりした上、”危険を犯すような相手ではない”って……」
「普通に考えれば、”無謀”と思える相手だが……」
「つーか、何気にあの三人の背後にメイドまでいるが、大丈夫なのかよ?」
我に返ったエリオットは信じられない表情で呟き、ラウラは困惑し、アッシュは呆れた表情でリウイとギュランドロス、そしてリアンヌの背後にいるエクリアに視線を向け
「ハハ、その心配は無用さ。”あの人”はああ見えて、とんでもない存在ばかりが集まった”影の国”の時のメンバーの中でもリウイ陛下やセリカさんに次ぐトップクラスの使い手さ。」
「そしてエリゼちゃんの師匠であると同時に、何と言ってもあのセリカさんの”第一使徒”を務めてきたとてつもない女性だもの♪」
アッシュの言葉に対してオリヴァルト皇子は苦笑しながら、アネラスは笑顔で答えた。
「フフ、ならばその自信、見せてもらおうか――――――業滅刃!!」
そしてイシュメルガはその場で跳躍してリウイ達に襲い掛かったが
「――――――その程度か?」
「な――――――」
何とリウイが紅き魔剣――――――”エドラム”でイシュメルガの一撃を受け止め、それを見たオズボーン宰相は絶句した。
「いくぜぇっ――――――気合い斬り!!」
「ぬう……っ!?」
「荒ぶる雷よ――――――いざ、戦場に来たれ!!」
そこにギュランドロスが跳躍してイシュメルガのヘッドに気合いを込めた一撃を叩き込んでイシュメルガを怯ませ、そこにリアンヌがクラフト―――アングリアハンマーで追撃し
「――――――最高の位置!タキオンの爆発!!」
「が……ッ!?」
魔術の詠唱を終わらせたエクリアが魔術を発動するとイシュメルガの核(ケルン)の部分にエクリアの膨大な魔力が収束した後大爆発を起こしてイシュメルガに更なるダメージを与えて怯ませた。そしてその隙にリウイは反撃をイシュメルガに叩き込んだ!
「神聖なる刃を受けるがいい――――――エクステンケニヒ!!」
「「があああああああっ!?」」
神聖魔力を宿した魔剣による一閃を受けた事で不死者であるオズボーン宰相は当然として、イシュメルガ自身も凄まじい瘴気を纏っていた事で邪悪なる存在に対して絶大な効果を発揮する”神聖属性”が弱点である為、イシュメルガと起動者(ライザー)のオズボーン宰相は思わず同時に悲鳴を上げた。
「なあああああああああぁぁぁっ!?」
「き、騎神の攻撃を生身で受け止めたどころか、生身で騎神相手に有効的なダメージを与えるなんて……!」
「というかあのメイドが放った魔術の威力もロゼが習得している魔術の中でも”切り札”レベルの威力なんじゃないの……!?」
「話には聞いてはいたけど、”化物という言葉すらも生温いと思えるような存在”じゃない、あの4人は……」
「リウイ陛下達の強さを”影の国”で散々見てきたあたし達からすれば、相手が”神”や”魔神”以外だったら”どんな存在すらも”リウイ陛下達を敵に回した時点で”ご愁傷様”としか思えないのよね。」
リウイ達の戦いを見ていたマキアスは思わず驚きの声を上げ、エマとセリーヌは信じられない表情で声を上げ、サラは疲れた表情で呟き、シェラザードは苦笑しながら指摘し
「………………」
「凄まじいな……あれが”英雄王”と”紅き暴君”の”力の一端”か……」
「フフ、”蒼の深淵”をも超える魔術をあんな僅かな時間で放つなんて、あのメイドの女性も相当な使い手なのでしょうね。」
「ええ……それに全く隙が見当たらない立ち振る舞いといい、彼女の得物といい、接近戦の実力も相当なのでしょうね。」
一方アリサ達同様リウイ達の強さを初めて見たデュバリィは驚きのあまり口をパクパクさせ、アイネスは感心した様子でリウイ達を見つめ、静かな笑みを浮かべて呟いたエンネアの推測に頷いたオリエは真剣な表情でエクリアを見つめた。
「えええええええええええっ!?な、生身でヴァリマール達と同じ存在――――――”騎神”と互角以上にやり合うって……!リウイ陛下はともかく、ギュランドロス陛下やサンドロット卿もそうですけど、あのメイドさんも本当にあたし達と同じ人間なんですか!?」
デュバリィ達と同じようにリウイ達の実力の一端を見たユウナは思わず驚きの声を上げ
「そ、そういえばユウナちゃんはセリカさんやリウイ陛下みたいなとんでもない人達の強さを見るのがこれが初めてでしたよね……」
「ふふ、言われてみればそうでしたね。」
「というかリアンヌさんとエクリアさんも正確に言えば”人間”じゃないんですけどね。」
「まあ、ギュランドロス陛下に関しては私達も正直驚いてるんですけどね……」
「ギュランドロス陛下はリウイ陛下達と違って、純粋な”人間”だもんね〜。」
ユウナの反応を見たノエルとセティが苦笑している中、ティオはジト目で指摘し、エリナとシャマーラは苦笑しながらギュランドロスを見つめた。
「ったく、夏至祭の時も相当手を抜かれていたのかよ………って、今はそれどころじゃねぇな。皇太子殿下、紅の騎神に乗れるか!?」
「はい……!力を貸してくれ――――――テスタ=ロッサ!!」
「皇太子殿下を手伝ってあげて、セリーヌ!」
「仕方ないわね……!」
「――――――」
「来な――――――オルディーネ!!」
疲れた表情で呟いたクロウはすぐに気を引き締めてセドリックに確認し、確認されたセドリックがテスタ=ロッサを見つめてテスタ=ロッサの名を呼ぶとテスタロッサは目を光らせた後エマの頼みによってセドリックの足元に駆け寄ったセリーヌと共にセドリックを自身の核(ケルン)の中へと入れ、クロウもオルディーネの名を呼ぶとオルディーネが精霊の道で現れてクロウを核の中へと入れた。
「エリゼ、エリス!俺達も!」
「「はい、兄様!!」」
「来い――――――ヴァリマール!!」
「来て―――――ヴァイスリッター!!」
「応えて―――――エル・プラド―!!」
更にリィン達も続くようにそれぞれの相棒を呼び寄せてそれぞれの核の中へと入った。
「これがテスタ=ロッサの中か……やはり反応は完全に無いけど……何とか動かす事は……」
核の中である操縦席に転位したセドリックが考え込んでいるとセリーヌが転位によって現れた。
「貴女は確かエマさんの………」
「セリーヌよ。実際にこうして顔を合わせて話すのはこれが初めてね。早速だけど、核(ケルン)の霊気を整えるわ!”彼”の思念が無くても起動者(ライザー)のアンタなら機体と同調できる筈!意識を集中させなさい!」
「はい……!(テスタ=ロッサ……情けない僕にどうか力を貸してくれ……!)」
セリーヌの登場に驚いたセドリックだったがすぐにセリーヌの指示に従ってその場で集中し、セリーヌは魔術を発動して核(ケルン)の霊気を整え始めた。すると操縦席の中が起動し始めた。
「あ……!」
「……ありがとう。――――行くよ!紅の騎神、テスタ=ロッサ――――――!!」
そしてセドリックがテスタ=ロッサの名を強く叫ぶとテスタ=ロッサは自身を拘束していた霊力の鎖を吹き飛ばした。
「あ……」
「見事だ、セドリック……!」
その様子を見ていたアルフィンは呆け、クルトは口元に笑みを浮かべた。そしてテスタ=ロッサはそのまま滑空して根源たる虚無の剣の元へと向かって、拘束されていた剣を両腕で掴んで鎖から解き放った。
「よし―――!」
「ミリアムさん……!」
テスタ=ロッサが根源たる虚無の剣を取り返す様子を見ていたユーシスとアルティナは明るい表情を浮かべた。一方その間にヴァリマール達は突入時、突入地点に放置していた機甲兵達を転位で呼び寄せた。
「よし!後はそれぞれ機甲兵達に乗ってトンズラするだけだな!」
「ええ!ミュゼさんとクルトさんはそれぞれの機体に乗り込んでください!」
「了解しました!」
「わかりましたわ!」
転位してきた機甲兵達を見て口元に笑みを浮かべたフォルデの言葉に頷いたステラはクルトとミュゼに指示をし、指示をされた二人はそれぞれの機体に乗り込み
「皆さんも機甲兵達に乗り込んでください!転位でカレイジャスの格納庫に送ります!」
「お願いします!アリサ君、フィー君、ユーシス君、ガイウス君、アッシュ君!」
「はい!」
「了解(ヤー)!」
「任せるがいい!」
「了解した!」
「おっしゃあ!」
「あたし達はアンゼリカ達を中心に集まるわよ!」
「おおっ!」
その場で何かの術の発動の構えをしているトマスの呼びかけに答えたアンゼリカはそれぞれの機甲兵達の操縦を担当している者達の名を呼んで自身のシュピーゲルへと乗り込み、アンゼリカに名を呼ばれたアリサはケストレル、フィーはドラッケン、ユーシスはシュピーゲル、ガイウスとアッシュはそれぞれヘクトルに乗り込むと、サラの呼びかけによってZ組を始めとした紅き翼のメンバーはアンゼリカ達が操縦する機甲兵達を中心に集まると、トマスの転位術によってトマスと共にカレイジャスの格納庫に転位し、メンフィル軍と”特務支援課”もヴァリマール達を残してレヴォリューションで待機していた魔術師達による帰還転位魔術によってレヴォリューションへと帰還した。
「――――リウイ陛下!今回の襲撃作戦に参加したメンフィル軍並びに特務支援課、そして”紅き翼”がそれぞれの飛行艇へ帰還した事を確認しました!」
「そうか。ならば後は俺達が退くだけだな。」
「フフ、叶う事なら決着が着くまで斬り合いを続けたかったが……これもまた、女神(エイドス)による”運命の悪戯”というものか。――――――最ももし次に斬り合う機会があるのならば、お互い万全の状態で斬り合いたいものですな、師よ。」
ヴァリマールの中にいるリィンの報告を聞いたリウイは静かな表情で答え、オーレリア将軍は苦笑しながら自分が戦っていた相手――――――ガウェインに視線を向け
「フッ、確かに今回は其方と斬り合う前に疲弊していたのは私の”落ち度”だったが………次に斬り合う時が来れば、今回のような無様な姿は見せないから安心するといい、黄金の羅刹よ。」
対するガウェインは静かな笑みを浮かべてオーレリア将軍の言葉に対して答えた。
「う〜ん、できれば一人か二人くらい”止め”を刺しておきたかったですけど、追い詰め過ぎれば何を仕出かすかわかりませんから、今回はこのくらいにしておく事に満足しておきましょう。」
「――――命拾いしましたね。これに懲りたら、鉄血宰相達の元を離れる事ですね。」
「クソ……ッ……”六銃士”………あの悪夢のような出来事だった”合同演習”の映像を見た時からわかってはいたが、強すぎだろ……!」
「こうして実際に刃を交えて理解できましたけど……例え万全の状態だったとしても、恐らく私達では彼らには敵わなかったでしょうね………」
撤退する事にルイーネは若干不満げな表情を浮かべながらもすぐに気を取り直し、エルミナは淡々とした表情で自分が戦っていた相手――――――レクター少佐とルイーネが戦っていた相手であるクレア少佐に指摘し、二人との戦いで満身創痍の状態になっているレクター少佐は得物であるレイピアを支えにして悔しそうな表情を浮かべ、地面に膝をついて疲弊しているクレア少佐は複雑そうな表情で分析し
「ま、あたしとしてもこれ以上”中途半端な気持ちで戦っている奴とやり合う”のは気が進まなかったから、ちょうどよかったよ。――――――”告死戦域”だっけ?あたしはアンタの事はメンフィルからの情報提供による情報程度しか知らなかったけど……それでも実際に刃を交えてわかった部分はあるね。”中途半端な想い”でそっちにつくくらいだったら、アンタがそっちにつく前についていた連中――――――”Z組”だったっけ?”Z組”についていた方がもうちょっとマシだったし、あんた自身も”心からの本気を出せた”と思うよ。」
「…………っ!わた……くし……は………」
「パティルナ将軍閣下………」
パティルナは自分との戦いで傷つき、疲弊して地面に膝をついているクルーガーに指摘し、パティルナの指摘によって図星を突かれたかのようにクルーガーは辛そうな表情で唇を噛み締めた後小声で何かを呟きかけ、その様子をヴァリマールを通して見ていたリィンは目を丸くしてパティルナに視線を向けた。
「フン、幾らレン皇女殿下達との戦いで疲弊していたとはいえ、まさかここまで手応えが無いとは…………音に聞く”血染めのシャーリィ(ブラッディシャーリィ)”………あまりにも期待外れだったわ。」
「アハハ……猟兵王を一度殺した事がある人が、バルデルおじさんどころかパパの”領域”にもまだ届いていない上”殲滅天使”達に袋叩きにされて疲弊状態陥っていたシャーリィに期待する事自体が間違っていると思うよ〜。」
一方ファーミシルスは自分が戦っていた相手――――――シャーリィに侮蔑の視線を向け、全身から血を流し、更に得物であるテスタロッサも真っ二つに折られたシャーリィは仰向けに倒れて呑気に笑いながら答えた。
「ファーミはまだいいわよ〜。私達なんて、傀儡がなかったらただの”雑魚”だったのよ?」
「まあ、私達の前に既にプリネ達との戦いでかなり疲弊していた事もあるでしょうから、もし万全の状態でしたらもう少し手間取ったかもしれませんが……」
「最も例え万全の状態であろうと、所詮は屑共なのじゃから、余達の”勝利”は揺るがんがな!」
「フフ、”黒”がカンパネルラのお気に入りと同じ扱いや”雑魚”呼ばわりされた事もそうだけど、今の”黒”の無様な姿を婆様にも見せてあげたかったわ。」
不満げな表情で自分達が戦っていた相手――――――アルベリヒとゲオルグに視線を向けたカーリアンにペテレーネは苦笑しながら答え、リフィアは自信満々な様子で答え、クロチルダは妖しげな笑みを浮かべてアルベリヒとゲオルグを見つめた。
「おのれぇぇぇぇぇ――――――ッ!どこまで私を侮辱すれば気が済む、想定外(イレギュラー)共があああああぁぁぁぁぁ――――――ッ!」
「抑えてくれ、アルベリヒ!悔しいが僕達”地精”が遥か昔から練っていた計画を成就させる為にも、下手に刺激して戦闘の続行に発展させるよりも今は彼らが退くのを大人しく見守った方がいい!」
満身創痍の状態で地面に膝をついているアルベリヒはカーリアン達の自分達に対する侮辱の言葉に憎悪の表情を浮かべて声を上げて血走った眼でカーリアン達を睨み、その様子を同じように地面に膝をついているゲオルグはアルベリヒを諫めようとしていた。
「――――そういう訳だ。貴様の”墓場”はここではない。命拾いしたな、鉄血宰相。」
「オレ様達に喧嘩を売ったテメェをこんなあっさり殺すのはつまんねぇからな。テメェには”相応しい死”を用意してやるから、その時が来るまで首を洗って待っていなぁ!!」
リウイとギュランドロスは自分達との戦いで核(ケルン)にいくつもの罅が入り、機体の全体が傷つき、地面に膝をついているイシュメルガを睨んで宣言した。
「クク……”英雄王”に”紅き暴君”、そして”魔女”の”長”をも遥かに超える魔道の使い手の上武術もこの私と互角か、それ以上である正体不明の聖皇妃の傍付きの侍女………まさかイシュメルガを駆ったこの私ですらも”生身の存在”相手にこのような無様をさらすとはな………奴等の”絶大な力”を知ったからこそ、結社を裏切ったのか、聖女よ?」
一方イシュメルガの中にいるオズボーン宰相はリウイ達の圧倒的な強さに苦笑した後リアンヌに問いかけた。
「貴方もそうですが、”黒の工房”も勘違いをしているようですから、この場で訂正しておきます。――――――”私はリアンヌ・サンドロットでありません。”かつて”断罪の聖騎士”と呼ばれ、そして”メンフィルの守護神”を務めた軍神(マーズテリア)の聖騎士にして現メンフィル皇帝シルヴァン・マーシルンの母――――――”シルフィア・ルーハンス”。その者の魂が新たな”生まれ変わり”として、リアンヌ・サンドロットの肉体に宿り、この肉体の持ち主であるリアンヌ・サンドロットに”後を託された”お陰で、こうして今、かつて心の奥底から忠誠を誓った主であるリウイ陛下の元に戻ったのです。」
「!!」
「おいおい……そんな超展開とか、反則過ぎだろ………」
「なるほど………貴女程の高潔な方が結社に刃を向けるどころか忠誠を誓っていた”盟主”を”英雄王”達と共に討った事に疑問を抱いていましたが……まさかそのような理由があったとは。」
「くっ……まさか”槍の聖女”自身まで、想定外(イレギュラー)の状況になっていたなんて……!」
リアンヌの話を聞いたオズボーン宰相は目を見開いて驚き、レクター少佐は疲れた表情で呟き、クルーガーは静かな表情でリアンヌを見つめ、ゲオルグは唇を噛み締めた。
「フフ、伝説の”槍の聖女”が今も生きていて、その”中身は別人である事”には”槍の聖女”を超えることを目指していた武人としては色々と思う所はあるが、話を聞く所どうやら”今の槍の聖女の中身の人物”もまた”槍の聖女”に劣らない――――――いや、”それ以上の武人”のようですな?」
「……まあ、少なくても”槍の聖女”より上なのは事実だな。実際に俺達はその場面を”影の国”で目にしている。」
「あ〜、そういえば”影の国”のリウイと姫将軍の”試練”の時にシルフィアは”鋼の聖女”―――いえ、”槍の聖女”と一騎打ちして結構手間取っていたけど勝ったわよね〜。」
「あの……いい加減私をその二つ名で呼ぶのは止めて欲しいのですが……」
「ふふっ、厄介な人物に目をつけられた事に関しては同情するわよ、リアンヌ。」
「えっと………”強者”に対して好戦的になるファーミシルス様も他人(ひと)の事は言えないと思うのですが……」
苦笑した後興味ありげな表情を浮かべたオーレリア将軍はリウイ達に確認し、オーレリア将軍の確認に対して静かな表情で答えたリウイの答えを聞いたカーリアンはかつての出来事を思い出して懐かしそうな表情をし、カーリアンの自分への呼び方を聞いたエクリアは疲れた表情で指摘し、口元に笑みを浮かべたファーミシルスはリアンヌに話を振り、その様子を見ていたペテレーネは表情を引き攣らせながら指摘し
「フフ、この戦争を終結させた後でしたら、”手合わせ”や”交流試合”という形ならばいつでも受けて立ちましょう。」
「ほう。その言葉、必ず守ってもらうぞ、”槍の聖女”―――いや、”メンフィルの守護神”よ。」
苦笑しながらオーレリア将軍に答えたリアンヌの話を聞いたオーレリア将軍は目を丸くした後口元に笑みを浮かべた。
「―――戯言を!どう言い繕うと、貴様が”2度も主を裏切った事”は事実!結社の盟主もそうだが、ドライケルスも貴様のような愚か者を自分達の”騎士”として迎えた事には同情を禁じ得な――――――」
一方アルベリヒは声を上げて憎悪の表情を浮かべてリアンヌを睨んだ後嘲笑しかけたが
「愚か者は貴様の方じゃ!余の偉大なる祖母たるシルフィア様への侮辱はこの余が許さん!余の裁きを受けるがいい――――――天界光――――――ッ!!」
アルベリヒのリアンヌへの侮辱の言葉に怒りを抱いたリフィアはあらゆる穢れを消滅させる究極の神聖魔術を発動した。するとアルベリヒの頭上に凄まじい光が炸裂した後、アルベリヒの頭上に騎神や機甲兵も丸ごと覆いつくす極太の収束した聖光が降り注いでアルベリヒを襲った!
「ぐぎゃああああああああああああ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”――――――ッ!!」
「アルベリヒ――――――ッ!」
その身にリフィアが放った究極の神聖魔術を受けた。”不死者”の肉体を持ち、更にアルベリヒ自身も”穢れ”の存在のような為、今まで受けた神聖魔術の中でも最も効果的なダメージを受けるとともに悲鳴を上げ、それを見たゲオルグは声を上げた。
「お……の……れ……想定外(イレギュラー)……ども………が……………」
「しっかりするんだっ、アルベリヒ!」
そして光が消えた後、そこには全身を浄化の光に焼き尽くされた事で全身に大火傷を負い、更に全身の至る所から煙を上げているアルベリヒが姿を現した後アルベリヒは気を失って地面に倒れ、それを見たゲオルグは慌ててアルベリヒに駆け寄り
「まさか今ので彼は滅されたのでしょうか……?」
「そうなってくれた方がこっちとしては助かるが……ま、”妄執の塊”のような奴があの程度ではくたばらないと思うぜ。」
それを見たセドリックは困惑した様子で呟き、セドリックの言葉に対してクロウは苦笑しながら答えた。
「リウイ様、撤退の準備が整いました!」
「いつでも転位魔術を発動できます!」
「フフ、そちらの撤退の準備も整ったようだし、私は先に失礼させてもらうわね。」
その時ペテレーネとエクリアがリウイに報告し、クロチルダはリウイ達に声をかけた後転位魔術を発動してカレイジャスに帰還し
「わかった。リィン、エリゼ、エリス。お前達はそれぞれの機体でレヴォリューションの甲板に戻れ。」
「了解しました!行くぞ、エリゼ、エリス!」
「「はい、兄様!!」」
二人の報告に頷いたリウイはリィン達に指示をし、リウイの指示に頷いたリィンはヴァリマールを駆ってヴァイスリッターとエル・プラドーと共に飛行してレヴォリューションの甲板へと向かい
「俺達もカレイジャスの甲板に戻るぞ、皇太子殿下!」
「わかりました!」
オルディーネとテスタ=ロッサも続くようにカレイジャスの甲板へと戻った。そしてペテレーネとエクリアは転位魔術を発動し
「鉄血宰相、最後に一つだけ言っておく。リアンヌが俺達についた事で、リアンヌから”巨イナル黄昏”もそうだが、”七の相克”についても”全て聞いている”。そしてそれを知った俺達は俺達にとって大切な臣下、そして守るべき民であるリアンヌやリィン達を”七の相克に強制的に参加させられない為の手も既に打っている。”」
「!?」
「な――――――」
二人の転位魔術が発動し始めるとリウイはイシュメルガに視線を向けて宣言し、それを聞いたオズボーン宰相は目を見開いて信じられない表情を浮かべ、ゲオルグは絶句した。
「俺達が何も知らずにエレボニアに戦争を仕掛けたと思っていた事自体が貴様の”敗因”だ、鉄血宰相。」
「クク、爆弾程度でテメェがくたばるとは全く思っていねぇが、その程度でくたばるなよ、鉄血宰相!」
「最後の最後に余計なことをしないでください、ギュランドロス様!」
そしてリウイとギュランドロスはそれぞれオズボーン宰相に宣言した後転位魔術によってレヴォリューションに帰還し、エルミナはギュランドロスに苦言をしながら転位し、リウイ達が転位するとカレイジャスとレヴォリューションは再び魔法陣の中へと入って黒の工房から撤退した。
「爆弾………――――――まさか!?」
「クソッ、シュバルツァー達の目的はこの工房の制圧ではなく、”エレボニア(俺達)が黒の工房の協力による戦力増強をさせない為に黒の工房の本拠地を爆破する事で黒の工房の設備やこの工房に保管している正規軍に出荷予定だった新兵器――――――魔煌機兵の無力化”だったのかよ!」
「くっ………すぐに爆弾の除去を――――――ダメだ、間に合わない!」
カレイジャスとレヴォリューションから撤退した後転位の際のギュランドロスの言葉を思い出して察しがついたクレア少佐とレクター少佐は血相を変え、ゲオルグは焦りの表情を浮かべた。
「フフ……ハハ………ハハハハハハハッ!見事だ……今回は潔く”完敗”を認めよう、メンフィル・クロスベル連合………――――――そして我が息子(リィン)よ。」
一方オズボーン宰相は声を上げて笑った後精霊の道を起動させてアルベリヒ達と共に転位した。するとその瞬間、黒の工房の本拠地を中心に超越した大爆発が起こり、大爆発によって黒の工房の本拠地があった場所である”ミルサンテ街道”の外れにある巨大な岩は木端微塵になり、また黒の工房の本拠地自体も崩壊し、本拠地内にあった人形兵器や魔煌機兵、完全に修復不可能なレベルまで魔導兵の全ても破壊されていた。
こうして………無事に”黒の工房の本拠地襲撃作戦”を完遂したカレイジャスとレヴォリューションは”エリンの里”へと帰還した。
なお、リフィアによる究極神聖魔術――――――”天界光”をまともに受けたアルベリヒの傷は相当深く、またオズボーン宰相もステラの狙撃によって不死者であるその肉体にとって”猛毒”も同然の”聖別”された聖なる弾丸を受けた事やリウイ達との戦闘によるダメージは深かった為、ヘイムダルに帰還後アルベリヒは意識不明の重体、そしてオズボーン宰相は体内に撃ち込まれた弾丸を手術で摘出後政務や連合との戦争の対処に当たってはいたが、メンフィル軍による黒の工房本拠地襲撃作戦で負ったダメージや疲弊した身体を早期に回復させる為に毎日18時間は眠らざるを得ない上、時折血を吐くという後遺症が残ってしまい、それらの事実は政府、軍関係者、そして国民達へと徐々に知れ渡り、オズボーン政権に更なる陰りが覆う事態に陥った――――――
これにて断章は終了です。第三部は戦争が本格化する話なので多くの人達が期待?しているであろうリィン達の出番は多めの予定で、逆にZ組側の出番は少なめ……というか連合側(要するにリィン達)の話がメインになると思います(冷や汗)なお、第三部は序盤以来の18禁話も予定しており、組み合わせはリィン×シャロンです!今の状況で何で二人がそんなことになるかは今までの私の作品を読んでいた人達ならば気づく人達もいるかもしれません(目、逸らし)
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第88話 | ||
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