真恋姫無双 美陽攻略戦 第十一ターン
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  美陽攻略戦

 

 

 

 

 

 

 

      (はじめに)

 

           今回は、一騎打ちの戦いです。描写が甘いとのことで少し研究しました。

 

 

                          ・・・・できれば読んでください。

 

 

                                  書きすぎた・・・

 

 

 

 

 

 

      (前回のあらすじ)

                 田豊  「荀ケ殿、『ゴチ』 になりました!」

 

 

 

 

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  第十一ターン

 

 

 

                    「・・・・・・・・お腹減った」

   

         と燃えるように赤い髪をした少女は、愛用の方天画戟を杖代わりに歩いていた。

    

             その横で、小柄な少女がダボダボの服を振り回して激励していた。

   

         「  恋 殿〜 

              がんばるのです。もう少し行ったら長安です。

                             そこで食事ができるのです」

   

                 と言うが小柄な少女自身もかなり空腹であった。

 

   

                 「・・・・・アッチにごはんのニオイがする」

   

                 「れ、恋 殿〜 どちらへ行かれるのですか?」

   

         と恋はズカズカと歩いていくのに、

                    歩幅が小さいねねは早足で恋の後を追いかけていった。

 

 

 

 

             

 

 

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           一刀は与えられた天幕の中で、昼食に出されたものを見て考え込んでいた。

           

          主食である小麦から作った、この地方のパンに当たる焼餅(シャオピン)は判る。

          水が貴重なので牛乳みたいなもので割ったマズイ水が出るのも理解できる。

              

             しかし、

                おかずに何故かメンマと羊肉の焼き物、

                  メンマと何かの野菜のスープ、メンマと・・・と

  

               ここに着てから3食全て何らかの形でメンマが入っている。

            最初は腹が減っていたから美味しく感じていたが、さすがに飽きてきた。

 

              一刀は不平を言いながら食べ始めたところに、月と詠がやってきた。

  

          「 なあ月、

               漢王朝はメンマ帝国なのか? もしかして劉氏の誰かが、

                    

                   『メンマを食わぬヤツは人にあらず』 

                  

                とか言って、全ての民はメンマを食べるようになったのか?」

  

                一刀の話が余程可笑しかったのか月は笑い、詠は呆れていた。

          「 兄様、

               それは違います。都や邑では麻竹を常食していません。

                                  安心してください」

  

          月はくすくす笑いながら、

              塩は特に内地の奥になれば成る程、大変貴重で高価になります。

               しかし、兵が多ければ多いほど運ぶ塩の量も多くなるので

                行軍では出来るだけ荷物を少なくすることが鉄則です。

         

              塩単品を運ぶのは効率が悪いことから塩漬けにした

                 麻竹等何らかの加工物にして運びます。

         ただ今回は麻竹の塩漬けが安かったから大量に輸送されてきただけでしょう。

  

  

          「アンタ、今のご時勢で3度の食事が食べられるだけでも幸せなのよ。

            それよりアンタが言っていた硝石・硫黄・木炭・素焼きの小さい壺は

             長安中の薬房、妓館、一般民家等からかき集めるように指示したから

              一刻以内に運ばれると思うわ。

             但し、紙に関しては洛陽でも貴重な品だからこれは用意できなかったけど」

          

          と詠は言って一刀のオカズの肉をつまみ食いした。

                一刀はメンマ以外の貴重な俺のオカズをと恨めしそうに詠を見た。

 

 

 

 

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      「まさか、アンタが許の曹家の大書庫にあるような方士の秘伝を知っていたとはね」

           と詠は関心して言った。

  

            許の曹家(曹操の実家)の大書庫は、

             5代前の曹家当主から現在の当主まで金と権力に物を言わせて

              神代の周礼の原本から 近年、民を惑わすとして朝廷から

               ご禁制になった八百一本という入手困難なものまであり

            

                     『曹家に無い書はない』 

 

           と豪語され、書淫にとってまさに楽園と言われる程の蔵書量を誇っていた。  

  

  

          先の軍議で打ち合わせをしていたとき、一刀は詠に火薬は無いのかと質問をした。

           ところが意外なことに詠ほどの博学でさえ火薬というものは知らず

            一刀が簡単に説明すると昔読んだ本で神仙を目指す方士が鉛を金に

             変える術をしていたとき、何かに吹き飛ばされて死亡した話を読んだ

              ことがある。

           しかし、現実的な詠からすればそれは御伽噺にすぎないと思っていた。

 

  

          そこで、

             陣内に少量の材料

            (肉を保存する為の硝石、薬としての硫黄、そこらにあった木炭)

             があったので、早速、一刀は火薬を製造したら配合比の関係か威力は

             弱かったがちゃんと燃焼をした。

  

             一刀はやっぱ素人だからダメだと失望したが、月や詠は大変驚き、

             特に詠に至ってはすぐ材料を用意するから教えろ言い

             それを聞くと物凄い勢いでどこかに飛んで行ってしまった。

 

  

 

        後で、一刀は知ったことだが歴史の教科書には中国で火薬が公式に発明される

         のは月たちの時代から400年以上先のことから、月たちにしてみれば超最

          先端の兵器を体験したことになり、特に軍師の詠からすれば興奮が覚めや

           わらないのも納得できた。

 

 

 

 

 

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         一刀がこれ以上詠にオカズを取られまいと急いで食べ始めたとき、

         天幕の外から何やら喧騒とした音が聞こえてきた。

 

         それと同時に、賈校尉いずこ!と誰かが探し回っている声が聞こえた。

 

 

        何やら様子がおかしいことから、敵の奇襲かと一刀達は急いで天幕を出た。

         すると詠の姿を見つけた兵が慌ててこちらにやってきた。

  

              「賈校尉、大変です。襲撃に遭いました」

                            と興奮気味に喋った。

  

          これを聞いた詠は慌てながら、敵の数は と質問した。

           

                   「2名です」

         

          との答えに、詠は ハァ? と素っ頓狂な声を上げた。

  

             とりあえず、その場所に向かった。

             そこは、兵卒が食事を作り食べる為の広場であった。

  

          一刀のように高級士官待遇では、食事は色々と手間が掛けられ一人で食べる。

            しかし、一般の兵卒は大鍋に水と燕麦(エンバク)、豚の脂肪の燻製、

            塩(この場合メンマ)を入れ煮込んだオートミールのような粥を

            20人単位で作り、各自が大鍋からよそって食べる形式である。

  

  

             一刀たちが見た光景は、

                カラの大鍋がいくつも転がっているおり

                   無数の兵が死屍累々と横ていた。

 

 

 

 

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                 モグモグモグ モグモグモグ モグモグモグ

                 ハグハグハグ ハグハグハグ ハグハグハグ

 

            赤毛の女性は、戟を横に置き大鍋を抱え込んで食べており、

               またその横では小さな子供がお椀によそって貪り喰っていた。

  

                「敵はたかが2名だ。集団で取り押さえ、 グホッ!」

  

            数人の兵が、取り押さえるべく赤毛の女性に向かったが、

                 その女性は兵士に目もくれず横に置いてあった戟を

                        一振りして近寄ってきた兵をなぎ倒した。

  

            一方で、小さな子供を捉えるべく押さえ込もうとした兵は、

             素早く避けられ次の瞬間には跳び膝蹴りをくらってその場に倒れた。

 

                 モグモグモグ モグモグモグ モグモグモグ

                 ハグハグハグ ハグハグハグ ハグハグハグ

  

        その彼女らの周囲には

          自分達の食糧を奪還すべく挑みにいった勇者たちが山のように横たわっていた。

 

 

 

 

 

 

                 「でアンタ達はなんで食糧泥棒をしたわけ?」

 

 

 

         と兵士達の大鍋十数個(量にして約100人前位)を空にして相手は満腹

          になったのか大人しくお縄についた。

           

          「 恋殿〜 申し訳ございません。

              ねねが一計を計れば、このような辱めを受けなくてすんだものを・・」

         

         と小さな女の子は赤毛の少女に泣きながら詫びを入れているが、

          赤毛の少女に至っては満腹なのかコクコクと睡魔の誘惑かかっているようであった。

  

         弁償させようにも、一銭も持っていないしどうしたものかと思案している月達であった。

          「 そこのメガネ!

             恋殿が仕官したらすぐ食べた食糧代は返すからすぐに開放すのです」

         と陳宮という子供は恐れ知らずにも詠に噛み付いた。

  

          「 ・・・メガネだ?」と言われて陳宮を睨む詠であった。

  

          「 恋殿はこれから長安に向かい、并州刺史の董卓殿に仕官するのです」

         と詠の睨みに負けず誇らしげに語る陳宮であった。

  

               しかし、これを聞いて、月は陳宮達に控えめに言った。

               「 あの、長安はもっと東の方なんだけど・・・」

  

          それを聞いて    

                    なんですとー! 

                         

                           と両手を頬に当て驚く陳宮であった。

 

 

 

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         「しかし、まあ目的の人物である人に会えたからいいんじゃない?」

             と面倒くさそうに詠は言った。

             詠は月の方を示して、こちらの御方がその董卓様よと言った。

  

             更に陳宮は驚愕したが、縄を解かれると、

              すぐさま襟を正して月に拝礼し先ほどの態度から

               一変し正式な宮廷作法をしだした。

  

              「董刺史、私は?州東郡武陽県の出身、名を陳公台と申します。

                  そしてこちらは我が主、呂奉先と申します。

                    私どもは董刺史の庇護下に置いて頂きたく、

                         はるばる洛陽から仕官に参りました」

  

         これを聞いて月はそんなに固くならないでと言ったら陳宮はコロっと態度を変えた。

  

             その後、陳宮は聞くも涙、語るも涙と長々と身の上話をしだした。

             陳宮の話はオーバアクションで、あまりにも長かったが要約すると、

             

             陳宮は元々は朝廷の官僚として働いていたが、単家(有力者の後ろ盾

             がない人)出身の為、貴族の悪童に日々イジメられていた。

              ある時、今上陛下から直接賜ったねねの誇りでもある官服をワザと

             汚され、激怒した陳宮はその貴族の子弟を殴ろうとしたが逆に殴り倒

             された。

              

              そのとき、偶然居合わせた呂布がその子弟を殴ったが、加減が出来

             なかった呂布はその子弟を殺してしまった。

              その親は十常待の縁者にすがり仇を討つように頼んだ。

             呂布は義父である丁原に迷惑がかからないように洛陽を去ることを決

             意し、陳宮も助けてもらった恩から、呂布を主と仰ぎ同行するように

             なった。

 

 

               そして、陳宮は呂布と色々と相談した結果、

                呂布は元々并州五原郡出身であるから故郷に戻るといい、

                 それならばと陳宮は并州刺史董卓殿に仕官したらどうか献策した。

 

 

 

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          「 恋殿を容姿をご覧のとおり、西域諸国の血筋が混じっていることから、

             同じ苦労をしている混血の董刺史ならこの苦労を・・・」

               

            と陳宮が言ったところで詠は 

                       

                        だまりなさい!

               

                         と言ってビクッとした陳宮の話を止めた。

  

             「詠ちゃんいいよ。事実なんだから」 と寂しそうに月は言った。

  

  

          そもそも、月の父親である董君雅は、異民族である羌族と

           交戦・和睦等の外交手腕の巧みな人物であった。

            そして、政略結婚として董君雅は羌族の娘を娶ったが

             この娘の母方は羌族が遥か西欧諸国で侵略した際の戦利品として

              慰み者となり、この娘を産んだ直後に自殺を図った。

  

                     そして、生まれた娘は碧眼であった。

  

              その為、董君雅との間に生まれた子供も、同じ母親であっても、

              その遺伝子が濃く出るか、出ないかでの違いで人相が大きく

              異なっていた。

   

                     今の漢王朝は「儒教思想」が主流であり、

             

              儒教思想では、「家柄」「外見」「忠孝」の3つが重んじられた。

 

          その為、董家のような家庭の事情では、漢朝の官僚らから見れば、

                 「どこの馬の骨とも分からない奴」 と評価され、

                 「見た目が醜いから、中身も醜いだろう」

                                  等の陰口もされていた。

 

   

          そのような中で月の兄である董擢は、

           この董家の恥辱をを雪ぐ為に率先して異民族との戦いに参戦した。

 

          しかし、董擢が十九歳のときの戦で行方不明となり

           消息を確かめすべもなく、死亡したものとみなされ、失意の月が

            何の支えとなるものなく董家宗主という地位を受け継ぐこととなった。

 

 

 

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                       「 詠ちゃん・・・」

          

            と言って、陳宮たちの不遇を哀れんだのか月はすがるように詠を見た。

           詠はバツが悪そうに 決めるのは月だから、月の決定にはボクは異存はないよ。

            そう言って詠は陳宮に朝廷から貰っていた俸禄はどれ位かと質問をした。

            

            「恋殿は官秩2000石、ねねは官秩200石ですが、

                        俸禄を穀物ではなく砂金で頂きたいのです」

                      

                   砂金、と言って詠は眉間にしわを寄せた。

  

               官秩2000石は刺史をしている月と同額の俸禄である。

            それを穀物による俸禄ではなく砂金となると穀物ではその年によって

            豊作もあれば不作もある。その為、穀物相場は安定していないことか

            ら物々交換が主流となっている地方では交換比率も大きく変化してし

            まう。

             ところが砂金の場合には安定した相場であることから交換比率の変動

            に左右されることは小さく、また、穀物は古くなることから長期間保管

            できないが砂金なら保管できる上、何かあった場合には持って逃げるこ

            ともできる。

  

                  この陳宮という子、それを考えた上で要求してくる。

 

                           聡明な子だ。

  

                  と関心した詠は では金いくら欲しい と陳宮に尋ねた。

  

                    陳宮はすかさず、金150頂きたいと言った。

                     それに対して、詠は高い金10だ。

  

           「金140、恋殿は、朝廷では武勇に優れ飛将軍と称され、

                  羽林(皇帝の直属の兵隊)で戟の師範をし、

                    諸州に於ける武芸大会、大食い女王大会等を連勝したのです」

           「金15、武芸者は今履いて捨てる程いる。それよりアンタはどうなの?」

           「金120、ねねは孝廉(科挙の土台となった試験)で三位探花を頂いたのです」

                 とねねは誇らしげに羽織っているダブダブな官服の襟を示した。

 

                            探 花 ?

  

              ふっ、と言って詠は陳宮にわざとらしく羽織っている服の襟を見せた。

           「 のォー!

                  それは主席の証である状元!・・しかし、ねねは最年少で・・・」

  

                  詠と陳宮のやりとりを見ていた一刀は月に尋ねた。

               「なあ、月あの状元や探花とかいうのはそんなに凄いの?」

               「はい、今の朝廷や地方の官僚になる孝廉では、

                   汚職や縁故があり有力な後ろ盾が無い人は

                    余程優秀でない限り、上位者にはなれません。」

   

               「ふ〜ん、詠はともかくあの子がね・・・ どう見ても、じゅう・・」

  

                     「十八歳には見えないのに!!」

 

                 と一刀が言おうとしたところ、すかざす月は遮った。

                一刀は月を見て、どうみても十・・ と言おうとしたが

                      月は無言の微笑みをしていた。

 

             一刀は只ならぬ雰囲気を感じ、これには触れてはならないと直感した。

              そうこうしているうちに、勝ち誇った顔をして詠がこちらに来た。

                 「ふっ、価格交渉でボクに勝とうなんて十年早い」

  

               一刀は 恋殿〜 と泣いているねねを横目に幾らになったか尋ねた。

  

              「二人合わせて金40、一騎打ちは別払い

                            ・・・・俸禄として440石位かな」

             

               一刀は絶句して

                 「1/5に値切ったのか・・あれじゃ泣くわけだ。」

              「并州まで鳴り響く天下の飛将軍を破格で仕えるなんて行幸よ」

                         

                           と満面の笑みを浮かべる詠であった。

 

 

 

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            一刀は何か視線を感じ振り向くと、

             縄を解かれてもウトウトしていた呂布が一刀をジッと見ていた。

              どうしたのかと尋ねると呂布は不思議そう顔をして言った。

  

           「・・・・アナタ、強いの? 

               2合目以降は恋が絶対に勝つけど・・1合では恋が負けるかも」

  

           1合とは戦闘をしたとき武器を交えたときを言う回数であり、

            呂布は2回目以降なら勝つか初回では分からないと言っているのであった。

             これを聞いて呂布の胸で泣いていた陳宮は一刀に噛み付くように言った。

           

           「恋殿がこのようなヘタレに負けるわけがないのです。

                              見るからにに貧弱そうです」

          

              天下の呂布を相手に勝てる気がしないことから苦笑する一刀

                であったが、何を思ったのか陳宮は行き成り詠に向かった叫んだ。

 

 

           「そこのメガネ待つのです。

             恋殿とこの男と試合をして、恋殿の実力を刮目して見るのです。

                        それで再度俸禄の交渉を要求するのです」

                    

                  そこのメガネと言われた詠は口を引きつらせて

           

           「面白い、見せてもらおうじゃない。

                           天下の飛将軍とやらの実力を・・・」

           

              もはや両者は当事者の意向等を無視して、

                   売り言葉に買い言葉の状態にその間で

                          オロオロしているのは月のみであった。

 

 

 

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          中央の広場で試合をすることとなり一刀と恋の周りには、

             何時の間にか話を聞きつけた兵卒が周囲を群がっていた。

               兵卒からは

                  若、アッシらのメシの仇を取ってくだせい。

           

          と悲壮感漂う応援から目端の利く兵はどちらが勝つか賭け事の対象

                   にしたりと完全に余興として集まってきていた。

 

          当初天下の呂布相手に方天画戟を使用することは向こうに有利すぎる

           からこちらは柳葉刀の使用を一刀は申し出た。

 

          方天画戟は、関羽の持つ冷艶鋸(れいえんきょ)と呼ばれる青龍偃月刀や張

          飛の敵を刺したときに、傷口を広げよりダメージを大きくさせることを目的

          とした蛇矛等のような長物と分類される武器において斬、刺、引掛、切裂等

          を一つの武器で多彩な攻撃パターンができる万能武器である。

          しかし、この多彩さ故にに扱いが難しく方天画戟の能力を100%引き出せ

          るものは少ない。

          一方で、一刀が選んだ柳葉刀は、片刃で湾曲した片手刀で日本刀などに比べ

          刃の幅が非常に広い。そして、 重量と遠心力をつけ斬りつけることにより

          威力を発揮する武器である。

 

     戟と刀では両者のリーチは異なる上、明らかに方天画戟の方が有利であることが明白であった。

 

 

 

          「一応、木製の練習用具だから死ぬことはないけど

                   

                   『相手に先に一撃を与えた』 

                   

                                    方が勝ちだから」

 

 

 

 

 

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                        『 始 め !』

 

 

                との詠の合図と共に両者それぞれ後方に飛んだ。

 

         

         呂布は先ほどまで眠たそうな顔をしていたのが

          目を大きく開け一刀を見定めていた。戟の刃を自分の背後に隠すようにし、

           相手が動いた瞬間に戟による一撃を与える動作をするため腰を低く落とした。

           

          しかし、呂布は先手必勝とばかりに攻撃に出ず一刀の様子を伺っていた。

 

 

         一刀においては柳葉刀を鞘に入れたまま、

          右手を柄にかけ相手の呼吸に合わせるかのように静かに呂布を凝視していた。

              両者の間合いでいえば呂布の戟の範囲内に一刀は入っている。

               それに対して一刀の持つ刀の間合いに相手を入れるためには

                数歩一刀は踏み込まなければならない。

 

 

 

        両者はそれぞれ相手の出方を伺い、少しでも相手が動いた瞬間に斬り合いとなる。

 

 

 

           先ほどまで余興として騒がしかった周囲の観客は

                    両者の気迫が感染し皆、固唾を呑んで観戦していた。

 

 

 

 

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         数秒しか経っていないのに、

          微塵も動かず観客はまるで1時間も経過したかのような錯覚を覚えた。

        

 

 

              聞こえるはずが無い両者の息遣いが感じられた。

 

 

 

          月や詠、陳宮も当初は茶番と軽く思っていたものが、

                 今ではこの一撃にかける両者に魅入られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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         周囲では馬の嘶く音とかがり火の燃える音しか聞こえないぐらい静まり返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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                 しかし、兵の誰かが動き、小石が擦れる音がした瞬間。

 

 

 

                       両者の静粛は打ち破られた!

 

 

 

 

 

 

 

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              呂布が先手をとり、横殴りで方天画戟の一撃が繰り出された。

 

 

                         「キェ━━━!!」

 

                 と一刀が甲高く尾を引く叫び声を上げつつ吶喊した。

  

 

             一刀の猿叫(えんきょう)により

               呂布は咄嗟に横殴りで攻撃するはずだった方天画戟を翻し、

                   相手の攻撃を受ける為戟の柄により防御体勢を取った。

 

            

 

            一刀は瞬歩し、呂布を間合いに入れた瞬間、柳葉刀を上段から打ち下ろした。

 

 

            

 

 

            初太刀から勝負の全てを掛けて斬りつける先手必勝の鋭い斬撃であった。

 

 

 

 

 

 

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       鋭い斬撃により、攻撃を受け流す為構えた方天画戟の柄が叩き切られ真っ二つとなった。 

               

 

          一刀の初太刀は一撃必殺を旨としており

                  なまじ受けるものならへし折られてしまうものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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                 「 薬丸自顕流  奥義  雲耀(うんよう) 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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              と言って、一刀は肩で粗く息をするぐらいの渾身の一撃であった。

               

             呂布は真っ二つに叩ききられた方天画戟を見て・・・

                      粗い息遣いをして動けない一刀に視線を移すと

                

             折れた方天画戟の柄で 

                            ポこっ 

                                  と一刀の頭を叩いた。

 

             

 

                「・・・・・勝負は負けたけど、試合は恋の勝ち。ぶい」

 

           

                        えッ!? と絶句している一刀

 

               

                   恋殿〜勝ったのです。と喜び恋に飛びつく陳宮

                

            状況を今だ理解出来ないで何故?と周囲をキョロキョロみる一刀であった。

                    ハ〜とため息をつき詠は一刀に言った。

 

            「試合は 『相手に先に一撃を与えた』らで『武器を壊した』ら勝ちではないの」

 

             一刀は相手の武器を破壊すれば相手は戦闘不能になり試合は一刀の勝ち

             と思っていた。しかし戦乱の世の試合においてはどんな手を使ってでも

                   相手が 

                           『参った!!』 

                             

                               と言わない限り試合は継続される。

                         

             一刀は武器の使用不能により試合終了となる現代の試合の認識と今い

             る世界の武器が使用不能になっても地面の砂を使ってでも相手に勝つ

             という戦乱の試合の認識を大きく見誤っていた。 

 

 

 

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             月は一刀の剣術に驚きどこでそのような剣を学んだのか聞いてきた。

          「陸軍中野学校の将校やってたじーさんに、ただ色々と叩き込まれただけだよ」

 

 

                        薬 丸 自 顕 流 

 

           敵に斬られたことすら感じさせない、1対多数の混戦等様々な戦闘パター

           ンを想定する諸流派の剣術において実戦を重視した薩摩剣術の示現流の分派。

 

           示現流は『一の太刀を疑わず』または『二の太刀要らず』と云われ、髪の

           毛一本でも早く打ち下ろせと教えられる。

           そして、その流派をくむ薬丸自顕流では

               

                   刀があれば刀の向こうを、鎧があればその中を

              

                                 と最大の攻撃力に特化し、

 

           抜刀術的な技である「抜き」も備え、「抜即斬」と称される神速の攻撃

           すなわち刀を腰に差した状態からの電光石火の斬り上げをし、1度刀を

           抜いたら相手を殺すまで攻撃を止めることはないとされている。

 

           この剣術が他流派と最も異なる特徴として、

                         

                        『生活に根付いた実戦性』

              

           すなわち欠礼・平服で稽古をし、江戸時代には肉を切る感覚を養うとして

           罪人を切り、戦前・戦中では生きた動物を切り殺すという精神修養がなさ

           れる。

 

           その為、幕末期、新撰組局長近藤勇すら

                    「薩摩者と勝負する時には初太刀を外せ」

                           と言わしめるほどのの最強を誇った。

           また太平洋戦争当時では日本の陸軍将校の修練剣術として多くのものが学

           び、打ち込みを小銃で受けた敵兵を小銃ごと頭蓋骨まで叩き割ったと云う

           剛の者の記録がある。

           陸軍士官学校では、薬丸流の伝書が取り寄せられ、その技を研究されたと言

           われていがその研究成果は太平洋戦争時の空襲により焼失してしまった。

 

           だが一刀の祖父は陸軍学校時代に傾倒しこの失われた技を体得しこれを一

           刀に伝授した。

           そして、一刀は口伝とされる技をいくつか体得したが、薬丸自顕流の歴代

           師範や沖縄戦で死亡した薬丸家の麒麟児と言われる薬丸兼教少佐等は触れ

           たものを気合で破壊できたという。

           

           そのような先人と比べると一合で精魂尽きる一刀の剣術は児戯に等しいレ

           ベルであった。

 

 

 

 

 

-21ページ-

 

 

            その場に横たわった一刀は、横目で早速交渉再開とばかりに話だし、詠

            と激論を交わしている陳宮を見た。

            すると、眠たそうな目をした呂布がこちらに来てしゃがみこんで言った。

 

            「・・・・アナタ、面白い

                    ・・もっと実戦経験つめば恋と同じになる。

                                    ・・・決めた」

 

            と言って呂布は詠と激論をしている陳宮に向かって言った。

 

            「・・・・ねね、恋はこの人に仕官する・・・」

 

                      陳宮は呂布の発言を聞いて一瞬固まってた。

         

             そして、顔を引きつりながら詠に

                      アノ御仁はどなたでしょうかと質問をした。

 

             それに対して、

                  詠はアレはウチの居候だから、なら俸禄はナシね。

 

            詠と陳宮の話に関心がない恋は一刀の手を取って起き上がらせながら言った。

               

                「・・・・真名は恋、よろしくご主人様。・・・コレはねね」

            

            と近寄ってきた陳宮のアタマをカシッと掴み一刀に見せるように紹介した。

                     恋に掴まれジタバタしているねねは

 

                この甲斐のなさそうなヘボ主人は恋殿には相応しくないのです。

 

 

 

-22ページ-

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                      「恋殿━━━!!」

 

                 というねねの悲壮な叫び声が周囲に鳴り響いた。

 

 

       後日、月が無給ではあまりにも可哀想なので当初の俸禄を支払ってくれることとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

-23ページ-

 

 

 

 

(あとがき)

 

 

 

 

      はじめまして、この度は  美陽攻略戦 第十一ターン をご覧になって頂きまして

 

      ありがとうございました。

 

 

      今回のお話は、一刀と恋との試合で一刀の武力を描写するものでしたが、

 

         書きすぎました。やっとチェックが終わりカタチになるものが出来ました。

 

      さて、本編に出てきた一般兵の食事ですが、これには原型となったモデルがあり

      まして、古代ローマ兵の食事(メンマはありません。)をベースにしています。

      味は現代人には不味く感じますが、腹持ちが良く、消化もいいので食べたら即戦

      闘ができるように作られたといわれております。

 

       今回、一刀が言っている流派ですが、他の方のように新しい流派(例;北郷流)

     や無敵に近い技は興ざめするもので、実際にある流派を選択しました。一刀ですから

     北辰一刀流(ホクシンイットウリュウ)がイイかなと考えたのですが、奥義があまり

     相手に衝撃的な技ではなかったことと、設定では北郷一刀は薩摩国の大名、島津氏の

     有力分家とされています。これにより薩摩剣術と実家の関連性があることから薬丸流

     を採用しました。なお、真恋姫では祖父の剣術は『タイ捨流』らしいことがほのめか

     しております。

 

      

      この薬丸流ですが、作中の話ではフィクションのようですがこれはホント7割、過

     大3割です。実際に相手を小銃ごと頭蓋骨を砕いたり、陸軍の修練剣術や研究がなさ

     れておりました。そして、新撰組から「薩摩者の初太刀を避けろ。」と言われる程に

     最強の実戦剣術です。

      蛇足ですが、新撰組のこの話には続きがありまして、

     「初太刀を避けたら(あらゆる流派でも)誰でも勝てる。」と言われていました。

     それだけ、初太刀に全神経がいき、2太刀以降は精神力は無くなり、弱くなるそう

     です。そこで本編でも一刀は初太刀は強いが2太刀以降は貧弱にしています。

    

      

 

   最後まで、本編をお読み頂きましてありがとうございました。

 

 

 

 

説明
第11回目の投稿です。
読みにくい点や日本語がおかしい部分があるかもしれませんが、宜しくお願い致します。
書きすぎた為やっと、修正・チェックが終了しました。
今後の参考に致しますのでコメント・感想等をお願い致します。
閲覧ユーザーが1000人になりました。皆様大変ありがとうございます。
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コメント
>ブックマン 様コメントありがとうございます。この流派、近所から異様な奇声があると警察に通報され道場移転する羽目になったそうです。(笑)(thule)
まさに一撃必殺ですね。(ブックマン)
>キラ・リョウ 様コメントありがとうございます。星による『人類メンマ補完計画』が・・・(thule)
メンマはきっと星が広めたに違いない!!(キラ・リョウ)
>jackry 様コメントありがとうございます。恋とねねの忠誠度が上がった!です。(笑)(thule)
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