フレームアームズ・ガール外伝〜その大きな手で私を抱いて〜 ep29 |
バトル開始のアナウンスと共に、((百虎|モモコ))はスティレット目掛けて走ってくる。
「来なさい!!昨日の恨みを晴らすわ!!」
飛び上がったスティレットがガトリングガンで迎え撃つ。百虎は猫の様にステップを踏みながら回避しながら前進、スピードは緩めない。
「邪魔くせぇ!」
百虎は背中のレーザーキャノン砲でスティレットを撃ちながら牽制を行う。スティレットは回避行動を取るがその隙に百虎は跳躍力を活かしてスティレットへと大ジャンプ。((黒碩剣|こくせきけん))を振りかぶる。
「早速一人だ!」
「轟雷!」
スティレットは冷静に親友の名前を叫んだ。待ってましたと言わんばかりに轟雷はレールガンで百虎を狙い撃った。攻撃態勢だった百虎は咄嗟に剣を盾代わりにして防ぐ。とはいえ衝撃で大きく吹き飛んだ。
「そこぉ!」
すかさずスティレットは二連装ミサイルで追い打ち。着地直後に百虎は着弾し爆発。すかさず二人は爆炎の中を撃ちつづけた。更に爆発は起こり百虎を包んでいく。
「けっ!調子に乗るなぁ!!」
爆炎の中を百虎は飛び出してくる。今度は轟雷の方だ。
「同じ手を!」
轟雷はレールガンで迎撃しようと撃つ。対する百虎は黒碩剣を一振りし弾丸を薙ぎ払った。そのまま百虎はライフルとキャノンの一斉発射。しかし轟雷は踵のキャタピラで後退しながら射線から回避。そして下がりながら轟雷は肩部キャノンで百虎に狙いを定めた。同時にスティレットもスマートガンに持ち替えて狙い撃つ。
「これで!!」
「チィっ!」
想定外の動きだった。以前戦った時とは動きのキレが違う。しかも二人の連携は抜群。このままじゃ押されると百虎は判断。その時だった。
『モモコちゃん!じっとしてて!』
轟雷とスティレットにマルチプルシールドが空いた手に突然転送された。
『真上からくる!防げっ!』
それぞれのマスターの声が響くと共に、直後、大型ビームが轟雷達をそれぞれ襲う。
「っ!?くぅぅっ!!」
2人の少女は咄嗟に防御しながら苦悶の声を上げる。更にミサイルも容赦なく降ってくる。爆発が二人を包み込んだ。
『わぁぁっ!(きゃあぁっ!)』
悲鳴を上げる二人、信じて見守るマスター達、爆発が止むと轟雷達の姿が確認できた。まだ致命傷にはなってない様だ。
「くっ……シールドが無かったら危なかった。誰が撃ってきたの?!」
ボロボロになったシールドを捨てるスティレット。と、撃ってきた相手が降りてくる。空を飛ぶモササウルスの様な機体が二機。その正体は。
「ストライクサーペント!?」
黄一が叫んだ。水龍型のギガンティックアームズ。
「凄い実力だね。モモコちゃんを寄せ付けない強さ」
感心する様な声を上げる朱音。彼女が操作していた様だ。と、水龍の後ろに両手の無いアルティメットガーディアンが降りてくる。足は畳んでおり巡航モードだった。
「でもモモコちゃんをいじめるなら遠慮はしないよ。乗ってモモコちゃん」
「マスター……すまねぇ……」
相手を舐めてた事に後悔の声を上げる百虎。そして百虎はオーダークレイドルに乗り込むと。ストライクサーペントと二機と合体。両足は立ち上がり巨大な人型兵器へと姿を変えた。
「この間のギガンティックアームズか!」とヒカル。
「アルティメットガーディアン!!ギガンティックアームズの最終発展型だ!」
「パイロット照合。ストライクサーペント、オービタルマニューバー、システムオールグリーン」
胴体部、オーダークレイドル内にて百虎はシステムの立ち上げをする。密閉型のコクピット内に明かりは無く、目の前のモニターが光源だ。その画面から見上げるスティレットと轟雷が見える。
「起動コード・ファイナルギガンティックコンビネーション……。((超巨神機甲|ハイパーギガンティックアームズ))!!アルティメットガーディアン!!!」
轟雷達の三倍はあるであろう巨人は、勝利を確信したかのように見下ろしていた。
「勝ち目はねぇぜ!!」
全ブースターをふかし、両手のオーバードマニピュレーターで殴りつけてくる。スティレットはすんでの所で回避。速い。
「ギガンティックアームズであのスピード?!」
「集大成だからな!」
「だからって!こっちも大人しくやられるつもりはありません!!」
轟雷も肩部キャノンとレールガンの一斉射撃を見舞う。
「私だって!!」
スティレットの方もスマートガンを撃ち込んだ。しかし効果は薄い様だ。意にも介してない。
「邪魔くせぇ!!」
百虎は羽虫を払うかのように両肩のミサイルを放ち雨の様に降らせる。
「チッ!」
スティレットはガトリングガンを再転送し、ミサイルの迎撃を行う。当てたミサイルは爆発し誘爆、残りのミサイルは普通に回避。
「ホーミングじゃないならこれ位!」
轟雷の方もキャタピラの移動で回避し、撃ちながら迎撃するも決定打にはならずだ。
「解ってねぇ様だな!絶対的な力の差を!!」
今度はアルティメットガーディアンのミサイルとビームの一斉射撃である。ミサイルの量が、ビームの量がさっきまでとは大違いだった。
「捌ききれな……わぁぁっ!!」
「轟雷!きゃあぁっ!!」
周囲の被害を一切顧みない攻撃。隠れる場所の無いフィールドである事も手伝って、絨毯爆撃の様な量の火力に二人は大きく吹っ飛ばされた。
「スティレット(轟雷!)!」
ヒカルと黄一が叫ぶ。二人のHPはまだ0にはなってはいなかった。しかし追い詰められてる事には変わりはない。
「ギガンティックアームズのないFAGにアルティメットガーディアンは倒せないよ……」
朱音は冷静ながらも、アルティメットガーディアンの絶対的な力に勝利を確信していた。
「だからってこんなあっけなく負けるつもりはありませんよ。」
「そうね轟雷、何の為の特訓だか」
轟雷とスティレットはまだ諦めずに立ち上がる。
『大丈夫かスティレット』とヒカル。
「当然よマスター。意地を見せなきゃダメでしょ?」
「そうですねスティレット。勝利フラグにはなってるんですから」
「しぶといな!だがそれでこそだ!オレの責任含めて、お前も!お前のマスターも!FAGと恋人になろうとした事を後悔させてやる!」
「っ!?そうやって……!!貴方は何故そこまでスティレットを憎むのですか?!いつもいつも私達に暴言を吐いて!」
「モモコちゃん……?」
轟雷達は食って掛かるが、朱音は事態が呑み込めていない様だった。朱音への説明もかねて百虎は説明を始める。
「……マスターに知られた。もう誤魔化せねぇな。……オレのマスターはな、ヒカルさんとの恋を本当は諦めるつもりだったんだよ」
「!?どういう事よ!」
「スティレット型、最初にお前とヒカルさんがそういう関係だって思ったのは、お前らが遊園地デートの少し前、中庭で弁当を届けに来た時だ」
「!モモコちゃん!言っちゃ駄目!」
「嫌だ!だってマスターがどれだけ辛かったか!!それを誰にも知ってもらえずに仕舞い込むなんて我慢できるか!!……予想が確信に変わったのが、お前ら2人が遊園地でデートした時、メリーゴーランドから降りて観覧車に乗って、雨の中帰った時だ」
「っ!?あの時にいたのか?!そんな馬鹿な!」
あの時のデートは黄一と轟雷達が監視をしていた。その時に朱音がいたとは夢にも思っていなかった。
「……諭吉君たらさ、ヒカル君に夢中になっちゃって、全然私に気付いてなかったんだよ……遊園地のデートはたまたま聞いたんだけどね」
乗り気ではなさそうだが、朱音が諭吉に言う。クリスマスの前に既に轟雷達の事は知っていた事になる。
「元々オレのマスターはヒカルさんに好意があった。だけど、確信を持ったら身を引こうとした」
「玄白さん?!どうして……!」
「諭吉君。言ったでしょ?だって……フレームアームズガールはロボットじゃないって……」
「だったら諦めていいってか?オレは納得出来ない!せめてマスターの!」
スティレットに集中攻撃、スティレットを吹っ飛ばし、百虎はそのままトドメを刺そうとする。
「きゃあ!」
「いや、オレの怒りをヒカルさん含めてテメェに食らわせてやる!」
その時だった、側面から大型のビームが迫る。アルティメットガーディアンで受け止める百虎。その衝撃に巨体が大きく怯んだ。
「なっ!」
「そうはさせませんよ!!スティレットの!友達の恋が成就するかもしれないんです!貴方の介入は許せません!!」
撃ったのは轟雷だった。身の丈もあるリボルビングバスターキャノンを構えており、それを撃ったのはすぐ解った。以前アグニレイジと戦った経験から、対大型機の装備だった。
『轟雷すまない!少なくとも……スティレットはやらせない!』
フィールドに乱入したヒカルもキラービークで飛び回っていた。スティレットを助けようとしたが轟雷に先を越されてしまったわけだ。
『揺れたけどあんまり効いてないなありゃ……轟雷、バスターキャノンでもフルチャージじゃないと決められない。どうにかして凌げ』
「無茶言いますねマスター!!」
『ヒカル!スティレットと二人で時間稼げ!そうすりゃ勝てる!』
『あ……あぁ』
指示を出したのは黄一だった。ヒカルを殴った黄一が、今度はヒカルを助ける。百虎は理解出来ない。
「黄一さん!?何考えてんだよアンタは!マスターを振った人を今度は助けるだと!?」
『ヒカルなんかの為じゃない。轟雷の為だ』
百虎は周囲を飛び回って攻撃をしてくるスティレットとキラービークを落とそうとする。しかし高速で動いてる為中々うまくはいかない。
「けっ!FAGの為に考えを変えるってか!!」
『そういう事になるな。あいにく轟雷は俺の妹みたいなもんなんでね。泣き顔は見たくないんだよ』
「お笑いだぜ!アンタもヒカルさんと同じってか!!」
『……玄白さんはお前の事をこう言ったな。普段強がってるけど本当は凄い繊細で優しい子だって』
「あ?!」
『玄白さんはスティレットの事を考えて身を引いた。その原因は……人間同様の心があるって教えたのはお前なんだろう?……モモコ』
「っ!?」
ビクッと震える百虎。
『自分が影響を与えた所為で失恋して、それを受け入れようとする。でも悲しむ玄白さん……マスターは見たくないから』
黄一は朱音に対する失礼を承知で言い続けた。ヒカル達への侮辱は朱音への想いとはまた別の問題だった。
「く……あてずっぽうでデタラメ言ってんじゃねぇ!!」
『玄白さんは楽しそうにお前の事話していたんだぞ。言わないなら玄白さんに聞く』
「っ!……そうさ……そうだよっ!!」
激昂しながら百虎は全武装を轟雷に向ける。
「あぁそうだよ!!オレとマスター、アカネちゃんとは子供の時からずっと一緒だった!!轟雷……お前と黄一さんは出会って三年だったな。……オレは七年だ。スティレット……お前は第一世代からの改修機だったな。……オレもなんだよ!!」
「そんなに長く……?!」
「オレはアカネちゃんが、マスターが大好きだよ。アカネちゃんもオレを大切にしてくれていた。でもだからこそ!FAGは人間と同じって思う様になっちまった!だからヒカルさんを諦めようとした!普通だったらFAGからの恋愛感情なんてお構いなしだろうによ!」
『……モモコちゃんはそれでも私を応援してくれたんだよ。だからアプローチをやめなかった。……後悔したくなかったからあの時告白したんだ……』
「玄白さん……」
「……アカネちゃんの弁当には、ヒカルさん、アンタの好きなヤギ肉とドジョウ使ったメニューがたんまりだよ!!心の底ではまだ諦めてねぇんだ!アカネちゃんの恋を失恋で終わらせてたまるかよ!!」
ヒカルに話しかけてはいるが、攻撃の狙いは轟雷の方である。自分を破壊しかねない切り札を持ってる為だ。ミサイルを、ビームを発射しつつ轟雷を仕留めようとする。轟雷の方は踵のキャタピラで後方に下がりながらチャージを続ける。攻撃しようと言うタイミングでスティレット達は邪魔をする。
『俺の所為もあるな……』と黄一はぼやく。
「ヒカルさん!アンタは本当にスティレットでいいのか!オレ達FAGの本質はホビーなんだぞ!どれだけ大切に想ってくれても!人間と同じに並び立つことはできねぇ!」
『……俺が好きになったのはスティレットの心だ。だからそれでいい』
ヒカルの方は落ち着いて答える。
「アンタもアカネちゃんも!綺麗事で片付く問題じゃねぇんだぞ!!」
そう叫んで百虎は強引にスティレット達を突破。轟雷へと迫る。バスターキャノンはほぼチャージが完了してるが、完全とはいかない。
「95%……!くっ!まだチャージが終わってない!!」
「轟雷!!」
ヒカルとスティレットはアルティメットガーディアンのブースター、推進器に射撃を撃ち込んだ。突破したとはいえ、背中を見せていた事には変わらない。起こる爆発、勢いを失った巨人はその場に墜落。
「ぐおっ!!」
「98……あと少し!」
「させ……るかっ!!」
銃口を向ける轟雷に対し、百虎は両手を地面に突き刺すと踝のビームを撃ち込む。直後、アルティメットガーディアンの周囲は噴火の様に吹き上がる。轟雷の立っていた場所も例外ではない。上に吹き飛ぶ轟雷。
「わぁっ!!」
「あと一歩だったな!!」
百虎は無防備になった轟雷に踝のビームを放った。ビームは真っ直ぐ轟雷に向かう。
「っ!スティレット!!貴方が撃って!!」
轟雷は背中のスラスターで姿勢制御と勢いをつけてバスターキャノンをスティレットに投げた。キャノンは射線から離れた物の轟雷はビームに飲み込まれ大爆発を起こした。
「わぁぁぁっ!!」
その悲鳴と共に轟雷は光となり敗北判定、脱落となった。
「だがその切り札だって無駄な努力なんだよ!!」
もう片方の手を向けると百虎は落ちたバスターキャノンを撃ちぬこうとする。
「無駄なもんですか!!」
スティレットは背中のドローンを切り離してガーディアンの撃とうとしていた拳にぶつけた。大爆発し撃つ寸前だった拳は破壊される。
「ぐがぁっ!!」
かなりの衝撃だったらしく百虎は大きくよろめく。その隙にスティレットは地面に降り立つとバスターキャノンをアルティメットガーディアンに向けた。チャージはスティレットが引き継ぐとすぐ完了する。いつでも撃てると言わんばかりに、キャノンのタービンは高速で回り轟音を上げていた。
「これでぇっ!!終わりよっ!!」
「!!!」
スティレットがトリガーを弾くと巨大なビームの濁流がアルティメットガーディアンを飲み、破壊していく。
「ア!アルティメットガーディアンがぁっ!!!」
百虎が叫びを上げながら巨人は大爆発を起こした。その場で原型の無い残骸が倒れこんだ。
「轟雷……。やったよ……」
『まだだスティレット!!来るぞ!!』
「えっ!?あっ!!」
ヒカルは叫びながらスティレットの背中にキラービークと合体、残骸の中から黒碩剣を構えた百虎が飛び出してくる。すんでの所で回避するスティレット。サムライマスターソードを構え、百虎と対峙する。
「やってくれるじゃねぇか!!まさかアルティメットガーディアンを破壊するとはな!!」
「アンタもしぶといわね!!」
「お互い様だ!アカネちゃんが見てる以上無様な姿なんざ見せられるか!!」
そう言って百虎はスティレットに斬りかかる。スティレットは二刀流でそれを受けていく。以前の百虎の剣捌きには成すすべなく倒されたスティレットだが、今度はしっかりと対応できていた。バーゼラルドとの特訓の成果である。
「この前と動きが違うだと!?」
「当然でしょ?!マスターが見てるんだから!!」
「だが負けねぇ!!お前と違ってオレはホビーとして!FAGのプライドがあるんだ!!」
「何よ!!」
尚も切り結ぶ2人。このフィールドでお互いが舞う様に、しかし苛烈に決闘を続ける。
『……スティレット。負けないで』
フィールド内に別のFAGの声、アーキテクトと大輔だ。少し前に店に到着し、バトルを見ていたらしい。
「……」
マリとテアの姉妹は無言でその戦いを見守っていた。
『動きはちゃんと対応できている。やれない相手ではない。私が教えたんだからな』
今度はバーゼラルドだ。昨日の百虎とのやり取りで皆気になってここに来たわけだ。
『お姉様はきっと負けません!!』
フセットと月夜。
『スティレット……お前は強い。大丈夫だよ!』
フレズと健。そして駆け付けた迅雷やレーフ達が激励の言葉を贈る。
『君なら勝てるよ。勝ったらボクと戦ってもらうよ』
『勝てます!私達の憧れの貴方なら!』
『スティレット!!頑張れ!』
『スティレットお姉ちゃん!!』
そして最後に轟雷と黄一が言った。
『スティレット……後少し、私の代わりに、私達の代わりに!!頑張って!!』
『行け。スティレット。ヒカル』
「……そうよ……!!プライド背負ってんのは、私も同じなんだからぁぁっ!!」
『あぁ、スティレット!行くぞ!!』
全員の激励に己を鼓舞し、スティレットの剣戟のキレは増す。百虎の方はアルティメットガーディアンからのダメージも手伝ってどんどん押されていく。
「やぁぁっ!!」
「ちっ!オレもヤキが回ったもんだぜ!!こんな悪役みてぇにやられるとはよ!」
ライフルとレーザーキャノンを失い、黒碩剣を楯にしてどうにか攻撃をしのぐ百虎。こんな展開は予想してなかった。自分の実力とアルティメットガーディアンでの慢心が少なからずあった。
「当然よ!!アンタは私だけじゃない!!皆のマスターへの想いを侮辱したわ!!皆を敵に回してたんだから!!」
対するスティレットは他のFAGの想いを、恋愛感情を始めとした様々な感情を背負っていた。
その時だった。朱音が口を開く。
『だったらスティレットちゃんの想いはどうなの?君の想いは?』
「っ!?」
一瞬スティレットが隙を見せた。その隙に百虎はスティレットを切り裂こうとする。
『おっと!!』
ヒカルがキラービークを操作し回避。
「あ、マスター……」
『ヒカル君は貴方の事好きって言ったよ。だけど貴方の方は答えを出してない。貴方の答えはどうなの?』
「私は……」
一瞬で、色々な想いがスティレットの中を巡って行った。そして己の恋心を育んでいった。……その答えなんて、ずっと前に出ていた。
「言わせるか!」
百虎は起死回生として切りかかる。それをスティレットの刃は受け止める。
「何だと!」
「……決まってんでしょ!!」
そして黒碩剣を弾き飛ばすとそのまま百虎を斬りつける。
「マスターはバカで!!スケベで!!デリカシーも!!無い!!」
一撃、二撃と百虎に刃を入れ、ソードをを合体させ大きく振りかぶった。
「でも……でも優しくて行動で示してくれるマスター。そんなマスターが……そんなマスターがずっとずっと!!私は!!!大好きなんだからぁぁーーーーっっ!!!」
それを渾身の力で振り下ろす。それが最後の一撃だった。百虎のヘルメットに亀裂が入り、乾いた音と共に砕け散る。ぶわっと百虎の黒髪が広がり、そのまま彼女は倒れこんだ。
『……負けたよ。スティレットちゃん』
「アカネちゃん……ゴメン……アカネちゃん……!!」
百虎は敗北判定となり光となって消えた。スティレットの勝利である。
『winner スティレット』
そしてバトルフィールドは解除され、降り立ったスティレットを轟雷達が出迎えた。
「負けちゃった……完敗だな……」
まず朱音がそう言った。
「玄白さん、その……私」
スティレットとしてはやはり罪悪感があった。
「それ以上言わないで……、……さーて、やる事やったから私帰るね。じゃあね!」
カラッとした態度で朱音はその場を後にした。わざと明るく振舞ってるのは目に見えたが……。
「玄白さん……わりぃヒカル、俺も帰る」
それを黄一が追いかけようとする。この中で彼女を追えるのは彼だけだった……。
「黄一……頼む」
「……あぁ」
ヒカルは親友に後を託す。黄一と轟雷は朱音の後を追っていった。
「……あのさ、マスター……」
ややためらいながらも、スティレットはヒカルの胸に飛びついた。
「……これが答えだから、愚かだって言われたっていい。これが私の本心だから。……本当に、本当に受け入れてくれるのよね?」
恐る恐るながら確認として問いかけるスティレット。それをヒカルは優しく抱きながら言った。
「スティレット……。あぁ、好きだ」
「バカ、本当にバカ……バカでスケベでデリカシーなくて、こんな事まで行動で示すんだから……」
「そりゃちょっと言い過ぎでしょうが……」
苦笑するヒカルにスティレットは目線まで飛ぶ。
「フゥ……当然でしょ。だってマスターってば私の事なんて言った?ひねくれていて、口うるさくて、意地っ張りって」
「う!そりゃ素直な感想だけどさ」
「やっぱそう思ってたんじゃないの!だからお返し!」
そう言ってスティレットは自分から唇を、ヒカルの唇に押し当てた。
「!!」
「……ぷはっ!これでお相子なんだからねマスター!特別なんだから!感謝してよね!!一生付き合ってもらうから!大好きだから!!」
「スティレット。望むところさ!……所で、ついでなんだけど……」
「?」
ヒカルが何か言おうとした時だった。その時だった。強い拍手が起こる。
「感動です!!素晴らしい!!正に人間とFAGの限界を超えた関係!!大感動です!!」
「ッ!アーキテクトウーマンさん?」
拍手をしたのは頭部がフレームアーキテクトのスーツ姿の女性。アーキテクトウーマンだった。
「そして……。ヒカル様、そしてスティレット様。おめでとう御座います。先程のやり取りを本社へ送り、厳正な審査の結果。貴方達に決定しました」
そしてかしこまった態度となり真面目に彼女は言う。
「へ……?やり取り?」
「はい!先程のヒカル様の大告白からスティレット様の大告白まで、盗撮しながら待ってた甲斐がありました!」
アーキテクトウーマンは自分の一つ目センサーを内蔵したバイザーを指差して得意げに言う。さっきまでの大告白を全て中継されていたわけだ。
「あ……」
ヒカルは赤面する。まだヒカルは軽い方だった。スティレットの方は……。
「な!なななな何してくれちゃってんのよぉぉぉっっ!!!!」
絶叫しながらアーキテクトウーマンの顔面に飛びついて揺さぶった。
「消して!!消しなさい今すぐ!!」
「でぇぇっ!!無理です生中継だから!!」
「まぁまぁ二人とも、所でさっき言ってた決定と言うのは?」
そんなスティレットを大輔が止めた。ヒカルがスティレットをつまんで引きはがすとアーキテクトウーマンは再び話し出す。
「おほん。本社の方で新世代ボディのテストモニターを探していたのです。候補者を絞り、失礼ですが監視させて頂きました」
「候補者……この間の海のイベントがそれという事?」
アーキテクトが不満げにアーキテクトウーマンを見る。監視やら盗撮やら、不穏な事ばかり言われて平気でいられるわけがない。
「黙っていた事は申し訳ありません。ですが大事なプロジェクトなんです……。それこそFAGを人間として扱ってくれる様なマスターが必要なんです。暫くスティレットさんを本社に預からせて頂けないでしょうか?」
「……本社に確認は取ったよヒカル。本当らしい」
スマホを持った大輔が言った。全面的な信用は彼もしてなかった様だ。
「……その新世代ボディを使えば、もっとマスターと近い距離になれるわけ?」
「はい。約束します」
「そう……。マスター……私、行ってみたい」
「お姉様……いいのですか?折角ヒカル様と両想いだって解ったのに、また離れ離れなんて……」
「フセット……暫くすれば帰ってこれるでしょ?お互いの関係がもっとよくなれるなら試してみたい。いいかな?マスター……」
「お前がそう言うならいいよ」
「ヒカル様……有難うございます」
そう恭しく頭を下げるアーキテクトウーマンだった。そしてスティレットを預ける事になる。
「じゃあ行ってくるね……。あ、所でさっき言いかけていた事だけど、何だったの?ついでって」
と、気になった。さっきヒカルが言いかけた事が気になった。
「あ……スティレット……どうせなら俺の事、名前で呼んで欲しいなって」
「!うん解った。ヒカ「いや、折角だから帰ってきた時の方がいいかなって思うから今はいいさ」
「いいけど……へぇ〜結構マスターってばそういう雰囲気好きなのね〜意外〜」
いたずらっぽくニヤニヤ笑うスティレット。満更でもなさそうだ。そしてここにきて新しくこういう一面が見れたことを嬉しく思った。
「っ!いいだろ別に。でも楽しみにしてるよ。……ではアーキテクトウーマンさん。よろしくお願いします」
「はい、責任を以てお預かりします。では……」
「うん。マスター……行ってくるから」
「あぁ、待ってるよ……」
そしてスティレットはアーキテクトウーマンと一緒にその場を後にしていった。
その頃朱音は……、店から少し離れたベンチで項垂れていた。
「……」
――アカネちゃん……――
何を言っても逆効果になりそうな空気だった。アルティメットガーディアンから乗り出した百虎は声をかけようにもかけづらい。気に掛けるだけしか出来なかった。
「……モモコちゃん……」
「アカネちゃん?」
「そんな悲しそうな顔しなくても大丈夫だよ。もうすっぱり諦めがついたから……」
「そんな顔じゃ納得できねぇよ。どうしてあんな潔い振りなんかしたんだよ……」
「……フフッ。だって、モモコちゃんが私の不満を全部言ってくれたから」
「え?」
「本当言うとさ……やっぱり悔しいって思う所があったんだ……。かなり強気に言ってくれたからこれでもかなりスッキリした方なんだよ?有難うモモコちゃん」
「アカネちゃん……」
目を赤く腫らしながらも、微笑みかける朱音。その笑顔に安心する百虎。……が、次の瞬間。朱音の表情が真剣になる。
「それはそうとさ……。昨日の土曜日何をしたのかなモモコちゃん?嫌がらせって何の事かな?」
「ぎっ……いや、な……なんだろうなーオレにはわかんないなぁー」
「だったらなんでスティレットちゃん達、バトルの途中で『昨日の恨み』とか『皆のマスターへの想いを侮辱した』とか言ってたのかな?」
脂汗ダラダラになって目を逸らす百虎。
「駄目だよモモコちゃん。人と話す時はちゃんと目を見て」
観念したのか、ガーディアンから降りた百虎は朱音に向かい、正座して言った。
「………………ゴメンナサイ。昨日、スティレット達に悔しくて物凄い暴言吐いちゃいました」
「昨日だけ?『いつも暴言』って轟雷ちゃん言ってたよ?」
「う……その前にもボロクソに言った事があります……」
「……モモコちゃん。皆にちゃんと謝るまでアルティメットガーディアンは没収だよ」
ひょいっとアルティメットガーディアンを掴んだ朱音は鞄の中にそれを仕舞い込んだ。朱音の顔は、まるで子供を叱る親の様だった。
「そ!それは勘弁してアカネちゃぁぁん!!誕生日プレゼントとクリスマスプレゼントとお年玉と!コツコツ貯めたお小遣いでやっと揃えたの知ってんだろぉぉっ!!」
全部朱音から貰ったお金だった。
「だから皆に謝るまで駄目だってば」
「さっき有難うって言ったじゃーん!!」
「それとこれとは話が別―」
それを遠目に見ていた黄一と轟雷は、百虎の代わり様に呆然と見ていた。
「……本当に頭上がらないんですね……」
そして暫く時は流れて四月上旬……。
「で……まだスティレットは帰ってきてないのか?」
「まぁな、どうも新世代ボディって奴の調整がうまくいってないらしい。……よっと……」
ヒカルの家のヒカルの部屋にて、黄一と轟雷は入り口に立ちながらスティレットの事を聞いた。当のヒカル本人は、掃除機をかけて部屋の掃除をしていた。
「にしてもいいのかよ黄一。今日は玄白さんとデートだろ?こんな所で油売っててさ」
「おあいにく。今日はもう少し時間に余裕があるからな」
渋い表情のヒカルに対し、ニッと笑いながら黄一は答えた。
「しかし……、まさかお前があの後玄白さんに告白してOK貰うとはなぁ」
そう、あの後黄一は朱音を心配して追いかけ告白、見事彼女の了承を得たわけだ。
「で、今日は最初のデートの日ですからね。マスターすっごい緊張してて昨日眠れなかったんですよ。やっぱり自分の家以外だとここが一番落ち着くみたいですねー」
「轟雷。そんなんじゃない」
照れを見せつつも黄一は否定する。あの一件があっても二人の友情はやはり変わらないのは轟雷にとっても嬉しく思えた。
「別にこっち来る必要もないだろ?早めに待ち合わせ場所に行って待ってあげればいいじゃないか」
「まぁ俺もスティレットの奴が帰ってきてるか気になったからさ。それにヒカル、今日お前の誕生日だろ?」
「……あ、そうだっけ」
ヒカルの方はハッとした表情を見せた。すっかり忘れていたらしい。今日で18歳だ。ヒカルの反応に黄一は呆れた。
「がくっ。お前な……自分の誕生日なんだから覚えてろよ」
「もういちいち気にする様な年齢じゃないし、スティレットの事が気になっていたからさ」
そう言いながらヒカルは持っていたエロ本を纏めては荷造りの紐で縛る。捨てると言うのだ。
「それ、いいのか?」
以前部室のエロ本が捨てられた時に血涙を流していたヒカルが、自らエロ本を捨てる。その行為に少なからず黄一は面食らう。
「もう俺には必要ないよ。それにスティレットが嫌がるからさ」
もしかしたら……スティレットは人間と自分の違いを見せつけられて、それが嫌だったんじゃないか。そうヒカルは思っていた。
「……あ、黄一。折角だから持ってくか?」
「いらんわ。健君の方がいいだろ?」
と、その時だった。玄関のチャイムが鳴る。
「っ!スティレットか?!」
「あっ!ヒカル待てよ!」
ヒカルは足早に廊下に出ると玄関に向かう。それを黄一も追いかけていった。
玄関を開けるとそこにいたのは……、
「やぁヒカル。誕生日おめでとう」
「おめでとうございますヒカルさん!」
「おめでとう……」
「ヒカル君おめでとう!って黄一君も来てたんだ」
「ウッフフ。おめでとうヒカルさん。大人の年齢になったのね」
「あ……皆……」
待っていたのは大輔と健、月夜と朱音とそれぞれのFAG、そしてマリとテアの姉妹だった。友達が来てくれた事には嬉しいがスティレットでないのは少々残念である。
「スティレットは……まだみたいだね」
と大輔。ヒカルの態度からある程度察したらしい。
「あぁ……折角だから上がってくれよ」
「……所でそこで会ったんだけど、今日は他にもお客さんがいるんだ」と月夜が言う。
そこで現れたのは意外な人物達だった。
「えと、初めましてかな?ヒカル」
実際にあったことは無い友達。だが見覚えのある顔、それは……、
「蓮!?それに加賀彦さんや駿君!えと……直哉さん?どうしてここへ?」
海のイベントで一緒になったマスター達だ。それぞれのFAGを連れており、近くないであろうこの街へ来るのは意外だった。
「それが……、FA社の人にここに来る様に言われたんですよ。今日ここですごくいい事があるって言われて」
とマガツキ型の真姫を連れたシュンが答える。失明したという右目には本当に眼帯をしており、改めて痛々しさを感じるヒカルだった。
「それでそれぞれ集合して直哉さんの車でここへ来たってわけだよ」と輝鎚を連れた加賀彦が言う。
「あ、そうだったんですか。折角だから上がってって下さい」
「ん?それはそうと宅配便が来たみたいだよ」
ウィルバーナイン型のナインを連れた直哉がそう言うと庭の外を指差した。宅配用のトラックが止まっており、運転席から作業服を着た配達員が出てきて荷台から段ボール箱を持ってくる。ちょうどFAGの箱のサイズだった。
「あの箱のサイズ……もしかして」
「サインお願いします」
帽子を目深にかぶっており顔は確認できないが、体つきからか配達員は女性らしい。すぐさま渡されたボールペンでサインを書くと、ヒカルは受け取ったダンボールを開ける。箱の感触としては何だか冷たい。
「……あ」
中を確認したヒカルは残念そうに呟いた。中に入っていたのはケーキだった。『happy birthday ヒカル』とホワイトチョコで描かれた板チョコのプレートが中心に刺されたデコレーションケーキ。
「……ちょっとぉ、私の手作りケーキなのに残念そうな顔しないでよマスター」
「え?!」
「フフッ。でもそんなに私に会えないのが寂しかったのかしら?」
嬉しげに言う配達員が帽子を取ると、艶やかな青髪がブワッと広がった。その顔は……。
「スティ……レット?」
スティレットだった。目の前の愛しい少女は人間大のサイズになっており。ヒカルとほぼ同等の身長さだった。
「に!人間大のボディ?!なんで!!なにがあったんですかスティレット!!」
「それは私達が説明します」
親友の変わり様に轟雷は愕然とする。それにフォローを入れるべくアーキテクトウーマンが二人車から出てきた。トラックはFA社の物だった。
「マスターにはこのボディを使った私のモニターになって欲しいの」
そうスティレットは言うと、目を閉じる。直後、後頭部が割れて、中から操縦席の様な部分が伸びた、中には従来のボディのスティレットがコードに繋がれていた。
「うわ……」
「……ちょっとマスター、何ドン引きしてるの」
スティレットが本社に戻った時に話は遡る。
「で、本社の地下にこんな物があるとは思わなかったわよ」
エレベーターで地下に入ったと思えば、カプセルの並ぶ薄暗い室内に連れてこられたスティレットだった。新世代ボディという物はここまで物々しい場所で作ってるのかとスティレットは思った。
「トップシークレットですからね。これからお見せする物はまさにそれですよ」
「来たか。彼女が例のスティレット型か」
そう言って出迎えたのは白衣を着たアーキテクトウーマンだった。いや、部屋には20人以上のアーキテクトウーマンが並んでいた。姿はまちまちだが、同じメカニカルな顔の女性が並んでいると言うのは妙な不気味さがあった。部屋が薄暗い分余計に。
「アーキテクトウーマンだらけで気味が悪いわね……。早い所新世代ボディってのを見せて頂戴」
「いいだろう。これを」
彼女はスティレットをカプセルの前に案内。備え付けられた機械を操作し、ストレージのスモークを解除する。カプセルの溶液の中で見えていた人影がハッキリ見えた。それは……、
「人?いやこれ……フレームアームズ・ガール?!でもこの大きさは……!」
中にいたのはボディスーツを着たFAG、それの人間サイズのボディだった。
「これこそが新世代ボディ、各種医療メーカーとの技術提携で開発された新型ボディです。ただ一つ足りない物がありましてね」
「コイツ用のAS。頭脳ってわけ?何の為にこんな物を」
「その通り。目的は人間との互換性を持たせるためだ」
白衣を着たアーキテクトウーマンが答える。
「このボディは人間の新陳代謝を再現したナノマシンを使っている。寿命はFAGの従来の物より遥かに長い。いずれはこれを人間にも使い、医療にも役立てるプロジェクトだ。これはその為のテストケースでもある。君がこのボディを使うと言うのなら、君にもこの新型ナノマシンで保護をしてもらう」
「人間の為の計画なの?」
「その通り、個人個人の遺伝子に合わせた生体にずっと近いパーツを使い、免疫をはじめとした身体能力の強化、老化抑制、最終的には先天的、後天的問わずあらゆる障害や後遺症の克服が目的だ。同時に、私達FAGが新しい人間との関係を結ぶ事も。……それこそが君がモニターの第一号に選ばれた理由だよ」
「理由?」
「人間に近いという事は、それだけ奇異の目で見られてしまう可能性も孕んでいる。もしそうなっても、絶対にそのFAGの味方でいてくれる人が必要だ。それに選ばれたのが君のマスター、洪庵ヒカル君だよ」
「その為に、あの海のイベントを、FAGと深い絆を持つマスター達を集めて調べたのです。友情や親子関係、兄弟、共依存、様々な観点から見ましたが、やはり恋愛感情を第一号モニターとして試してみようという事です」
「……ASが、人間に近い心を持った機械があるのなら、いずれ同様の身体を手に入れるのは必然なのかもね……でも本当に、本当に人間と機械の新しい関係って出来るのかしら」
「出来ますよ……その為に私達は」
と、スーツを着たアーキテクトウーマンの顔面のフレームアーキテクトが『ガシャッ』と音を立てて開いた。中にあった。いや、いたのは。
「!?アンタもFAGだったの!?」
アーキテクトウーマンの機械の顔の中にはオーダークレイドルの様な操縦席があった。そこに座っていたのは、コードに接続された白い轟雷型だった。
「その通りです」
連続的にそれぞれのアーキテクトウーマンの顔面が開いていく。白いボディのスティレット・ブレイズ、黒髪のバーゼラルド、紫のグライフェン。どのアーキテクトウーマンにもFAGが乗っていた。
「私達の身体はこの為の試作型ボディ、それが全てのアーキテクトウーマンの正体」
白衣を着たアーキテクトウーマンの顔面が開き、中には褐色肌のマテリア型が座っていた。
「そしてそれら全ては、いつか人間とFAGが結ばれると信じているから。機械と人間が対立を防ぐ為、機械と人間の相互理解の為に……お願いします。どうかこのプロジェクトに協力を!」
そう言って白衣のアーキテクトウーマン、否、マテリアは頭を下げる。
「……解ったわよ。元々マスターと一緒になる上で、後ろ指刺される覚悟はしてたんだから、これがあれば多少はそれも減るでしょ」
「では!」
「喜んでやらせてもらうわ!」
……そしてそれからスティレットはそのボディに合わせたナノマシンの改良。大きくなったボディに適応する為の訓練やその他もろもろで時間がかかってしまったわけだ。
そして、ヒカルの誕生日にスティレットは新型ボディで帰ってきた。
さっきの話同様、頭を開いたアーキテクトウーマンは本体のFAGで話す。腹を割って話すならぬ頭を割って話すと言った所か。
「障害の克服だと……それでは……」
スティレットの話、特にその要素に食いついたのはグライフェンとフレズと真姫だった。特に真姫の方は自分の所為でシュンを傷付けたという責任を感じていた。
「そうです。真姫様。いずれ治せます。私達FAGの技術でシュン様の眼を」
「!シュン〜!」
真姫としてはこれ程嬉しい言葉もなかった。シュンに抱き着いた真姫をシュンは優しく手で包み込んだ。
「そういう事よマスター。……マスターからの告白は受けました。今度は私からの告白です。このプロジェクトに……付き合っていただけますか?私と一緒にいてくれますか?」
他人行儀に問いかけるスティレットに、ヒカルは躊躇わずに答える。
「はい!……おかえり!スティレット!」
「契約は承りました。有難う……マスター。……ただいま!ヒカル!!」
操縦席を引っ込めたスティレットは嬉しそうにヒカルに抱き着いた。見た目は完全に人間の恋人同士だった。
「それじゃ仕切り直しだよ!今日はヒカル君の誕生日!スティレットちゃんの帰ってきた記念も含めて!派手に誕生日パーティーといきましょ!!」
『イエーイ!!』
朱音がそう提案すると全員が歓迎の声を上げる。
――……あれ?ちょっと待って、この予想以上の人数であのケーキ切り分けるの?――
とスティレットが心の中で呟いたのは内緒だった。……そう思いつつも祝福する皆が見守る中、春の風が吹吹く、新たなる始まりと言わんばかりに桜の花びらが舞っていた……。
最後の方で朱音とモモコの掘り下げが出来ました。しかし朱音のキャラは後付けでこじつけたもので、ツインテールがお揃いなのは完全に偶然だったりします。とりあえずは纏まったかな。
明日に最終回、エピローグとなります。
……あ、モモコの実力の理由付け忘れた
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ep29『その大きな手で私を抱いて』(結) お待たせしました。ついに最終決戦開始です。 |
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コメント | ||
mokiti1976-2010さん 読んで頂き、そして祝福有難うございます!時代が味方をしてくれました。そしてだからこそこの道を進む事になりました。(コマネチ) これからも色々大変ではあるのでしょうが…ヒカルとスティレット、おめでとう。(mokiti1976-2010) |
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