真・恋姫†無双:Re 〜hollow ataraxia〜 プロローグ
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「―――郷一刀」

 

闇の中で、誰かの声が聞こえた。

 

「起きろ、北郷一刀」

 

声は一度目より少し語気が強くなる。それに反応して起きようとしたが、体の自由がきかなかった。目を開けることも出来ない。

 

「……ここまで起きないとムカついてくるな。なんだ?可愛い女の子に耳元でやさしく囁かれたり、布団を無理やり剥ぎ取られてみたり、蹴られたりっていうそういうイベントがないと起きないのかこいつは?」

 

「(いや、なんか体が動かないんだってば)」

 

などと心の中で叫んでみても聞こえるはずもなく……

 

「ん〜……よし。ヒナ、お前やってみろ」

 

「……(コクッ)」

 

テッテッテ、と誰かが近寄ってくる気配がした。

 

ピタッ、そしてその気配がすぐ傍で立ち止まる。

 

「………(じ〜)」

 

「(なっ、なんかすごく見つめられている気がする!?)」

 

誰かが近寄ってきた(様な気がする)のだが、動きがない。

さっきまで聞こえていた声も聞こえなくなり、静寂が訪れる。

一体どうなっているのか、少し不安になってきた頃、傍らの影が動いた。

 

ぺたっ―――(一刀は口をふさがれた)

ぎゅぅ―――(一刀は鼻をふさがれた)

 

―――再び訪れる静寂。

 

「(ちょっ…息がっ………あっ……だんだん、いし……き…が………―――)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――DEAD END―――

 

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「(ガバッ!)死ぬわ!?」

 

「(ビクッ!?)………起きました」

 

「お、起きたか。よくやったヒナ」

 

意識を手放しかけた瞬間、俺は勢いよく跳ね起きた。

 

俺を死の淵に追いやった犯人と思われる人物は、小さな女の子だった。

璃々ちゃんと同じくらいの年頃だろうか?青みのかかった銀色の髪をしていて、頭にはバンダナ?のようなものをしている。

黒いローブのような服を着ていて、胸元の大きな青色のブローチがアクセントになっていた。

 

女の子は、俺が突然起きたので驚いたのか、こちらを見つめたまま硬直していたが、くるりっ、と後ろを向くと何事もなかったかのように、小走りで俺から離れて行った。

 

その背中を眺めていると、部屋の隅で立ち止まり誰かに話しかけた。

 

そこには、黒いローブ?のようなものを頭からすっぽり被った人物がいて、椅子に座り本を読んでいたが、少女が近寄って報告をすると、一言声をかけて、少女の頭を撫でていた。

 

軽く部屋を見回してみたが、他には誰もいないようなので先程聞こえていた声は、その人物のものだろうとあたりをつけた。

 

俺が起きたのを確認すると、少しはなれたところで本を読んでいた男?(声から判断)は、こちらにちらっと視線を向けたかと思うと、

 

「今いいところなんだ。ちょっとまってろ。お前も起きたばかりで寝ぼけてるんじゃないか?とりあえず現状確認でもしておけ」

 

そういって再び手に持っていた本に視線を落とした。

 

状況のわからない俺は、とりあえず言われたとおり現状確認をすることにした。

まず、俺はベットの上に寝かされていて、今は上半身だけを起こしている。

着ている服は、フランチェスカ学園の制服。どうやら制服のまま寝ていたようだ。

 

再び周りを見回してみる。ここはどこかの部屋の中のようだが、見覚えはない。

何でこんなところで寝ているのかもわからない。俺はなにをしてたんだっけ―――?

 

窓があったので、カーテンを軽くめくって外をみてみた。

そして既視感のようなものを感じて、理解した。

 

今の状況は、理解しようとしても理解できるものじゃない、と。

 

窓から見えたのは城。中世の西洋風、とでも言えばいいのか。巨大な城。

尖塔のようなものがいくつもあり、城の両脇に大きな滝が流れていて、城の前の庭園のような場所には湖ほど広い池があった。

それを、窓から見下ろしている。恐らくここも城の一部なのだろう。

 

現状確認を終え、静かにカーテンを元に戻し、俺はもう一度ベットの上で横たわり目を瞑った。

現実逃避じゃない。これは戦略的撤退だ!これは夢。寝て、目が覚めたらそこは現実だ!

 

 

 

……

 

 

 

……………………

 

 

 

……………………………………

 

 

 

テッテッテ

ピタッ

ぺたっ―――(一刀は口をふさがれた)

ぎゅぅ―――(一刀は鼻をふさがれた)

 

 

「(ガバッ!)ぬあぁぁー!」

「(ビクッ!?)………」

 

現実の世界に旅立とうとしていた俺の元へ、再び少女がやってきて息の根を止めようとした。

 

跳ね起きると、少女は再び走り去って行く。

 

そして、元の場所に戻ると再びこちらの様子を伺っている…。

 

どうやら撤退は不可能のようだ。

 

仕方なく、俺は今の状況を認め、前向きに行動することにした。

経験上、こういう状況でいつまでも現実逃避をいていると命に関わるし、自分ひとりで解決できないことでも、誰かに力を貸してもらえれば意外とあっさり何とかなったりするものだ。

 

そういうわけで、先程から我関せずといった風に本を読んでいる男に声をかける。

 

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「質問していいか?」

 

男は本に視線を向けたまま口を開いた。

 

「なんだ」

 

「ここ、どこ?」

 

「オレの家だ」

 

いや、そういうことじゃなくて…

 

「……じゃあとりあえず、あんたは誰だ?」

 

そう聞くと、しばらくして男は本を閉じてこちらを向いた。

どうやら読み終わったようだ。少女に本を渡すと少女は本棚に本を戻しにいく。

そして、男は答え、頭に被っていたフードを脱いだ。

 

「―――オレは……ドッペルゲンガーだ!」

 

「は?…………なっ!?」

 

一瞬何を言っているのかわからなかったが、男の顔をみて俺は衝撃を受けた。

フードの中から出てきたのはまぎれもなく俺の顔だったからだ。

 

そして、その言葉を頭の中で反芻し、絶句するしかなかった。

 

ドッペルゲンガーっていうと、自分そっくりな姿をしていて、それを見た人間は数日のうちに死ぬという―――

 

「そう、おまえは後数日で―――死ぬ!」

 

「!?―――そ、そんなっ……」

 

「冗談だ」

 

「冗談かよ!」

 

「うそだ」

 

「どっちだ!?」

 

「落ち着け。そんなことはどうでもいい。オレは六道仙人。リクとでも呼べ。ちなみに偽名だ」

 

(偽名かよ!っていうか、なんだこのノリ!?)

 

正直なのか嘘なのか良くわからない名乗り方をされて内心突っ込みの嵐だ。

 

「だ、だけど、その顔は……」

 

「あぁ……実は、俺はお前の生き別れの兄弟なんだ!!」

 

「な、なんだってー!!?」

 

「なかなかノリがいいな北郷一刀。嫌いじゃないぜそういうの」

 

「そりゃどうも」

 

正直わけがわからないが、わけがわからない状況に対する適応能力はそこらの奴には負けない自信がある。そして、会話が全く進まない、というか、『噛み合わない会話』ならこれまでに散々鍛えられた。

 

どうやら名乗ってもいないのに俺の名前も知っているようだし、何もわからない俺と違い、リクと名乗った男はいろいろ知っているようだ。

 

で?っていう眼差しで、威圧感を含んだ笑顔でにこやかに睨んでやる。

 

「さすがにいい度胸をしているなぁ……。まぁ、それでこそ……か」

 

「?」

 

こちらを見つめて、何かつぶやいているがよく聞こえない。

 

と、今度は聞こえるようにリクは質問に答えてきた。

 

「顔は、素顔を隠すための変装だ。後は趣味。まぁ深く気にするな」

 

趣味っていうのは人の驚く顔をみるのが好き、とかそういうのなんだろうな、となんとなく思った。

 

俺そっくりの顔は変装という領域ではないし、正直納得は出来なかったが、どうやらそれ以上の説明はする気がないようだった。

 

まぁ、今の会話でわかったこともある。…こいつ、絶対性格悪い。

 

仕方なくこのことについてはそれ以上の質問は諦め、別の質問をすることにした。

 

―――と、リクと名乗った男の背中に隠れるようにこちらを伺っている少女が気になった。

 

「……それじゃリクさ「リクでいい」、リク、そっちの子は?」

 

「こいつはヒナ。オレのペットだ」

 

「ペッ……?!」

 

絶句した。驚きのまま、ヒナと呼ばれた少女を見つめると不思議そうに首をひねった。あ、かわいい。

 

「何をそんなに驚く?」

 

「いや、驚くに決まっているだろう!?」

 

「俺は一国の王をメイドに仕立て上げ『ご主人様』とか呼ばせて、日々あんなことやこんなことまでさせて調教していく奴の存在のほうがよほど驚くことだと思うが」

 

「ナンのハナシかサっぱりワカリマセン」

 

「そっか。わからないか…」(ニコッ

 

「ハハハハハハ…」(ニコッ

 

「………???」

 

いい笑顔の二人を、ヒナは不思議そうに見ていた。

 

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「というか、そっちから質問してくるなよ。話が進まないだろうが」

 

「あんたがそれを言うか……」

 

思いっきり話を脱線させまくっていた相手にそういわれて、言い返そうとするが、

 

「まあ、何はともあれ自己紹介は済んだんだ。現状説明とこちらの用件をいうから黙って聞け。質問は後にしろ。答えてやらないから」

 

「答えないのかよ!」

 

「冗談だ。良いから黙って聞け。話が進まないから」

 

「……」

 

「とりあえず、現状確認をしろといったが、把握したか?」

 

「いや、正直なにがどうなってるのかさっぱりわからない」

 

「だろうな。わかるはずがない。わかってたらそのほうがビックリだ」

 

「(う、うざい……)」

 

「これは確認だが、目覚める前の記憶はどのくらいある?」

 

記憶がどのくらいある、というのはおかしな聞き方だと思うが……

先程はよく思い出せなかったのだがもう一度考えてみる。

 

 

俺は北郷一刀。フランチェスカ学園の生徒で剣道部所属。

 

友人関係は……特に思い当たることはないな。可もなく不可もなくといったところか。

 

で、日々平和な生活を送っていたんだけど―――

 

―――そうだ。ある日、気がついたら異世界にいたんだ。どうりで今の状況に既視感を感じるはずだ…。

 

そこで彼女たちに出会って……彼女たち?えーと―――

 

―――そうそう!愛紗や鈴々、……と桃香に拾われて、星と稟と風に助けられて、華琳がきて……あれ?

雪蓮に冥琳に祭さん……ってなんだこれ?……仲間たちと乱世を駆け抜けて、大陸を平定して。

 

……そうだ!左慈と于吉!……と後なんか誰かいた気がするが思い出しちゃいけない気がする。(―――しかし回り込まれてしまった。一刀は貂蝉の名も思い出してしまった)

 

「知らなかったのか?貂蝉からは逃げられないんだぜ」

「人の考えを読むな!?……って、今、考えてること……」

「気のせいだ」

「………………」

 

そういわれると気のせいな気がしてきた。……えっと、なんだったっけ?

そうだ、あいつらが外史を消そうとしてて、俺は鏡に触って…華琳との別れが来て……

蓮華たちとの子供が…………漢女道で五斗米道が――――――

 

「どうした?」

 

「い、いや。なんか記憶の前後が噛み合わなくて……ちょっと混乱してきた」

 

「ふむ……ヒナ」

 

「………(コクッ)」

 

リクがヒナに声をかけると、ヒナがこちらに歩いてきた。そしてベットの上に乗る。

 

そのまま体勢を進ませて、俺へ近づいてくる。

 

そしてそのままヒナの顔が、息がかかるくらいに近づいてきて―――

 

「あの……ちょっ、近い……」

 

「………動いちゃ、ダメです」

 

「いや、でもっ……ヒナさ―――んむっ!?」

 

仰け反って離れようとしたら両手で頬を挟まれて、そのまま口で口を塞がれた。

 

その瞬間、何かが頭の中ではじけた。

 

靄がかかったような、あるいはバラバラだった記憶が、それぞれのあるべき形に戻っていく。

 

 

 

 

―――どれくらいそうしていたのか。

 

ゆっくりとヒナが離れ、再びリクの後ろに隠れる。

 

けれど、俺はただただ呆然としていた。

 

「………どうだ?」

 

リクから声がかけられ、正気に戻る。そして、俺は問うていた。

 

「―――俺は、誰だ?」

 

「おまえは北郷一刀だ。それ以外の誰でもない。お前の聞きたいであろう問いに対する答え方をするならば、おまえはオレが呼びだした北郷一刀、ということだ。それ以上の説明が必要か?」

 

「……そうか。いや、いい。わかった」

 

今の説明で、記憶の中に思い当たるものがあった。

左慈たちの手によって終わりを迎えた外史。

貂蝉によって説明された世界の在り方。

そして俺の中にある複数の記憶。

それらのことから、なんとなくリクの言っている事の意味が自分なりに理解できた。

 

「まぁ、勘違いのないようにいっておくが、いくつかの外史の記憶が統合されているかもしれないが、お前が北郷一刀であるということは間違いない。あまり気にしない方が楽だぞ。……それはさておき」

 

「……なんだ?」

 

「いや、現状確認も済んだわけだし、本題に入ろう」

 

そういうと、男の雰囲気が変わった。部屋の中の空気が引き締まっていくのがわかる。

 

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「お前に頼みたいことがある。そこで、だ。オレと取引しないか」

 

「取引?」

 

「ああ、やってもらいたいことは簡単だ。お前にはあの大陸に戻ってもらう。そこでオレのいうことをやってもらいたい。そして、それにこのヒナを連れて行って、行動を共にしてもらう。ただそれだけだ」

 

いいながら、リクの背中に隠れてこちらを窺っていたヒナを前に出す。

まだ話が続くようなので黙って聞く。

 

「見返りとして、こちらの頼みごとを見事果たしてくれれば、お前の望みを一つ、何でも叶えよう」

 

リクはそこまでいって、質問はあるか?と目で促してきた。

 

「あの大陸というのは、どの大陸のことだ?」

 

俺には"外史"の記憶がいくつもある。

左慈たちと敵対していた大陸なのか、

覇王たる少女と共に乱世を駆け抜け、三国を統一した大陸なのか、

敵対していたはずの左慈たちに協力を求められ共に戦ったという大陸の記憶さえある。

 

「漢王朝が廃れ、乱世へと突入するお前のよく知る三国志の世界、という意味だ。お前の記憶にある外史と似て非なる別の外史、といえばわかるか?」

 

つまり、またあの少女たち(一部を除く)が民のため、理想のために身命を賭して争う乱世の中に放り込まれるらしい。

 

「やってもらいたいことっていうのは?」

 

「いくつかある。詳しくはその都度いわせてもらうが、そうだな。"劉備に力を貸して大陸を平定しろ"とかそういう指令のようなものだと思ってくれればいい」

 

つまり、華琳に警邏隊を指揮しろ、とかそういう仕事を与えられていた様なことを、リクがいってくるということか。"劉備に力を貸して大陸を平定しろ"っていうのはちょっと規模が違う気がするが……。どちらかというと、天の御使いとしての使命のような感じのほうが近いのか?

 

それはわかったが、何のためにそんなことをするのかがわからない。

 

「何でそんなことをするんだ?」

 

「それは秘密だ。気にするな」

 

(いや、気にするなっていわれても………)

 

「気にするな」

 

「ッ……わ、わかった」

 

それ以上の追求は許さない、という風に威圧感を込めて繰り返された。

 

(な、なんか王としての雪蓮とか華琳の前に立つのと同じかそれ以上の威圧感を感じたぞ、今!?)

 

「それじゃ、その娘を連れて行けというのは?」

 

質問を変えて、ほとんど会話に参加しないヒナについて聞く。ヒナを見ると目が合った。ヒナは無表情にこちらを見ている。

 

……さっきまでは混乱していて気にする暇もなかったが、先程の出来事を思い出してしまい、なんだか気まずくて視線をそらし頬をかく。

 

「ああ、こいつを育ててやってもらいたいんだ」

 

「育てる?」

 

「そうだ。といっても、別にこれといって何かをしろというわけではない。連れて行って、共に行動し、言葉を交わしてくれればいい。そうすれば、そこらの子供と同じようにお前を、そしてお前の周りの者をみて、勝手に成長する」

 

「何でそんなことをするんだ?」

 

「それも秘密だ」

 

「………」

 

「答える気はないから気にするだけ無駄だぞ。それに、大して深い意味はない」

 

……『育児放棄』という言葉が頭を過ぎるが、そういう問題ではないだろう。答える気がないと言い切られた以上、このことについて聞けるのはここまでだろう。

 

「何でも望みを叶える、というのは?」

 

「言葉通りの意味だ。お前も一つの存在である以上、望みの一つもあるだろう?それをかなえてやろう」

 

「……何でもいいのか?」

 

「ああ、ただし。もちろん不可能なこともあるぞ。まぁ、まず不可能はないと思っていて大丈夫だが」

 

いわれて、

 

寂しがり屋の女の子の泣いている姿が頭を過ぎった。

 

泰山の頂で、消えていく俺に必死に手を伸ばす女の子の姿が頭を過ぎった。

 

その身を毒に冒され死に体となってなお、どこまでも気高い王の後姿が頭を過ぎった。

 

 

「…………もし、『記憶の中の外史に戻りたい、やりなおしたい』といったら?」

 

「可能だ。消えてなくなったと、お前が思っている外史に戻ることすら出来る」

 

その言葉には驚いた。貂蝉や左慈たち、俺の理解の外にいる者たちでさえ、消えた外史は、もうどうにもならない、どうにもできないといっていたからだ。

もし、この言葉が本当ならば、このリクと名乗る男は、彼ら以上の何かだということになる。

 

「まぁ、これだけ一方的な頼みごとをしているんだ。見返りについては期待してくれてかまわない。が、それはあくまでこちらの頼みごとを果した場合の話だ。皮算用は時間があるときに好きなだけすればいい。他に質問はないのか?」

 

「……もしその頼み事を断る、といったら?」

 

「別に。ただ、おまえはオレが頼みごとをするために、オレの力でここにいる。断られたらなら、お帰り願うまでだ。だが、俺はおまえは断らないと思っている。お前にとってもそう悪い話ではないはずだからな」

 

「…………」

 

「質問はそのくらいでいいだろう。さあ、北郷一刀。返答はいかに」

 

そして、俺が出した答えは―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わかった。その取引、受けよう」

 

俺は、リクの提案を受け入れた。

 

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リクとの取引が成立すると、別の部屋につれてこられた。そこから、あの世界へといくそうだ。

 

「それじゃあ今から送り出すから、さっそく頼み事を……といきたいところだが」

 

「……だが?」

 

「オレの頼み事をこなすには、今のお前じゃ、ちょっと無理ゲーにも程がある」

 

「……はい?」

 

「つまり、だ」

 

リクがそういったかと思うと、その姿が視界から消えた。

 

そして次の瞬間には、背後から首筋に冷たい感触のなにかがあてられていた。

 

「これが戦場ならおまえは死んでいるな」

 

背後からリクがそう言ってくる。それに戦慄を覚えるが………

首筋に当てられているのは(どこから出したのかわからないが)コンニャクだ。なぜコンニャク。

コンニャクで人を殺すのは至難の業だと思うが、それは突っ込んではいけない気がした。

 

「まぁ、こういうことだ。他は、まぁいいとして、お前は武力という側面が弱すぎる。すでに乱世を幾度も駆け抜けた記憶のあるお前になら、わざわざこんなこと言う必要もないだろうが、一つの間違いや油断が死を招く世界だ。そして、お前にそう簡単に死なれるのは困るんだ」

 

首筋に当てられていた感触が消えたと思ったら、リクは元の位置に戻っていた。その動きは、全くといっていいほど見えなかった。

春蘭に殺されかけたり、祭さんに鍛えられたりして、これでもそこらの兵卒や盗賊くらいが相手なら負けないし、防戦に徹すれば武将が相手でも数合は耐えられると思う。

(まぁ、春蘭や愛紗くらいの武将に本気になられたら一撃で死ねる自信もあるけど……)

それに遥かな武の高みにいる少女の姿も幾度となくみている。それでも、このリクの強さは全く図れない。

 

「というわけで、まずは修行だな。そうだな……正々堂々、真正面から正攻法で呂布と一対一で戦って勝てるようになれば合格。それまでひたすら武を磨け」

 

は?恋と一対一で戦って勝つって…………

 

「そんなの一生かけても無理に決まってるじゃないか!?」

 

「だろうな。だから一生かけて無理なら、もう一生かけ、それでも無理なら勝てるようになるまでまでやれ、といっている」

 

いいながら、リクは部屋の中を移動しながら何かをしている。

 

「……は?」

 

わけがわからない。今、相当間抜けな声が出たぞ、俺。

リクが手を止めて、こちらを見て不思議そうな顔をしている。

 

「ん?……ああ、そうか。一つ重要なことを伝え忘れてたな」

 

「重要なこと?」

 

「ああ、オレの頼み事をこなしてもらうにあたってお前にはいくつもの外史を行き来してもらうんだが、一度外史にわたると、死ぬか、ある条件を満たすまで戻ってこれない。つまり、お前の一生程度の時間じゃ、オレの出す条件をクリアすることは不可能だ」

 

「……おい」

 

「話は最後まで聞け。で、だ。さっきお前ヒナとキスしただろう?」

 

「ぶっ!?」

 

いきなりナニをいいだすんだこいつは!

 

「まぁ、もうわかってると思うが、オレやヒナは普通の人間じゃない」

 

「………………」

 

「まぁ、お前が知る必要のないことだから詳しいことは端折らせてもらうが、それでヒナの寿命は人間とは比べ物にならない。厳密にはちがうが、"不老不死"だと思ってくれて問題ない」

 

俺は黙って話をきく。もう何度も俺の理解を超えることばかり起きているのだ。今さら何があっても『ああ、そう』と受け入れてしまえる自分がいる。

 

「で、さっきのキスはヒナと同調するための儀式のようなものだ。あれでお前はヒナとつながったわけだ。……ちなみにもっと深くつながりたいとかいう要望は本人と合意の上で、もう少しヒナが大人になってからにしてやってほしい。まぁ、お前なら無理やり、ってのはないだろうがそれはやめとけ」

 

「っ!?なっ、なにいってんだあんた!」

 

「いちいちかまとと振るなよ種馬。まぁ、つながったといってもお前が不老不死になったとかいうわけじゃないからな。そこは勘違いしないでくれ」

 

いま、サラッと辛辣な言葉が投げつけられた気がするのは俺の気のせいだろうか?

 

「ん〜、そうだな。お前なら『胡蝶の夢』っていえば理解できるんじゃないか?」

 

「胡蝶の夢?……まさか、そういうことなのか?!」

 

「何がまさかなのかは知らんがまあ、そんな感じだ。多少の認識の間違いは自分の勘で修正してくれ。まぁ、そういうわけで、お前は何度も外史を繰り返せるわけだ。その度、経験することはヒナを通じて共有することが出来る」

 

つまり、言葉通りいくらでも自分を鍛え続けることが出来るということらしい。

 

だけど……

 

「時間がある、というのはわかった。けど、それでも本当に俺が恋に勝てるようになるのか?」

 

正直、恋に限らず、愛紗たちのような武将と呼ばれる人たちは、そもそもの身体能力からして別次元のものだと思う。

 

俺のいいたいことがわかったのだろう。リクが答えた。

 

「いっておくが、お前は凡人じゃないぞ?確かに呂布のような天才ではないが、第一線級の武将と渡り合えるようになるくらいの素質がある。身体能力的にも、だ」

 

「なっ!?」

 

そんなことをいわれても、とても信じられない。

 

「まぁ、確かにお前の世界の標準を考えると、多少水増しされてる感があるな。だが、異世界に移動すると、その過程でそういうことがあるのは珍しくない。普通は上限がかわると、それに応じて基準も変化することが多いんだが……お前はどうやら上限が高くなってるだけみたいだからな」

 

後はお前のがんばり次第だ、といって、俺を部屋の中央へ来るようにと手招いた。

 

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そうして、部屋の中央に、ヒナと共に立たされる。

どうやら準備が整ったらしい。

 

「『いくつかやってもらいたいことがある』といったが、それはいずれでかまわない。さっきいったように、まずは強くなれ。そのことを理解しておいてくれれば、むこうでの行動に俺からいっておく制限はない。お前は、お前の思うがままに生きればいい。もとより、この外史というのはそういうものの様だしな」

 

いいながら、リクが何かを呟きながら手を複雑に動かし、印のようなものを結ぶ。

すると足元に魔方陣のようなものが浮かび上がる。

 

「一応、ヒナには最低限生きるために必要なことができるくらいには教育してある。後のことは、互いに協力して何とかしろ。だが、見てのとおりヒナはまだ子供だ。お前の好きなように調教しろ」

 

「調教って……」

 

足元の魔方陣が淡い光を放ち始め、

 

「ヒナ、北郷一刀と仲良くな」

 

「………(コクッ)」

 

やがて光はあたりを真っ白に染め上げるほどに強くなる。

 

「それじゃあ、行って来い!汝らの行く先に幸多からんコトを―――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、新たなる外史が幕を開け、

 

 

 

 

北郷一刀は再び大陸に降り立った。一人の小さな少女を連れて―――――

 

 

 

 

つづく?

 

 

説明

※注

一刀がチート
一刀が時々壊れる
オリキャラあり
オリ設定?あり
駄文

少しでもお楽しみいただけたら幸いですm(_ _)m
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コメント
>nayuki78様 夢想で華琳と夏侯姉妹にご主人様と呼ばせるイベントがあったのでそれでwまあ、一応月も王様ですしどちらでもおkですw(rikuto)
”ご主人さま”と呼んでいる(呼んでいた?)のは、月と詠だったかと(とある外史ではw)(nayuki78)
>NEKO様 そんな腕を持っているかは検討の余地がありまくりですが、面白そうと思ってもらえたならとてもうれしいです。がんばりますw(rikuto)
同じ書き手として面白そうで羨ましい腕をお持ちのようですね。楽しみに見させてもらいます。(乾坤一擲)
>ブックマン様 ほ、褒めたってなにもでないんだから(///)テレテレ   おいといて   少しでも面白くなるようにがんばりますw(rikuto)
rikutoさんは努力家ですね。すごく面白そうです。(ブックマン)
>jackry様 ウェ~~イ!w(ナニ? ある程度思うままにがんばりますww(rikuto)
>だめぱんだ♪様 ありがとうございますw励みになりますw(rikuto)
>森番長様 少しでも楽しんでいただけるようがんばりますw(rikuto)
>悪来様 ありがとうございますwちょっといきなり躓いてるんで(ぇ?、のんびり待っててくださいww話の流れとイメージは出来てるのにorz (rikuto)
>ツンネコ様@TINAMI様 間違いですorz 指摘ありがとうございますw修正しました。がんばります。種馬的な意味で(おれがじゃないですよ?一刀がですよ?www)(rikuto)
>紅(クレナイ)様 心の師匠からの受け売りで、私にとっての基本にして至言ですwでも実力がともなわな(ry(rikuto)
>ほわちゃーなマリア様 通常の小説と違ってこういうアレもありかな?と思ってやってみましたwニヤリとしてもらえたならなによりですw(rikuto)
>紅蓮様 ありがとうございますwほんとにこの外史はどこへいくんでしょうね…(ぇ?(rikuto)
>雨人様 ありがとうございます。がんばりますw(rikuto)
ご自分でも後書きに書かれているようにここまでSSが溢れてくると題材がかぶってしまう部分があるのはしょうがないことだと思います。ご自分の書きたいものがあると思いますので、思うが侭に執筆していただければいいかなと思います。期待しています。(だめぱんだ♪)
こう言う外史巡りな話は結構好きなので期待してます^^(森番長)
次回更新待ってます!(ねんど)
タイトルのhollouというのはhollowの間違いと言うことは?気になったので一文。次に期待(種馬的な意味で)(ツンネコ様@TINAMI)
「ないものは創ればいい」、すばらしい言葉だbb(ミンミン)
いきなり最初の、デッドエンドに吹いてしまったwwww(ほわちゃーなマリア)
すごく続きが気になりました。続編まってます♪(雨人)
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